第1話 授業中のゲームって最高だよね?
ぢゅらおです。
違うサイトで掲載させて頂いている作品をなろう様にも上げたいと思います。今書いている所までは!毎日投稿が続きますので安心してご覧下さい。ちなみにその先はですね──────(検閲)
ここ、都内有数の進学校慶青学園では今日も日常通りの真面目な授業が行われていた。
・・・と言っても、文武両道を謳っているこの学校には様々な生徒がいる。全国模試1位の生徒、将来有望な政治界の卵、ラグビー日本代表候補などなど。
もちろんそのような特別誇れる要素を持ってない生徒が多半数であるが、それは周りの凸が高すぎるだけ。一般的に見れば充分凄い力を持っている生徒が集まっている。
しかし、どんな集合体の中にもイレギュラーは存在してしまうのは社会の不変的事項。
例えばそうこの男──────
(はいバカ乙〜!! そっちがその牌を捨ててくることなんぞ、始めた時から知ってたわい)
慶青学園2年4組に所属している三室来人は授業中でありながら、校内利用が禁止されてるスマホを使って、ゲームをするというトリプル役満をキメていた。
(出しちゃう? 出しちゃう? あぁ〜出ちゃったね? はい四暗刻単騎♡)
しかもこの男、授業中という制約がなければ口に出していたであろう煽りを心の中でしっかりと言っていく畜生っぷり。
おまけにバレないように時々ノートをとってるフリまでする周到さを持ち合わせている。
「──────じゃあこの問題…三室解いてみろ」
「・・・はいっ!?」
「おぉ、いい返事だな」
ところが突然、1ミリも授業を聞いてなかった来人に対して、先生は黒板に書いてある問題の回答を求めた。
もちろん授業どころか、ノートさえとってなかった来人が答えるのは難しい問題であった。咄嗟に出た返事も元気がいいのではなく、ただ突然前から名前が呼ばれて内職がバレたのかとびっくりしただけである。
(えぇ…俺に聞いたって分かるわけないじゃないですか先生…)
自分で解決出来ないことだけはすぐに分かったので助けを求めるために周りに座る同志達を見渡す。
が、誰も来人と目が合わない。いや、目を合わせようとはしなかった。それどころか、手で覆い隠した口元で微笑を浮かべている生徒さえいた。
(薄情者どもが! 人が困ってるのに笑ってるだけのバカだったのか!)
心の中で地団駄を踏んで、周りの民度の低さを憎む来人。こうなったら自分で解くしかないと前を見ても、そもそもなんの教科なのかすら分からなかった。
そう諦めかけて、素直に謝ろうと席を立った来人にスっとノートを差し出してシャーペンで何かを示す生徒が1人。
「・・・ここだよ」
小声で、少しだけ震えながらも確かにそう言った少女の名前は間藤紗奈花。
彼女は来人の前の席に座っていて、来人の授業中の蛮行を知っていたが、それでもクラスメイトを見捨てまいと答えるべき解答を来人に教えたのだ。
(あぁ…本当にありがとう紗奈花。やっぱり持つべきものは友達だよなぁ…)
そう感慨に耽ける来人だったが、ここでこの男は紗奈花という人間に関するある重大な要素についての考えが抜けていた。
彼女は学年でもトップレベルの成績を誇っていて、とても頼りがいはある。・・・ほとんどの生徒にとっては──────
「そこの答えは『いとおかし』です!!」
「残念不正解だ。三室、今は数学の時間だぞ? 後で職員室に来なさい」
「へっ?」と素っ頓狂な声をもらした来人に、周りにいた同級生のみならず、先生までも苦笑を浮かべていた。
そう紗奈花はいつも来人をあの手この手でバカにするために奮闘しているのだ。
「(おい!? どういうことだよ)」
「(どうもこうもゲームしてる方が悪いよね?)」
「(それはそうだが、困った時は助け合い! 人の情けとかいて人情という言葉があるだろ!!)」
「(あ、人間だったんだ(笑))」
「(てめぇ!)」
思わず、目の絵にいる存在に右手ストレートのお見舞いをしそうになったが、そこは教室という公衆の目の前。手を出したら出した方に罰が下るのが世の中の条理なので、来人は唇をギリッと噛んで抑え込む。
今回もまた来人がバツを見たことが嬉しかったのか、上機嫌になった紗奈花は皆にバレないよう机の下に手を伸ばして、来人の足をツンツンとつついている。
「先生ぃっ!! 1つよろしいですか?」
「なんだ三室。謝ったところで補習は変わらないぞ?」
「いえそうではなく…」
ごくんと唾を飲み込んだ来人は前に座る紗奈花にニヤリと気味の悪い目線を向けると。
「間藤さんもこの授業ずーっと寝ていました。彼女も一緒に罰を受けるべきではないでしょうか?」
そう。道ずれである。もちろんこの言葉を発した瞬間に、教室の様々な場所からざわつきが聞こえたが、そんなことでこの男は止められない。
(俺を騙して自分は優越感に浸るなんて、神が許しても俺が許さん)
ちなみに来人の告発である紗奈花が寝ていたかどうかについては来人自身も知らない。だってゲームしてたんだもん。知るはずがないだろう?と言わんばかりに胸を張る。
「俺が1問解けないだけで、補習扱いなら間藤さんも解けなかった場合、彼女も同じでは!?」
人を売るという形は変われど古代から続く非人道的なことをした来人の頭の中は達成感に満ちていた。
教室中に「来人が間藤さんを売りやがった!」とか「あの女神様にけ、喧嘩を売った!?」とか「お前は漢だ」などの罵声が再度飛び交ったが、もちろん来人の鋼のメンタルを壊すほどではない。
「・・・そうか。じゃあ間藤、この問題を解いてみろ」
「はい。先生」
と紗奈花はあまりにも過剰に席から立ち、あえて来人を挑発するように後ろから回って黒板に向かうと、紗奈花はものの数秒で、しかも必要のない途中式まで丁寧に黒板に書き上げた。
まるで「私の模範解答を有難くノートに書けば?」とでも言わんばかりに。
(な、何故だろうか。俺を見る目が先程よりも鋭くなった気がっ!?)
実際来人の周りの席の人は1人を除いて全員少し離れていた。
※※※※※※
「くそっなんで俺がこんな目に!!」
などと生徒指導室で悪態をついている来人は目の前の余計に増えてしまった補習プリントをいかに早く終わらすかの策を練っていた。
(計算問題は5枚、文章問題も5枚、計算問題は1枚あたり1分で終わるとして、文章問題は解読する時間も含め1枚あたり1分半...行ける!!)
無謀な作戦も、来人目線では立派なものになる。
シャーペンを宙に掲げ息を深く吸い込むと、心の奥底のさらに鍵を掛けた場所に隠してあるスイッチをポチっと押した。
「闇の帝王、今こそ解き放たれし時! 解放せよ! ダークネスいr」
「よぉよぉ。バカやってますね〜」
現実的に無理な課題を終わらせるためには、現実から逃げなければいけないと考え、幼い頃に封印した厨二病スイッチを入れた来人。
その様子をずっと扉の外で見ていた紗奈花はちょうど1番いいタイミングでニタニタしながら扉を開けて入ってきた。
「き、貴様! 男の子のプライベートルームに入ってくるとは何事や!?」
急に開いた扉と、さすがの来人でも他人に見られたくないモードを見られたというダブルパンチによって、椅子の上に片足を載せ、もう一方の足でとっていたバランスを盛大に崩してしまい、背中から勢いよく倒れた。
「いや、今どき厨二病こじらせてる高校生いないでしょ!」
「ち、違う! 俺だってやりたくて解放してる訳じゃない」
「解放…?」
「いやだから、厨二病モード解放──────」
「うわぁ…なんかモードとか厨二病とか自分で言ってるあたり、なんかお大事にって感じだね…」
その罵声でも皮肉でもなく純粋に来人を労るその言葉。丸みを帯びたその言葉が、今の来人には棘のように突き刺さった。
羞恥と自分自身への怨念で意識が遠のいている来人をフル無視した紗奈花は机に広げられた課題に目をやる。
「これ少し多くない?」
「──────誰のせいで多くなったと」
ほぼ直球でお前のせいだと言われた紗奈花は「授業中ゲームやる方が悪いんですぅ〜」と口を尖らせる。
と言いつつも目の前の課題の内、数枚を自分の手元に寄せた紗奈花に来人は目を丸くした。
「まぁ、今回は私にもほんの、ほんの少しだけ非があるからね。これくらい肩代わりしますよ」
「ま、まじですか!?」
「君と違って私は成績優秀だからね。これくらい朝飯前よ〜」
普段の行動から想像できない優しさに紗奈花の手を握り「ありがとう…」と涙ながらに感謝を述べる来人。紗奈花はそんな来人に「レディーの手を気安く触んないでよっ!」と払い除けたが、自身の心臓の音が少し大きくなったことに耳を赤らめるのだった。
※※※※※※
「じゃ、私終わったから後は頑張って〜」
「紗奈花?」
「ん?」
「無理だったなら言ってくれても恥ずかしくないからな?」
「っ! 誰に言ってるの! ほらっ!」
ふんっと見せびらかすように突きつけられたプリントを見ると、確かに全ての回答が埋まっている。
(まさか…本当に終わらせておる!? 紗奈花って本当に賢いんだな…しかもこんな達筆な字で…まぁこれは代答がバレるから後で自分の字に変えるけど)
珍しく期待を裏切らなかった紗奈花に不思議なこともあるもんだなぁと来人は感心していた。
来人自身も、家に帰ってからやることになるんだろうと覚悟していたために、重くなっていたペン先も快調さを取り戻していた。
引き続き終わってない課題に取り組みつつ、紗奈花に向けて言う。
「今度なんか奢るよ」
来人から予想もしてなかった提案に、紗奈花は手元に持っていたスマホから急いで自分の検索履歴を遡る。
「──────うーんじゃあここの店のケーキ食べたい!」
と紗奈花が来人に見せたスマホには「豊富な種類のケーキがたくさん!期間限定のイベントも!」とどうやらケーキ屋さんの電子チラシであろう画面が映っていた。
気になって、手を止めてチラシの内容をよく見てみると。
(ショートケーキ…2000円!? 中に金粉でも入ってるのか?)
予想よりも、遥かに高い金額に「足元見やがってぇ…」と悪態をついた来人はふと制服から見える二の腕に目が入る。
紗奈花が、来人のおかしな視線に気付き目線の先が自分の二の腕であると認識した直後。
「むっち──────」
「おい何言おうとしたこのバカ」
「いやなんでもないです…」
「「こういうもの食べてるからか…」とかでも思ってそうな顔だね? えぇ!?」
「そんなこと…ない、デス」
「なんで声がちっちゃくなったのか聞かせてみろーっ!!」
「まじで本当にケーキとか食べたいって言ってるってことは常日頃から食べているんだなーって思って、ならそのカロリーを消費するために日々走ったりしてるのかなってけど女子ってそれぐらいのちょっとぷにぷにの方がいいからそんなに気にしなくてもいいんじゃないかなって思ったことは全然ないですよ!?」
「全部言っとるやないかぁっ!!!」
ボコッと来人の頭をはたいた紗奈花は「信じらんないっデリカシー無さすぎサイテー!」と愚痴を吐き捨てて生徒指導室から出ていってしまった。
「あのやろ…まじで手加減なく叩きやがった」
痛む頭を手で仰ぐように冷やしつつ、ゆっくりと残りの解いてない問題に手をつけ、とりあえず終わらせた来人は紗奈花がやった3枚のプリントに意識を向ける。
このままだと、自分でやってないことがバレてしまうので答えが消えない範囲で消した後に再度自分で書き直そうと消しゴムを持つと、何故か異様にこの3枚だけが他のプリントより字が濃い気がした。
(あぁ!? これまさか!)
1分間必死に消したのも虚しく、字は「やぁ!」と元気そうにプリントの上で存在感を放っていた・・・
「ボールペン使ってるんじゃねーよぉぉぉぉ!」
その後不正がバレて課題が追加されたのは言うまでもない。
ぢゅらおです。
バカによるバカ達のラブはどこいったラブコメ始めたいと思います。
本当はあとがきをもっと長く書いているのですが、今は上げることに集中してしばらくは前書きのみで参りたいと思います。
追記8/18
改稿してます。ところどころ表現が変わっているのでぜひもう1回読んでみてくださいっ!!