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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第六章 金剛の拳ヒジリ

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金剛の拳⑦

 ハイセ、ガイスト、アポロンの三人は、向かい合うサーシャとヒジリの元へ。


「双方、準備はできているようだな」

「当然!!」

「はい、ガイストさん」

「ンフフゥン。イキのいい女の子たちネェ♪ ん~可愛い、あたしにもこんな時があったわねぇ~」


 腰をクネクネさせるアポロン。

 微妙に距離を置くハイセは、サーシャとヒジリを交互に見た。

 すると、ヒジリがハイセに向け拳を向ける。


「次、アンタだから」

「……余裕かましてないで、ちゃんと前見ろよ。」


 サーシャの眼が、深く、冷たく沈んでいく。

 ヒジリも気付き、サーシャに向き直る。

 ガイストはコホンと咳払いをし、二人に言う。


「これより、決闘を始める。立会人は私、ハイセ、アポロンの三名。お前たちのどちらかが敗北を認めるか、我々のうち二名が戦闘不能と判断した場合、そして我々が止める前にどちらかが死亡した場合、残った方が勝者となる。それと、決闘の邪魔は我々が絶対にさせん……安心して、全力を出せ」

「ウフフン。邪魔するコがいたら、あたしが優しく抱きしめちゃうから安心してネ!!」


 ギチギチミチミチ……と、アポロンの右腕の力瘤が膨れ上がり、袖が破裂してギチギチの二の腕があらわになった。

 アポロンは「キャッ、いやん!!」と腕を隠すと、どういうわけか服が一瞬で修復される。あの腕でシメ上げられたら脱出は不可能だろう。

 サーシャとヒジリは頷き、互いに距離を取った。

 ガイストは、ハイセに言う。


「ハイセ、開始の合図を」

「……俺がですか?」

「ああ。それくらいはいいだろう?」

「まあ……わかりました」


 ガイストたちは下がり、サーシャとヒジリの間に立つハイセ。


「二人とも、始めるぞ」


 ハイセが右手を掲げると、その手に握られたのは『単発式号砲(スターターピストル)』。

 ヒジリが右手を前に、左手を自分の胸の前に構える。

 サーシャは剣を抜き、顔の横にまで持っていき、柄尻に手を添えた。


「それでは───……始め」


 ハイセが『単発式号砲(スターターピストル)』の引金を引くと、破裂音がした。


 ◇◇◇◇◇


 ハイセがピストルを鳴らすと同時に、サーシャとヒジリは飛び出した。

 サーシャは黄金を纏い、ヒジリはそのまま。

 だが、ハイセにはわかった。


「マジか、サーシャと互角!?」


 少し離れた場所でレイノルドが叫ぶ。

 レイノルドだけじゃない。ピアソラも、ロビンも、タイクーンも驚愕していた。

 ガイストは「ほう」と呟いた。


「ドラァ!!」


 右のショートアッパー。

 だが、サーシャは顔を少し傾けただけで躱す。そして、ほんの少しだけ下がり横薙ぎ───……だが、ヒジリは剣の刃にそっと触れ、真上に押し上げて軌道を変えた。


「ッ!?」

「ドララララララララァァァァッ!!」

「───ッチ」


 ヒジリの右拳だけで放たれる高速のラッシュ。超接近しての攻撃をサーシャは躱せない。

 だが、サーシャの黄金が腹部に全集中し、ヒジリの拳を防御した。

 そして、互いに距離が離れる。


「かったぁ……そのキラキラ、なに?」

「驚いたな。私の『闘気壁』を三層まで破るとは……」

「アンタの剣も速いじゃん。アタシの『刃流し』で受け流せないかと焦ったわ」

「ふん……では、行くぞ!!」

 

 サーシャは、黄金を両足に集中し、噴射させる。

 これにはハイセも驚いた。


「……あの黄金の光、あんなこともできるようになったのか」


 サーシャの新技、『闘気流動(とうきりゅうどう)』である。

 サーシャは、黄金の闘気を全身に纏い、身体能力を強化したり、剣に乗せて放つ攻撃を得意としていた。が……これは燃費が悪く、全力でも十分ほどしか戦えない。

 そこで、サーシャは闘気を全身ではなく、身体の一部だけに集中させて使う術を鍛えた。

 何度か部分強化はしたことがある。全身強化より部分強化の方が疲労も少ないことに気付き、技術を磨いたのである。

 今、サーシャは腹筋に闘気を腹に『80』集中させ、残りの『20』を全身に回した。


「黄金剣、『光連刃』!!」

「!!」


 一瞬だけ、全身を『100』で覆い全力の連続斬り。

 ヒジリはバックステップで刃を躱し、両手で叩き落す───……が、躱し切れず一撃、頬をスパッと切られ血が噴き出した。


「まだまだ!!」

「くっ……!?」


 脚力に『70』、『20』を全身に、残りの『10』で腕を強化。

 一瞬でヒジリの間合いに入り、剣を振るう。

 速すぎる───これを見たピアソラは歓喜の笑みを浮かべた。


「すごい!! やっぱりサーシャは無敵ィィィィィィィィィ!!」

「…………なんて子だ」

「……クレス、気付いたか」

「ふふふ、そこの男ども、サーシャの凄さにようやく───」

「「違う」」


 と、レイノルドとクレスは同時に言う。

 ピアソラはムッとする。

 タイクーンは眼鏡をクイッと上げ、ロビンとミュアネは首を傾げた。


「気付かないのか?」

「な、何をですか? そ、そうやって知ったようなことを」

「……やれやれ」


 タイクーンは心底呆れていた。

 こうして会話している今も、サーシャの猛攻は続いている。


 ◇◇◇◇◇


「……大したものだ」

「そうねぇ~」


 ガイストとアポロンは、すでに気付いていた。

 ガイストは感心したように言う。


「確かにサーシャの攻撃は凄まじい。『ソードマスター』の能力の一つである『闘気(オーラ)』の使い方もかなり上達した。部分強化……クロスファルドがあの領域に到達したのは、三十代後半だったはず。才能だけじゃない、相当な努力もあっただろうな」

「でもでもぉ~……ヒジリちゃんよねぇ?」

「ああ」


 ガイストは、心底感心したように微笑んでいた。


 ◇◇◇◇◇


「すごいな……」


 ハイセは、ガイストたちやレイノルドたちから離れた場所で、一人呟いた。


「何がすごいの?」

「見てわからないのか? ───って、お前!?」


 ハイセの隣には、なぜかプレセアがいた。

 こっそり付いてきたのだろうか。悪びれもせずにいた。

 ハイセはため息を吐く。


「もういいか……ったく、お前、その消えたりする力、悪用してるんじゃないだろうな」

「するわけないでしょ。で……何がすごいの?」

「見て気付かないか?」

「……?」


 サーシャの猛攻をヒジリは受け、躱し、叩き落す。

 少しずつ、サーシャの顔色が悪くなっていくのがわかった。

 ハイセは言う。


「全身強化したサーシャとヒジリは互角なんだ。わかっただろ? ヒジリは、何の強化も施していない、純粋な身体能力だけで、黄金の闘気を纏うサーシャと互角なんだよ。それに……見ろ、あいつの眼、サーシャの攻撃を眼で追って躱し……反撃の機会を探ってる」


 プレセアも気付いた。

 剣を紙一重で躱し、ニヤリと笑うヒジリの顔を。


「───見えてきた」

「くっ……」


 そして、ヒジリはやや乱れてきたサーシャの振り下ろしを拳で弾き、ガラ空きになった腹にそっと手を添えた。


「───えっ」

「すっごく痛いから」


 添えた手がサーシャの腹から少し離れた瞬間、猛烈な衝撃がサーシャの全身を貫いた。

 見えたのは、ヒジリが踏み込んだ瞬間、踏み込んだ地面に亀裂が入ったこと。

 食らったのは掌底。衝撃が背中を突き抜け、サーシャは吹っ飛ばされた。


「っが───……」


 地面を転がり、すぐに態勢を立てて立ち上がるが……猛烈な嘔吐感に襲われ吐いた。

 吐瀉物ではない。吐き出されたのは真っ赤な血。

 胃が損傷し、出血したのだ。

 地獄の苦しみに涙が出そうになるが、サーシャは堪えた。

 ヒジリは掌底を構えたままだ。


「サーシャ!!」

「落ち着けピアソラ。今、サーシャに近づいたら反則負けだぞ!!」

「で、でも……」


 レイノルドがピアソラの肩を掴む。

 レイノルドも辛そうだが、サーシャを見て言う。


「それに見ろ。サーシャは───諦めてないぞ」

「……サーシャ」


 サーシャは立ちあ上り、口元の血をぬぐった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[良い点] サーシャ、ハイセの前での無様な負けは許せないよね〜 渾身の一撃を期待! [一言] 決闘終了後、〆にハイセの一発芸を是非
[良い点] 面白い!どうなるのか、わくわくする! [気になる点] ハイセが決闘する展開はあるのか? サーシャってソロだと、どのレートまで狩れるんだろ? サーシャとヒジリの攻防シーン、ピアソラはともかく…
[気になる点] 内臓は鍛えようがないからねぇ この章、vsハイセがあるならサーシャは負ける展開なんだろうけど、それじゃありきたりだしなぁ どう決着つけるのかな? [一言] プレセア(実は夜な夜なハイ…
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