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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第七章 聖十字アドラメルク神国とはずれ能力者

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ハズレ能力者

 とりあえず、助けた二人を連れてバーに入った。

 ミイナが「え、どうしたんです」と言うが、それを聞きたいのはハイセだ。

 そのまま帰せばいいのに、サーシャが二人を連れて入ってしまったのだ。

 学生服、さらに聞けば十五歳……あまり、長時間の滞在はできない。

 店に入り、適当に注文すると、サーシャが言う。


「で……きみたちは、なぜあんな場所で絡まれていた?」

「え、えっと……」


 眼鏡の少年ことセインが、ポニーテールの少女ミコを見た。

 ミコはそっぽ向き、ボソボソ言う。


「その、お腹空いたので夜食を買いに出たんです。門限過ぎてるからセインはダメだって……でもでも、《ハコネ堂》のエクレア食べたくなっちゃって、こっそり学園を出たら、あいつらに絡まれて……」

「……あいつら、成績がどうこう言ってたな。そもそも、お前らの関係は?」

「ボクとミコは、幼馴染です……」


 セインとミコが俯く。ミイナがハイセを軽く小突いた。


「ぼ、ボクたち……学園では成績最下位なんです。能力も大したことがないし、実技も座学も低くて、馬鹿にされて……」

「あ、あたしは実技はそこそこだし。『聖騎士(パラディン)』の能力を持ってるし……」

「でも、大剣なんて使えないだろ」

「う……」

「……なるほどな」


 サーシャは、すぐにわかった。

 ミコの能力は『聖騎士(パラディン)』……一般的に見れば、『剣士』の上位能力に当たる。だが、『剣士』と違い、上位能力の力は固定されるパターンが多い。

 例えば『剣士』なら、一般的な剣から大剣、双剣、レイピアなど多岐に渡り武器を使えるが、『剣士』の上位能力である『双剣士』は双剣に、『大剣士』は大剣に特化した能力となる。

 『聖騎士』の能力は、『大剣士』の上位能力。使える剣は大剣に固定される。

 ミコは、ミイナと同じくらいの身長、体格だ。サーシャよりも低い身長では大剣を振り回すことはできないだろう。

 能力が覚醒した時、身体が作り替わり特殊な能力を得ることはあるが……ミコは特に変化なく、『聖騎士』の能力を得たのだろう。

 たまにいる。こういう恵まれた能力を持ちながら、身体に合っていないことが。


「『ハズレ能力者(ミッシングホルダー)』か……」

「……ぅ」

「ハイセ、その名は侮辱に当たるぞ」

「あ……悪い」


 ハイセは素直に謝った。

 ミコは気にしていないとばかりに手を振る。


「え、えっと……ま、まったく使えないわけじゃないんですよ? 『付与士』の力で身体能力を底上げすれば、振り回せますし」

「ふむ、そうか……そちらの彼は?」

「ぼ、ボクは……『入替(チェンジ)』の能力を持っています」

「ほえ? チェンジって……聞いたことありませんねー」

「あはは……図鑑の片隅に乗ってる、マイナーな能力ですから」


 ミイナが首を傾げる。

 セインは、飲み干した水のグラスに触れ、おつまみとして出されたナッツを一粒掴む。すると、一瞬でナッツとグラスの位置が入れ替わった。


「……これだけです。ボクは『ボクが触れた物』と、『ボクが触れている物』の位置を入れ替えることができます。でも、大きさは最大でグラス程度、交換できるのは『ボクの手のひらで包める大きさの物』だけで……なんの役にも立たない能力です」


 セインは苦笑していた。

 確かに、これで戦闘はできない。

 ハイセは、ワインを飲みながら言う。


「じゃあ、なんでアドアドにいるんだ? さすがに、冒険者には向かない能力だってわかるだろ」

「……その、実家が代々、冒険者の家系でして。父がS級冒険者で、大きなクランを運営していまして……兄妹もみんな、アドアドに通っています。ボクだけ通わない、ってわけにはいかなくて」

「なるほどな。でも、その能力で冒険者になるなんて自殺行為だぞ」

「……退学するなら、親子の縁を切ると言われています。さすがに、一人では生きていけないので……せめて学園を卒業して、自立できるまでは、どんなに馬鹿にされても通おうかと」

「……お、重いですねー」


 さすがに不憫だった。

 サーシャも不憫と思ったのか、セインに言う。


「ほかに、できることはないのか?」

「……いちおう、計算とかは得意ですけど」

「確かに、がり勉っぽいですよねー」

「お前、失礼だぞ」

「むぅ、ハイセさんだってさっきはー」

「まぁ待て。喧嘩する……む? けっこうな時間だ。二人とも、そろそろ帰らないとな。私たちが送ろう」

「「は、はい……」」


 と、ミコがいきなりハイセに迫って来た。


「お兄さん!!」

「な、なんだ」

「お兄さん、すっごく強くて感動しました。あたし、卒業したらお兄さんの弟子になりたいです!!」

「却下」

「即答!? うう、諦めませんからね!!」


 そして、セインはサーシャに迫る。


「お姉さん、いえサーシャさん!!」

「な、なんだ?」

「ボク、大したことない能力ですけど……お姉さんみたいに強くなりたいです!! お姉さんは名高い冒険者とお見受けしました。荷物持ちでも何でもしますので、卒業時に弟子に!!」

「す、すまない。弟子は取っていないんだ」

「ふっふっふ。お二方、この二人がどれだけすごいお方かご存知ないようですね」


 と、ミイナが胸を張って言いそうだったので、ハイセが頭をぺしっと叩いて黙らせた。

 支払いをして、ハイセとサーシャとミイナは二人を学園傍まで送る。

 二人が帰ったのを確認すると、ミイナが言う。


「ハイセさん……なーんでS級だってこと隠すんですか?」

「あのテンションで知られたらうっとおしいから」


 それだけ言い、ハイセは宿に戻るために歩きだした。

 サーシャは、一度だけ学園を振り返る。


「幼馴染、か……」


 なんとなく、昔の自分とハイセを思い出し、全く似ていないのに境遇を重ねていた。


 ◇◇◇◇◇


 ハイセとサーシャは、珍しく並んで会話をしながら歩いていた。

 数歩前にはミイナがいるが、キョロキョロと町並みを見るのに忙しいようだ。


「ハズレ能力者、か」

「……ハイセ」

「わかってるよ。ま、俺も自分のことそう思ってたし」

「…………」

「なあ、あのメガネ、計算得意とか言ってたよな。お前のクランで会計士として雇えば?」

「……あの子の意志によるな。あの目は、冒険者に憧れ、諦めない目だ」

「ふーん……あと、系統は違くても同じ刀剣系能力者だろ、あの女の子も鍛えてやれよ」

「……武器が持てなければ、意味がない。あ」


 と、サーシャは思い出したように言う。


「セブンスターライト。あの鉱石を加工した大剣なら、持てるかもな」

「セブンスターライト……ああ、禁忌六迷宮にあった宝石か」

「ああ。あれで作った剣は軽い。そして頑丈だ……が、セブンスターライトは国宝石に指定された。さすがにデビュー前の冒険者に渡せる素材ではない」

「ほれ」

「……は?」


 ハイセはアイテムボックスから、セブンスターライトを出した。

 虹色に輝く透き通った宝石が、サーシャの手にある。


「こ、これは」

「禁忌六迷宮の最奥で拾った。俺が持ってても意味ないし、やるよ」

「まま、待て待て!! 貴重な素材と言っただろう!? デビュー前の冒険者に持たせていい素材じゃ……嫉妬や誤解の元になる」

「そうか… まぁ、それはお前にやるから好きにしろよ」

「~~~……全く、お前という奴は」


 サーシャは呆れつつ、セブンスターライトをアイテムボックスに入れた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] どこのフルムーンかと。(・_・;)(いわゆる事実婚関係で、お互いに肉体相手は別にいる奴ですかと)
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