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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第七章 聖十字アドラメルク神国とはずれ能力者

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パーティー翌日/戻ってきた日常

 パーティーの翌日。


「はぁぁ~~~……」

「おいピアソラ、不景気なため息吐くんじゃねぇよ」

「うるさい。私、今すごく憂鬱ですの。話かけないでくださる?」


 チーム『セイクリッド』の定例会議が終わった。

 すると、ピアソラが大きなため息を吐き、机に突っ伏したのだ。

 レイノルドが首を傾げていると、サーシャが言う。


「そういえばピアソラ、最近元気がないな」

「うぅ~……サーシャは私をよく見てくれてますわぁ~」

「ね、ね、もしかしてだけど、あのツルツルのおじさんが関係してる?」

「ツルツルのおじさん……ロビン、相手は『教会』の枢機卿だぞ」


 タイクーンが眼鏡をくいっと上げる。ピアソラは、机に突っ伏したまま言う。


「その通りですわ。私の元上司で、『聖王』の能力を持つ教会のトップ……私、あのお方がどうも苦手ですの。その、なんというか……怖い」

「ぶははっ、ピアソラが恐いとか、マジか?」

「レイノルド、茶化すな」


 サーシャに怒られ、レイノルドは「へいへーい」と手を振る。

 サーシャのところにも挨拶に来た。ガイストと同期の元S級冒険者で、今もクラン『アスクレピオス』を運営するクランマスターでもある。

 ハイベルク王国が管理する『回復系』能力者が所属する『教会』の枢機卿。回復系能力者の中で最も強大な力を持ち、限定的な条件で死者の蘇生すら可能という。

 現に、サーシャもその力を実感していた。


「凄まじい回復能力だったな。あれほどの能力、なかなか拝めない」

「私よりも数段、回復が上ですわ。私の最高技である『聖女の奇跡(メシアライザー)』を、杖を振るだけで使えるようなお方ですもの」

「ふむ、ではなぜ恐れる? ボクには理解できんぞ」


 タイクーンが訝し気にピアソラを見ると、ピアソラはタイクーンに顔を向けた。


「だって、あのお顔……恐いんですもの」

「……それだけか?」

「そ、それだけ、って……あなたたち、怖くないんですの!? 全身筋肉の塊で、ずっとニコニコしてて、刺青入ってるし、笑うと怖いし、女の子みたいだし……!!」


 ガバッと顔を上げ、全員に言う。

 

「オレは別に。デカいし筋肉すげぇし、前衛っぽいなーとは思ったけどよ」

「あたしも別に~? 前に城下町でおっきなフルーツ盛り合わせ食べてたよ?」

「ボクも気にならん。趣味嗜好はそれぞれだろう」

「うーむ。私も特に気にならんぞ。むしろ、かなりの強さを感じた。一度手合わせ願いたいくらいだな」

「な、な……」


 どうやら、怯えていたのはピアソラだけのようだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 パーティー翌日。

 ハイセは、宿屋の一階にある小さな食堂で紅茶を飲んでいた。

 食堂といっても、受付カウンターの隣に小さな仕切りがあり、そこに食事用の椅子テーブルが並んでいるだけのスペースだ。

 ハイセがいない間に、少しだけ変化したようだ。

 紅茶を啜り、新聞を読んでいると、気になる記事があった。


「ん? おお……レイノルドが、S級冒険者になるのか」


 そこには、『クラン『セイクリッド』所属の盾士レイノルド、S級冒険者昇格まで秒読みか』とあった。

 確かに、レイノルドの実力ならS級冒険者になるのも当然だろう。

 記事を読むと、レイノルドのインタビューまであった。


「『クランからの脱退意志はない。これからもセイクリッドの盾士として活動する』か……あいつらしいな」


 新聞を読み終え、アイテムボックスに入れる。

 カウンターで同じ新聞を読む店主の前に、金貨を置いた。


「延長一ヵ月。新聞、紅茶付きで」

「……はいよ」


 半月に一度のやり取りを終え、ハイセは宿を出た。

 そのまま、冒険者ギルドへ向かう。

 昨日話した『空中城の地図』に関する依頼は、まだ時間がかかるようだ。近々、チーム『セイクリッド』からハイセに依頼が入るだろう。

 それまでは、普通の冒険者として活動するハイセ。

 ギルドに到着すると、見慣れた顔があった。


「ん? ハイセじゃん」

「……相変わらず、遅いわね」


 ヒジリとプレセアだ。

 互いに依頼書を手に、受付が空くのを待っているようだ。

 ハイセは適当に手を上げると、なぜか二人は傍へ。


「もうロクな依頼ないよ。アタシのこれが一番強い魔獣討伐っ!!」


 ヒジリの依頼書には、『討伐レートS+ キリングヴァイパー討伐』と書かれている。

 東へ向かう途中にある大沼に、巨大な蛇魔獣が住みついたようだ。


「サーシャほどじゃないけど、そこそこ楽しめそうね。じゃぁね~」


 ヒジリはウキウキしながら受付へ。

 プレセアは無言で依頼書を見せる。


「……バオバの実、採取。希少なものだけど、私なら楽勝」

「いや、聞いてないけど……」


 プレセアの『精霊使役』なら、探し物は大抵見つかるようだ。プレセア自身、そこそこ強いので、よっぽど危険な場所に出向かない限り、危険もないだろう。

 プレセアは、依頼書をひらひらさせながら受付へ。

 ようやく一人になったハイセは、すでにガラガラの依頼掲示板へ。


「ん~……どうすっかな。というか、けっこう依頼残ってるな」


 現在、ハイベルク王国にあるクランの数は三百ほど。

 そこに直接持ち込まれる依頼も多くあり、クラン『セイクリッド』にも数多くの依頼が持ち込まれている。それでもなお、冒険者ギルドには依頼が多く入る。

 冒険者が足りていないのか、困っている人が多いのか。

 

「まあ、俺は俺にできること、やるか」


 ハイセが手に取ったのは、南の街道に出現する『ファイアオーク』討伐の依頼書だった。


 ◇◇◇◇◇◇


「お前なぁ……やりすぎだっつうの」

「うぐ……」


 ハイセが解体場で出した『ファイアオーク』の死骸は合計七体。

 その全てが、半身が引き裂かれたようにボロボロで、内臓もほぼ消失していた。

 解体場のトップであるデイモンが、頭を押さえる。


「ファイアオークの肉は珍味で高級食材だが、こんなボロボロじゃ売り物にならねぇぞ。あとはいい出汁になる骨くらいだけど……こんなボロボロじゃあ、全部の骨で一体分くらいの骨にしかならんぞ」

「そ、そうかな?」

「金貨十枚。どうする、現金にするか? カードに入れるか?」

「……現金で」

「はいよ」


 デイモンは、解体場の金庫から金貨十枚を出し、ハイセに渡した。

 ファイアオーク。

 現地に着いた時、ちょうど商人である家族の馬車を襲っていた。馬車がボロボロにされ、父親がオークの拳で重傷を負い、幼い子供たちが両親を守ろうとしていた瞬間だった。

 ハイセは無言でショットガンを展開。フルオートで連射すると、オークの半身がバラバラに吹き飛び、あっという間に七体を討伐した。

 その後、父親を医者に運ぶと一命を取り止め、家族も安堵していた。

 ハイセは、アイテムボックスから木箱を取り出し、デイモンに見せる。


「デイモンさん。これ、なんだかわかる?」

「ん? これは……ライアンスパイダーのシルクだな。ありふれた布だが、どうしたんだ?」


 木箱には、引き裂かれた生地があった。

 同じ箱があと二十ある。これは、ファイアオークに襲われた商人一家の積荷で、ハイセは全て回収してアイテムボックスに入れていたのだ。


「あと、この馬車だけど、修理できる?」

「うおっ!?」


 ハイセは解体場に、壊れた馬車を出した。


「あのな、うちは解体場だぞ。直すのは専門外……と、言いたいが、別料金でやってやるよ」

「あ、悪い顔してる」

「ま、職務外の副業ってやつだ。どれどれ……ふむ、これくらいなら一時間あれば直せるな。素材、修理費込みで金貨一枚だ」

「じゃ、よろしく」

「まいどっ。へへ、ありがとよハイセ。今夜一杯どうだ?」

「いいけど、ダイモンさんの奢りだから」

「へいへい」


 一時間後、ハイセは修理された馬車をアイテムボックスに入れ、解体場を出た。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセが向かったのは、平民向けの小さな医院。

 そこに、商人の家族がいた。父親の手当てが終わり、子供たちが心配そうにしている。

 ハイセが病室をノックすると、商人の妻がドアを開けた。


「あ、あなたは……」

「どうも」

「あ、おにいちゃん!!」

「カッコいいおにいちゃん!!」

「おう。お父さんの怪我、どうだ?」

「大丈夫だけど……父ちゃん、いたそう」


 ハイセは、商人の元へ。

 足に怪我をしたようで、包帯を巻いていた。

 ハイセに気付くと身体を起こそうとするが、ハイセは止める。

 妻は、子供たちを連れて部屋を出た。


「冒険者様。この度は命を救っていただき……」

「前置きはいい。さっそくだけど、商談がある」

「……え?」

「あんたの馬車にあった積荷、これ俺が全部買うから。値段は金貨十枚。それと、足りない分は馬車の修理で勘弁してくれ」

「……は?」


 ハイセは金貨十枚をテーブルに置き、窓を開けてアイテムボックスから馬車を出した。

 

「お、お待ちください。金貨十枚って、ええと……わ、私の十年分以上の稼ぎで」

「子供に何か買ってあげろよ。あんたが怪我して倒れたとき、あんたと奥さんを守ろうとしてたぞ」

「え……」

「金貨十枚あれば馬も買えるし、しばらく生活できるだろ。じゃあな」

「あ、あの!!」


 ハイセは病室を出た。

 すると、子供たちが並び、ハイセに小さな銀貨を差し出した。


「にいちゃん、助けてくれてありがとう!!」

「これ、おれとにいちゃんの宝物。にいちゃんにあげる」

「……うん、もらっておくよ」


 どこかの国の、古い銀貨のようだ。

 ハイセは受け取り、ポケットへ入れた。


「じゃ、元気でな」


 ハイセは子供の頭を撫で、そのまま医院を出た。

 銀貨を指で弄び、再びポケットへ入れる。


「さーて、軽く飲んでから帰ろうかな……」


 ハイセは大きく背伸びをして、ヘルミネのバーへ足を運んだ。


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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
珍しく現金で貰うと思ったらこれかよ、やるじゃん。そんでセミオートのショットガンもあるようだね
これは普通にかっこよくないんですわ。 中身知ってる人たちからしたらだけど。厨二病こじらせて自分を人間不信と信じてる痛いやつなんよ、今のところ
[気になる点] ちょっと読み返しててふと浮かんだので追加書き込み失礼します もしかしてハイセの評判が悪い原因の一つは魔物をボロボロにしてくるところにあるんじゃないかな? 間引きのための討伐ならともか…
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