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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第五章 デルマドロームの大迷宮とディロロマンズ大塩湖

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禁忌六迷宮/ハイセの場合⑥

 ハイセは、カオスゴブリンと二人で住宅街からさらに下の階層へ。

 住宅街の下はまるで別世界。

 巨大なモグラが掘り進んだような、とても荒く曲がりくねった道だった。

 天井まで二十メートル以上あり、横幅も三十メートル以上ある。壁が発光しているのか非常に明るく、進みやすい道だった。


『何度も言うが、ここから先は上の階層のように『コンテナ』はない。踏み込んだ人間は、恐らくハイセが初めてだろう』

「それはいいけど、お前普通に付いてくるのな。しかも俺の名前呼んでるし」


 ハイセは、カオスゴブリンを見る。

 身長はハイセよりも高く、肌は薄い黒。

 頭髪はない、というか体毛自体生えていないようだ。

 耳が長く、目がギョロっとしており、かなり筋肉質。

 腰布を巻いているが、今はハイセが始末したカオスゴブリンの装備をかき集め、全身鎧を装備。腰には剣を二本、丸盾を右手に、背中には槍を背負っている。完全なフル装備である。


「お前、下の階層に行きたいんだっけ」

『ああ。同族の憧れだ。我らカオスゴブリンは、上の『住宅階層』で生活していた。上層階にいる魔獣を狩って食うだけの生活……たまに、下の階層に向かう愚か者もいたが、誰一人戻ってこなかった』

「で、その同族が俺に襲い掛かり、返り討ち……」

『ああ。だが、気にすることはないぞ。我々に仲間意識などないからな』

「それはありがたいね。俺の後を付いてくるのは勝手だけど、変に仲間意識持たれてもうっとおしいからな。ま、俺の邪魔したり、襲うようなら迷わず撃つ」


 ハイセは、大型拳銃をカオスゴブリンに突きつける。

 カオスゴブリンはゴクリと唾を飲み、首を振った。


『お、お前に敵対するつもりはない。お前に付いて行けば、新たな世界に踏み出せると思っただけだ。もちろん、礼はする……我の知識を教える。ここに現れる魔獣なら、大抵は知っている。弱点もな』

「弱点? 知ってるなら、魔獣を倒せるんじゃないのか?」

『できない。攻撃手段がないのだ』

「ふーん……」


 と───ハイセが立ち止まった。

 カオスゴブリンも立ち止まる。

 妙に生臭い匂いがした。そして、ズルズルと這うような音も。


『こ、こいつは───マズいぞハイセ、『掃除屋』が来る!!』

「掃除屋?」


 そう聞き返すと、通路の奥から何かが現れた。

 それは……巨大な、『ヤツメ』だった。

 丸い口。湿ったミミズのような身体。

 口の中にはギザギザの牙があり、獲物に吸い付き、肉を傷つけ血を吸う。


『こいつは、『デビルチャンドラー』!! 魔獣に吸い付き、肉と血を啜る凶悪な魔獣だ!!』

「……冒険者ギルドが発行している魔獣図鑑にも載ってないな。タイクーンが見たら『生け捕りにしろ!!』とか無茶言いそうだ」

『くそ、マズい!! 弱点は口の中にある心臓だ!! だが、攻撃手だ───』


 ガシャン!! と、ハイセは巨大なライフルを具現化。


「『アンチマテリアルライフル』」


 引金を引いた瞬間、ハイセの身体が後方に一メートルほど下がった。


「ッッ……いってぇ」

『え』


 爆音。

 ビュボン!! と、あり得ない音がした。

 カオスゴブリンが見たのは、頭の部分が吹き飛び、地面にズズンと倒れたデビルチャンドラー。

 弾速の速さ、威力が凄まじ過ぎて、何が起きたのか理解できなかった。

 ハイセはアンチマテリアルライフルを捨て、肩を押さえる。


「威力、ありすぎる……これ、あんまり使えないな。あんまり使えない、アンチマテリアル……アンマリ、ってか? あっはっは」

『…………』

「……今の、聞かなかったことに」


 ハイセはスタスタ歩きだした。

 くだらなすぎて死にたくなったらしい。が……カオスゴブリンは、そんなことはどうでもいい。

 確信した。

 ハイセに付いていけば、間違いない。


『ハイセ!!』

「ん、なんだよ」

『頼みがある』


 カオスゴブリンは、ハイセの前に回り込み、なんと跪いた。

 ハイセは首を傾げる。


『我に、名をくれ。我が望むのは、ただ一つそれだけ。頼む!!』

「え、えぇ?」

『我に名を!!』


 カオスゴブリンにとっても、初めての感情だった。

 ずっと、食べて寝て食べて寝て、それだけの人生だった。

 同族が同じ階層にいるが、ただそれだけ。

 会話もないし、話そうとも思わない。ただ、餌を取り合うだけの毎日だった。

 カオスゴブリン。ゴブリンの最上種族。力も知能もあるが、それだけだ。

 ただ、生きる。それだけの人生。

 だが……ハイセが来た。いつも通り、殺して食うだけだった。だが……逆に、喰われそうになった。

 カオスゴブリンは経験した。

 これが、強者。食うか食われるかではない、強き者の存在。


『ハイセ、お前は……我の人生を変えた。頼むハイセ、頼む!!』

「わ、わかったっての……ったく、何なんだよ」


 ハイセは少し考え、古文書を取り出す。

 そして、目を閉じてページをパラパラめくり、適当なところを指さした。

 ゆっくり目を開け、そこに書かれていた文字を読む。


『チョコラテが飲みたい。カカオなんてこの世界にないし、あってもチョコレートなんて作り方わかんねぇ……ああ、チョコ、チョコレート、チョコラテ、チョコケーキ……食いたい』


 ハイセは、ウンと頷いた。


「じゃ、お前の名前はチョコラテだ」

『おお……!! チョコラテ、我はチョコラテ!! 感謝する、ハイセ」

「ん」


 ハイセは再び歩きだした。

 その後を、カオスゴブリンことチョコラテが続く。


『ハイセ。この先にも、まだまだ危険な魔獣が存在する。気を付けろよ』

「はいはい。お前、あんま近くに寄るな。馴れ馴れしい」

『ああ、すまんな!!』


 こうして、ハイセとチョコラテは下の階層へ進む。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
それだけ威力が高いライフルならバイポッド使わないと辛そうね
Bro is hesitant to say the N-word and just named him/her Chocolate
こ れ は ひ ど い 確かに黒いし、間違っては無いけどこれはひどい
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