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第9話 勉強会編その4 予定なんてあってもなくても変わらないよね?

ぢゅらおです。

最近、やりたいことがなさすぎてちょっと題名のイメージで見ることをやめていたアニメを見始めたら思いのほか面白くて、控えめに言って朝まで見てました。

一刻も早くと急ぐ時雨しぐれを「お風呂まだ入ってないから」という理由でなんとか抜け出してきた来人くると


 お風呂はこの家に来てすぐ入ったもののあの時は汚れを落とすためだったということもありこうして入ることが認められた。


「なら一緒に...」と世の中の男子諸君が喜んで受け入れる状態もあったがそれはその場にいた紗奈花さなかはなが止めた。


「・・・よし復唱しろ俺。俺は鋼の意思を持っている。そこら辺の誘惑に負けることは無い。俺は鋼の意思を持っているそこら辺n──────」

「来人もお風呂で妄想に耽けるタイプなんだ...」

「──────この声は紗奈花か?」

「そ。タオル置きに来たんだけどあまりに来人が自分の世界に入ってるから思わず気になっちゃってね」

「別に聞かれたくない内容とかじゃなかったからいいけど...せめてノックしてくれ?」

「ここ私の家だけど?」

「はいプライバシーなんてこの来人にはございません」

「ふふ。うそだよ〜。くつろいで良いって言ったのは私だからね」


 すると、扉にはさっきまで細く写ってた影が今は扉を背に座っているような形になった。それにお風呂からではよくわからないがどうやらなにか手に持っているらしい。


 そんなことを確認しつつ来人は体を洗うために湯船から体を動かした。ちなみに間藤家ではいかなる時でも湯船を張るというのが家のルールである。


「でさ、さっきの時雨の事ね」

「お、おう」


 シャワーの音で少し聞きづらいとはいえ、聞き逃せないワードに来人は思わず身を強ばらせる。

 紗奈花は前髪を人差し指でクルクルしながら来人に問いかける。


「正直に答えてね。・・・どう思った?」

「うーん...どうって言われてもな。まぁびっくりはしたかな」

「ふぅーん。他には?」

「他にはって...これあくまで俺の意見な?」

「うん」


 言い方から伝わる真剣さに少し身構える紗奈花。ただ、実際の真剣さのベクトルは少し違っていた。


「俺...多分今日で殺されるんじゃないかなと」

「─────は?」

「時雨さんは多分というか絶対世間一般的に可愛いっていう部類のはずなんだよ」

「うん?」

「そんな人が俺の事を贔屓ひいきにしてるって...これどう考えたって殺される以外にあるか?」

「・・・バカ来人」

「え? すまんよく聞こえなかった...」

「ばーかばーか!」

「・・・なんで罵倒されているのか説明してもらってもいいですかね?」

「知らない! 自分の筋肉で考えれば?!」

「と言われましても...さりげなく脳筋って言ってない?」


 来人の発した問いかけに返ってくる答えはなかった。来人は扉の方を向いたがそこにはもう人の影はなかった。


 体を洗い終え洗面所で服を着替えていた来人は足元に置いてある紙袋に気付きそれを持ち上げる。


「これさっき紗奈花が持っていたやつか...?」


 袋の中に手を伸ばし中を探ってみると四角い箱が入っていて取り出してみると、『快適な睡眠へ! 眠眠眠!』と書いてあるドリンクのセットの箱──────


(いや...どういうこと!?)

 紗奈花の真意も分からないまま来人はゆっくりと全員が待つ部屋へと戻った。







「はい! では皆さん歯ブラシはしましたかー?」

「「「「はーい」」」」

「パジャマは着ましたかー?」

「「「「はーい!」」」」

「来人はオムツを変えましたかー?」

「はーい!!────じゃないな? こんなでかい赤ちゃんがいてたまるか」


 花の巧妙な質問に1度赤ちゃん認定された来人だったがそれをすぐに否定する。そんな会話を見て晃太郎こうたろうは来人の肩に手を置いた。


「マイフレンドよ」

「どうした?」

「・・・おしゃぶりは持ったか?」

「それが俺に必要ならお前には抱き枕でもあげようか?」


 お互いのほっぺをつねり始めた2人に花は笑いながらも晃太郎の手を捻りあげる。


「はーい面白いけどそこまでね〜」


 ボキボキボキと音が聞こえたのはきっと...違う、よね。うんきっと。これは晃太郎からの音じゃ...


「痛い痛い痛い!!」


(で、ですよねー)

 まぁ花は実際大人10人を相手にしても物足りないレベルの武術家であるらしい。そんな人物から腕を捻りあげられたらこうなるのは周知の事実である。


「じゃみなの衆! 私と紗奈花は紗奈花の部屋で寝るとして...晃太郎はまぁ犬小屋にでも」

「え!? さすがにいくらなんでもそれは...」

「・・・え?」

「...はい。花様の仰せのままに」


 プッと全員が少しだけ吹き出すと来人がそれに合わせて晃太郎の背中を強く叩いた。それに答えるように晃太郎は来人のほっぺに愛のビンタ。

 第2ラウンド開始──────


「さすがに冗談だよ〜晃太郎はお父さんの部屋使って!」


 にはならず紗奈花の一声で回避することが出来た。


「あれ紗奈花。そういえば親御さんは?」

「あぁ、お父さんは今単身赴任中。お母さんは...」

「あ、ごめん」


 聞いてはいけないことを聞いてしまったと思った来人はここは素直に反省した。


「あ、いや。おばあちゃん家によく分からないけど手伝いに行ってるらしいんだ〜だからあと1週間くらいは帰って来ないんだよ」

「そ、そうなのか...」

「あ。お母さんがいないんじゃ? とか思ってた?」

「あぁ。そうじゃなくて良かった...」


 ホッと胸を撫で下ろす来人に「言い方が悪かったね...ごめん!」と紗奈花は両手を合わせて謝る。


「えーでは!」


 花は手を2回軽く叩きその場の視線を集めるとわざとらしく咳払いをした。


「私からこの場を代表し1つご挨拶を...」

「本日はえー勉強会にご参加頂き誠に──────あ」

「どうした? 花」

「晃太郎。私が今言ったこと復唱してみて...」

「え? 本日はえー勉強会にご参加頂き...あ!」

「ねぇえー2人揃ってどうしたのー?」

「紗奈花...俺が言ったこと復唱してみろ...」

「本日は...あ!」

「ねぇ来人─────」

「あ!」

「まだ何も言ってない・・・」


 むむむと眉をしかめる紗奈花を特に気にすることも無くただ呆然とする。


「つまり皆さんが言いたいのはこういうことですね・・・」


 あの優等生の鏡のような時雨が珍しくため息をつく。


「勉強会? どこが? ですよね」


 その場の全員が思っていることをそのまま口に出したと言わんばかりの口調...


 全員忘れていたかもしれないが、今日なぜ紗奈花の家に集まったのか。それは「勉強」するためである。間違っても「ゲーム」をするためでは無い。


 そんな単純なことに最後まで気付かなかった5人は激しく落ち込む....


「まぁ、テスト前のいいリフレッシュ出来たよね!」

「まぁ私もみんなとこうやって遊べたの久しぶりだし楽しかったよ!」

「俺はいい思い出ないけどな...お泊まり会全体は楽しかったけど」

「私も...中々同級生の方々とはこういった機会がありませんので...」


 ことはせず4人とも今回のお泊まり会の感想をそれぞれ言い合う。


「ちょっと待て?」


 地獄の底から這い上がってきました感がものすごい来人が「何か忘れていることは無いか?」と目線で訴える。


「まずお泊まり会じゃなくてな!」


 ビシッと人差し指を立て1を表現。


「そしてこれ俺のために開催されたんだよな!? 元々は!」


 そして人差し指と中指で2を表現し


「で俺はお前らと違って─────」


 ふぅっと思いっきり息を吸い込むと


「まだ1()も勉強出来てねぇんだよぉぉぉ!」


 とひと思いに吐き出した...







「・・・じゃそこにいる獣化した人は時雨ちゃんが面倒見るってことで?」

「うん! 元々私の部屋で寝る予定だったし来人様もこの様子だと今日は寝そうにないから」

「けど時雨ちゃんが寝れないよ?」

「大丈夫だよ! 私やろうと思えば3日寝なくても生きていけるから!」


(なんという羨ましい機能・・・)

 犬もびっくりな唸り声を出している野生の来人。内心ではテストを一夜漬けで終わらす人々が心の底から欲しがる能力に感心を寄せていた。


「じゃ時雨ちゃんくれぐれも...」

「わかってるよ。まぁ来人様だしそんなことしないと──────」

「遠吠えには気を付けてね」

「遠吠え!?」


 人間には生涯使うことはないであろう言葉にまごついた時雨は深掘りすることは最適ではないことを感じ「おやすみなさい」の一言だけ残し紗奈花の部屋を去った。その後ろから「おやすみー」という来人の声も聞こえてきた。


(さぁ...ここからが本番ですよね♡)

 心の中で決意を固めると来人を自分の部屋に招き入れ、時雨は静かに扉の鍵穴を回した。

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