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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第六章 金剛の拳ヒジリ

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金剛の拳⑤

 ヒジリは、再びクラン『セイクリッド』に来た。

 渋々とクランに来て、要件を伝え、応接間へ。

 数分と待たず、チーム『セイクリッド』の五人が応接間に集まった。

 

「待たせたようだな」

「ん、別に」


 ピアソラの額に小さな青筋が浮かぶが、ロビンが袖をクイクイ引いて抑えた。

 サーシャはヒジリと向かい合い座る。相変わらず対照的な座り方だ。

 姿勢のいいサーシャ、足を崩しつまらなそうなヒジリ。


「あのさ、ハイセが言うのよ。『俺と戦いたければ、サーシャを倒せ』って」

「あ? あのガキ……サーシャを当て馬に「静かに!」


 ピアソラがキレそうになるが、ロビンが押さえた。

 これには、レイノルドも面白くなさそうだ……そもそも、この場にいる全員が、ハイセがそんな風に言ったことを、初めて聞いたのである。

 何も知らなければ『ハイセはヒジリの相手が面倒だからサーシャに押し付けた』ようにしか見えない。

 だが、サーシャは怒りもせず、無表情だった。


「それで、要件は?」

「もちろん、アンタを倒す。悪いけど、今度は逃がさないわよ。アタシ、ハイセに夢中なのよ。アンタなんか相手にしてる暇ないくらいね」

「そうか」

「アンタのことだし、アタシから逃げるような言い訳いっぱい用意してると思うけど───……」


 次の瞬間、サーシャは一瞬でアイテムボックスから『虹聖剣ナナツサヤ』を抜き、ヒジリの眼前に突きつけた。

 これには、ヒジリだけではない。レイノルドも、タイクーンも、ピアソラも、ロビンも驚いていた。

 まさかサーシャが、こんな風に喧嘩を……いや、宣戦布告とも取れることをするなんて思いもしなかった。

 同時に、サーシャの身体が黄金に包まれる。


「───お上品でつまんないお姫様かと思ったけど」

「おや……最初に出た言葉が、そんな『お上品』な言葉とは。少しガッカリしたぞ。獣のように飛び掛かってくるかと思ったが」

「ささ、サーシャ!? ちょ、ど、どうしたの!?」


 慌ててロビンが止める。

 サーシャは剣を下ろし、ロビンに向かってニッコリ笑った。


「なに、少し吐き出したらスッキリしてな。私は私らしくしようと決めただけだ」

「え……」

「クランのために、クランマスターとしての私が『私』になりかけていたが……本当の私は、喧嘩を売られれば怒るし、お腹が減ったらたくさん食べたいし、お風呂には二時間ゆっくり浸かりたいし、少し甘めのお酒を飲みながらキャンディを舐めたい。そんな私も私なんだ」

「さ、サーシャ……?」

「すまなかったな。みんな。私は最近、余裕を無くしていたようだ。クランマスターとして正しくあろうとしすぎて、いろいろ限界だった」


 サーシャは、「ふぅー……」とため息を吐く。

 四人は意味がよくわからず「???」と首を傾げた。が……レイノルドは苦笑した。


「なんかよくわかんねーけど、いい顔するじゃねーか。まるで……」


 と、そこまで言い首を振った。

 そして、タイクーンは。


「意味が理解できん。だが一つ忠告する。冒険者同士の『私闘』は禁止されているが、正式な手順を踏んだ『決闘』なら認められている。手続きをするならボクがやっておこう」


 ピアソラはガタガタ震えていた。


「か、か、か、カッコいい……あぁぁん!! やっぱり私、サーシャ以外考えられない!!」


 未だにポカンとしているヒジリはようやく立ち直り、サーシャをジッと見た。


「……ふふん。いい顔になってんじゃん。サーシャ、これまでの非礼を詫びるわ。改めて、アンタに決闘を挑む。依頼とかじゃない、両者合一による冒険者同士の決闘よ」

「受けよう」


 サーシャは即答する。

 冒険者同士の私闘は禁止されている。だがヒジリは『依頼』という形で自分に賞金を懸け、冒険者に襲わせ無理やり戦った。これしか冒険者と戦う手はないと思われた。

 が、正式な手順を踏めば、『決闘』が可能である。

 その手順はいろいろ面倒だ。ギルドマスターによる承認が必要であり、S級冒険者同士ならハイベルグ王家の承認も必要である。

 戦闘場所、立会人、細かなルールなども決められ、初めて戦える。

 タイクーンは、ヒジリに言う。


「手続きはこちらでやっておく。ルールに関して、決闘者同士が一つずつ好きなルールを制定できる。S級冒険者ヒジリ、キミが追加するルールは?」

「手は抜かないこと」

「……了解した。サーシャ、キミは?」

「手加減しないこと」

「……はぁ~、了解した」


 タイクーンは、いつの間にか手にしていた羊皮紙にルールを書く。

 小声で「もしかしたら似た者同士かもな……」と呟くと、サーシャとヒジリが同時にタイクーンを睨み、さすがのタイクーンも誤魔化すように咳払いをする。


「決闘、楽しみにしてるわ」

「ああ。本気でやらせてもらおう」


 こうして、サーシャとヒジリの決闘が行われることになった。


 ◇◇◇◇◇


 S級冒険者『金剛の拳(ヘラクレス)』ヒジリ対S級冒険者『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』サーシャ。

 決闘は、ハイベルグ王国北東の『見晴らしの荒野』にて。

 立会い人はS級冒険者『闇の化身(ダークストーカー)』ハイセ。同じくS級冒険者『武の極(コンバット)』ガイスト。同じくS級冒険者『万能薬(パナケイア)』アポロン。

 ルールは『どちらかが戦闘不能になるまで』であり、立会い人三名のうち二名が続行不能と判断した場合か、どちらかの敗北宣言にて終了とする。

 決闘において命を奪われた場合、報復は禁ずる。

 第三者の介入があった場合、立会い人の権限において如何なる者だろうと排除してよし。


 ◇◇◇◇◇


「…………あの、これ」

「諦めろ。そもそも、お前がヒジリを炊きつけたのが原因だ」


 ハイセは、ギルマス部屋にて『決闘の概要』をガイストに渡され読んだ。

 いつの間にか、立会い人に指名されていた。


「そこには書かれていないが、チーム『セイクリッド』のメンバーと、ハイベルグ王族も立ち会うことになっている」

「王族も?」

「ああ。そもそも、決闘を許可したのは王族だ。S級冒険者という強大な戦力同志を戦わせる許可なんて、ギルドだけで出せるはずもなかろう」

「…………」

「ちなみに、他言無用だ。このことが知られれば、野次馬がわんさと集まるからな」

「あの、決闘の日時は?」

「明日の早朝だ。ギルドの馬車でそれぞれ送迎する」

「なるほど。あれ? このS級冒険者『万能薬(パナケイア)』ってのは?」

「ハイベルグ王国最高の治癒師だ。クラン『アスクレピオス』のクランマスターであり、ワシやバルバロス……あー、国王陛下の古き友人だ」

「へぇ……」

「とにかく、明日は遅刻するなよ」

「はーい。じゃあ、今日は依頼を受けないで帰ろうかな」


 そう言い、ハイセは部屋を出ようとした。


「ハイセ」

「はい?」

「……なぜ、お前はヒジリを焚き付けた? しかも、自分ではなく、サーシャを狙うように言った?」

「…………じゃ、また明日」


 ハイセは答えず、部屋を出た。

 そして、扉の前で小さくため息を吐く。


「…………言えないだろ」


 サーシャを馬鹿にされたから。

 サーシャの凄さを、ヒジリは知らないから。

 だから、自分で戦うよりサーシャが戦った方がいい。そう思ったから……そんなこと、ガイストにもサーシャにも言えるはずがなかった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] サーシャは吹っ切れた結果、独善に拍車がかかったな 英雄ってのは得てして独善的なので別に悪いもんじゃないけど ヒジリだって独善だしな ハイセは独善的にやりたいけど生来の人の良さが邪魔してると…
[良い点] サーシャが色々吹っ切れたみたいね [気になる点] 三日後と言った直後に明日って意味分からん [一言] これでサーシャの評判は上がり、ハイセは下がる。なんかハイセってサーシャの引き立て役みた…
[気になる点] 三日後なのに「明日は遅刻するなよ」になってますね。 [一言] プレセアちゃんは、元王族権限で観にきたりできるかな? 邪魔者の排除がハイセの役割かも知れないけど、 脳筋コンビの楽しい喧…
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