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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第七章 聖十字アドラメルク神国とはずれ能力者

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町を経由して

 夜───……ガイストは一人、焚火の前で茶を啜っていた。

 ハイセ、ヒジリは完全に熟睡。先ほど見張りを交代したサーシャ、プレセアも熟睡している。ミイナは最初からグースカ寝ており、起きているのはガイストだけ。

 S級冒険者とはいえ、まだ十代の子供たちだ。

 大人であるガイストは、彼らの強さなど関係なしに守りたいと思う。

 

「さて……」


 ガイストは立ち上がり、右手を握り締めた。


「すまんが、そちらに行く。声を出さず待っててくれないか」


 囲まれていた。

 数は二十人ほど。

 野営地から百メートル以上離れており、じりじりと囲んで一気に襲いかかる作戦のようだ。だが……ガイストは気配を察知し、十メートルほど離れた木の上にいた密偵に向け、小石を投げた。


「っコ」


 喉に命中した小石。密偵は声を上げることもできず木から落下し、ガイストが受け止める。

 そして、首にあるツボを親指で刺激すると、密偵は雷に打たれたように痙攣し気を失った。

 そして、風の如く駆け出し───……包囲網を完成させつつあった盗賊たちの群れに突っ込んだ。


「な、ジジィ、テメェッぶあ!?」

「静かにしてくれ。可愛い弟子たちが寝ているんだ」


 ガイストは、盗賊の喉を潰した。

 そして、流れるような動きで盗賊たちを狩る。

 喉突き、目つぶし、当身───二十以上いた盗賊たちは、あっという間にボスだけになった。

 ガイストは、息一つ切らさずに言う。


「お前には二つ、選択肢がある……」

「こ、この野郎ォォッ!!」


 大斧を両手に一本ずつ持った盗賊のボスは、ガイストに斬りかかる。

 だが、ガイストは半歩ずれただけで振り下ろしを躱し、盗賊の右手首を掴み関節を外した。そして、喉を潰して叫び声を出せないようにする。


「ッカヘ、ッカヘァ!!」

「一つは、このままワシに殺されるか。実はこれが一番簡単なんだ。死体は魔獣が処理するだろうし、お前に懸賞金が付いていても興味がない。討伐報告だけをすればいいからな」


 盗賊は、左の斧で横薙ぎ。

 だがガイストは、右の親指と人差し指で、斧の刃を掴んで止めた。

 間もなく還暦を迎える老人が、三十代半ばで筋骨隆々の盗賊ボスが振る斧を、指二本で止めたのだ。

 ギョッとするボス。全力で斧を引くが、ピクリとも動かない。


「もう一つは、出頭するか……死刑か、強制労働が待っているだろうが、ここでワシに殺されることはない。もし出頭するなら、死刑は回避するようワシが口添えしてもいい」

「ッカ……」

「選べ」


 ギロリと、殺気を込めた眼でボスを睨むと、ボスは真っ蒼になりガタガタ震え、斧を落としウンウン頷いた。

 ガイストはにっこり笑い、ボスの首に指を突き刺し気絶させた。


 ◇◇◇◇◇


「ふあ……」


 サーシャは起床。テントから出ると、すでにハイセが朝食の支度をしていた。

 ガイストは茶を啜っている。サーシャはハイセの元へ。


「おはよう、ハイセ」

「ああ」

「朝食か?」

「武器の手入れしてるように見えるか? いいから、顔でも洗ってこい」

「ふ、わかった」


 ヒジリとミイナのテントではイビキが、プレセアのテントからは小さな寝息が聞こえた。サーシャは顔を洗い、髪を軽く整えて再びハイセの元へ。

 ハイセは、コッペパンを軽く炙って切りこみを入れ、焼いたソーセージを挟んでいる。そして、トマトと香辛料を合わせたソースを混ぜていた。


「サーシャ、寝坊助連中を叩き起こしてくれ。起きないなら朝飯ナシな」

「ああ、わかった……ふふ」

「……なんだよ」

「いや、何も言ってないのに、全員分を用意してくれたのだな」

「……っ」


 ハイセは何も言わず、カップに玉子スープを注ぎ、ガイストにお茶のお代わりを注いでいた。

 サーシャはクスっと笑い、まずはプレセアのテントへ向かった。


 ◇◇◇◇◇


 その日の午後、最初の街に到着した。

 王都の半分以下の敷地しかない町だ。冒険者ギルドや各種商店などがある、ありふれた町。

 宿を取り、馬の世話を宿屋に任せる。

 部屋は三部屋確保した。ハイセとガイスト、ミイナにプレセア、ヒジリとサーシャだ。

 部屋に入るなり、ミイナがハイセたちの部屋へ突撃する。


「ハイセさん、ギルマスっ!! ご飯行きましょご飯!!」

「お前な、まだ夕方だぞ。ってか行くならサーシャたちと行けよ。あとノックしろ」


 ごもっともなハイセの意見。だがガイストは笑った。


「ははは、まぁいいじゃないか。どうだハイセ、メシに行かんか?」

「メシはいいですけど……さすがに、一人の時間が欲しいっすね」

「そうか。なら、ゆっくりしてから来るといい。ミイナ、行くぞ」

「はーいっ!! あ、ヒジリさんが『お腹空いた肉っ!!』って言ってたんで、お肉にしましょう!!」

「……お前も食いたいだけだろう」


 ガイストは、ミイナとヒジリを連れて行ってしまった。

 ハイセはベッドに横になり、久しぶりに古文書を開く。


 ◇◇◇◇◇


『メシ食いすぎて気持ち悪い……でも、アイビスが心配して手を握ってくれるの可愛い。バルガンは俺より食ってんのに平然としてるし、クロスファルドは野菜しか食わねぇし、メリーアベルは酒しか飲んでねぇ……うちのチーム、どうなってんだ』


 ◇◇◇◇◇


 どうでもいいことが書かれている時もあれば、武器に関するヒントもある。

 ノブナガの日記。

 もう、だいぶ読み込んでいるのだが、不思議とページが終わることがない。


「ふぁ……」

「ハイセ」

「うおっ!? お、おま……ノックくらいしろよ」

「そうね。そろそろ夕飯の時間」


 プレセアだった。

 古文書を読んでいたのだが、けっこうな時間が経過していた。

 本を閉じると、ドアがノックされた。


「ハイセ、いるか?」

「サーシャ?」

「その、夕食の時間だ。宿屋の主人に聞いたのだが、近くに食事も提供してくれるバーがあるらしい……その、行かないか?」

「あら、いいわね」


 プレセアがドアを開けると、サーシャは驚いていた。


「ぷ、プレセア? 食事に行ったんじゃ」

「ええ。ハイセを誘って行こうと思ったの。ふふ、あなたも?」

「い、いや私は」

「じゃ、三人で行きましょ」

「……お前ら、俺の意見は?」


 結局、バーで食事をしてついでに軽く酒も飲んだ。

 ヒジリが『メシの次はお酒よね!!』と言って乱入したり、ガイストがミイナを連れて来店したりと……結局は、全員でお酒を楽しむことになった。

 ハイセは、フルーツカクテルを飲みながら呟いた。


「……こんなのが、あと十日以上続くのか」

「あっはっは!! まぁまぁハイセさん、楽しく飲みましょうよ!!」


 ミイナに抱きつかれ、ハイセは深い溜息を吐くのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 一人の時間がないってマジきついね 特にハイセの場合、ノブナガの日記を読み解くという大事な日課があるのに絡まれまくりだもんな いっそ自腹切って別に宿取った方がいいんじゃないか?…いやマジ…
[良い点] 野営の焚火はいいね、 いろいろ正直に話せることを期待 [気になる点] ガイストさん、気絶してる20人の盗賊たちどう処理したんだろ? ほっぽりだしておいたら気が付いて逃げちゃうか魔獣に喰われ…
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