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第12話 勉強会編その7 夢って必ずしも叶って欲しい物ばっかではないよね?

ぢゅらおです。

僕は正夢を結構信じてるタイプです。たまーに「あれ、なんかこの状況見覚えある…」みたいなことを思ったりしてます。諸説ありです。

「・・・! ねぇってば〜」


 誰かに身体を揺すられてるのか、自分の身体が動いているのは感じ取れるのに俺の意識ははっきりしない。


「─────ほら! 一緒に遊ぼうよ!」


 その子は俺の手を楽しげに引っ張っていく。あぁ、俺はいつもそうだった。誰かが楽しそうにしてると自分は違くても楽しそうなフリをしてしまう。


「んー...えいっ!」


 その子が水を俺にかけてきた。そうだ、川だ。どこかの川に俺とその子は遊びに来てたんだ。


 ・・・なんだこの感覚。俺の身体で俺の意識のはずなのに思った通りに身体が動かない。それにこの光景どこかで見た気がする。


「ねぇ─────なんで私を見捨てたの?」


 突如目の前に川で溺れている少女の姿が写った。俺は必死に動こうとするが意志と反対で身体は全く動かない。


(おい...動けよ! 動けって!!)

 自分の足を叩こうとする手さえ動く事は無い。俺はただその場で少女が溺れていくのただ見てるだけ...


「嘘つき嘘つき嘘つき!!──────」


 あぁそうだよ。俺はその子との約束さえ守れなかった。たった1つの約束さえ。そんな俺に生きる意味はあるのか...? おい...誰か・・・


「・・・あのさ」


 誰かが俺に声をかける。そうだ...確かもう1人いたんだ。名前は確か...だめだ。全く思い出せない。俺はどんな顔をして目を向ければいいのか分からなかった。ただ目の前で起こった事実を受け止めるのに必死だった。


「君が生きれる時間を彼女に返してよ...」


 その子はベットで横になる...いや倒れているの方が正しいか・・・俺が約束をした子を見続けながら、涙声で。


 いや、違う。あれは...そう怒りだ。強い怒り。・・・誰に向けて? 俺か? その子は俺に1回も目を合わせることは無かった。


「─────が許しても私が許さない」


 そうだそんな事言ってたな。何を許さない? 俺が何をしたんだ? 俺だってあの時は──────


「お前が! 忘れようとしても私が忘れさせない! ─────のために。これからお前が過ごす全ての時間は─────の物だ! お前のなんかじゃない...」


 違う。こんなのは知らない。やめてくれ。俺の事に入り込まないでくれ!


「・・・好きだったんなら何故助けなかった!」


 身体が動かなかったんだ! 本当だ。信じてくれ...!


「そんなはずあるわけないよ...なんでまだ嘘をつくの? ねぇ...ねぇ!!」


 嘘じゃないからに決まってるだろ! 俺だって助けたかったに決まってるだろ...! なのにわかったかの様に...


「じゃあもういいや。君はもう...」


 その子の目はただ視線の先にいる俺を心底軽蔑するような目だった。やめろ...そんな目で見るな! あ、あ...そうだ、俺はこの時からもう俺の感情で誰かを巻き込む事を...


「・・・だよ。君は一生──────に囚われるの」


 ※※※※※※


「・・・おーい。もう朝だよー?」

「・・・あぁ...?」

「せっかく私が起こしてるっていうのに...というかなんでここで寝てるの?」


 紗奈花さなかは1度周りを見渡して見るが、もちろんそこは見慣れたリビングで目の前には見慣れた来人くるとがいる。


 そしてなかなか起きない来人の顔を誰も居ないことをいい事に両手で押したり引っ張ったりしている。


「・・・外が濡れてるね。ベンチが水でいっぱいだよ〜雨でも降ったのかな...?」


 意味もあんまりない世間話をする紗奈花の言葉に反応した来人がその場で勢いよく起き上がる。


「・・・生きてたのか!? お前生きてたのか!?」

「はぁ!? いきなりどうしたの...生きてるも何も昨日寝ただけだよ!?」

「はぁはぁ...あ、紗奈花か─────」

「もうどんな夢見てたの...って来人大丈夫!?」

「大丈夫って何が?」

「だって来人、顔怖いよ...?」


 そう言われ来人は自分の顔に手を当てて見ると顔のあちこちが引きつっている。慌てて自分のいつもの表情に戻そうとしても顔がなかなか言う事を聞かない。


「ごめん紗奈花。ちょっと外出てくるわ」

「え? じゃあ私も行く!」

「だめだ!」


 急に強く拒否の反応を示した事にいつもと明らかにおかしいと感じた紗奈花は来人の両手の二の腕に爪が食い込むくらい強く掴む。


「来人本当に今日おかしいよ!? 目が覚めてないんじゃない?」

「あ、違う...違うんだよ。俺じゃ...ないんだ」

「何が違うの? ねぇ来人!」


 必死に呼びかけるが来人の目線はここのどこでもない...まるでなにか見えないものを見てるかの様な目をしている。


 実際来人の目に写っているのは紗奈花でもリビングの1片でもなく何も見えずただどこまでの続いてるような暗闇だった。


『───は...二度と忘れてはいけない...』


 洞窟で声を出した時の様に来人の頭の中で誰かの声が響き渡る。


『・・・私の事もう忘れたの?』


 誰かわかる訳無いのに来人の中で生きる誰かが言っているのはわかる。自分の中で様々な感情が渦巻き状に絡まっているのが手の震えを見てもわかる。


 来人が何かと戦っている...いや悶えている様子を見ていた紗奈花は自分に何かする事はないかと辺りを見渡して、キッチンにあった物を強引に来人の口に詰め込んだ。


「─────うぉうぇほぉ!?」

「ちょっとはさ...」


 そして何故かまたソファの上に置いてあったクッションを手に持つと来人の顔面に振りかざす...ではなくそれを優しく顔に押し当てて、ポコポコとその上から来人の事を小突く。


「私にも何か話してよっ!!」


 最後の1発だけ少し強く小突き、クッションを来人から離すと目をビー玉の様にして素っ頓狂な顔を浮かべている来人がいた。


「紗奈花、お前...叩き過ぎ...」

「今話してるのは、来人? それともヤバいやつ?」

「おい人の事をヤバいやつとか言うな」

「ほぉそうですかそうですか。朝から様子がおかしく女の子にバナナを口に含まされて叩かれるまで治らなかった人がヤバいやつではないと...ふぅーん?」

「・・・まぁそうだな。悪かったよ」

「謝ればよしっ! あ、そのバナナ美味しかった?」

「ん? よく分からなかったけどまぁバナナって感じだったな」

「それ私が小学生の時に作った材料粘土なんだけど...」

「うぇ! なんてもん食わせんだ!?」


 ぺっぺっと舌を出して物を吐き出そうとする姿を見て紗奈花は安心した様な表情を浮かべる。


「嘘に決まってるでしょ〜? バカ来人〜」

「うわ、先程の事があったし何も言い返せん...」

「てか口に入れたら食べ物かどうかぐらいわかるでしょ?」

「俺最近知ったんだけど極度の貧乏舌なんだよなぁ...」

「それ口に入ったものなんでも食べ物と認識するって事じゃないからね?」

「食べ物っぽいやつ入れられたらそう認識しちゃうじゃん?」

「いや普通人間はそうはならないんだよ...」


 呆れた顔で枯れた笑いを出した紗奈花はタイミングを見計らって本題を切り出した。


「...でどんな夢見てたのかそろそろ教えて貰っても?」

「・・・うーん」


 苦虫を噛み潰したような顔で低い声でずっと唸ってる来人を見て紗奈花は柔らかい笑顔で再度問う。


「じゃあ...来人はそれを見てどんな気持ちになったの?」

「────いやそれがさ」


 だんだん苦い顔から眉が八の字になった疑問の顔へと変わり得た来人に紗奈花も虚をつかれた表情を見せる。


「俺どんな夢見てたんだっけ?」

「え、えぇー!?」

「いや本当に絞り出そうとしてるんだけど出てこない...」

「あれだけ...いつもと違う感じさらけ出しといて!? 覚えてない?!」

「なんか...うーん? 何か見てた様な気はするんだけど、肝心の中身がなぁ」

「・・・なんだよぉ...もぉー」


 分かりやすくガックリと肩を落とした紗奈花を見て口角を僅かにあげた来人はただ静かに外に浮かぶ綺麗な雲を見つめる。


(言うべきじゃないな...これは)







 時は少したち時間はおよそ8時を指した頃ドン...ドン...と階段から音が聞こえ、上で寝ていた者たちが次々と下に降りてきた。


「おはよぉ...」

「おっはな! おはっ〜」

「紗奈花早いねぇ...ふぁぁ」

「おはようーってもう来人居るのか、はえぇな...」

「まぁそうだな...現地入りってやつだ」

「なんだそれ」


 朝ののどかな雰囲気の中ドタバタと階段を下ってくる時雨の姿があった。


「大変です! 来人様がいm──────あれ?」

「お、おはようございます」

「あ、はい! おはようごz─────じゃなくてですね? なんでもう下にいるんですか!?」


 理由が上手く思いつかず花に助けを求めようと目を向けると、人差し指を顔の前に立て「喋っちゃダメ!」と口パクで言っている。


「あ...今日の天気が待ち遠しくて・・・」

「ライブ待ち遠しくて寝れなかったのノリで言わないでくださいよ!? 私昨日だって──────ブツブツ...」

「まぁ、早く起きる事でわ、悪いなんて事ないしね!?」


 花がかろうじてのヘルプを出すが言い方に焦りがこもってるのが滲み出ていてむしろ逆効果。某2人以外の疑いの念がますます強くなった。


「なんか花が来人を擁護するなんて怪しい・・・」

「あああ怪しくなんてないでござるよ?!」

「語尾おかしくなってるのに気付いてないもん」

「これは紗奈花が変な事言ったからでごわす!」

「・・・『肘』って10回言ってみて」


 紗奈花は自身の肘を「ほらほらっ」と何度も指さして答えさせる。


「むぅ、ひじひじひじ・・・ひじひじ! どうだ!」

「祭りで人気の出し物は?」

「くじ!」

「残念! 食べ物でしたぁ」

「意味不明クイズ!?」


 プシューと花の脳が限界を迎え煙を出しているのを紗奈花は確認して、すぐ横にいた来人を壁の隅へと追い立てた。


「花って賢いんだけど...自分のキャパを超える出来事に会うと一時的に行動不能になるの」

「なんだその世紀末の地球に降り立った1人のロボットみたいな設定は」

「それで...何か言い残すことはあるかな?」

「アニメでしか聞いた事ないんだが」

「ほぉ、しらばっくれるか...なるほどなるほど。じゃあ晃太郎こうたろうー?」


 寝起きで頭が活動していない晃太郎に電源スイッチを押してあげるかのような声で呼びかける。


 その声を聞いて「めんどくさいことはごめんだ」とソファでふて寝を決めようとしていたのだが、紗奈花が発した言葉で全てのシステムをリセット...処刑プログラムを起動する。


「花が...ナチュラルにトリッキーにローリングされたらしいよぉー...来人に(笑)」

「紗奈花ぁぁ! こ、殺す気か!?」

「いつぞやの来人の真似をしてみたんだけど...ダメかな♡?」

「こんな時にかわい子ちゃんモード発動するなぁ! めっちゃむしゃむしゃするわ!」

「私...怖いっ!」

「それゾンビ映画で性悪女に恋した男が真っ先に死ぬ時のフラグだな!?」

「私に恋したと? いやぁーん照れちゃう♡」

「言ってないわぁぁぁ─────!」


 頭を抱え込みその場で暴れ回る来人をただ冷酷に口から冷気が漏れ出している者が片手1本で止めた。


「ふぅぅぅぅ...来人ぉぉぉ。ナチュラルに、トリッキーに、ローリング─────」

「いやいやしてないですけど! てか思ってたけどなにそれ!?」


 そう来人が言うといつもの晃太郎は持っていないはずのネイティブな発音で再度言葉を発する。


「natural...tricky...rolling...」

「だからなんだよ!?」

「n...t...r...しゅぅぅぅ──────」

「・・・紗奈花?」

「遺言なら紙で残して欲しいなぁ」

「あ、いや。そうじゃなくて」


 今猛獣に襲われようとしている人間ならどんな顔をするだろうか。涙で崩れたような顔? それとも薄い希望にすがり反撃をしようと覚悟を決めた顔? そんな顔をするのが一般的だが来人はただ真顔...そうどこまでも透き通るような真顔...そしてただ素直な気持ちを発した。


「正夢って本当にあるんだなぁ...」

「せぇぇぇいぃぃぃばぁぁぁいぃぃぃ!!」


 そして来人は晃太郎(殺戮兵器)に自然ナチュラルな流れで先程から掴まれていた片手1トリッキーで綺麗に空中で3回転ローリングを決められ頭から着地した...

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