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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第六章 金剛の拳ヒジリ

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金剛の拳⑧

 サーシャは立ち上がり、口から血をペッと吐き出した。

 口を拭い、乱れた髪をかき上げる。

 綺麗な銀色の髪が光に照らされ、キラキラと輝いた。さらに、全身を包む黄金の光がこれまでにないほどの輝きを見せる。


「───ふふっ」


 サーシャは笑った。

 決して、ヒジリを舐めていたわけではない。

 でも、言うしかなかった。


「初めて……本気を出せそうだ」

「本気って……アンタ、アタシを舐めてる? 最初から本気で来なさいよ。こっちはマジなんだからさ」

「そうか。では、教えてやる。私の戦闘スタイルは、『仲間との連携を前提とした』戦い方なんだ。レイノルドが守り、ロビンが援護し、タイクーンが補助し、ピアソラが癒す……そして、私が戦う。これが私の戦い方」

「ふーん」


 ヒジリは興味がないのか、再び拳を握り構える。

 サーシャは剣をヒジリに向け、これまでと違う構えをする。

 身体を低くし、身体を捻り剣を真横に構える。

 レイノルドが言う。


「な、なんだ……? いつもと違うぞ」

「……キミたちも見たことがないのか?」


 クレスがレイノルドに聞くが、答えたのはタイクーン。


「ボクたちチーム『セイクリッド』は、状況に応じていくつもの戦闘パターンを用意している。それぞれの役目はもちろん、技の種類、戦闘位置、最初の手番と、それぞれの『役目』に応じた戦闘スタイルがあるが……ボクが知る限り、あんな構えは見たことがない」

「あ、あたしも知らない……」

「ろ、ロビンもですか? ピアソラは?」

「知りませんわ……」


 ミュアネの確認に、ロビンとピアソラは首を振る。

 なんとなく言い辛い。だが、タイクーンは言った。


「なんというか、その……サーシャらしくない、『雑』な構えに見える」


 ◇◇◇◇◇


 ハイセだけが、気付いていた。


「あの構え……」

「知ってるの?」

「ああ。あれは、ガイストさんに弟子入りする前。我流で剣を覚え始めたサーシャがよくやってた構えだ。レイノルドが仲間になる前、ガイストさんに矯正されたはずだけど」


 ハイセも驚いているのか、プレセアの問いに素直に答えた。

 

「どうやら……戻ったみたいだな」

「え?」

「……そういや、俺とガイストさんしか知らないのか。暴れん坊だった頃のサーシャを」

「……???」


 プレセアが首を傾げる。

 少し離れた場所にいるガイストを見ると、頭を抱えて苦笑していた。


 ◇◇◇◇◇


「行くぞ」

「ふふん、来なさ───」


 ヒジリが答えた瞬間、サーシャの立つ地面が爆発した。

 ギョッとするヒジリ。サーシャは地面を踏み砕き、砕けた地面に向けて剣を振り、風圧だけでフッ飛ばしてきたのである。

 地面、というか大地の塊が飛んで来る。

 直径十メートルはあるだろうか。砕くこともできたが、ヒジリは真横に飛んで躱す。今はサーシャを見失う方が高リスクと判断した。

 が───サーシャがいない。


「嘘ぉ!?」


 いた。

 吹っ飛ばした地面に剣を突き刺し、土の壁にピッタリくっついていた。

 てっきり、目隠しかと思ったヒジリ。

 サーシャは黄金を纏い、大地の塊をヒジリに向けて叩き砕き、破片を飛ばす。


「舐めんなぁ!! ドララララララララァァァァッ!!」


 両拳によるラッシュで破片を砕く。

 ヒジリのラッシュもまた暴風を巻き起こし、大地が砕けたことで発生した土煙も吹き飛ばす。

 サーシャは……いた。真正面からヒジリに向かって飛んできた。

 このまま接近し、連続攻撃を繰り出すつもりだろう。


「もう一回ブッ飛ば」


 次の瞬間、サーシャは剣を投げた(・・・・・)

 ヒジリに向かって真っすぐ、剣士の命である剣を迷わず投げた。


「───ッ!?」


 剣を手放すとは思わなかった。

 黄金を纏った『虹聖剣ナナツサヤ』を素手で弾こうと考えたが、濃密すぎる黄金を纏った剣を、生身のヒジリは止められないと判断。

 叩き落すのではなく、必要最小限の動きで回避。

 腹部を狙っていたので、攻撃を中断して身体を横にして剣を躱した。


「お返しだ」

「な……ッ!?」


 なぜ、サーシャが超接近してヒジリの真横にいるのだろうか。

 ヒジリが剣を回避した瞬間、黄金の闘気が『1000』の出力で全身を包み込み、これまでにない強化をしてヒジリの懐に潜り込んだ。

 放たれるのは、サーシャの拳。

 サーシャの拳が、ヒジリの腹にめり込み───ヒジリは吐血し、吹っ飛ばされた。


「ぶ、っぐぇぁ!! げほっ、ゲホッ……!!」

「一発だ。ふふ、ソードマスターの拳も効くだろう?」

「や、っばぁ……おっもぉ、ばぁ、っちゃん並みぃ……く、ふふふっ」


 ヒジリは立ち上がり、口から血をペッと吐いて腹をさすり、首をコキコキ鳴らし、深呼吸。

 サーシャは黄金の闘気を紐上にして伸ばし、鞭のように振って剣を掴んで回収した。剣士らしくない、下品な闘気の使い方だと、サーシャはやらなかった技の一つだ。


「クッソ楽しくなってきた!! サーシャ、やるじゃん!!」

「まだまだここからだぞ? ようやく、身体が温まってきた」

「そうね。ここからね!! くふふっ……ひっさしぶりに使わせてもらうわ!!」


 ヒジリが五指を開き、両手を開くと───大地の土、石などが砕け、ヒジリの腕や足にくっついた。

 そして、土が固まり、石の材質が変わり……鋼の籠手、鋼の具足となる。


「久しぶりに、アタシも能力使うわ」


 能力、『メタルマスター』

 マスター系能力の一つにして、『あらゆる金属を精製可能』という能力。

 鉄、鋼、銅、ミスリル、オリハルコン、ダマスカスと、この世にはいくつもの金属素材が存在する。ヒジリは土や石さえあれば、その素材を作り出すことができる能力を持つ。

 ヒジリは主に、籠手や具足などの『武器』を精製し、身に纏っていた。


「おばあちゃんの『ウィングー流八極拳』と、アタシの『メタルマスター』を組み合わせた、アタシだけの技……S級冒険者『金剛の拳(ヘラクレス)』ヒジリの超全力、見せてやるわ!!」

「面白い!! さぁ、戦おう!!」


 ヒジリとサーシャの戦いは、最終局面へと入った。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
この世界にも八極が…10年早いが聞けるか?
[良い点] 勝つためにということで、また『枷』を外せたとこ 戦い方の『品格』は上に立つには必要だけど、そもそも『品格』気にしない強敵とソロでだもの。
[気になる点] メタルマスターがチート過ぎる…ていうかこれこそ名前通りの「錬金術」だな これならいくらでも金儲け出来ちゃうけど、ハイセの武器と一緒で手放せば消えちゃうのかな? [一言] サーシャは野生…
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