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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第五章 デルマドロームの大迷宮とディロロマンズ大塩湖

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禁忌六迷宮/サーシャの場合⑦

 サーシャたち『セイクリッド』は、住宅街を下り、『チカテツ』を進む。

 道中、何度も魔獣に襲われた。が……運がいいのか、チカテツが狭いおかげで、現れる魔獣は全て小~中型。群れで襲ってくるが、『セイクリッド』のチームワークで難なく対処できた。

 タイクーンだけが気付いていた。


「……やはり、そうか」

「ん? タイクーン、どうしたの?」

「いや、何でもない」


 間もなく、チカテツも終わる。

 別に言わなくてもいいだろう。

 度重なる連戦で、自分たちのチームワークがさらに洗練され、個人の実力も上がっていることなど。

 レイノルドはすでにS級レベル。タイクーン、ロビン、ピアソラもA級上位か、S級認定されてもおかしくない強さだ。

 能力も、間違いなく強くなっている。

 タイクーンは、自分の『賢者』魔法による補助効果時間を完全に把握しているが、サーシャたちにかけた補助魔法が三十秒以上、長くなっていた。

 

「見ろ、出口だ」


 サーシャが指さす先に、光が見えた。

 センロの先に、大きな出口が見える。タイクーンは「トンネル、だったか」と言い、レイノルドは「ようやく外か……」と、安堵していた。

 ロビンが背伸びして言う。


「や~っとお外だね!! あぁ~、早く行こっ!!」


 そして、走り出す。

 全員、疲労もあったのだろう。

 ほんのわずかに、失念していた。

 ここが、禁忌六迷宮……『ディロロマンズ大塩湖』ということに。


「───ッ、ロビン!!」

「え?」


 ズズズ……と、チカテツの出口に、ドロドロした何かが現れた。

 それは、漆黒のヘドロ。

 ただのヘドロではない。


「招かれざるお客さん、しかも……可愛い子」

「───っ」


 出口の壁に、いつの間にか『女』が寄りかかっていた。

 褐色肌、赤い目、灰銀の髪、そして頭部のツノ……サーシャは一瞬で理解した。


「魔族……!!」

「せいか~い」


 女は、指をパチンと鳴らす。すると、漆黒のヘドロがロビンの身体を包み込み、顔だけ出ている状態になった。


「ぅ、ぁっ!? なにこれ、気持ち悪いっ!! いやっ!!」


 ロビンは、首だけ動かして暴れる。だが意味がなかった。

 サーシャは剣を抜き、レイノルド、タイクーン、ピアソラも戦闘態勢に入る。

 が、女の動きが速かった。


「動くと、溶けちゃうわよ?(・・・・・・・・)

「「「「っ!!」」」」

「ひっ……」


 ドロドロした黒い何かが、ペッと何かを吐き出した。

 それは……ロビンが付けていた胸当て。ドロドロに溶け、原型がない。

 魔族の女は言う。


「この子は『ショゴス・ノワールウーズ』……この世界最強の『スライム』にして、この古代都市を滅ぼした『七大災厄カタストロフィ・セブン』の一つ。フフフ、今は私の可愛いしもべ」

「カタストロフィ、セブン……?」


 タイクーンが警戒しつつ聞く。

 女は、ニッコリ微笑んだ。


「あらいい男。そうねぇ……暇だし、答えてもいいわ。ああ~……その前にぃ」

「えっ、っきゃぁぁぁ!?」

「ピアソラ!?」


 ピアソラの背後にショゴスが現れ、一気に飲みこんだ。

 どこから現れたのか。

 地面から湧き出るように現れ、ピアソラを引きずり込み、ロビンを拘束していたショゴスと同化した。

 そして、ペッと何かを吐き出す……それは、ピアソラの衣類だった。


「うふふ。女の子なんて何百年ぶりかしら……たっぷり楽しませてもらうわ」

「いやぁぁぁ!! 私はサーシャ、サーシャがいいのぉ!! 魔族なんて嫌ぁぁぁ!!」

「よ、余裕そう……うう、気持ち悪いよぉ」


 暴れるピアソラ。魔族の女はクスクス笑う。


「ああ、自己紹介ね。初めまして……私はここの番人、ノーチェスよ」


 ノーチェスと名乗った魔族の女は、美しい動作で一礼した。


 ◇◇◇◇◇


 ノーチェスは、「こっちにいらっしゃい」と言い移動する。

 サーシャたちはチカテツから出ると、その先にあったのは数多くの『デンシャ』だった。

 

「ここは、デンシャの倉庫……か?」

「驚いた。あなた……古代文字が読めるの?」

「!!」


 タイクーンの後ろにノーチェスがいた。レイノルドが丸盾をノーチェスに向かって投げるが、ショゴスが触手のように伸びて叩き落す。

 丸盾が自動でレイノルドの元へ戻り、タイクーンの前に立つ。


「気を付けろ、あの女……以前の魔族とは比べ物になんねぇぞ!!」

「くっ……」


 大量のデンシャが設置されており、迷路のようになっている。

 すると、どこからかノーチェスの声が聞こえてきた。


「カタストロフィ・セブン……この子たちはね、古代を滅ぼした七つの悪魔なの。古代の人間はね、多くの犠牲を出しながら、七つの悪魔を封印……そのまま、滅んだ」


 すると、ドロドロした漆黒のショゴスが、電車をまとめて飲み込んだ。

 見通しがよくなり、部屋の中心にノーチェスと、ショゴスが現れる。

 ショゴスが盛り上がると、そこから両腕と両足を拘束されたロビン、ピアソラが現れた。

 服、装備が全て溶かされ、上半身裸だった。


「ふふ、綺麗な身体」

「うぅぅ……」

「みみみ、見ないでェェェェェェ!! そこの男二人!! 見たらブチ殺す!!」

 

 ロビンは羞恥に苦しんでいるが、ピアソラは青筋を浮かべキレていた。だが、戦闘中であり裸なんて気にしている場合ではなく、レイノルドとタイクーンは見てしまう。

 タイクーンは、ロビンとピアソラの裸なんてどうでもいいのか、ノーチェスに聞いた。


「七つの悪魔……まさか、禁忌六迷宮とは、その悪魔を封じる『檻』なのか?」

「…………本当に驚いた」


 ノーチェスは、本気で感心した。

 タイクーン。頭の回転がハンパではない。


「その通り。禁忌六迷宮は、悪魔を封じる檻。そして、私たち魔族は、その封印を守る者であり、古代の文明を魔界へ持ち帰る者。ね、知ってる? どうして人間界と魔界が分かれているのか?」

「……それは、戦争のことか? 人間と魔族の戦争があり、人間の『能力』で大陸が割れ、人間界と魔界になった。そこに海が現れ、行き来が不可能になった……」

「その通り。でも、それ……実は噓なのよねぇ?」

「なっ……」

「真実は、カタストロフィ・セブンの五体を人間界に封じるため。魔界が独立したのは、魔族に危険が及ぶのを防ぐため。七つの災厄のうち一体は魔族が完全に滅ぼし、残り一体は魔界で安全に封印っされている。でも、残り五体は人間界に封印されているのよ。いつか封印が破れても、魔界は安全なようにね」

「じゃあ、戦争というのは……」

「戦争はあった。でもね、全部魔族のお芝居なの。魔界と人間界を分ける手っ取り早い方法は、戦争に乗じて分断することだったからねぇ」

「……馬鹿な」

「でも、ちょっと失敗もあったのよ。当時は転移魔法なんてなかったから、魔界と人間界の行き来がものすごく大変で……古代の遺産を持ち帰るのに手間取ってるわぁ。最近、ようやく使えるようになってきた転移魔法も、大質量のモノは運べないし」

「ふざけるな!! 魔族は……人間を、何だと思っている!!」

「さぁ? フフ、でも安心して? 古代の封印はそう簡単に解けないわ。私が使役してるこのショゴスも、本当のショゴスの数万分の一くらいの欠片だから。本物だったら、この大塩湖どころか、雪国全体を覆っちゃうわ」

「くっ……きさ「タイクーン、もういいか?」……え?」


 と、ここでサーシャが前に出た。

 剣を静かに、ノーチェスへ突きつける。


「一番の美少女ちゃん。剣なんか向けてどうしたの? ふふ───」


 と、サーシャの背後。ショゴスが津波のようにサーシャに覆いかぶさる。

 だが、黄金の闘気を全開にしたサーシャの一閃で、ショゴスが消滅した。


「───!」

「どうでもいい」

「……ん?」

「カタストロフィ・セブン、禁忌六迷宮の意味、魔族の目的、古代人……そんなもの、私はどうでもいい」

「さ、サーシャ? いや、どうでもいいというのはむぐっ!?」


 レイノルドがタイクーンの口を押さえた。


「貴様、ノーチェスとか言ったな……ぐだぐだ言ってないで、ピアソラとロビンを解放しろ!!」

「あら怖い……でも、生意気な子も、好みよ?」


 ノーチェスの背後で、ショゴスが触手のように伸びてユラユラ揺れた。

 レイノルドが盾を構え、タイクーンはため息を吐き「もう少し話を聞きたいが仕方ない」と呟く。

 サーシャは叫んだ。


「さぁ、行くぞ!!」


 チーム『セイクリッド』、禁忌六迷宮で最後の戦いが始まった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
の、脳筋…… 魔族が実は世界のバランサーとかはあるあるだけど、バランサーしつつマジで実害与えてる作品は初めて見たな マジでいつでも滅ぼせるのに、万が一封印が解けた時のために生贄としてと、体力を出来るだ…
憤怒は魔王国側にありそうね サーシャが相手してるのは色欲かね? 後、人間側は美徳が揃ってそうね
[気になる点] 「人質を取っても無意味だ」という駆け引きなんだろうけど、このまま人質が障害になり続けるなら素質が開花しないというだけで幼馴染を切り捨てた様に、人質を見捨てることも厭わなそう なんせ人…
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