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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第七章 聖十字アドラメルク神国とはずれ能力者

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S級冒険者の指導③

 昼食を終え、午後は模擬戦と座学が交代。

 サーシャは、ガイストと二人で演習場にいた。ハイセはミイナと、ヒジリはプレセアとペアになり、午後は座学を担当する。

 サーシャはガイストに言う。


「ガイストさんハイセはともかく、ヒジリに座学…できるんでしょうか?」

「心配あるまい。何度かヒジリと話す機会があったが……あの子は聡明だ。それと、戦いにおけるカンはお前に匹敵する」

「そ、聡明?」

「普段の言動からは想像も付かないだろうがな。まぁ、ワシは信用してるよ」


 ガイストはニコッと笑う。

 サーシャにとって、ガイストは師であり父のような存在だ。

 ガイストの言うことに間違いなどない。そう思っている。

 前を見ると、教師が生徒たちに話をしていた。


「皆さん、これから戦うのは、S級冒険者の中でも特に有名なお二人です。持てる全てを出し、悔いのないように戦うこと」


 武器持ちはサーシャ、徒手空拳はガイストが担当することになった。

 意外にも、徒手空拳の七割は女子だ。男子は武器持ちが多い。

 模擬戦が始まり、サーシャは闘気を少しだけ発動。剣を構えた。

 ガイストも、右手をスッと上げ、左手は腰に当てている。

 グラブを付けた女生徒がビシッと構え、「お願いします!」と叫んだ。


「……なんだか微妙な雰囲気がするな」


 サーシャは、ガイストをチラッと見た。

 女生徒がなかなかの速度で拳を振るい、ガイストを追い詰めているように見える。

 だが、ガイストは女生徒の攻撃を躱し、最後に正拳にそっと手を添えて威力を殺して受け流し、腰に当てていた左手を少女の喉へ突きつけた。

 静かなやり取り、静かな勝利。


「力任せな部分が多い。若い子に多く見られがちな『勢いに任せた攻撃』が目立つな」

「う……」

「だが、鋭くいい拳だ。手数を増やし、丁寧に動くように。やり方は追って指導しよう」

「は、はいっ!!」

「さ、少し休みなさい」

「あ、ありがとうございます……」


 ガイストはにっこり微笑み、女生徒に手を貸した。

 サーシャは「あー……」と思った。ガイストは初老だが、老いを全く感じさせない動きや、歳を重ねた者にしか出せない雰囲気、そして渋さを持ち合わせた「イケメン」だ。今の女生徒も「おじさま、カッコいい……」と、キラキラした目でガイストを見ている。

 意外にも多いのだ……ガイスト目当ての女性冒険者は。


「お願いします!!」

「うむ、かかってきなさい」


 これはまた、ファンが増えそうだ……と、サーシャは内心で苦笑した。


 ◇◇◇◇◇


 ハイセは、困っていた。

 事前に打ち合わせをしたとはいえ、やはり大勢の前で喋るのは緊張する。

 

『で!! アタシの拳法でギッタンギッタンにして、捻りあげて内臓潰しやったら盛大に吐いちゃってさー……』

『『『『あははははっ!』』』』


 隣の教室からは、ヒジリの声と笑い声が聞こえてきた。

 ハイセは思う。模擬戦での指導といい、座学といい、もしかしたらヒジリは教えることに向いているのかもしれない、と。

 ガイストからは、『体験談』を話せと言われているが、能力に覚醒してからは苦戦したことがあまりない。撃って、爆発させれば大抵の魔獣は死ぬ。

 ヒジリやサーシャのように語るべき闘いなどあまりない。あっても、禁忌六迷宮で戦ったような、大っぴらにできないような闘いばかりだ。


「えーと……」

「「「「「…………」」」」」

「ハイセさんハイセさん、もしかして緊張してます?」

「……う、うるさい。仕方ないだろ、何話せばいいかわかんないんだよ」

「遊んでばかりいるから……」

「あ、遊んでない。というか、模擬戦だけでいいのに……」

「仕方ないですねー、ここはあたしにお任せを」

「……え」


 ミイナが前に出て、コホンと咳払い。


「えー、授業ですが、ちょっと変わった方法で進めていきます。ここにいるS級冒険者『闇の化身(ダークストーカー)』ハイセさん!! 最強の冒険者である彼に、聞いてみたいこといっぱいありますよねぇ? というわけで……今日は、質問形式で授業を勧めます!! さあさあ、ハイセさんに質問ある方は手を上げてー」

「な、お、おい……!?」


 と───教室にいたほぼ全員が挙手。

 しかも、たった今気付いたが、昨夜出会ったセインもいた。

 ミイナは、ニヤリと笑いセインを指さす。


「じゃあそこの眼鏡くん!! えーと、セインくん。質問をどうぞ!!」

「はい!! ハイセさんみたいに強くなるには、どうしたらいいですか!!」

「……た、鍛錬だな」

「鍛錬……」

「ああ。俺は能力こそマスター級だけど、師からは能力にかまけることなく、身体を鍛えろって言われて……覚醒した後もずっと、鍛えてた」


 これは本当のことだ。

 ハイセは能力の覚醒前、ガイストに弟子入りしたばかりの頃。

 サーシャと二人でよく組み手をした。体術は全ての能力と合わせて応用できると、ガイストの教えだったのだ。

 サーシャがソードマスターになってからは剣術に重点を置いたので組み手の回数は減ったが、ハイセも武器マスターの力を真に引き出した後も、ガイストから体術の訓練を受けていた。

 おかげで、能力なしで体術のみの戦いだったら、S級冒険者でも五指に入るだろうと、ガイストのお墨付きをもらった。


「どんなに強力な能力を持っていても、魔獣は能力の発動を待っててくれるほどやさしくない。いつ、いかなる状況でも頼れるのは己の身体のみだ。研ぎ澄まされた五感、鍛えた身体、そして能力。これらがあるから俺は、禁忌六迷宮でも生き抜けた」


 そう言い、ハイセは自分が熱弁していることに気付いてハッとなる。

 軽く咳払いをして「……以上」と締めた。


「いい回答でしたねぇ。つまり、《筋肉こそ正義!》ってことですね!」

「違う」

「では次の質問!!」

「おい」


 なんだかんだで、ミイナのおかげで授業は乗り切ることができたハイセだった。


 ◇◇◇◇◇


 数日間、臨時講師としてハイセたちは授業を行った。

 エリートとはいえ、まだ冒険者デビューしていない少年少女だ。S級冒険者であるハイセたちを馬鹿にするような態度、言動などはなく、むしろ興味深々といった態度ばかり。

 ヒジリは「舐め腐ったヤツいたらブチのめしたかったー」と言ったりもしたが、授業は平和に進み、あっという間に最終日。

 最終日は、講師が全員揃っての模擬戦だ。

 演習場ではなく、郊外に出ての模擬戦闘となる。


「ルールは、四人のS級冒険者が一つずつ持つ『腕章』を手に入れること。持てる能力を全て使い、奪って見せろ!! 腕章を手にしたチームには褒美が出るぞ!!」


 ハイセは、教師からもらった腕章を腕に付ける。

 サーシャにこそっと聞く。


「褒美って?」

「ハイベルグ王国にあるクランに仮加入してのダンジョン実習だ。見つけた宝は全て生徒の物になる」

「へー……もしかして」

「ああ、今回は私のクランが担当する」


 学生のチームは五名一チーム、合計で二十チームほどいる。

 郊外で、これだけの数の冒険者見習いが、作戦や能力を駆使して襲い掛かってくる。

 案の定、ヒジリは。


「も、燃えてくる……ッ!!」


 やる気満々だった。

 ハイセは、大型拳銃を手に持ち、少し考える。


「……拳銃だけじゃ、ちょっと厳しいかな」


 そう言い、アサルトライフルを手に持ち、マガジンをゴム弾へと切り替えた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
サブマシンガン位が丁度な感じするけどな。実弾ならドラゴンにダメージ入るくらいだし、ゴム弾あればだけど
やっぱただのコミュ障陰キャやろこいつ……
[気になる点] あれ?あの絡んできたクソガキ共はどこいった? 猫被ってるのか別の学級か? 結局雑務の重要性は教えないのか 日帰りの仕事しかしないならいいが、野営するなら重要だろうに [一言] ライフ…
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