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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第七章 聖十字アドラメルク神国とはずれ能力者

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禁忌六迷宮・踏破おめでとうパーティー③

 今更だが、ハイセはこのパーティー名が『禁忌六迷宮・踏破おめでとうパーティー』が正式名称なことに何とも言えない気持ちになっていた。誰が考えたのかはすぐわかった……ロビンだろう。

 会場の片隅で、ハイセは一人ワインを飲む。

 気配を殺しているので、ハイセに気付く者は少ない。一緒に来たヒジリとプレセアも、ロビンと一緒にお喋りしたり、食事を楽しんでいた。

 ガイストも、アポロンや国王と仲良くおしゃべりし、アイビスも仲間と懐かしい話に花を咲かせている。

 レイノルドは貴族令嬢に囲まれ、タイクーンは学者風の貴族たちに囲まれ、ピアソラはサーシャの後ろで睨みを利かせて男除けをしている。

 ハイセは、バルコニーへ出た。


「……帰ろうかな」


 顔は出した。

 挨拶はしていないが、サーシャに挨拶など今更だろう。

 ヒジリをけしかけたことの文句くらいはあるかもしれないが、別に今でなくてもいい気もした。

 ワインを飲み干し、バルコニーのテーブルへ置く。

 そのまま帰ろうと、パーティー会場を出て歩き出した。


「帰るのか?」


 すると、会場の外でサーシャが引き留めた。

 振り返ると、髪を押さえ、どこか嬉しそうに微笑んでいる。


「ああ。ロビンに頼まれた義理は果たしたしな」

「そうか……」

「じゃあな」


 そのまま手を振って歩き出すと、サーシャが小走りで先回りした。


「待て。私に何か言うことがあるんじゃないか?」

「えー……ああ、まあ」

「こっちに来い」


 サーシャに袖を掴まれ、パーティー会場ではなくクランホームへ。

 階段を上り、廊下を歩き、少し歩いた先にあるドアを開け中へ。

 

「……ここは?」

「私の私室だ」

「えっ……」

「男を入れたのは、お前が初めてだ」


 シンプルな部屋だった。

 大きなベッド、カーテン、テーブル、椅子、ソファ、執務机、本棚、クローゼット。どれもシンプルな造りで飾り気がない。あるとしたら、窓際に置かれている花瓶だけだ。

 サーシャは、戸棚からワインを出し、グラスを二つ出す。


「少し、飲まないか?」

「……どういうつもりだよ」

「他意はない。なんとなく、お前と飲みたいだけだ」

「まぁ、いいけど」


 なんとなく、ハイセも了承してしまった。

 椅子に座ると、サーシャがグラスに赤ワインを注いでくれる。


「抜け出していいのか?」

「化粧を直すと伝えてきた。私も知らなかったが……女の化粧は、時間がかかるらしいぞ」

「なんだそれ」


 ハイセはグラスを手にすると、サーシャもグラスを手にし、軽く合わせた。

 チィーン……と、グラス同士が響き合う。

 飲むと、上質な赤ワインだとわかった。


「ハイセ。どうして私に、ヒジリをけしかけた?」

「……なんでだろうな。俺がやるより、お前のがいいと思ったんだ」

「直感、というやつか。レイノルドやピアソラは怒っていたが、結果的に私も得る物があった。その点については感謝する」

「……ああ」

「だが、けしかけたことに関しては話が別だ。S級冒険者同士を争わせ、私を陥れようとも取れる行いだったぞ……冒険者ギルドに告発すれば、お前は処分されるだろうな」

「…………」


 確かに、その通りだ。

 ハイセがヒジリの挑戦を受けた時、そのまま無視したり、自分が受けるのは問題ない。だが、同じS級冒険者のサーシャが戦うように仕向けたことは問題だ。

 ハイセはグラスを置く。


「そうだな…で、どうするんだ」

「……一つ、依頼をしたい」

「俺に?」

「ああ。正確には、チーム『セイクリッド』との合同依頼を受けて欲しい。それで、今回の件は無かったことにする」

「チーム『セイクリッド』との、合同依頼? レイノルドたちは知ってるのか?」

「いや、知らない。これから説明する」

「お、おいおい……」


 さすがに、ハイセは困った。

 まさか、チーム『セイクリッド』に同行して依頼を受けることになるとは思わなかった。

 だが、ハイセは言う。


「同行は必要ない。その依頼、俺が一人で受ける」

「それはダメだ。今回の依頼は、王家から内密に受けた依頼でな……お前だから説明する。王家の依頼は、『禁忌六迷宮』の調査についてだ」

「ッ!?」


 ハイセは目を見開いた。

 禁忌六迷宮。残りは三つある。そのうちの一つは、サーシャが持つヒントにある。

 サーシャは、ワインを飲む。


「ふぅ……どうする。今回は禁忌六迷宮そのものじゃない。禁忌六迷宮についての情報に関わる依頼だ」

「……わかった。一緒に受けよう」

「よし。ふふ……お前と一緒の依頼なんて、数年ぶりだな」

「かもな」


 ハイセはワインを飲み干し、グラスを置いた。

 

「依頼は指名依頼でギルドに出してくれ」

「わかった。数日かかるが、王都に待機しててくれよ」

「ああ。他に用事は?」

「……ないな」

「じゃあ、帰る」


 ハイセは部屋を出ようとすると、サーシャが立ちあがる。


「ハイセ」

「……」

「その……」

「…………そのドレス、似合ってる」


 ポツリと言い、ハイセは部屋を出た。


「……───~~~っ」


 サーシャは真っ赤になり、グラスにワインを注いで一気に飲み干した。


 ◇◇◇◇◇◇


 ガラにもないことを言ったと後悔し、ハイセはパーティー会場へ。

 いざ、会場内に踏み込もうと思ったが……見えたのは、知り合いばかりだった。

 プレセア、ヒジリ。レイノルドたち。アイビス、バルガン。他にも顔見知りの冒険者たちや、クレスにミュアネといる。

 ハイセは会場内に入らず、会場外にあった小さなベンチに座った。


「……はぁ」


 一人で最強を目指していたはずなのに、いつの間にか知り合いだらけ。

 サーシャは、きっとハイセの数倍以上、付き合いが増えただろう。

 なんとなく、夜空を見上げていると。


「こんな言い方をしていいのか……ハイセ、お前は一人が似合う男だな」

「えっ……あ、こ、国王陛下!?」

 

 ハイセは立ち上がり、跪いた。

 国王陛下───バルバロスは、ハイセに立ち上がるよう許可。そのままハイセの座っていたベンチに座ると、隣をポンポン叩く。

 国王陛下の隣に座るなんて───と言いかけたが、にこやかな笑みに何も言えなかった。

 ハイセが座ると、バルバロスも空を見上げる。


「いい夜だな」

「は、はい」


 一国の王が、隣に。

 周囲の気配を探るが、護衛騎士が隠れているような気配もない。

 

「護衛はいない。ふふ、息子の『能力』で騙されておるよ」

「え……」

「それに、不届き者がいても、おぬしがいる」

「……あ、ありがとうございます」


 ハイセは緊張していた。

 だが、屈託のない王の笑みが、少しずつ緊張をほぐしてくれる。


「サーシャから、聞いたようだな」

「……禁忌六迷宮の情報、ですか?」

「うむ。禁忌六迷宮の一つ、『ドレナ・ド・スタールの空中城』が現れた位置を記した地図だ」

「!!」


 ハイセは眼を見開いた。

 禁忌六迷宮、『ドレナ・ド・スタールの空中城』……数千年前に一度、人間界のどこかに現れ、多くの冒険者を誘った伝説のダンジョン。

 どこかの上空に現れ、地上に着地し、多くの冒険者たちが空中城の中へ入った。そして……誰一人、戻ってこなかった。

 今となっては、どこに現れ、その後どうなったか不明。ハイセの古文書にもそれらしい記述はない。

 

「過去、一人だけいたのだよ。空中城に挑もうとしたが挫折し、空中城が現れても中に入らなかった冒険者が。その冒険者は、空中城が現れた位置を地図に正確に示し、浮遊後の進路を追い地図に示した。そして、その地図を懐に抱いたまま、行方不明になった……」

「……その地図は、どこに?」

「ここから遥か北。禁忌六迷宮を除いた、人間界屈指の危険地域にあるSSS級ダンジョン……『破滅のグレイブヤード』だ。その最奥に、地図がある」

「なんでそんなことがわかるんですか?」

「ふふ、疑うのも無理はないな。これは本当に偶然だが、空中城の進路を記した地図……仮に『空中城の地図』としようか。その地図を書いた冒険者の子孫が、その冒険者が妻に残した手紙を、妻の墓から見つけたのだ。それで地図の存在がわかったのだよ……まぁ、その手紙が本物かどうかもわからんし、そんな地図が本当にあるかもわからんがな」

「……っ」

「だが、手掛かりにはなる」


 ハイセは、無意識のうちに立ち上がっていた。


「ハイセ。一人でやるという考えは構わん。だが……これは王としての命令だ。クラン『セイクリッド』と協力し、SSS級のダンジョン、『破滅のグレイブヤード』を攻略せよ」

「……わかりました。でも」

「仲間ではない、同行者として……だろう? それと、お前にはもう一つだけ、頼みがある」

「え?」


 ハイセは『王の頼み』を聞き、了承した。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今回の件は無かったことにする、ってどの口が言ってんの?人間性疑う。 ハイセも言い返さんし腑抜けになってる。 [一言] どこまでこの主人公達を嫌いにさせたら気が済むのか…
[良い点] サーシャの微笑は合同依頼が理由かな、どんなやり取りが見れるか期待 [一言] パーティは終幕かな?ハイセ君バルガンには一言あったほうが良くない?
[一言] 一緒にダンジョンを攻略か……面白くなりそう。
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