封印されし黒鋼の山ネクロファンタジア・マウンテン⑥/全ての鍵
サーシャは、『国崩』を鞘に納めた。
クレアも、双剣を器用に回転させて鞘に納め胸を張る。
「勝利です!!」
「あああ……消えてしまった。あの液体生物の一部でも回収したかった……はぁぁ」
拳を突き上げるクレアとは対照的に、タイクーンは肩を落としていた。
レイノルドも、背中に大盾を背負い直し、ピアソラは言う。
「皆さん、怪我はありませんの?」
「ああ。ったく……優秀すぎる前衛も困りモンだぜ。盾士のオレが全く出番ねぇぜ」
レイノルドの盾は綺麗なままだった。
敵である銀色の液状生物、『エリクシル・ロディーヌ』との戦いは苛烈を極めた。
液状であるがゆえに、姿形は自在に変わり、銀の液体を粒のように飛ばして攻撃したり、液体を極薄にして刃のようにしたり、周囲に浮かぶカラフルな玉はタイクーンの予想通りに属性を駆使した攻撃をしてきた。
だが……サーシャ、クレアは全てを受け、躱し、弾いた。
レイノルドはタイクーンに言う。
「なあ、サーシャのやつ……魔界に来てからさらに強くなってねーか?」
「それは間違いないだろう。恐らく、人間界で世界最強の五指に入るだろうな」
「はいはーい!! あのあの、わたし、私は?」
会話を聞いていたのか、クレアが二人の間に割り込んだ。
レイノルドは、クレアの頭をポンポン撫でて言う。
「オマエも強くなったよ。S級冒険者として、どんどん強くなってるな」
「えへへー、うれしいです。あのあの、師匠は褒めてくれますかね」
「さぁな。でもまあ、弟子の成長を喜ばねぇ師匠はいねぇだろ」
サーシャを見ると、ピアソラが心配しているようだ。怪我をしていないが、治癒の光を当てている。
クレアは、サーシャを見てため息を吐く。
「はああ……私も強くなった自信ありますけど、一緒に戦ってサーシャさんの強さを見せつけられましたよ……本当に強いですー」
「まあ、うちの『ソードマスター』は最強だぜ。なあ、タイクーン」
「ん、ああ」
タイクーンは、『エリクシル・ロディーヌ』に未練があるのか、床に少し残っていた雫を瓶に入れようとしてた。だが、触れた瞬間に蒸発し、再びがっくり肩を落とす。
そして、治療を終えたサーシャがピアソラと戻って来た。
「さて、見たところ、あそこに道がある」
白い空間の先、白い扉があった。
魔獣を倒したことで現れたのか、今までなかった扉だ。
タイクーンは立ち上がり、推測をする。
「ふむ……この先に『ロディーヌ』の鍵があるだろう。先ほどの魔獣は、守護魔獣とでも言えばいいのか……明らかに、野生の魔獣とは思えない形だった」
「お、いつものタイクーンだな」
「やーっとクリアですか。うう、師匠に会いたいですー」
「わたくしも、甘いケーキを食べながら紅茶を飲みたいですわ。もちろんサーシャと一緒に!!」
「はは、そうだな。さて……行こうか」
サーシャたちは、扉の先へ。
その部屋は、広くも狭くもない部屋だった。
白い部屋。中央には祭壇があり、一枚の透明なカードが安置されている。
タイクーンが周囲を観察するが、クレアがさっさとカードを取ってしまった。
「これが鍵なんですかね。ただの透明な板にしか見えませんけど」
「……サーシャ、彼女は本当にハイセの弟子なのか? こうも危機感が薄いとは」
「ま、まあいいだろう。何か起きる……ことも、ないのか」
「一応、警戒しようぜ。おいピアソラ、アイテムボックス入っておけ」
「わかりましたわ」
しばらく、警戒していた……が、何も起きない。
祭壇の後ろにドアがあり、そこを開けて先に進むと……再び、森に入った。
振り向くと、白い神殿のような建物が見える。
「……どうやら、終わりか」
「ふむ。そのようだ……サーシャ、先に進もう。恐らく、ハイセたちと合流できるかもしれん」
「え、師匠と? やった、行きましょう!!」
「おいおい、走るなクレア。おい、行っちまった、追うぞ」
走り出したクレアを追うため、サーシャたちは走り出した。
◇◇◇◇◇◇
エクリプスチーム
◇◇◇◇◇◇
災厄残滓型魔獣『オルウェン・ラスラパンネ』。
現在、エクリプスたちは沼の中、エクリプスの魔法で作り出した『黄金郷へ誘う帆船』に乗っていた。
黄金の船にはエクリプス、ロビン、ヒジリ、ロウェルギア、シズカが乗っている。大抵の魔獣は殲滅できるメンバーであるが、沼の中ということで直接攻撃ができない。
現在、黄金の船は、無数の触手に絡みつかれ、身動きできなかった。
「くっそおおおおお!! アタシがチョクでブン殴りたいよおおおおお!!」
ヒジリが地団駄を踏む。
沼の中ではヒジリも戦えない。ロビンの矢も効果がないし、シズカの飛行能力も意味がない。
ここで戦うことができるのは、エクリプスとロウェルギアだけ。
エクリプスは、魔力を船に注ぎ込んでいる。
「……かなりの力ね。魔力で常に補強しないと、潰されるわ」
エクリプスが攻撃に参加できない。
となると……一人。
「クックック……」
ロウェルギア。
歯茎を剝き出しにし、上を向き、眼鏡を抑えて笑う。
指をパチンパチンと鳴らし、ローブを翻して言った。
「ワタクシの出番、のようですネェ。いいでしょう……見せてあげましょう、この魔王ロウェルギアの本気を、ハイセ様のために!!」
「いや、ハイセいないじゃん……」
「全力を出すなら、この場を切り抜けるために出せ」
「ううー、エクリプス!! 沼の中でも自由に動ける魔法ないの!?」
「あっても無理。私は船の維持で精一杯よ」
ロウェルギアは前に出る。
黒い球を沼の中にいくつも作りだし、連結させる。
まるで黒い蛇。長さも三十メートル以上あった。まるで、巨大クラゲに立ち向かう黒いウミヘビだ。
「『黒ノ蛇』……餌の時間です」
黒い蛇はグネグネ動き、船に絡みつく触手に触れる。すると、闇の力が触手を喰らう。
「触れただけで、喰らいますよ? 攻撃は無意味と申しておきましょう。クフ」
触手が、黒い蛇を絡めとろうとする。だが、触れただけで触手が消滅する。
黒蛇は、グネグネ動き、触手を喰らいながら本体へ向かって行く。
そして、ロウェルギアが右手を向け、指をパチンと鳴らした。
「『終焉』」
黒蛇がクラゲの本体近くで爆ぜ、周囲の沼、そしてクラゲを喰らい尽くした。
ロウェルギアは櫛を出し、自分の髪を整えて言う。
「さて、終わりましたぞ」
「「「…………」」」
強い。
オーバースキル『冥神』。
闇を作り、全てを喰らう力。
ロウェルギアの性格がアレなので誰も気にしていなかったが、ロウェルギアも間違いなく魔王。しかも……三大魔王の中でも最強。
エクリプスが言う。
「……見つけたわ」
「え、なになに?」
「沼の最下部に神殿みたいな建物があるわ。ふう……船の維持をしながらの索敵はきついわね」
船は最下部へ移動。神殿を発見した。
視界が最悪なので見えなかったが、入口は船でも入れるほど広い。
入口に入り浮上すると、広い空間に出た。
そこには空気があり、船から出ても問題なさそうだった。
船から降り、祭壇のある部屋へ。
祭壇には、透明なカードがあった。
「なにコレ?」
なんの迷いもなく、ヒジリがカードを手に取った。
「馬鹿。いきなり取る奴があるか」
「馬鹿ってなによバカって。別にいいじゃん。敵出たらアタシやるからね」
フラストレーションがたまっているのか、ヒジリは敵を望んでいるようだった。
だが、特に何も起きない。
そして、ロビンが部屋の奥にドアがあるのを見つけ、ヒジリと違って最大の警戒をし、静かに空ける。
「…………ねえ、みんな」
ロビンは、嬉しそうに言う。
「風を感じる。たぶんこの道、外に続いてるかも!!」
「お、マジ? やった、行こ行こ!!」
「だから、警戒をしろと言っているだろう、馬鹿が」
「ククク。ワタクシの活躍……ハイセ様に報告せねば!!」
「……ハイセ。会いたいわね」
エクリプスたちは、地上に向かって歩き出した。
こうして、三つのパーティーは鍵を入手。合流に向かって動き出した。





