表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第五章 デルマドロームの大迷宮とディロロマンズ大塩湖

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/422

禁忌六迷宮/ハイセの場合⑦

 ハイセとチョコラテが下階層を目指して進むこと十日。

 たった十日だが、ハイセがこれまで経験したことのないような、濃密な十日間だった。

 まず……現れる魔獣のレベルが、とんでもなかった。

 Sレート、SSレートは当たり前。酷い時にはSSレートの魔獣が群れで襲ってきた。

 ガトリング砲、ロケットランチャーがなければ死んでいた可能性もある。

 そして……意外と頼りになったのが、チョコラテだった。


『コイツの弱点は腹だ!! 見ろ、腹にあるくぼみ、あそこに心臓がある!!』

『待て。ハイセ、遠距離から狙撃できるなら、ここから撃て。あいつは警戒心が高い……あと数メートル近づけば襲ってくる』

『あいつは群れのボスだ。あいつを倒せば群れは散る』


 と、現れる魔獣に対し、的確な弱点や戦闘法を教えてくれた。

 現在、ハイセとチョコラテは、小さな洞窟のような休憩場所を見つけ、そこを宿にしている。

 魔獣の死骸で洞窟の入口を塞ぎ、食事をしていた。


「ほれ」

『む、いいのか?』

「ああ。お前の知識に助けられてるからな」


 ハイセはチョコラテに、串焼きを何本か渡す。

 チョコラテは遠慮なくもらい、ガツガツと食い始めた。


『美味い。人間のメシは最高だな』

「……お前、何してるんだ?」


 串焼きを食べながら、チョコラテは鎧の修理をしたり、魔獣の外皮や鱗を使って兜や追加装甲を作っていた。盾にも鱗を付けたり、剣を研いだりと、本職の武器屋のような手つきだ。


『ハイセが倒した魔獣の素材は、どれも装備の強化に使える。我も、知識だけでなく戦えるようにならんとな』

「……器用だな」

『そうか? 我々、カオスゴブリンは武器や防具など全て自作する。魔獣の骨、皮、鱗などの加工は朝飯前だ。よし……できた』


 チョコラテは、兜や追加装甲を施した鎧などを装備した。

 これにより、肌の露出が一切なくなった。完全装備である。


『よし、これならいける。ふふ、感謝するぞハイセ』

「ああ。よかったな……ふぁぁ」

『眠いのなら仮眠を取れ。ここ十日ほど、ろくな睡眠を取っていないだろう?』

「…………」

『まだ、我を信用できないようだな。仕方ないとは思うが……』

「……五時間、寝る」


 それだけ言い、ハイセは目を閉じる。

 チョコラテは、残った串焼きを静かに食べ始めた。


 ◇◇◇◇◇◇


 五時間後───……それは、突然だった。


『グォォォォォォォォォォォ───……ンンン……───』


 雄叫びだった。

 ハイセは飛び起き、チョコラテは持っていたヤスリを落としてしまう。


「な、何だ!?」

『い、今のは……雄叫び、か?』


 顔を見合わせるハイセ、チョコラテ。

 地下内が振動した。ビリビリとした気配がまだ残っている。

 すると、地下の奥から、大勢の魔獣が逃げ出していくのが見えた。ハイセたちのいる洞窟の傍を、ハイセたちが苦戦した魔獣が逃げるように走っていく。


『な、何が……し、下の階層に、何がいるんだ?』

「…………」


 ハイセには心当たりがあった。

 ダンジョンボス。

 この、デルマドロームの大迷宮……最大最強最後の敵。

 ダンジョンボスを倒せば、デルマドロームの大迷宮は消滅する。

 存在してから数千年以上……誰も踏破することのできなかったダンジョンが、ハイセの手で攻略される。

 人は、ハイセを認めるだろう。

 最強の冒険者。たった一人でダンジョンを攻略した冒険者と。


『……どうした、ハイセ?』

「……いや、一人じゃないな」

『?』


 チョコラテは首を傾げた。

 ハイセは背伸びをし、首をコキコキ鳴らす。

 五時間、たっぷり睡眠がとれた。気力、体力共に充実している。


「チョコラテ、お前は寝なくていいのか?」

『ああ。カオスゴブリンの睡眠時間は二時間、十日に一度取ればいい』

「べ、便利だな……」

『そういう進化をしたのだ。長く働けるように、長く戦えるようにな』


 ハイセは立ち上がり、道具を全てアイテムボックスに収納する。

 チョコラテも、装備を全て身に付けた。新しい兜を装備すると、肌の露出が一切ないため人間のようにしか見えない。


「よし、行くぞ」

『ああ……だ、だが、この下に何がいるのか』

「ダンジョンボス。このデルマドロームの大迷宮、最後の敵だ」

『うぐ……』

「ビビッてんなら、ここでお別れだ」

『だ、だ、誰が!! ええい、行くぞハイセ!! 我が先に行く!!』


 チョコラテは、ズンズンと歩き出した。

 ハイセは、大型拳銃を片手に歩きだし、スライドを引く。


「見てろサーシャ……俺は必ず、このダンジョンをクリアして見せるからな」


 ハイセのダンジョン攻略も、最終階層に差し掛かろうとしていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 それからさらに十日……ハイセとチョコラテは、ボロボロになりながらも、最終階層手前まで到着した。

 チョコラテは、木札に刻んだ文字を確認する。


『こ、この先が最終階層……『テーマパーク』だ」

「テーマパーク……」

『ああ。魔族が言っていた。魔族の住処……長らく、放置されているようだが』

「そこに、ダンジョンボスが」

『それと、魔族の残した宝がある』


 最終階層手前。

 ハイセたちのいる場所には、大きな鉄格子の門があった。

 門は豪華な装飾が施され、大きな看板もある。

 そこには、イセカイの文字が書かれていた。


「煤けて読めないけど……一部は読める。わ、んだー……らんど?」

『ワンダーランド?』

「ああ。よくわからんけど……鉄格子に囲まれた門。どう見ても牢獄だな」


 門を押すと、ギシギシ音を立てて開いた。

 さっそく中に入ると、小さなガラス張りの建物がいくつかある。

 そこにも文字が。


「は、っけん……じょ?」

『はっけんじょ?』

「チケット、こうにゅう、は……こちら」

『ちけっと?』

「……チケットってのは、劇場とかで見せるチケットか? テーマパークってのは、劇場なのか?」

『???』


 チョコラテは首を傾げる。

 ハイセにも意味が解らない。ガラス張りの小屋に、金属の箱がある。箱には小さな『四角』がいくつもついており、それを押すとカチカチ音がした。

 『はっけんじょ』と通り過ぎると、長い住宅街へ出た。


「なんだ、ここ……家か?」

『どうやら、魔族の住処のようだ』


 広い街道があり、両側に大きな家がいくつも並んでいる。

 だが、家にしては妙に窓が大きく、いろんな道具が並んでいる。

 ハイセは、これが全て『店』だと感じた。


「この先が、中央広場か?」

『む……マップか』


 看板があり、テーマパークのマップが表示されていた。

 中央には広場があり、その周りに大きな建物がいくつもある。


「じぇっと、コースター……だい、かんら、ん、しゃ……? なんだこれ、乗り物か?」

『テーマパーク……奥が深い』

「とりあえず、中央広場へ───……」


 次の瞬間。


『『『『『『『『グォォォォォォォォォォォ───……』』』』』』』』

「「!!」」


 中央広場から聞こえて来たのは、雄叫びだった。

 しかも、一つじゃない。

 いくつも重なって聞こえてきた、獣の雄叫びだった。

 そして、ハイセは聞いた。


「招かれざる者が来たようだ」


 男の声。

 コツコツと、硬い靴の音が響き渡る。

 中央広場から現れたのは、一人の紳士だった。


「フム……長くここにいるが、まさか……人間と、ゴブリンの組み合わせか。全くもって、この世は面白い。我輩の想像をこえ


 ズドン!! と、ハイセは迷わず大型拳銃を発砲。紳士の肩に弾丸が命中した。


「ぬ、っぎ、ァァァァァッ!? なな、何ィィィィィィィ!?」


 紳士は肩を押さえ、出血部を押さえる。

 チョコラテは仰天していた。


『はは、ハイセ!? ななな、何を』

「ああいう、長ったらしい口上をしながら来る奴はほとんど敵」

『えぇぇぇ!?』


 大型拳銃を消し、ショットガンを構え連射する。すると紳士は右手を向け、周囲の金属を引き寄せ盾を作り弾丸を防御した。散弾では貫通しないようだ。

 ハイセはロケットランチャーを具現化する。


「待て!! 待て待て!! 貴様、それは銃だな!? なぜその武器を……ええい!!」


 男は、近くにあった『ジドウシャ』を盾にして逃げ出した。

 ロケットランチャーを発射。ジドウシャに命中し大爆発を起こす。

 ハイセは、ロケットランチャーを投げ捨て再び大型拳銃を抜いた。


「あいつ、何だろうな」

『こ、ここまでしておいてその疑問……え、ええと、あいつは恐らく魔族だ。褐色の肌、灰銀の髪、真紅の瞳に、頭部のツノ……間違いない』

「なるほど……よし、行くぞ」

『……我はお前と敵対せず良かったと、本気で思っている』


 ハイセとチョコラテは、中央広場に向かって歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
eqwkhbr532l99iqc5noef2fe91vi_s3m_k1_sg_3ve7.jpg

お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
ふと思ったけど、ダンジョンクリアしたらチョコラテ笑も消えるのでは……?
>そういう進化をしたのだ。長く働けるように、長く戦えるようにな カオスゴブリンの前段階はブラックゴブリンだった? 社畜が進化したのがカオスかな?
[一言] 死ぬかも知れないダンジョンボスとの戦いの前に思うのはサーシャのこと 先が見えてきたような気がします
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ