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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第六章 金剛の拳ヒジリ

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プレセアとタイクーン

 ハイセは、射撃訓練を終え、王都に向かって歩いていた。

 途中、大量の資材を運ぶ馬車と何度かすれ違った。そして、馬車が向かう先を見る。


「そういや、サーシャのクラン……あっちに新しい本部ができるんだっけ」


 クラン『セイクリッド』は、新たなスタートを切ろうとしている。

 だが、ハイセは変わらない。

 『天爵』という爵位を得たからと言っても、特に生活は変わらない。あのボロ宿で朝食を食べ、ギルドで依頼を眺めて面白そうなのがあれば受け、依頼を終えてミイナと雑談したり、ガイストと酒を飲んだり、ヘルミネのバーで一人飲んだり、たまにプレセアと飲んだり……と、禁忌六迷宮を攻略して、ようやく日常が戻った。

 ガイストに依頼し、残りの禁忌六迷宮の場所を捜索はしている。

 情報があれば向かう予定だが、今は何もない。


「ふぁぁ……ちょっと早いけど、バーで少し飲もうかな」


 ハイセは、ヘルミネのバーへ向かうことに決めた。

 王都の正門に到着すると、プレセアがいた。


「ハイセ」

「お前……何してるんだ?」

「依頼が終わって、少しブラブラしてただけ。ね、少し早いけどお酒でも飲まない?」

「ん……いいけど」

「じゃ、ヘルミネのところね」


 そう言い、ハイセの隣に移動するプレセア。

 まぁいいかと思いつつ、ハイセはプレセアと歩き出した。

 すると……何とも珍しい人物と出会った。


「あれ、タイクーン」

「む? おお、ハイセ。ちょうどいい、少し話をしよう。お前は以前、ボクが持っていた本の表紙だけを見て『古代文字』を読んだな? そのことについて聞きたい。ああ、情報料は出そう。場所はどうする? クランにあるボクの部屋でいいか?」

「ま、まてまて落ち着け。待て、待て……待て」

「ボクは犬じゃないぞ」

「犬じゃない。あなた、尻尾振ってる。ハイセのこと追放した一味のくせに」

「……それは否定しない。だがな」

「待てっての。とにかく、こんな往来でする話じゃないだろ。サーシャは当然だけど、『セイクリッド』のメンバーは全員、有名人なんだから」


 ハイセがそう言うと、タイクーンが「むぅ」と唸る。

 プレセアは、ハイセの腕に抱きついて言う。


「無視して行きましょう」

「待て、どこに行く」

「ちょっとバーへ」

「なら、ボクも同行しよう」

「イヤよ」

「で、どこだ?」


 タイクーンは、着いてくる気満々だった……仕方なく、ハイセとプレセアはタイクーンを連れ、ヘルミネのバーに向かうのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


「あら、今日はお友達もいるのね」

「違うわ。犬よ」

「意味が解らんな。ハイセ、このエルフは何なんだ?」

「…………」


 プレセアとタイクーン。

 はっきり言って、相性は最悪かもしれない。

 ハイセは無視し、カウンターに座る。すると、ハイセの右にプレセア、左にタイクーンが座った。

 

「ヘルミネ、甘いの」

「ええ。いつものでいい?」

「ん、ハイセにも」

「お兄さん、あなたは?」

「任せる。ではハイセ、さっそくだが」

「待てっての。俺が注文してない。そうだな……酒よりも、メシが食いたいな。マスター、サンドイッチを。酒は軽いので」

「ええ、わかったわ」


 ヘルミネが準備をしている間、タイクーンはアイテムボックスから本を出す。

 どれも、イセカイの言葉で書かれた本だ。

 ノブナガの本を読んでいるハイセは、今ではほぼ全ての文字を読めるようになっていた。


「ね、あなた。ハイセのこと追放したチームよね。どうして馴れ馴れしくハイセに話しかけるの?」


 悪意はゼロな言い方だ。

 プレセアは、ハイセがチーム『セイクリッド』を追放された理由を知っている。だが、あえてタイクーンの口から、ハイセのいる前で聴きたかった。

 ヘルミネは、プレセアの前に数種類の果実を絞り、ブランデーで割ったカクテルを出す。

 タイクーンの前には、鮮やかな琥珀色のブランデーがロックで出された。

 当然、二人は乾杯などしない。


「ハイセを追放したのは、サーシャの優しさだ。当時のハイセは『能力』を理解できていなかったからな。はっきり言って足手まとい。強くなり続けている『セイクリッド』でやっていくには実力不足。命の危険もあった。だが……正直にそのことを伝えて引くハイセではないと知っていたから、あえて突き放すような言い方をしたんだ。絶望し、諦めれば、故郷に帰ると思ってな」


 淡々と言うタイクーン。

 ハイセは何も言わず、出されたサンドイッチに手を伸ばした。


「だが、ハイセ。お前は諦めなかったな。だからサーシャは、お前の助けになるようにと、あの沼地の場所を教えたんだ。もう聞き飽きたと思うが、あれは完全な事故だ……決して、お前を陥れようなどと」

「もうわかってるよ。お前たちに……サーシャに、そんなつもりがないのは」

「……そうか」


 だが……死にかけたハイセ。

 その後、謝罪もせずにいなくなったことは、まだ許していない。

 起きた時、サーシャはすでにいなかった……それだけは、まだ。

 サンドイッチを完食し、出されたフルーツドリンクを飲む。

 ようやく本題!! と言わんばかりにタイクーンが本を置く。


「さっそくだが、この文字を教えてくれ!! 古代の文字……少しは理解できるようになったが、まだわからないのが大多数だ。ハイセ、どうしてキミはこの文字を知ることができたのかも教えて欲しい。ああ、もちろんタダじゃない。一文字につき金貨一枚支払おう。キミはボクを陥れるような人間じゃないことはわかっている。虚偽の文字を教えるという心配はしていない。ではさっそくだが」

「ま、待て待て。落ち着け!!」


 グイグイ迫るタイクーン。

 ふと、ハイセは懐かしさを感じていた。昔、タイクーンは気になることや興味を持ったものに関し、こうやってグイグイ迫って来ることがあった。

 すると、タイクーンのローブがグイッと引かれ、「ぐげっ」と変な声を出す。


「ここ、バーよ。食事とお酒を楽しむ場所」


 プレセアが『精霊』に命じ、タイクーンの襟を引っ張ったのだ。

 タイクーンはプレセアをジロっと睨む。


「ここはバーだ。酒と食事、会話を楽しむ場でもある。一人で飲むなら向こうに行ってくれないか」

「嫌よ。もともと私はハイセと飲むつもりだったの。あなたが割り込んで来たんじゃない」


 険悪な二人。

 プレセアは、ほんの少しの間だけ、チーム『セイクリッド』で過ごしたが……タイクーンとピアソラは苦手。というか嫌いだった。

 タイクーンも、プレセアのことを「妙なエルフ」としか思っていない。

 だが、互いに「ハイセとの時間」を邪魔する敵同士とは思っているようだ。


「ハイセ、フルーツドリンクだけじゃなくて、お酒も飲もう」

「待て。酒もいいがこっちの古文書を読むのが先だ。酔ったら正常な判断ができなくなる可能性がある」

「そんなの関係ないわ」

「関係ある。というか何だ貴様は、一人で飲んでいればいいだろう」

「それ、こっちのセリフ」

「…………」


 両側からの言い合う声に、ヘルミネはクスっと笑い、ハイセはうんざりするのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] このエピソードのタイクーンの台詞 「ハイセを追放したのは、サーシャの優しさだ。当時のハイセは『能力』を理解できていなかったからな。はっきり言って足手まとい。強くなり続けている『セイクリッド』…
[一言] サーシャもレイノルドもハイセの為に追放したっていってたけど、追放する側が恩着せがましく言うことじゃないよね? あえて突き放すような言い方をしたっていうなら墓までもっていくべきでしょ・・・ ハ…
[気になる点] ハイセが死ななかったのは能力が目覚めたからで普通なら死んでる…なのに「事故だった」の一言で済ませたのは人格を疑う。一言謝罪があればまた印象も良くなるのに…
2023/07/06 10:09 退会済み
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