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第11話 勉強会編その6 雨も滴るいい女と汗も垂れるいい男

ぢゅらおです。

こちら加熱すれば大丈夫精神で冷蔵庫に溜まっていた色んな期限切れ(賞味か消費であったかは聞かないでください)の食材寄せ集めご飯作ったら味は美味しかったですが、置き土産も強烈でした。

 雲1つない綺麗な夜空の下...月明かりだけが目立つのを許されている中、間藤紗奈花まとうさなか家に在籍中の三室来人みむらくると(容疑者)は自分こそが世界の中心と言わんばかりの声を上げていた。


「いいいいいい...いやいや」

「は!? へっ? ちょ...来人! 勘違いだっ─────」

「あああ...いくら友達よりは深く関係しているとはいえ、まさかはなさんが俺のことをををを...」

「一旦スト────プ!」


 壊れたテレビを直すように花は来人の頭に1発手包丁を当てた。


「・・・いっ...て!? なんか力強くない!?」

「私の話最後まで聞かないからだよ! バカ!」

「なんかこう罵られるの初めてじゃないような...」

「えっ。来人ってもしかして...M?」

「あ、うーん...一概には言えないけどだいたい─────L?」

「あ。服の話じゃなくてね」

「ちなみに靴は27」

「う、うん」

「ちな、スリーサイズは上から─────」

「男子でスリーサイズってあんまり聞いたことないけど?」

「いや普通に...夢、希望、未来」

「それサイズじゃなくてホープだね」

「そうとも言う」

「・・・」

「・・・」

「・・・とりあえず落ち着いた?」

「あ、はい」


 ホッと肩を下ろした花は顔が和らいだと思ったらすぐに来人の方を睨んだ。


「まず1に。私が来人の事を好きになるのは、たとえ人類が滅んで私たち2人だけ残った場合でもありえないから」

「・・・それはそれでだいぶ心にくるな」

「それか、来人には親友の彼女を奪うとか特殊な性癖があったり...?」

「あ、それは無いです。大丈夫です」


 チラリとこんな騒ぎの中起きる気配が全くない男の所に目を向けたが、嘘偽りのない純度100%の真実で彼に疑問を投げつける。


(なぁ晃太郎こうたろう...花さんのどこを好んで付き合ったんだよ...)

 そう届く事の無いしかし届いて欲しいと願いながら来人は親友のために星に願う。


「強く生きてください──────」

「何言ってるか分からないんだけど何故かムカムカするんだけど気のせい?」

「晃太郎のせいです」

「そ。じゃあ後で可愛がってあげようっと」


 効果音を付けるなら誰かの格闘家の入場曲とかが似合うだろうか。本来暴力的な意味は一切含まないはずなのにここまで怖いのは何故なんだろう...正解はもちろん花だからである。


「あの、それでさっき結局何が言いたかったんだ?」

「やっと本題だよ...」

「・・・本当にすいません」

「まぁ誤解が解けたからいいけどさ。でね」


 腕を後ろに回し、ピョンっと跳ねるように庭を2回周った花は再度来人に目線を向けると真剣な面持ちで問いかける。


時雨しぐれちゃんが来人の事を好きな事にはもう気付いてる?」

「え?」

「うん?」

「気付いてるも何も...会って数分でいきなり『好きです』とか言われて好きじゃない事とかあるのか?」

「そうだなぁ...あまりにも特殊な条件過ぎて─────」

「正解は『YES』だろ」

「・・・?」

「これ紗奈花にも言ったんだけどさ。きっと表向きはそう言いつつ裏で俺の事を...うっ、想像するだけで涙が...」

「それ紗奈花に言った時なんて言われたか覚えてる?」

「確か...『バカ』?」

「だよね...」

「花さん。俺ってバカなのか?」

「テスト1週間前にもなって存在すら知らなかった人がそれ以外何になると?」

「あ、勉強...」


 ここで普段ならあーしたりこーしたりとにかく表すのも一苦労な行動に出るに違いないが、深夜である事、その独特な雰囲気に心が和まされている事がかろうじてそれを食い止めた。


「ふぅぅぅ...」

「もういいじゃん。赤点で」

「人の人生だと軽く言いやがって」

「何か?」

「な、ナニモナイデス...」


 拳が出たところで花相手だと届く前に手首が折られると思い来人は抗う事を諦めた。


「あれ。けどこの間昼ごはん食べてる時に『俺...初めてでさ...人を好きになるの。キラーンっ』みたいな事言ってたよね?」

「過剰表現し過ぎでは?」

「言ってたよね?」

「・・・まぁ言ったけど」

「その時詳しい事知らなかったから『ついに来人が恋に目覚めたか!』としか思ってなかったんだけど...」

「あぁ! あの時俺が好きって言った相手はな...」


 思いついたようにスマホを取り出し何かの写真を探し始めた来人に対し、ただ興味心で来人のスマホを覗く花。


 なんというか...様々な前提条件を除けばとてもほんの〜りしている。そうほんの〜りと。


「こいつだよ」

「な、何ぃ〜!?」


 スマホの画面にはThe可愛いの称号を持っていてもおかしくないくらいの小さなハムスターの写真が映っていた。


「お決まりリアクションあざす」

「こういう場合にはこれしかないでしょ」

「わかってらっしゃる〜」


 このこの〜っと花を突っつくフリをする来人にこれまた「くすぐったいって〜」とくすぐったいフリをする花の風景はもう別の世界線ならただのカップルである。なんでこの世界線になってしまったのかは誰も分からない...


「それはそうと。説明求む」

「はい。えっとですね。あの日の朝、俺ずっとこいつの名前考えてたんだよ。で初めて飼ったペットだからもうウッキウキでさ! 他の事が考えられなくなってた時になんか『紗奈花が話しかけて来てた様な...』みたいな事を思い出してさ!」


 頬が紅潮しているのがわかるくらい前のめりで話す来人を花は珍しく思いながら素直に頷いて聞き続ける。


「で! 紗奈花にそれについての事を聞かれてるのかなぁと思ったから理由を説明したつもりだったんだけど...」

「じゃじゃあ! あの時『今決めなくても〜』みたいな事って?」

「あぁ。だからの事」

「・・・な、なんだぁ」


 ずるずると地面に滑り落ちた花を見て、来人は「何してんだよ」と笑いつつ手を差し伸べる。


「結局...来人は鈍感か──────」

「むっ。よく聞こえなかったけど。俺の悪口センサーがピクピクしてるぞ」

「1周まわって褒め言葉だよ...」

「ならよし!」


 起き上がって服に付いた土をはたきつつ「そういうところなんだろうな〜」と1つため息を吐く。


 そして1人で庭で時間外れのラジオ体操をしようとしている来人を見ながら花は細く微笑む。


 来人は花の方は向かず、手は動かしながら疑問を投げる。


「あれ。聞きたかった事ってそれの事?」

「うーん。違うけど...まぁもういいよ」

「とても気になるけど!?」

「今話す内容じゃなかっただけだよ〜。また今度話す時がくればね」

「ん。楽しみだ!」


 そう言うと同時に先程の空から一体どこからやって来たのか雨粒がゆっくりと落ちてきた。


「けど来人これだけは覚えておいてっ」


 少しずつ強くなってきた雨の中、花は来人と同じように屋根のない庭に飛び出し小さな子どものようにはしゃぎながら言った。


「誰か...誰でもいい。例えどんな事だったとしてもその人が必死に伝えてきた事だったらきちんと受け止めてあげてっ」

「・・・!」

「そんな顔で見ないで欲しいんだけど...」

「ごめんそれは。けど花さんからそんな話を言われると思ってなかったから...」

「私だって1人の女子だよ?」

「・・・初めて知ったんだけど」

「────はーい鍵閉めまーす」

「外で寝たら空から迎え来るって!」


 雨で髪の毛が少し濡れている花の後を追いかけて玄関に向かう来人はふと家の上部。詳しく言うと晃太郎が寝ている部屋を見ると、暗闇の中から猫の目のような輝きが写ったと思った瞬間その光は奥へ消えていった...


 玄関についた花は慣れた手つきで玄関入ってすぐの戸棚にあるタオルを取り出すと自分の髪を拭いた後、それを来人に渡した。


「私の使い回しでごめんっと...なんでそんな濡れてるの?」


 雨で濡れたにしては少し濡れすぎている来人の髪を見て、花の頭の上には『?』が浮かぶ。


「・・・命が燃えてるのを感じてるから」

「なぜ急にポエム...」


 花と晃太郎が付き合った理由がほんの少しわかった来人であった。







「じゃあ...私部屋に戻るけど来人はどうする?」

「まぁ、今からあの部屋に戻るのは不可能だろうな」


 そう...あの部屋つまり時雨の部屋で寝ていたのは良かったが今この時間に戻ったとしてもベットに寝れるスペースが残ってるとは限らない。


 そしてあちら側が望んでるとはいえ、女子が寝ているベットに何も考えずに入れる様な人間でもない。さっきまで寝れていたのは来人が先に寝ていた(倒れていた)からであって不可抗力である。


「じゃあ晃太郎が寝てるところにでも?」

「・・・いやそれは今無理だな」

「なんで?」

「・・・虎が寝ているから」

「寝てるの晃太郎だけだよね?」


 そこにいるのは晃太郎だが、来人の今の状況から考えると来人にとってそこにいるのは虎で間違いない。


 晃太郎は来人の数少ない真の友達ではあるのだが、その代わりやる時はやる男...今だけは毒を飲ませたとしても死ぬ事はないだろう。


「まぁ、俺はリビングで寝る事にするわ」

「ま...それが無難かもね。じゃ、おや〜」

「はーいおやすみー」


 花が階段を上っていく音を聞いた後に部屋の角に置いてあった扇風機を近くに持ってきて『弱』に強さを合わせソファーに横になった。


「じゃ、やっと来た安眠に感謝...」


 そう呟き目を閉じた来人だったが少したって「カタ...カタ...」という発生源不明の音に悩まされまた起きてしまった。


「なんだよこの音は」


 開かない目をゴシゴシしながら音が聞こえる方に視線を向けるとそこにはリアル鬼ごっことかで鬼側が持ってそうな大きなハサミを持った晃太郎の姿があった。


「・・・お前何してるんだ?」


 ふぁ〜と1つあくびをした後再びそちらに意識を向けるとそこには誰もいなかった。


「なんだ...勘違いか」


 再び寝ようと横になった時今度はとても近く頭の先で音がなった気がして思わずソファーから飛び逃げた。


「こここ晃太郎...?」

「─────」

「な、なんて?」


 晃太郎が漏らした音を聞き取ろうと耳を近付けたところ耳に冷たい感触が当たり、来人の背中には寒気が走る。


「・・・NTR(他人の彼女を奪う)とは...いい趣味だなァァ!?」

「あ、俺死んだ」


 そこからの展開は来人でさえ覚えている事はなかった...

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