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断末魔



 これはある商業施設で働いている警備員の方から聞いた話です。

 その商業施設というのは 30年くらい前に作られた県内でも有数の大きさを誇るショッピングモールで、利用客も多く、賑わってたんですね。


 男性は夜に施設が閉まってから翌日の朝までの警備をしていたそうなのですが、ここで働き始めてから一週間くらい経った頃です。


 この商業施設には地上4階建ての大きな立体駐車場が併設されていまして、いつもその駐車場を深夜1時ごろに巡回していたそうです。


 その日も、施設内を見て回った後に立体駐車場を一階から順に見て回っていたんですが、もちろん入り口をロープで封鎖しているので、駐車場内には人の姿は皆無で、あるものと言えば放置車両が数台置かれているだけで、それ以外はがらんどう。


 昼の賑わいとは打って変わって静かな空間に男性の足音だけがコツコツと響いている。

 男性が車用のスロープを上って、二階に上がったその時、突然、


「うわあああああああ!!」


 どこからか男の人の悲鳴が響いてきたんです。

 その悲鳴が男性のすぐ横を通り過ぎていった。


 男性の立っていたところはちょうど外に面した解放部のそばで、その声は外から聞こえた。要するに上から下に悲鳴が落ちていったんですね。

 慌てて下を覗き込んだんだけれど暗くてよく見えない。


 懐中電灯をかざす。

 何もいない。


 男性は不思議に思った。さっきの悲鳴はなんだったんだろう。

 確かに立体駐車場のすぐ横から悲鳴が聞こえたはずなのだが、もし人が落ちていたなら大変だ。男性は念のため地上に降りて誰か倒れてないか確かめた。


 でも、誰の姿もなかったんですね。

 宿直室に戻ってそのことを先輩の警備員に話してみた。

 そしたら先輩がカレンダーを見て呟いた。


「今日は13日か。君はここに来てまだ日も経ってないから驚いたろうけど、いつものことだよ」


「どういうことですか?」


 聞いてみたそうなんです。

 先輩が言うには2年ほど前に立体駐車場から飛び降りがあったらしいんです。それ以来、同じ日付の同じ時刻になると、毎月その断末魔が聞こえるようになったと。


 男性は今でもそのショッピングモールで働いています。

 もう悲鳴にも慣れたとおっしゃっていました。


 でも、一つ腑に落ちないことがあるらしいんですね。

 普通、自らの意思で飛び降りる時に悲鳴なんて上げるでしょうか?


 だからもしかしたら、これは悪い想像ですがこの飛び降りは自殺ではなく、誰かに突き落とされたんじゃないか・・。


 と、男性は時々疑っているそうです。



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