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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第六章 金剛の拳ヒジリ

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変わる世界

 サーシャは、久しぶりに戻ったクランホームの空気を胸いっぱいに吸った。

 つい先ほど、パレードが終わり、王城で国王やクレス、ミュアネに挨拶し、再び城下町を練り歩いて戻ってきたのだ。

 さすがに、サーシャは疲れていた。


「はぁ……疲れるな」

「あたしも~……」

「私もですわ……」

「オレも……」

「さて、今日は解散だな。よし!! 禁忌六迷宮での情報をまとめなければ。ククククク、しばらく忙しくなるな!! サーシャ、明日はギルドだな? ボクは明日の朝まで部屋に籠るから、行くときになったら呼んでくれ!! ではな!!」


 タイクーンがやたら元気だった。

 ダッシュで自室に戻り、クランの仲間たちが驚いている。

 すると、『四大クラン』の一つ、『神聖大樹』のクランマスター、アイビスが階段から降りて来た。


「久しいの、サーシャ」

「アイビス様……!! この度は、留守をお任せして」

「あーあーそういうのはいい。若々しいクランを運営するのも懐かしくて楽しかった。で……ついにやったのじゃな?」

「はい……禁忌六迷宮の一つ、ディロロマンズ大塩湖を踏破しました」

「うんうん。お前といい、ハイセといい、今の若いのは本当に楽しませてくれる。もう、私も隠居しようかねぇ?」

「……え? ハイセ?」

「む、そういえば誰も知らなんだか。つい先ほど、ハイセも帰って来たぞ」

「ッ!!」


 サーシャは目を見開いて驚いた。

 サーシャだけじゃない。レイノルドも、ピアソラも、ロビンも驚いている。


「パレードの最中に戻って来たようじゃ。そのまま自分の宿に帰り、今はグースカ寝ておるよ」

「じゃ、じゃあ」

「うむ。まだこちらに情報は届いておらんようじゃが……デルマドロームの大迷宮も踏破された。ハイセは、たった一人でやり遂げたようじゃ」

「……っ、そう、ですか」


 サーシャは、今にも泣きそうな顔をして胸を押さえた。

 レイノルドは苦笑し、ピアソラは「フン」とつまらなそうにそっぽ向き、ロビンは「ハイセ……」と呟いて両手を合わせる。


「ま、私からギルドに報告しておこう。全く……禁忌六迷宮を踏破したというのに、ハイセの奴め……ディザーラ王国からさっさと帰ってくるとはな」


 ちなみに、シャンテが泣きながら事後処理をしているようだ。

 ただ、ヤマタノオロチの素材の換金額だけで、ディザーラ冒険者ギルドの七十年分の運営資金になったと大喜び。ギルドの大規模な建て直しもするらしい。


「ま、明日にでもギルドで会えるだろうな。さてサーシャ……忙しくなるぞ」

「え?」

「お前がここに戻るまでの間に、クラン加入希望が五百を超えた。いやはや、大変じゃの」

「ご、五百……」

「手は抜くなよ? いいかサーシャ……クラン加入したいという冒険者チームは、クランの宝だ。私は、クラン経営が忙しく、数年はまともな冒険ができなかった。だがサーシャ、お前は冒険やダンジョンでこそ輝く。だからこそ何度も言う。手を抜かず、しっかりクランを運営しろよ」

「アイビス様……」

「しばらくは忙しくなる。うちの事務員を貸してやろう。それと、三日後に王城でパーティーがある。しっかりめかしこんでくるように」


 そう言い、アイビスは出て行った。

 レイノルドは言う。


「ハイセのやつも踏破したのか……」

「フン。気に入りませんわね」

「まぁまぁ。アイビス様、ギルドに報告するんだよね? じゃあ、明日にでもハイセのこと、国中に伝わるんじゃない?」


 ロビンの言った通りになった。

 S級冒険者『闇の化身(ダークストーカー)』ハイセが、禁忌六迷宮の一つ『デルマドロームの大迷宮』を踏破した。そのニュースは号外となり、国中が知ることになる。

 

 ◇◇◇◇◇◇


「ハイセ。お前……ディザーラ王国への報告、すっぽかしたな?」


 冒険者ギルド。

 入るなり、新人受付嬢が大騒ぎ。ギルド内がハイセに注目し始めた頃、ガイストが現れギルマス部屋へ。

 

「ガイストさん、久しぶりなのに、会うなりそれですか……」

「よくやった、と褒めてやりたいがな。ハイセ……ディザーラ王国が、禁忌六迷宮を踏破した冒険者として、お前をパーティーに招待したいそうだ」

「パスで」

「そう言うと思った。一応、ディザーラギルドのシャンテが「負傷により故郷のハイベルク王国へ帰った」と言い訳したようだがな」

「ええ……なにその言い訳」

「それと、『巌窟王』のクランマスターも、お前がサボったフォローをしたようだぞ? というか……普通はあり得んからな。ディザーラ王国が管理する禁忌六迷宮をクリアした冒険者が、挨拶もせずに翌日に帰るなんて」

「うぐ……」


 久しぶりのガイストの説教は、やはり堪える。

 だが、ガイストは笑って言った。


「だが、よくやったぞハイセ。まさか……一人で、デルマドロームの大迷宮を踏破するとは」

「…………」


 ふと、ハイセの頭をよぎる……カオスゴブリンの男。

 魔獣と組んで踏破した。そう言ってもいいが、面倒になる気がした。

 が……ガイストにだけは、噓をつきたくなかった。


「俺だけじゃないです」

「……なに?」

「もう一人いました。そいつがいなかったら、俺は死んでたかもしれない」

「……仲間、か?」

「いえ。最初は敵でしたけど、勝手にくっついて来ました」

「は?」


 説明が難しいので、ハイセはそれ以上説明しなかった。

 すると、ドアがノックされる。

 入ってきたのは、新人受付嬢……さすがに半年経過しているので新人ではない……だった。

 ちなみに、名前はミイナ。


「失礼します!! ハイセさん、あの金色の魔獣の査定、終わったんですけど……」

「ああ」

「えーっと……その、素材がどれも未知の素材で、金額がとんでもないことになっちゃって……ディザーラ王国にも卸したんですよね? あっちではいくらだったんですか?」

「あっちは寄付したからわからん」

「き、寄付……で、ハイセさんに素材のお金を渡すと、ギルドの金庫が空っぽになっちゃうので……というか、それでも足りないというか」

「あの蛇、そんなに高いのか。全部だと四つあるけど」

「えぇぇぇぇ!?」


 討伐後にヤマタノオロチの生首は六つ残っていた。

 そのうち一つはチョコラテが装備として使い、二つは粉々になったようで、残りの五つはなんとか回収できたのだ。地中貫通爆弾を身体に受け、爆破の衝撃で首が千切れ飛んだ結果だった。

 

「えーと……そういうことなので、ギルドじゃなくてハイベルク王国が買い取ることになりました。あの蛇の鱗で、王様専用の黄金鎧と剣を作るって」

「ま、好きにしてくれ」

「なので、お金はもう少々お待ちください」

「ああ」

「あのー……人生二十回くらい遊んで暮らせるお金になりますけど、使い道は?」

「……特にない」

「じゃあじゃあ、あたしにご飯奢ってくださいよ。今話題のS級冒険者とご飯!! なんかすっごく特別な感じしません? あ、デートですデート」

「ガイストさん、今夜一杯どうです?」

「無視ぃ!? ハイセさん酷い、ひどすぎる!!」

「わ、わかった、わかったから引っ張るなっての」


 ミイナに腕を掴まれグイグイ引かれる。

 ガイストは苦笑していた。

 ハイセはミイナに腕を掴まれたまま言う。


「ガイストさん。今夜一杯ってのは本気ですけど、どうです? こいつと二人とか普通に嫌だし」

「はぃぃぃ? ハイセさんひどい!!」

「ああ、構わんぞ。それとミイナ、玉の輿を狙うならハイセはやめておけ」


 ハイセがジトーッと見ると、ミイナはパッと離れた。

 

「やだなぁ~、そんなわけないじゃないですか」

「ガイストさん、やっぱ二人で行きましょう」

「わーわー!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


 ミイナは、ハイセの腕に掴まりガクガク揺らした。

 すると、ギルマス部屋のドアがノックされる。


「失礼します。ガイストさん、S級冒険者『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』サーシャ、帰還の報告、を……ぁ」

「……よう」


 サーシャだった。

 後ろには、レイノルド、タイクーン、ピアソラ、ロビンがいる。

 ハイセは、腕にミイナがしがみついているという状態で軽く手を上げた。

 サーシャは、ミイナをチラッと見る。


「……随分と、仲がいいようだな」

「そりゃマブダチですから!!」

「うるさい。というか離れろ。仕事に戻れ。消えろ」

「ひどいっ、でも仕事には戻りますー!! ではハイセさん、夜にお会いしましょうっ」


 ミーナはビシッと敬礼して部屋を出た。

 サーシャは、久しぶりに会うハイセを見て言う。


「半年ぶりか。ハイセ」

「ああ」


 すると、ピアソラがニヤニヤしながら言う。


「ふふぅん……で? いきなり女性と夜の約束とは、ずいぶんとお盛んなことねぇ」

「ピアソラ……お前、生きてたんだな。てっきり死んだのかと。お前、弱いし」

「はぁぁぁぁぁ!? テメェ、舐めんじゃ「ピアソラ」……むぅ」

「すまないな。その……お前が生きてて、安心したぞ」

「ああ、ありがとな」


 ハイセは立ち上がる。

 すると、レイノルドと目が合った。


「よう、ハイセ」

「ああ、レイノルド」

「……髪、延びたな」

「一人じゃ切れない。まぁ、そのうち切る」

「そうかい。あー、サーシャ、オレの髪、また任せていいか? ダンジョンの中でやってくれたようにな」

「何? だが、私より散髪屋に任せた方が」

「いい。お前の腕が気に入ってんだよ」

「……まぁ、いいが」

「おう。っと……悪いな、会話の途中に」

「いや……じゃ、ガイストさん、また」


 そう言い、ハイセが部屋を出ようとすると、ロビンがハイセの手を掴んだ。


「ハイセ、待って!!」

「っと……ロビン?」

「あのね、あたしたち、近いうちにパーティー開くの。禁忌六迷宮をクリアしたお祝い!! ね、ハイセも来て!!」

「……は?」

「ハイセも一緒にパーティーやろ!! あたしがお祝いしたいの!!」

「……お前がそうでも、他の連中が嫌がるだろ」


 レイノルド、ピアソラ、そしてタイクーン。

 タイクーンは、手に何かを持っていた。

 

「ん? タイクーン……その本、『コダイ、リョコウキ』?」

「───!? ハイセ、この本が読めるのか!?」

「あ、ああ。読めるけど……」

「……素晴らしい。ハイセ、個人的な想いはあるだろうが、ボクに古代文字を教えてくれないか? どういう経緯で、ハイセが文字を知ったのかも知りたい。ああ、もちろん報酬は支払お「待て待て待て!! ったくもう……落ち着けタイクーン」


 レイノルドが割り込んだ。

 そして、サーシャの隣に立ち、言う。


「悪いなハイセ。これから、ガイストさんに報告がある。席を外してくれないか」

「……わかった」

「あ……」


 サーシャが手を伸ばすが、ハイセは部屋を出てしまった。

 半年ぶり───この時間が、ハイセやサーシャだけではない、レイノルドたちとの関係を、再びギクシャクさせるには十分な時間だった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
ピアソラ、早く退場してくんねーかなー。 読者をこれほどイラつかせるはキャラはそうそういない。
主人公が思ってたより頭悪いな 本は好きでも地頭は悪いのか? ダンジョンで得た情報の数々で防げる災害も有るだろうに
[一言] 「悪いなハイセ。これから、ガイストさんに報告がある。席を外してくれないか」 後から入ってきて、出て行けとはマナーが悪いのでは?
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