封印されし黒鋼の山ネクロファンタジア・マウンテン⑧/その先にある何か
丸一日が経過。
全ての準備を整え、一行は『白い壁』の前に。
この先に何があるのかわからない。まずは、全員で『壁』の前に立ち、ハイセ、エクリプス、サーシャの三人は『透明な板』を手にする。
一日の調査でわかったのは、白い壁の一部にスロットがあり、そこにカードを挿入することができることがわかった。
スロットは三枚。ハイセたちは『透明な板』を手にスロットの前に立つ。
サーシャは、ふと疑問に思った。
「ハイセ、エクリプス。こういう場合は……同時に入れるべきなのか?」
サーシャが言うと、ハイセとエクリプスは顔を見合わせた。
「……わからん。エクリプス、どう思う?」
「手順が不明な以上、慎重に行きたいところだけど……前例もないからわからないわね」
どのみち、板を入れなくてはいけない。
順番もわからないので、三人は同時に入れることにした。
サーシャは全員に言う。
「全員、警戒を。この先に何があるかわからない。最後の七大災厄もいる……戦闘準備はできているな」
全員、頷く。
戦闘準備と聞き、ヒデヨシとシドラはアイテムボックスの中へ避難。ピアソラも同じく避難し、残りの面々も武器を構えた。
そして、ハイセたちは互いに頷き、同時に板をスロットへ。
板はスロットに飲み込まれず、半分ほど入り進まなくなった。すると、透明な板が淡く輝き、白い壁がゆっくりとスライドを始めた。
「おおおおおおおおおおお!!」
クレアが驚く。
白い壁が横に開き、先に進めるようになった。
ハイセたちの手には、透明な板がそのまま残った。それをハイセは回収……カーリープーランとの取引で使うために、アイテムボックスに収納した。
「……敵はいないようだ。この先に……七大災厄がいるのか」
壁の向こうは、整地された横幅の広い道だった。
道の先が見えず、何があるのかわからない。
幅は広いが、全員で移動して進むには狭い。仮に戦闘になった場合、最上のパフォーマンスをするにはやはり今の人数は多かった。
「よし。事前の打ち合わせ通り、パーティーで進む。俺、サーシャ、エクリプス、クレア、レイノルド、ヒジリ、プレセアをパーティーメンバーに、ロビンとエアリアは斥候で先に行け」
「わかった!!」
「よし、行くぞー!!」
ロビン、エアリアが先に行き、戦闘メンバー以外はアイテムボックスに。
事前に決めた編成で、ハイセたちは先に進んだ。
◇◇◇◇◇◇
何もない道だった。
エアリア、ロビンが先行したが戻ってこない。
ヒジリを先頭に警戒しつつ進むが……ハイセは何とも言えない顔をしていた。
「……ハイセ、どうしたんだ?」
「……どうも嫌な予感がしてな」
サーシャがハイセの浮かない顔を見て、話しかけて来た。
ハイセはずっと気になっていた。ノブナガの残した謎の言葉、そして最後の七大災厄の一つが。
サーシャは言う。
「この先、何がいても我々なら乗り越えられる。そうだろう?」
「かもな。でも……」
不安。
ハイセも、自分らしくないと思っていた。
仮に……この先にいるのが、『自分の予想している物』だったら、勝率はかなり低くなる。
不安を拭いきれないハイセに、サーシャが手を伸ばした時だった。
「「──!!」」
何かが、聞こえて来た。
その音に、全員が道の先を見た。
ヒジリは不敵に笑い、レイノルドは丸盾を手にし、エクリプスは白い本を手に、プレセアは弓を、クレアは双剣の柄に触れる。
そして、道の先からエアリアが、ロビンを掴んで飛んで来た。
「う、ああああああ!! ろ、ロビン、ロビンを!!」
「落ち着け!!」
「アタシ、先行くわ!!」
ヒジリが走り出し、傷だらけのロビンを地面に降ろす。
「ピアソラを!!」
サーシャが本気で叫ぶ。
ロビンは重症だった。
右腕が肘から消えていた。右足もなくなり、血がとめどなく流れていた。
ピアソラがアイテムボックスから出てくるなり、全力で治療を開始。
「──何、この感じ」
プレセアが、顔を青くして身体を抱く。
エアリアは震えていた。歯をカチカチ鳴らしている。
先行したヒジリ、後を追ったレイノルド、クレア。
ハイセは、エアリアの両肩を掴んで言う。
「おい、何を見た。エアリア!!」
「わ、わかんない、へんな、くろいの」
戦意喪失。仮にも七大冒険者としてS級認定を受けているエアリアが、ひどく怯えていた。
ハイセはロビンを見る。
「……クソ!! おいピアソラ、ここから先に絶対来るな。癒し手のお前に何かあれば俺たちは敗北する。プレセア、お前もここに残ってピアソラを守れ、いいな!!」
返事を待たず、ハイセは走り出す。
ホルスターからハンドガンを抜き、両隣にはサーシャ、エクリプスが並ぶ。
道の先から、音が聞こえて来た。
「ハイセ、この音……」
「……まさか」
エクリプス、サーシャも気付いた。
ハイセは、ロビンを見た時点で気付いていた。
歯を食いしばり、ハイセは言う。
「銃声……くそ!!」
ハイセたちが道の先に到着。
そこは、まっ平らな場所だった。
かなり広めで、周囲を遮るものは何もない。
ネクロファンタジア・マウンテンの山頂。そこにいたのは。
「な……なんだ、あれは」
サーシャが驚愕する。
ヒジリ、クレアが『黒い異形』と対峙していた。
レイノルドの大盾がボロボロになっていたが、三人は生きていた。
ヒジリが叫ぶ。
「アンタら!! 手ぇ貸しなさい。こいつ……あの鉄人形よりヤバイ!!」
鉄人形とは、ヴァイスのことだろう。
ハイセたちの前に現れたのは、漆黒の鉄人形。
人形といってもヒトの形をしていない。
鉄の足は四本あり、それぞれに車輪が付いて自在に移動可能。
両腕は巨大な『筒』であり、右腕はいくつも穴が空いた筒、左腕は大きな穴が空いていた。
背中には大きな筒を二本背負い、そこから火が噴いている。両肩には紫電を帯びた細長い槍のようなものが二本あり、顔に当たる部分はギザギザした『剣』が伸びていた。
異形。魔獣にしては、あまりにも金属的な特徴が多すぎる。
ハイセは呟く。
「……『アザ=トート=カノン』だ」
「え……?」
ハイセはハンドガンのスライドを引く。
絶大な信頼を持つ、これまでの『|闇の化身《ダークストーカー』を支えてきたメインウエポンが、あまりにも頼りなく見えた。
「あれは、ノブナガの『武器マスター』が生み出した、最強の『兵器』……くそ、最後の最後に立ちふさがるのが、ノブナガの遺した『兵器』とはな」
アザ=トート=カノン。
『武器マスター』を極めし能力者が使うことのできる『最終兵器』の力。その力は『自身が思う最強の兵器を具現化する』こと。
それにより、ノブナガが作り出した、この世界における最強兵器。
それらが七大災厄として、ハイセたちの前に立ちふさがる。
ハイセは叫ぶ。
「全員、死ぬ気でやるぞ!! こいつは……俺たちよりも強い!!」
サーシャは剣を抜き、エクリプスは黄金の本を手に。
アイテムボックスからシズカ、ロウェルギア、タイクーンを応援に呼ぶ。
『…………』
チキチキチキチキ、と……アザ=トート=カノンの顔にある赤い光点が輝いた。





