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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十六章 魔界~工業国メガラニカ編~

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おかしなところ


 工業国メガラニカに向かい、四日が経過した。

 馬車は順調に進んでいる。あとはメガラニカに向かい、銃をエサにしてロウェルギアと謁見するだけ。

 馬車に揺られながら、ハイセは銃のマガジンから弾丸を抜つつルクシャナに聞く。


「ルクシャナ。魔王ロウェルギア側には、『オーバースキル』の保持者はいるのか?」

「いるよ。ってか、ロウェルギア自身もオーバースキル持ち」

「能力は?」

「『冥神(デルピュネ)』……闇属性の使い手。戦ったことないからわかんないけど、インダストリーと同じかそれ以上は強いと思う」

「……なるほどな」


 ハイセはマガジンに弾丸を込め、再びマガジンを銃に装填する。

 手慰み。暇さえあれば銃に触り、分解し、ハイセは理解を深めていく。そうすることで使用できる武器が増えていたが……最近はさっぱり増えない。

 だが、理解することは悪いことではない。ハイセは暇さえあれば銃をいじっていた。


「あとは、『嵐神(ラファエル)』と『獣神(フォーブ)』……こいつらはマジ強い。アタシと同じくらいで、なおかつロウェルギアの崇拝者」

「……嵐と、獣ね」


 エクリプスが、ハイセの作った木彫りの鳥を弄びながら言う。

 穴を開け、紐を通し、魔法で劣化しないように保存し、今は首に下げている。ルクシャナに言いつつも、視線は木彫りの鳥に向いていた。

 そして、猫の木彫りを弄りながらプレセアが言う。


「戦う可能性、ある?」

「さーね。でも、ヤるなら大歓迎。アンタらもでしょ?」

「俺はどっちでもいい」

「ふふ。私はハイセの望むままに」

「私、戦闘は好きじゃないし、得意じゃないわ」


 なんとも静かなメンバーだった。

 ルクシャナは、荷車の床にゴロンと寝転んでいう。


「アタシが知ってるのはこれで全部。あとはもう、行ってみないとわかんないわ……でも、銃とノブナガの信者はマジで関りたくない」

「……とりあえず、エサはあるんだ。主導権はこっちにある」


 ハイセは、自動拳銃をクルクル回して言うのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 メガラニカが近づくにつれ、周囲の景色が妙な感じになっていた。

 

「……ねえハイセ。街道……すごく綺麗だわ」


 プレセアが言う。

 指先に精霊が纏わり付いており、言われずとも周囲、先を探っているようだ。

 荷車から身を乗り出し街道を確認すると、これまでとは少し違う。

 

「……この道、見たことあるな」


 道は、綺麗に舗装されていた。

 ただの舗装ではない。土の地面を平らにし、さらに『泥のような何か』を流して固め、スベスベにしたしてあった。そして道路の中央にはオレンジ色の線が引かれ、その両隣には点線が描かれている。

 ちょうど、馬車が通れるサイズの道になっていた。

 ハイセは思い出したように言う。


「……以前、これと似た道を見たことがある。禁忌六迷宮、『デルマドロームの大迷宮』の下層……そういえば、ノブナガの日記に書かれていたな」


 ハイセは、日記を取り出しページをめくる。すると、久しぶりに読める項目があった。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇月〇〇日 曇りのち雨

 道の舗装について意見を求められたけど……専門家じゃねぇしよくわからん。とりあえず『アスファルト舗装』とか、車が走ること想定して『二車線』とか、『中央線』とか提案してみたら、みんなすげえ驚いていた。オレの感覚じゃあフツーのことなんだけど、異世界じゃ画期的アイデアっぽい……これってある意味『チートで無双』かもしれん。はっはっは。

 ◇◇◇◇◇◇


 日記を閉じ、ハイセは言う。


「アスファルト舗装、このオレンジの線は『中央線』で、こっちの点線は『二車線』ってやつか? エクリプス、馬車を左側の、一番左に寄せてくれ」

「ええ、わかったわ」


 エクリプスは手綱を握り、馬車を右に移動させる……すると、向かい側から馬車が、右側を通って走って来た。さらに、別の馬車が別の車線を通り、馬車を追い抜いていき、そして再び車線を戻る。


「なるほど。これが『左車線通行』ってやつか」

「意味不明……ハイセ、どういうこと?」

「ノブナガの決めた……というか、ノブナガのいた世界のルールだ。馬車はこの線の左側を、追い抜く場合はその隣の斜線、オレンジの線を越えてはいけないルールらしい」

「ふーん……変なの」

「でも、理にかなっているんじゃない? 馬車同士の衝突なんて珍しくないことでしょう? でも、このルールなら衝突することはないわ」


 エクリプスが言うと、プレセアは納得したのか頷く。

 ハイセはルクシャナを見た。


「ルクシャナル。メガラニカでは、こういうルールがあるのか?」

「さあ? アタシ、メガラニカ行ったことないし」

「……めんどくさいことにならないといいが」


 馬車は、左側を進む。

 『アスファルト舗装』のおかげで揺れもなく、ウノー、サノーも走りやすそうだった。

 何度か馬車とすれ違う。そして、かなり大きな荷物を載せた馬車とすれ違った。

 金属製の『コンテナ』とハイセは気付き、コンテナをいくつも連結させて運ぶ馬車が通る。馬十頭で引いているのを見てハイセは言う。


「すごいな……あれ、何を運んでいるんだ?」

「メガラニカ行きなら、資材かしら……一応」


 プレセアが指をならすと、黒い光がコンテナの一つに吸い込まれていった。


「マーキングよ。何が役に立つかわからないからね」

「……お前のそういうところ、かなり助けられてるな」

「……いきなり何?」

「別に」


 ハイセは柄にもないことを言ったことを後悔、プレセアは少しだけ頬を染めていた。

 エクリプスが少しだけムスッとするが、軽く咳払いして言う。


「こほん。ハイセ……工業国メガラニカに入るのはいいけど、全員で行動するのかしら?」

「その件は俺も考えていた。今夜、話し合おう」

「わかったわ」


 そして、夕方になり街道から少し外れ、木々が生い茂る森に馬車を停めた。

 食事をし、焚火をして紅茶を飲んでいると、なんとアイテムボックスからクレアが飛び出してきた。


「ふいー、やっと出て来れました!! 師匠、いきなり眠らせるなんてひどいです!!」


 エクリプスを見ると、困ったように言う。


「一週間は寝たきりになる特別な魔法だったけど……あなた、どうやって目覚めたの?」

「えーと、エクリプスさんの睡眠魔法を珍しがったタイクーンさんが、解呪の魔法をいろいろ実験して目覚めました。うう、いつの間にか実験台になってました」

「ふーん。タイクーン、やはり優秀ね」


 ちなみに、エクリプスの寝たきりになる魔法は、魔法そのものに栄養を込めてあるので、一週間寝たままでも餓死したりすることはない特別な魔法だった。


「タイクーンさん、ヒジリさんも起こそうとしたので止めました。えへへ、師匠、これからは一番弟子のクレアがお役に立ちますよ!!」

「……わかったからくっつくな」


 クレアはハイセの隣に移動し、腕を掴んでギュッと胸を押し付ける。

 こうして、賑やか担当のクレアがパーティーイン。

 ハイセは、めんどうなので本題に入ることにした。


「エクリプスが日中に言った件だが……魔王ロウェルギアには、俺とルクシャナが謁見する」

「……理由は?」

「えと、なんの話ですか?」


 途中参加のクレアは首を傾げるが、ハイセは説明する気がないようだ。


「念のためだ。俺と案内のルクシャナ、エクリプスを中心とした街での待機組に分ける。メガラニカは『ヤバイところ』らしいからな……人間である俺らが集まって行動するリスクは避ける」

「つまり、パーティー分断ってことね」

「ああ。メンバーがいるアイテムボックスもエクリプスに預ける。エクリプス……お前の魔法で、姿を消したり、姿を変えることはできるか?」

「可能よ。例えば」


 エクリプスはクレアに向かって指をパチンと鳴らすと、クレアの肌が褐色に、髪はそのまま、頭からツノが生えてきた。


「え、え、なんですかこれ!!」

「魔族の擬態魔法。使えると思って、待機中に考えていたの。幻影だけど、魔力で作った実体のある幻影を肉体に投射しているから、まず見破れないわ」

「おお、すごいじゃん。ね、ね、その理論だと、アタシも人間になれる?」

「ええ。ツノを消して、肌の色と髪色を変えるだけなら」


 ハイセは、鏡を見て驚いているクレアを見て言う。


「これは便利だな……よし。町に入る前に、お前たちはこの偽装をして町で待機。俺、ルクシャナは人間として、魔王ヘスティアの『魔王印』を使って、銃をエサに魔王に謁見する。プレセア、俺に精霊を付けておいて、俺が危険信号を発したら乗り込んでこい。エクリプス、その場合……」

「ええ。容赦しないわ。ふふ、S級冒険者序列二位『聖典魔卿(アヴェスター・ワン)』の力を見せてあげる」

「よし……とりあえず。戦いは最終手段。まずは俺がロウェルギアと話す」

「師匠!! よくわかんないですけど……弟子の私は師匠と行きますからね!!」

「ああもうわかった。くっつなっての」


 ツノが生えたままのクレアがハイセにくっつくと、ツノの先がチクチク当たって地味に痛い……そんなことを想うハイセだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
ハイセ、エクリプス、プレセアの静かなメンバー良かったな 特にハイセとエクリプスは前から相性良いと思ってたが息の合ったパートナーって感じがして公私ともに上手くいきそうな感じがする クレアはにぎやか担当っ…
状況がヒートアップしそうな気がします。アイテムボックス内のメンバーからのサポートは必要でしょうか? また、事態が制御不能になった場合に備えて、ヒジュリ氏の存在も必要だと感じています。 エクリプスの存在…
相手の出方次第でどうなるか?難しい舵取りで発揮されるエクリプスの内助の功。とても良いです。
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