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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第七章 聖十字アドラメルク神国とはずれ能力者

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到着

 ハイセたちは、ようやく『聖十字アドラメルク神国』の見える街道に入る。

 ミイナは幌馬車の窓を開け、顔を出して「おお~!」と驚いていた。


「あれが『聖十字アドラメルク神国』ですね!! ん~、噂通りのでっかい『十字架』ですっ!!」

「十字架?」

「なにそれ?」


 ハイセとヒジリが顔を合わせて首を傾げる。

 ハイセは別の窓を開けて外の様子を伺うと、ヒジリが無理矢理ハイセの開けた窓に顔を突っ込んできた。身体が密着し、意外に大きな胸がグニグニ押し付けられる。


「わぉ、あれが十字架ってヤツね!!」

「お、おい、離れろ!!」

「いいじゃん別にー……っわわ!?」


 すると、ヒジリが消えた。

 サーシャがヒジリの腕を引っ張り、自分の方に寄せたのだ。そして、サーシャ側の窓を開く。


「こっちも開いてるぞ」

「な、なんかアンタちょっと怖いし……へいへい」


 ハイセは、窓から見た。

 大きな十字架……真っ白な十字架が見える。国の中にあるのではなく、国の外に立っている。どういう材質で、なぜあれが立っているのかはわからない。

 そして、聖十字アドラメルク神国。細長い建物がいくつも建っているのが遠目でもわかる。ひときわ大きいのは、『指導者』が住まう『大聖堂』だろう。

 ハイセは窓を閉め、ガイストの元へ。


「あれが『聖十字アドラメルク神国』なんですね……あのデカい十字架は?」

「あれが『破滅のグレイブヤード』だ。あの十字架は、アドラメルクの神官たちが能力で作り出した『結界』であり、魔獣が町へ侵入するのを防いでいる」

「へえ……」

「あそこは墓地でもあり、ダンジョン化している最奥の前までは行けるぞ。ただし、最奥に広がるSSS級ダンジョン『破滅のグレイブヤード』に踏み込む者はいないようだがな」

「あの最奥に、禁忌六迷宮の情報が……」


 ハイセは十字架を見つめていた。


「『聖十字アドラメルク神国』は王政ではなく、『最高指導者』と『十二神官』という十二人の神官たちが国を治めている。クロスファルドの『セイファート騎士団』も、あの国にある」

「四大、じゃなくて五大クランの……」

「ああ。まぁ、政治のことは気にしなくていい。バルバロスも、我々が臨時講師の依頼を終えるまでには、グレイブヤードへの通行許可を取ると言ってたからな」

「わかりました」


 ハイセは御者席に深く座り、もう一度十字架を見つめた。


 ◇◇◇◇◇


 景色に飽きたのか、ヒジリは顔を引っ込めた。

 サーシャが次に顔を出すと、確かに大きな十字架が見えた。

 十字架よりも気になるのは景色ではない。


「あそこに、『セイファート騎士団』が……挨拶、行けるかな」


 剣系能力者が一度は憧れ目指す、『剣聖』クロスファルドのクラン。

 サーシャも、一度は目指した。だが……誰かのクランに加入するより、自分でクランを作ることを選んだ。それでも、憧れは残っている。

 

「行きたいところ、あるの?」

「え? あ、ああ」


 寝ていたプレセアが起きた。

 サーシャは顔を引っ込め、隣に座るプレセアに言う。


「セイファート騎士団……刀剣系では最高峰のクランだ」

「へえ」

「お前は何かないのか?」

「別に。まあ、綺麗な町みたいだし、観光くらいかしら」

「そうか」

「ね、一緒に遊ぶ?」

「え?」

「おいしいもの食べて、町を見て、お買い物するの。楽しそうじゃない?」

「……私と、か?」

「ええ。私、あなたのことけっこう好きだし」

「え」


 サーシャは驚いた。

 まさか、プレセアがこんなことを言うとは、思わなかったのだ。

 するとヒジリが二人の間に無理やり座る。


「ちょっと、面白そうな話ならアタシも混ぜてよっ!! なになに、美味しい物食べに行くって?」

「ええ。あなた、ちょっと騒がしいけど、私たちにはちょうどいいわ」

「意味わかんないけど、食べるなら行く!!」


 ふと、サーシャは思った。


「……まるで、友人だな」

「え? 違うの? サーシャとアタシ、友達じゃん」

「……え」

「……友達ね。まぁ、そういう関係もいいわね」


 友達。

 レイノルドやピアソラたちは『仲間』だ。クランのメンバーも仲間……友人という存在は、サーシャにとって新鮮であり、初めてだった。

 ドクンと、胸が高鳴り、サーシャの顔が赤くなる。


「と、友達……」

「なに赤くなってんのよ?」

「ふふ……可愛いじゃない。お嬢さん」

「ぐっ、あ、赤くない!! ええい、馬鹿にするな!!」

「なんか楽しそうです!! あたしも混ぜてくださいっ!!」


 ミイナが混ざり、幌馬車の中は騒がしくなるのだった。


 ◇◇◇◇◇


 正門に到着し、ガイストは門兵に書状を手渡し、ギルマス用の冒険者カードを見せていた。

 そして馬車が出発し、街中を走る。


「綺麗な町だな……」

「ああ。なんというか、『白い』な……」


 ハイセが言い、サーシャが答える。

 建物は『白系』が多い。白い煉瓦、白い街灯、白い噴水など、白系が町の色の六割ほど占めている。

 町を歩く人も、白系の服が多い。冒険者などはさすがに色に拘ってはいないようだが。

 ミイナはニヤニヤしながら言う。


「こう白いと、ハイセさんのことは探しやすそうですねー」


 ハイセは黒い。コートもブーツも、髪色も眼帯も黒い。

 サーシャが「ぷっ」と噴き出したので、ハイセはじろっと見た。


「す、すまない。ふふっ……」

「謝るの意味わかってるのか?」


 すると、馬車が止まった。

 ガイストが馬車から降り、全員に言う。


「今日からしばらく、この宿に泊まる。さぁ、行くぞ」


 幌馬車から降りると、宿の従業員が幌馬車を裏手へ運んでいった。

 ハイセたちは宿を見上げる。真っ白な『要塞』のようで、煉瓦作りの立派な建物だ。

 高さもかなりあり、見ただけで高級宿だとわかった。


「高そうだな……」

「おおお!! こんな宿にお泊りできるなんて……!!」


 あまり高級宿が好きでないハイセと、庶民のミイナの反応は正反対だった。

 中に入ると、広いエントランスホールが出迎える。従業員は白い制服で統一され、ホールにはシャンデリア、高級なソファが並び、新聞を読んでいる貴族や令嬢がいた。

 ガイストが受付し、部屋の鍵を渡す。

 鍵は装飾が施された銀製の鍵。しかも、一人一本だ。


「部屋は二階、食事は外食でも構わんし、地下一階にあるレストランでも構わん。欲しい物があれば売店か、町で買うように。宿代はギルドが負担するが、外食や物資購入は自己負担だ。ああ、宿のレストランで食事をするのはギルドの負担となる。アドアドでの講義開始は十日後、三日前になったらアドアドに挨拶にいく。今日から七日間は自由行動だ。何か質問はあるか?」


 質問はなし。

 今日から七日間、自由行動となった。

 さっそくハイセは部屋へ行こうとするが。


「よし!! サーシャ、プレセア、ミイナ、ご飯行こっ!!」

「いいけど」

「あ、ああ。いいぞ」

「はーいっ!!」


 荷物は全てアイテムボックスなので、部屋にも行かず女四人は仲良く食事へ行ってしまった。

 ハイセは少し驚いていた。


「あいつら、いつの間に仲良くなったんだ?」

「ふ、世話焼きだが、見てはいない。お前らしいな」

「え?」

「どれハイセ。たまには二人でメシと酒でもどうだ?」

「あ、いいですね。道中、町で飲むことはあったけど、あいつらみんな付いてきて騒がしかったし」


 ハイセとガイストも部屋に行かず、そのまま宿を出た。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
Presea no you were suppose to defeat them not join them.
[一言] プレセアそっちに行っちゃったか。 彼女には、過去の追放劇の本質である「メンバーの未熟さ」 を追求・糾弾して欲しかったんだがなあ。
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