災厄封印ゲート『イゾルデ』④/深度1
レイノルド、ロビン、エアリア、ヒジリ、エクリプス、ロウェルギア。
中央平原、深度1を進むメンバーは、さっそくオウミの町から中央平原へ。
馬車は使えないので、改造し鎖を付けた大きなトロッコにエアリア以外の五人が乗り、上空を飛んで中央平原へ入る方法を取った。
そのまましばらく上空を……と、思ったが。
「うおおおお、でけええええ!? エアリア、降りろ!!」
「お、おう!!」
とんでもなくデカい『鳥』が、エアリアたちの背後に迫っていた。
大きさは数十メートル。綺麗なエメラルドグリーンの両翼で、顔はドラゴンのようだった。
ロウェルギアは言う。
「おやおや、『イルヤンカ』ですね。空を統べる魔獣の一体……さてさて、やりますか?」
「やらねぇよ!! エアリア、早く下降!!」
「わ、わかってる!!」
エアリアは下降するが、背後からイルヤンカが迫ってくる。
エメラルドグリーンの巨大な両翼、身体付きはがっしりしており、オークに翼が生え、顔だけドラゴンのような歪さだった。
すると、エクリプスが言う。
「このまま降りたら、降りた瞬間を狙われるわね……撃退するしかないわ」
エクリプスは、白い本を手に取る。
「『聖典』」
ピッ、と一枚のページを抜き取り、イルヤンカに向けて投げる。
「『焔の青鷺』」
すると、ページが燃え上がり、青い炎に包まれたサギがイルヤンカに襲い掛かった。
青く燃えるサギはイルヤンカに纏わりつく。そして、一気に身体が爆ぜ青く燃え上がった。
だが、炎はすぐに消え、ほぼ無傷のイルヤンカが追って来る。
『ガオオオオオオァァ!!』
「くっそ!! エアリア、下降中止、やつを振り切るしかねぇ!!」
「おう!! やっぱり逃げるより戦うのがいいぞ!! よーし!!」
「ロビン、できる範囲でいい、やつを牽制しろ。ロウェルギア、エクリプスは魔法で応戦!!」
「アタシは!?」
「遠距離攻撃、あいつにダメージ与えられるほど強いか?」
「うぐぐ……」
ヒジリは、イルヤンカを見て目を輝かせていたが、空中では自分の遠距離攻撃がそこまで効果的じゃないことを自覚しているのか、悔しそうにトロッコにしがみついた。
レイノルドは、丸盾を右手に装着しヒジリに言う。
「おいヒジリ。お前の出番はあるぜ」
「え、マジ?」
「おう。準備しておけよ!!」
レイノルドは作戦を考え、逃げ回りながら説明をした。
◇◇◇◇◇◇
ロウェルギアが両の五指を開くと、指先に小さな『黒い玉』が十個、現れた。
「さあ、圧縮した『闇』の玉……喰らってみますか? 『闇弾』!!」
「焼けないなら、凍らせてみようかしら……『冷徹な雪男』」
十個の黒い球が複雑な軌道を描きながら飛び、青白い雪のような毛むくじゃらのオーガが、白いページから飛び出した。
そして、エアリアの背後に迫っていたイルヤンカに襲い掛かる。
『グオルルルルル!!』
黒い玉が触れると爆ぜ、雪男がしがみ付くとイルヤンカの身体、翼が凍り付きはじめる。
そして、トロッコのフチに片足で立つロビンが弓を構え、射る。
すると、真っすぐ飛んだ矢がイルヤンカの右目に当たった。
「うっそ、刺さんないし!!」
驚くロビン。目を閉じはしたが傷を与えるほどではなかった。
レイノルドは叫ぶ。
「隙はできた。ヒジリ、行くぜ!!」
「おう!! 頭カチ割ってやる!!」
レイノルドは丸盾を遠投。そして、トロッコから飛び出したヒジリが丸盾を足場に跳躍。
「金剛拳、『軍荼利戦斧』!! カチ割りぃぃぃぃぃぃぃ!!」
空中に、巨大な両腕が現れた。
その手には黄金の戦斧を持ち、ヒジリが拳を振り下ろすと、金剛の腕も斧を振り下ろす。
大斧は、イルヤンカの頭を叩き割り、そのまま地面に激突。
ヒジリはイルヤンカをクッションに着地し、カチ割った頭に飛び乗って拳を突き上げた。
「勝ちぃぃぃぃぃぃぃ!! なーっはっはっは!! って……あれれ」
すると、いつの間にか周囲を囲まれていた。
巨大な狼に跨った、ゴブリンの上位種ナイトゴブリンだ。
知能が高く、住処には鍛冶場があり、装備など自作するという。
ゴブリンナイトは剣を手に、鎧を装備し、騎乗しているオオカミにも鎧を纏わせていた。
その数、三十以上。
「く、はは」
ヒジリは、ニヤリと顔を歪めるように笑う。
「そういやここ、戦いの宝庫だっけ。むふふん、さいっこうじゃない!!」
『ギャウウウウ!!』
群れのリーダーが、ヒジリに向けて剣を突きつけると、『ナイトゴブリンライダー』たちが一斉に襲い掛かってきた。
そして、上空からレイノルドが叫ぶ。
「ヒジリ、そっちに今は行けねぇ!! 空中から援護するから、戦いながら走れ!!」
「応!! 最高の展開、いっくわよー!!」
ヒジリは、向かって来たナイトゴブリンライダーに飛び蹴りを放つ。
レイノルドは言う。
「ロビン、エクリプスは援護を!! エアリア、低空飛行!! ロウェルギアは上空の警戒だ!! くっそ、マジで休む暇ねぇぞ、気合い入れろよ!!」
上空にはすでに、数体のイルヤンカが旋回をしている。
地上ではナイトゴブリンライダーがヒジリを追い回す。
エアリアは低空で飛び、上空にも、地上にも対抗できるようにしていた。
戦いはまだ、始まったばかり。
◇◇◇◇◇◇
一時間ほど、戦い、移動し、逃げ、殲滅を繰り返した。
ナイトゴブリンライダーがヒジリによって全滅させられたが、今度は別のオオカミの群れが襲い掛かって来た。
さらに、上空からはイルヤンカが襲って来た。低空で飛んでいたが、イルヤンカが口から炎を吐き出し、エアリアが回避行動を繰り返した。
このままではまずいと、レイノルドは指示を出す。
「完全撤退だ!! あっちに森がある。逃げるぞ!! ヒジリ、トロッコに乗れ!!」
「えー!! まだいけるわよ!!」
「こっちが面倒なんだ。こいつらはもう振り切る。エクリプス、煙幕的な魔法ないか!?」
「あるわよ」
エクリプスは、魔法で真っ黒な霧を放ち、周囲を包み込んだ。
そして、一筋の光をエアリアの目の前で照らし、誘導する。
ヒジリがしぶしぶとトロッコに戻ると、エアリアは一気に加速。森に飛び込んだ。
森に飛び込むなり、レイノルドたちはトロッコから飛び降り、素早くトロッコをアイテムボックスへ。そしてエクリプスが魔法で地上に穴をあけ、一気に飛び込み、蓋をした。
一瞬で地面に穴をあけ、四方を固め、土を固めて蓋をし、蓋に草を生やし偽装……ほんの数秒の早業だ。
しばし、六人は息を殺し、地上の気配を探り……ロビンが言う。
「……うん、近くに魔獣はいないみたい」
「そうか……あ~、最初っから飛ばしすぎだぜ」
「ンフフ。まだ深度1、しかも序の口も序の口ですネェ。こんな程度で疲労するようなら、先が思いやられますよ」
「うっせーな。わかってるよ」
「あー楽しかった!! いやー、ここ最高ね!!」
「あたいも、思いっきり飛べて楽しかったぞ!!」
ヒジリ、エアリアは満足していた。
レイノルドはため息を吐く。
「これでも序の口か……とりあえず、急ぎではないし、警戒しつつ進むしかねぇ。戦いは避けられそうにないし、ヒジリには頑張ってもらわねぇとな」
「上等!! むしろこっちからお願いしたいわね」
「ンフ。さて……ワタクシの脳内地図では、ここから東に進むと大滝があります。そこを目指して進むのがいいでしょう」
「大滝ぃ? 魔獣、出てくんの?」
ヒジリが怪訝そうに言うと、ロウェルギアは歯茎を見せながら笑う。
「それはもう。深度1でも最大、最強クラスの魔獣、『カリュブディス』の住処です。このチームは、全より個の戦いを想定した組み合わせなのでしょう? でしたら、カリュブディスを討伐し、大滝を登った先にある深度2を目指すのがよろしいかと……クフフ」
「……まあ、そうだけどよ。カリュブディスだと? どういう魔獣だ?」
「大滝……そうですね、『カリュブディス大滝』とでも名付けましょうか。その大滝の周囲には巨大な湖……『カリュブディス湖』があります。その湖を住処とする、水生生物です」
「……水の魔獣か」
「やる!! 面白さしか感じない!! アタシ、やるわよ」
「私も、補佐はできるわ」
「あたいもやるぞ!!」
「あ、あたしは……あんまり自信ないけど」
「……はぁ、やるしかねぇか」
レイノルドはため息を吐き、全員に言う。
「うし。じゃあ、少し休憩したら『カリュブディス湖』に行くぞ。そこの主を倒して、カリュブディス大滝を登って深度2に進むルートでいくぜ。道中、なるべく戦闘しないように進もうぜ」
「えー、アタシ、戦いたい」
「我慢しろっての。ハイセが苦労するわけだぜ……とにかく、メシでも食うか」
こうして、レイノルドたちは『カリュブディス大滝』を目指し、進むのだった。
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