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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第五章 デルマドロームの大迷宮とディロロマンズ大塩湖

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冒険者たちの帰還

 ディロロマンズ大塩湖、崩落。

 湖が消え、巨大な『穴』となり数日……極寒の国フリズドの宿屋で、サーシャは新聞を読んでいた。

 その見出しには、『冒険者サーシャ、禁忌六迷宮攻略!!』とある。


 ディロロマンズ大塩湖が崩落する前、サーシャたちは大塩湖の近くにいた。

 筒に入ると浮遊感があり、なぜか地上に戻っていたのだ。

 そして、その足で冒険者ギルドまで戻り、踏破を報告。冒険者たちがディロロマンズ大塩湖が崩落したことを確認し、サーシャが踏破の証として虹色の宝玉を見せ、踏破が認められた。


 サーシャたちが踏破して数日。

 疲労を癒すために宿屋にとどまっていたが、数多くの貴族や冒険者たちが挨拶に来て、サーシャは対応に追われ、ようやくひと段落し、仲間たちのいる宿に戻ってきたのだ。

 そして、新聞を読んでいたサーシャは言う。


「疲れた……」

「大変だろうが我慢してくれ。なんせ、禁忌六迷宮の一つが攻略されたんだ。歴史的快挙だぞ。フリズド王国貴族たち、クランマスターたちが、サーシャと繋がりを持ちたくやってくる」


 タイクーンが得意げに言う。

 現に、クラン加入の申請が、この数日で百件以上あった。サーシャたちがこの宿屋にいるとわかるなり、宿屋の受付に加入希望者が殺到したのである。

 ロビンは、つまらなそうに言う。


「ね、ね。いつハイベルク王国に帰れるの?」

「素材の換金が終わってからだろ。あの虹色の宝玉は一個だけ売りに出したけど、この町のドワーフが見て腰抜かしてたぞ。なんでも、古文書に存在が記されている伝説の石、『虹色奇跡石(セブンスターナイト)』とか言ってる」

「わお、すっごい」

「オレの盾、壊れちまったし、それで新しく作るのもアリだな。サーシャの剣もだろ?」

「ああ。無理が祟ったせいか、折れてしまった……」

「ハイベルク王国で打ち直せばいい。金はたんまり入ってくるからな」


 レイノルドがサーシャの隣に座り、ニカッと笑う。

 タイクーンが言う。


「サーシャ、つい先ほど聞いた話だが……どうやら、ハイベルク王国でボクらの凱旋パレードが開かれるらしい。やれやれ、本当に英雄扱いだ」

「パレード?」

「ああ。禁忌六迷宮の一つをクリアした英雄チームとしてね。四大クランの頂点に立つ、今代最高の冒険者チームとも言われているらしい」

「大袈裟だな……」

「大袈裟じゃありませんわ!! フフフ……ね、サーシャ、覚えてる? 私のお願い、聞いてくれるって話」

「あ、ああ」

「全員で決めましたの。私たちはサーシャにお願いを聞いてもらう。そして、サーシャは私たちに何か好きなお願いをする、って」

「私が……みんなに?」

「ええ。何でも構いませんわ。その前に……私たちのお願い、ちゃんと聞いてくださいね?」


 ピアソラが笑う。

 とりあえず、サーシャたちがハイベルク王国に帰れるのは、もう少し先の話になりそうだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 一日たっぷり寝たハイセは、冒険者ギルドにやってきた。

 シャンテが出迎え、ギルマス部屋で話をする。


「一日経って、ようやく受け入れられた。ハイセ……禁忌六迷宮の攻略、おめでとう」

「どうも。とりあえず、ダンジョンはクリアしたし、俺の目的は達成された。冒険者ギルドも、俺が迷宮をクリアしたってこと、認めてくれるんだよな?」

「ああ。冒険者ギルドだけじゃない。昨日のうちに、《巌窟王》もハイセが攻略したことを認めた。ディザーラ王国にも報告したから、お前の名は歴史に残るだろう」

「そっか。じゃあ、あとはあんたに任せるよ」

「…………は?」


 ハイセは立ち上がる。

 そして、そのまま部屋を出ようとして、シャンテに止められた。


「ま、待て。ど、どこへ行く?」

「え、帰る。用事はもう済んだしな」

「かか、帰るって……おいおいおい、ディザーラ王国への報告や謁見は……」

「俺、そういうのパス。国のためにクリアしたわけじゃないし、ヤマタノオロチの生首一つで勘弁して」

「…………はぁぁぁ。お前というヤツは」

「じゃ、いろいろありがとう。また来るよ」


 そう言い、ハイセは部屋を出た。

 部屋を出てギルドに戻ると、冒険者たちが大勢で噂していた。


「S級冒険者がソロでデルマドロームの大迷宮をクリアしたってよ!」

「それマジか? さすがにホラだろ」

「いやいや、昨日ここにすっげぇ生首あったんだよ」

「それ、ダンジョンボスって話らしいぜ」


 昨日の今日で、ハイセの顔を知らない冒険者も多い。

 騒がれるのは面倒なので、ハイセは冒険者ギルドを出た。

 すると、プレセアがいた。


「……どこ行くの?」

「ハイベルク王国に帰る」

「昨日の今日で?」

「ああ」

「私、これから依頼なんだけど」

「そうかい。頑張れよー」

「……速攻で終わらせるから、待ってて」


 そう言い、プレセアはすごい速度で走り去った。

 どうやら、ハイセと一緒に帰りたいようだ……が、ハイセは歩き出す。

 城下町をのんびり歩き、人の多さが妙に懐かしく嬉しいハイセは、露店を覗いたり、串焼きを買って食べながら歩いた。

 そして、城下町の入口に到着し、大きく背伸びをする。


「さぁて、久しぶりに、あの宿屋の薄い紅茶が飲みたくなった」


 ◇◇◇◇◇◇


 数日間、ハイセはのんびり歩いていた。

 半年ぶりのハイベルク王国。

 ハイセは、前に通った道が以前よりも整備されていることに気付いた。

 半年……短いようで長い時間。

 宿屋の老主人、ガイストなど、会いたい人はいる。

 そして、ハイベルク王国が見え───……ハイセは気付いた。


「……なんだ?」


 正門が賑わっている。

 近づくと、正門から一キロほど離れた場所に兵士がいた。


「悪いな。今、パレードの最中なんだ。正門からじゃなく、西門から入ってくれ」

「パレード?」

「ああ!! 兄さん旅人かい? 聞いて驚くなよ。S級冒険者サーシャのチームが、禁忌六迷宮の一つ『ディロロマンズ大塩湖』を踏破したんだよ!!」

「えっ……」

「今、王都はパレードの真っ最中さ!! ささ、兄さんもパレードに参加しな!!」


 ハイセは、西門へ迂回してハイベルク王国へ。

 西門周りでも、祭りの如く賑やかだった。

 すると、新聞売りの少年が叫んでいる。


「号外!! S級冒険者サーシャ、禁忌六迷宮の一つを踏破!! さぁさぁ読んで!!」

「一つ、くれ」

「はいよっ」


 新聞を買い、ハイセは裏路地を通って宿屋へ。

 街道や町の様子は少し変わっていたが、宿屋はいつも通り、ぼろかった。

 だが、このボロさがハイセに「帰って来た」と思わせる。

 いつも通り、ドアを開けると……仏頂面をした老主人が、ハイセをチラッと見た。そして、目を見開くが……小さく咳払いして、一言。


「宿賃、二か月分滞納だ……支払い、済ませな」

「ああ、悪い。じゃあ二か月分の家賃と、一か月延長で。ああ、晩飯はここで食うから」

「……はいよ」


 出発前に払った金貨では足りなかったようだ。

 ハイセは、主人に言う。


「また世話になる」

「…………ああ」


 それだけ言い、ハイセは部屋に戻った。

 部屋は、半年開けていたが、埃一つない綺麗な部屋だ。ハイセが半年前に出た状態のまま、店主がきちんと管理してくれたようだ。それが嬉しく、ハイセは座りなれた椅子に座り、新聞を広げる。


「サーシャ……あいつも、クリアしたんだ」


 ディロロマンズ大塩湖の踏破。

 デルマドロームの大迷宮と同じく、崩壊し消滅したらしい。

 ハイセはもう挑戦できない。だが……人間界には、あと三つの禁忌六迷宮がある。

 ハイセは新聞を放り、ベッドへ寝転がった。


「あー……明日、ガイストさんのところに挨拶行くか。夕飯まで時間あるし、少し寝るかな」


 ハイセは目を閉じ、軋むベッドに身を任せる。

 こうして、ハイセはハイベルク王国に帰って来たのだった。

第五章はここまで。

次回より新章です。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[良い点]  一人で攻略したのではなく チョコラテも一緒だったと語った ハイセに好感が持てる。 [一言]  KWCのデザートイーグル、ガスガンを買ってしまった。
[一言] まぁハイセの偉業はジワジワと広がっていくんだろうさ
[気になる点] ハイセって最強の冒険者目指してるなら自己アピールしてもいいと思うけど。これじゃ、ただの自己満足だよね?特定の人たちだけに知らしめても意味がないと思う。 [一言] サーシャSideでロビ…
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