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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第五章 デルマドロームの大迷宮とディロロマンズ大塩湖

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禁忌六迷宮/ハイセとサーシャの場合③

「…………ぅ」

『起きたか、ハイセ』

「…………お前」


 ハイセが目覚めると、民家のベッドの上だった。

 だが、ボロボロの民家だ。壁が崩れ、戸棚やテーブルが倒れ、窓のガラスが散乱している。

 身体を起こすと激痛がした。


「っづ……いてて」

『無茶をするな。全身打撲だ。骨は折れていないようだが』

「……お前は?」

『我も似たようなものだ。だが、我は人間ではない。この程度なら問題ない』


 チョコラテが「むん」と力こぶを見せた。

 鎧は砕け、兜も砕け、盾も砕け散ったチョコラテ。今は出会った時と同じ腰布だけの姿だ。

 だが、部屋の隅に黒い鎧と剣が置いてあるのが見えた。


「鎧……新しいのか?」

『む? ああ、あれか。あれは我が作ったのだ。起きれるか? 外を見ろ』


 身体を起こして外を見ると……すごい光景だった。

 爆心地、と言えばいいのか。

 乗り物が徹底的に破壊され、『カンランシャ』の残骸があちこちに飛び散っている。無事な建物が僅かしか残っておらず、悲惨な場所になっていた。

 そして、眼に付いたのは……黄金の生首だった。


『確か、ヤマタノオロチ・ジュニアだったか。あの生首が六つ転がっていてな。あいつの鱗を加工して鎧兜を作った。鱗を火入れしたら真っ黒に変色してな。だが、前に使っていた鎧兜よりも、強度が高い』

「へえ……」


 ハイセは、生首をアイテムボックスに収納する。

 周囲を見渡すが、魔族の男はいない。


『あの男、何だったのだろうな』

「さぁ? そういえば名前も知らないや……別にいいけど」

『そうだな。で、これからどうする?』

「酷い有様だけど、この辺りを調べてみる。ダンジョンの核とか、財宝があるかも」

『それなら、あの魔族の男がいた場所の奥に、地下へ通じる道があった。離れた場所にあったせいか、あの『鉄の破壊神』の脅威には晒されなかったようだ』

「鉄の破壊神って……」

『鉄の破壊神……覚えておこう』

「……ああ、うん」


 ハイセは、訂正するのが面倒なのでそのままにした。


「ってか、お前……よくそんなこと知ってるな。地下への道とか」

『お前が気を失い三日が経過したからな。ある程度の調査はした』

「三日!? う……そういや喉乾いた。腹も……」


 まずすべきことは、腹ごしらえだった。


 ◇◇◇◇◇


「……ぅ」

「サーシャ!!」

「うわっ!?」


 サーシャが目を覚ますと、顔を覗き込んでいたピアソラが抱きついてきた。


「ああ、よかったぁ……」

「ピアソラ……お前も無事で。というか、今何をしようとしていた?」

「もちろん、目覚めのキスを」

「…………」


 全く悪びれないのがピアソラらしく、サーシャはピアソラから離れる。

 レイノルド、タイクーン、ロビンも無事のようだ。

 サーシャは、まだ重い身体を起こし、タイクーンへ聞く。


「状況は?」

「戦闘開始から丸一日が経過。魔族、ショゴス共に消滅。ここは戦闘地から先にあった倉庫のような場所で、ここを拠点に周囲の調査をしている。ボクたちの負傷もピアソラが治してくれたよ」

「そうか……」

「サーシャ、身体の調子はどうだ?」


 レイノルドが覗き込む。

 サーシャは頷いた。


「問題ない。やはり、タイクーンの超強化と、ピアソラの超回復を合わせた『切り札』は強力だ。タイクーン……あの場で、よく私の意図を感じてくれた。ピアソラも」

「当然だ。あの魔獣、ショゴスはサーシャの『闘気』でしか屠れないからな」

「私は、タイクーンが下心のある眼で、私の裸を凝視してきたのかと思いましたわ」

「あの状況でそんな意図があるわけないだろう。それに、ボクはキミの身体に微塵も興味がない。裸だろうと、分厚く着込んでいようとね」

「アァァァァァァン!? ンだとテメェ!?」

「そういう裏表のある性格は直した方がいい」

「キィィィィェェェェェェ!! 殺す!! テメェ殺す!!」

「まてまて落ち着けって。タイクーンも煽るな!!」

「事実を言っただけだ」

「ってかレイノルド!! あなたも私の裸を凝視してたこと、忘れませんからねェェェェェェ!?」

「オレは眼福だと思ったぜ? はっはっは」

「ギギギギギッ!! 男ってやっぱり嫌い!! ロビン、あなたもでしょ!?」

「ま、まぁあの状況じゃ仕方ないって。そりゃ恥ずかしいけど……」


 全員、いつも通りだった。

 サーシャはそれが嬉しく、ほっとする。

 すると、ロビンがカップを手渡してきた。


「お茶、飲もう」

「ああ」

「みんな疲れてるし……少し休んでも、いいよね」

「そうだな。ダンジョンボスは倒したし、あとはこのダンジョンを閉めるだけ。禁忌六迷宮……我々の手で、ようやくクリアだ」

「クックック……本当に最高の『宝』を見つけた。禁忌六迷宮の存在意義、『七大災厄カタストロフィ・セブン』、そして魔族……ああ、頭の中の情報を整理したい!! 財宝よりも素晴らしい財宝を、ボクは手に入れてしまった!!」

「おいタイクーン、うっせぇぞ」

「倉庫から蹴り出してしまいなさい。頭に響きますわ」


 この日、サーシャたちはのんびり休憩し、翌日からの調査を再開するのだった。


 ◇◇◇◇◇


 チョコラテの案内で、魔族の男と戦ったさらに先へ。

 そこには、巨大な地下への入口があった。

 あの大爆発でも、階段には亀裂の一つもない。

 階段を降りると、鉄の扉があった。

 扉は簡単に開く。ハイセが近づくと自動で開いたのだ。

 中には……『光る鉄の箱』や、妙な配線が多くあり、ゴウンゴウンと音もした。


「なんだ、ここ……」

『そういえば……あの魔族の男、封印がどうとか言ってなかったか?』

「……覚えてない」

『む、見ろハイセ。あの扉……』


 巨大な扉があった。

 これまでの扉とは、規模も形状も桁違い。

 技術が違うが、ハイセにもチョコラテにも感じた。これは、触れてはならないと。

 

「ここはやめておくか」

『あ、ああ。我も直感で理解した……これは触れてはならない』

「お、見ろ。あっちに部屋がある」


 部屋の前に行くと、プレートがあった。


「えーと、『セイギョ、シツ』……? とりあえず入るか」


 自動でドアが開き、中へ。

 中にはベッド、光る鉄の箱、テーブルなどがあり、休憩所でもあったようだ。

 休憩所には、さらに扉があった。

 扉を開けると、大きな鉄の扉がある。そこには『特殊素材』と書かれている。


「金庫かな……開けてみるか」

『開けられるのか?』

「鍵付きみたいだ。残ね……あれ?」


 金庫の扉が開いていた。

 中には、ガラスケースに入った虹色に輝く宝玉があった。

 ハイセは、それを手に取ってみる。


「見たことない宝石だ。お宝かも……まぁ、こいつがダンジョンの財宝ってことにしておく」


 アイテムボックスに入れておく。

 すると、チョコラテが言う。


『見ろハイセ。部屋にあったこの箱、中がとても冷えているぞ』

「ん、どれどれ」


 白い箱の扉を開けると、確かに冷えていた。

 中は空っぽだ。面白そうなので、使えそうな道具はアイテムボックスに入れることにした。

 そして、テーブルに置かれた大きな箱と、小さなボタンがいくつも付いた板を見る。


「なんだろう、この箱……」

『ふむ、ハッケンキ? だったか? それに似ているな』


 チョコラテが、板に付いている『Enter』と書かれた四角を押した。

 すると、部屋に警報音が鳴り響いた。


「な、なんだ!?」

『わ、我のせいか!? す、すまんハイセ!!』

「へ、部屋を出るぞ!!」


 部屋を出ると、誰かが叫んでいた。


『最終安全装置起動。最終安全装置起動。これより、『ヤマタノオロチ』の最終凍結封印を開始。凍結封印後、『ヤマタノオロチ』は地下封印シェルターにて永久凍結封印。その後、この施設は破壊されます。作業員は直ちに脱出してください。地上行きトランスポートが解放されます』


 そして、ハイセたちのいる近くの床が開き、ガラスの筒のような物が現れた。


「な、なんだ、あれ……」

『凍結中。凍結中。凍結中』

『は、ハイセ……さ、寒いぞ』

「と、凍結中……って、凍らせてるのか!?」

『作業員は直ちに脱出をお願いします。作業員は直ちに脱出をお願いします』

「ええい、チョコラテ、あの筒に行くぞ!!」

『え……』

「よくわからんけど、ここはヤバい!!」

『わ、わかった!!』


 ハイセとチョコラテが筒に飛び込んだ瞬間、一瞬の浮遊感がハイセを襲い、目の前が光に包まれた。


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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
クリアしても対価がいまいちな気が…
最終凍結封印って…… 凍ったやつを壊したらどうなるんやろ?そのまま死ぬんかな? いや、わざわざ守ってたって事は可能性低いのかな
[良い点] チョコラテが働き者すぐる、しかも封印を運で起動させるとか『最強の幸運』をもつ魔獣か(笑)。 こんだけ有能な「同行者」にささえられると、これから先の迷宮「ソロ」での厳しさ実感するよね~ [一…
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