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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十八章 ネクロファンタジア・マウンテン

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災厄封印ゲート『イゾルデ』⑥/BOSS・カリュブディス

 エアリアの光翼で、ヒジリとエアリアは上空へ。

 そして、真正面に現れたのは、まるで巨大船のような大きさの『カリュブディス』の顔だった。

 どこか、ツルツルしたドラゴンのような顔だった。ツノなのかイボなのか不明だが、頭部にはゴツゴツした突起がいくつも生えている。

 そして口。鋭利な牙ではなく、あらゆるものを噛み砕き、すり潰す、ゴツゴツした岩石のような歯が百本以上、不揃いに並んでいた。

 まさに岩石地帯。口に入れば命はない。

 ヒジリは、一筋の冷や汗を流す。


「アタシの人生、これだけのサイズの魔獣と戦うの、初めて……」


 ブルリと武者震い。間違いなく十八年の人生で最強、最大の魔獣。

 カリュブディスにとって、ヒジリのサイズはコバエのようなものだろう。真っすぐヒジリを見ているが、そこに敵意は感じられない。

 ヒジリは、右腕をグルグル回転させる。


「エアリア、真正面!!」

「おう!!」

「まずは……開幕、一発!!」


 ヒジリは、エアリアの操作でカリュブディスの真正面へ。

 カリュブディスに動きはない。エアリア、ヒジリは正面から別れ、それぞれカリュブディスの側頭部へ移動する。


「金剛拳、怒式!! 『毘沙門激怒(びしゃもんげきど)』!!」

「『イーグル・スパイラル』!!」


 金剛石の、直径十メートルほどの『拳』が形成され、カリュブディスの右側頭部を。

 翼をいくつも生やし、高速回転しながらのドロップキックが左側腹部に突き刺さる。

 会心の一撃……だが、巨岩を殴ったような、蹴ったような感触しか感じない。


「か、硬い……!? あ、アタシの金剛拳が」

「あ、あたいの必殺技が」


 効かない。

 それどころじゃない。カリュブディスは欠伸をした。

 その欠伸ですら空気を振動させ、衝撃波となってヒジリとエアリアを襲う。


「「~~~~っ!?」」


 ビリビリと、身体が振動した。

 エアリアの光翼がブレ、消えそうになる。が……突如現れたエクリプスが、ヒジリとエアリアの前で手をかざすと、衝撃波が中和された。


「大丈夫?」

「アンタ、どうやって……」

「空を飛ぶ魔法くらいあるわ。それと」


 すると、地上から大きな『鶴』が、レイノルドたちを乗せて飛んで来た。

 エクリプスの魔法生物だろう。エアリアは「うう、空はあたいの戦場なのに!!」とくやしがっていたが、エクリプスは無視。

 鶴に乗ったレイノルドが言う。


「おい!! 無茶すんな。っていうか……コイツ、オレらのこと敵と見てねえ!! 余計なことして怒らせる前に、さっさと深度2に行くぞ!!」

「……やだ」

「おいヒジリ、てめえ、いい加減にしろ!!」


 怒るレイノルド。リーダーとして、ここは引けない。

 怒りつつも、視線を一瞬だけエクリプスへ……エクリプスは小さく頷き、さりげなくヒジリの視界に入らないように移動する。 

 ヒジリを気絶させても、先に進む。それが答えだった。

 すると、ロウェルギアが言う。


「フゥム。確かに無理をして戦う必要はないですネェ。ワタクシも賛成ですが……一つ、勝つ方法を思いつきました」

「あ?」

「え、マジで? なになに?」

「簡単ですよ。カリュブディス……あれはどんなに大きくても『生物』です。血が流れ、心臓が動き、脳で思考し、内臓が機能している。さて、今言った中で、最も大事なのは?」

「……心臓?」

「おしい。答えは脳……脳が死ねば、生命活動は停止します。狙うなら脳しかありません」

「脳……どうやってやんのよ」

「ホホホ。見てください、カリュブディス……大きな口、鼻、耳、それと柔らかそうな眼球と、侵入手段はいくつもある。先ほどの攻撃、まあ悪くありませんでしたが……なぜ、硬い外殻を攻撃したのか理解に苦しみますネェ」

「うっさい。レイノルド、聞いた? アタシもコイツの話聞いて、勝機見えたわ」

「…………あああもう。ほんっと馬鹿だなお前。意味ないだろうが」

「ある」


 ヒジリは、自分の胸をドンと叩く。


「アタシはヒジリ。戦うこと、強くなることが生き甲斐のS級冒険者よ。目の前にこんな敵が現れて逃げるなんてしたくない。強者と戦い、勝利し、生きてることを実感したい」

「「「「…………」」」」


 薄紫のポニーテールが揺れる。

 浮かべる笑顔は、力強く、雄々しく、猛々しく……そして、美しかった。


「今、この瞬間が……アタシの、生きてる時間よ。だから、アタシは戦いたい」


 不思議だった。

 カリュブディスは馬鹿げたサイズだ。人間界でもこれだけのサイズの魔獣はそういない。

 間違いなく、討伐にはスタンピード規模の編成が必要だ。

 だが、この場にいる四人は、カリュブディスよりもヒジリが強く見えた。

 エクリプスはクスっと微笑む。


「うかうかしていると、序列二位の立場を奪われるかもしれないわね」


 エクリプスは、『黄金禁忌の書アレステリア・クロウリィ』を手に取る。

 ロビンも、アイテムボックスから新しい弓を取り出した。


「あたし、援護する。お兄ちゃんからもらった、この『グシス・ナウタル』で」


 S級冒険者序列五位ウル・フッドが本気の戦闘で使う弓だ。魔界に行く前、ロビンがもらった(実は貸しただけなのだがロビンはもらったと思っている)弓である。

 エアリアは、ヒジリに手をかざす……すると、ヒジリの翼が虹色に輝いた。


「ぐ……『虹の翼プルウィウス・アルクス』……あたいの、とっておきだ。感謝しろよ、ガイストのおっさんと編み出した切札、ハイセだって知らないんだぞ!!」

「わお……なんかすっごい」


 レイノルドは大きくため息を吐き、ヒジリに手を向ける。

 すると、ヒジリのジャケットの防御力が上がった。


「防御力を上げた。意味はそんなにないかもしれねぇけど……ったく、負けたよ。好きにやれ。ただし……お前が死んだら、オレらは先に進むぜ」

「構わない。ふふん、負けないけどね」

「素晴らしい!! ううう、ヒジリ様……アナタの気高さ、美しさ、ワタクシ、感服いたしました!! では、援護しますか?」

「いらない。アンタの黒いやつ、なんかキモイし」

「おおおっほっほ!! そんなこと言われたのは初めてですネエ!!」


 ロウェルギアは爆笑した。

 エクリプスは、黄金の本から一枚のページを抜き、そこから黄金の小瓶を取り出す。

 美しい装飾のされた小瓶をヒジリに渡した。


「飲みなさい。これは、『黄金禁忌の書アレステリア・クロウリィ禁止項目(タブーページ)の三枚目。『神が流した奇跡の涙アムリターラ・オブ・エリクシール』よ。飲めば二十四時間、十二の命を得ることができる」

「マジ? ってかアンタ、こんなわけわかんないモン、魔法でどうやって作んの?」


 エクリプスはその質問には答えず、ヒジリは薬を一気飲みした。

 すると、ヒジリの身体が淡い黄金に包まれる。


「おおお!! なんか強くなった気がする!!」

「気のせいよ。ただ、十二回死んでも死なないだけ」

「じゃあ行ってくるね!! 援護、いらないから!!」


 黄金に輝き、虹色の翼を広げ、ヒジリはカリュブディスに向かって突進していった。


 ◇◇◇◇◇◇


 虹の翼は、ヒジリの意思で動かせた。

 十二の命を得た。ジャケットの防御力が上がった、そして。


『ブオオオオオオオオオオオオ!!』


 カリュブディスの雄叫びで、周囲が震えた。

 そして、カリュブディスの『歯』に挟まっていたのか、魔獣の骨や岩石などが飛んで来る。

 攻撃の意思ではない。ただ、ヒジリが向かって来たから吠えただけ。

 ヒジリは、飛んで来る石や骨を叩き落とそうかと考えた……だが。


「行って!!」


 ロビンの声。

 同時に、背後から大量の『矢』が放たれ、飛んでくる岩や骨を全て撃ち落とした。

 矢の威力、速度が桁違いだ。

 一本金貨五十枚もするオリハルコン製の矢を、ロビンは後先考えずに放っていた。


「ありがと!!」


 ヒジリは飛ぶ。

 飛んでくる岩や骨は全て、ロビンが撃ち落とす。


「よっしゃあ!! 行くわよ!!」


 ヒジリは急上昇し、右手にアクアブルーの巨大槍を、左手にエメラルドグリーンのハンマーを具現化した。


「金剛拳、『水青方天戟アクアマリン・パルチザン』!!」


 アクアマリンの巨大槍を全力で投擲。

 槍は、カリュブディスの目……ではなく、目頭の部分に激突した。

 そして、ヒジリはエメラルドグリーンのハンマーを、巨大なエメラルドグリーンの手が掴み、振り下ろす。


「金剛拳、『緑翡翠大槌エメラルド・ウコンバサラ』!! どらっしゃああああああああい!!」


 ズドン!! と、目頭に水色の槍が突き刺さった。

 これには、さすがのカリュブディスもノーダメージとはいかなかった。


『グオオオオオオオオオオオアアアアアアアア!!』

「ッ!?」


 頭をめちゃくちゃに振り、痛みで暴れた。

 人間の目で言うなら、目頭に串焼きの串が刺さったような状況だ。

 そして、大暴れするカリュブディスの頭に、ヒジリが直撃した。


「──っぶ」


 バン!! と、破裂した。

 同時に、黄金に輝きヒジリの傷が治る。

 死んだ。ヒジリは、衝撃で破裂し即死……だが、エクリプスの薬で蘇生した。


「うっわ……死ぬもんじゃないわね」


 ジャケットも爆ぜ、上半身裸になったが気にしていない。

 虹の翼も消えていない。傷は全て消えている。

 ヒジリは真っすぐ、暴れるカリュブディスに向かっていく。


「う、っぎ……」

『ゴアア、ゴアアアアアアアアアアアアアアア!!』


 痛みで暴れるカリュブディス。

 叫びが衝撃波となり、ヒジリの身体が揺さぶられる。

 目や耳、鼻、口から出血。内臓も損傷し、猛烈な痛みが襲う……が、すぐに回復した。そう、死んだのだ。そして蘇生した。

 叫び声だけで死んだ。まだ、十回も死ねる。

 

「金剛拳、爆式!! 『轟魔弓(ごうまきゅう)』!!」


 足を突き出し、いくつもの金属を纏わせながらの飛び蹴り。

 衝撃波で足がねじ曲がり、ゴキゴキと砕け散る。何度も吐血し、そのたびに蘇生する。

 そして、七回目の組成が終わり、ヒジリは全速力でカリュブディスの目頭に激突。


「おおおおおおあああああああああああ!!」


 ぐちゃぐちょボジュ!! と、柔らかい肉が全身を包み、温かい血がヒジリを濡らす。

 硬い何かに足が当たった……頭蓋骨だ。


「こん、剛、けん……!! 爆式!! 『紅蓮爆虎(ぐれんばっこ)』!!」


 正拳を叩きこんだ瞬間、爆発した。

 アイテムボックスから油、そして火打石を出し、頭蓋骨に叩きつけたのだ。

 偶然にも、カリュブディスの目元にガスが発生しており、それに引火して爆発したのだ。

 ヒジリの左腕が肘から焼失したが、ヒジリは止まらない。


「があああああああああああああああああああ!!」


 泳ぐように、カリュブディスの肉をかき分けながら進み……ピンクの、グニャグニャした何かが見えた。

 それは、カリュブディスの脳。

 ヒジリはその場で身体をすぼめ、一気に飛び上がり、僅かな空間を作った。

 そして、身体が淡く輝き怪我が全て治癒……また、死んだ。

 なくなった左手も復活し、ヒジリは合掌。


「金剛拳・終式!! 『金剛観音千手神像ヴィシュヌ・アヴァターラ』!!」


 脳を破壊するように現れた千の手を持つ神像が、ヒジリと合わせて脳内で大暴れした。


 ◇◇◇◇◇◇


 少し離れた場所で、レイノルドたちはカリュブディスを見ていた。


「おいおい、どうなったんだ……」


 ヒジリが目頭から体内に突入すると、カリュブディスはただ痙攣するだけになった。

 そして、数分後……カリュブディスは白目を剥き、そのまま倒れた。


「行きましょう」


 エクリプスを先頭に、レイノルドたちは倒れたカリュブディスの頭部へ。

 近付くと……カリュブディスは、死んでいた。

 ロウェルギアが耳を向けて言う。


「おお、鼓動は停止……間違いなく、死んでいますな」

「え、え……ヒジリは?」

「あたいの翼も、消えちゃったぞ……」


 ロビン、エアリアがカリュブディスをジッと見る。

 すると……カリュブディスの目頭から、ヒジリが這い出してきた。


「勝ったぁぁ……けど、すっごい最悪。くっさいし、ヌメヌメ、ドロドロ、ううう、今日は肉食べたくないわ……」

「ヒジリ、って……わわわ!! レイノルド、魔王おじさん、あっち向いてて!!」

「お、おう」

「魔王おじさん、とはワタクシのことで?」


 レイノルド、ロウェルギアは回れ右をした。

 ヒジリは全裸だった。ポニーテールを結んでいたリボンも消え、腰まであるロングヘアは血肉まみれ。蘇生したのか怪我は消えていた。

 女性陣が近づく……が、あまりの臭いに立ち止まる。


「ヒジリ、臭い……」

「うっさいわね。ねえエクリプス、お湯出してお湯」

「便利道具みたいに言わないでくれるかしら」


 そう言いつつも、エクリプスは指先から適温の湯をシャワーのように出し、ヒジリの真上から落とす。

 ヒジリは身体を洗い、ロビンが石鹸を投げ渡す。


「あー楽しかった。いやー、何度も死ぬってなんかイヤな感じ」

「……あなた、十回死んでるわね」

「うっそ……ギリギリだったわー」

「てかヒジリ。このカリュブディス、討伐レートSSS以上あるよね……ほとんど一人で倒しちゃった」

「まあ、倒したのアタシだけど、一人で倒したなんて思ってないわ。みんなの勝利よ」


 ヒジリはにっこりと、全裸で笑みを浮かべる。

 エアリアもウンウン頷き、ロビンはホッとため息を吐き、エクリプスは苦笑した。


「おーい、まだか?」

「ワタクシ、女性の裸体になど興味ございませんがネェ」

「まだダメー」

「あ~気持ちい。あ、そうだ!! ねえねえ、こいつの肉も冷凍しておいて。アタシ、あとで焼いて食べる!!」

「あ、あたいも食いたい。今日の晩飯だ!!」


 こうして、推定討伐レートSSS以上の大魔獣、カリュブディスは討伐。

 レイノルドたちは中央平原『深度2』へ進むのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
ピアソラの価値と出番が下がるものが出てきましたね、、、 残機の玉か何かをヒジリかエクリプスの周りに出して、ゴリゴリ減っていく残機に焦りのコメントでも言わせれば、もっと緊張感が出せたかと思います。 戦…
ボス戦の割には一話で終わってるのがなあ。攻略も雑だし
死に戻りが安すぎる。 緊張感が台無しのいつもの展開ですな。 あと、根本的にやらなくても良い戦いでそれを止めないヒジリも止められないレイノルドも無能。 先々で死に戻りのリソースが必要になったとき今回の…
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