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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十六章 魔界~工業国メガラニカ編~

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メガラニカに向かって

 ウノー、サノーが引く馬車は順調に進んでいた。

 もう、産業国レムリアは見えない。真っすぐに伸びる街道を、馬車はひたすら進む。

 車内にいるのは、ハイセ、エクリプス、プレセア、ルクシャナの四人。

 ウノー、サノーは頭がいい。御者は特に必要ないので、四人は馬車で自分の時間を過ごしていた。

 ルクシャナは、三人を見る。


「ねー、なんか会話ないの?」


 ハイセは、リネットからもらったナイフで、木を削って何かを彫刻していた。

 プレセアは、指先に黒い光を宿し、弄んでいた。

 エクリプスは、ハイセの傍に座り、本を読んでいた。

 三人はルクシャナを見て言う。


「まだ初日だ。特に会話する必要ないだろ」

「私は、ハイセの傍にいれたら十分」

「私も、会話する必要性を感じないわ。外は精霊に見張らせているし」


 基本的に、この三人は静かなタイプだ。

 ルクシャナは退屈なので、車内に寝転がって言う。


「アタシは退屈よ。たぶん、メガラニカでは戦闘になる。なんかこう……アタシに聞きたいことないの? 工業国メガラニカについてとか」

「いずれ聞く。でも今は、まだ冷静になれていない……考えることも多いし、今は心を落ち着かせるまで、待ってくれ」

「はいはい。意外と繊細なのね」


 ルクシャナは欠伸をすると、なぜかプレセアの傍へ。

 指先に灯った炎が気になるのか、ジッと見ている。


「何?」

「この光、すっごい綺麗ね。あなた、どういう能力?」

「『精霊使役』の能力よ。魔界の闇精霊とお話してるの」

「へえ、そんな力あるんだ。ね、私も会話できる?」

「それは無理。でも……」


 プレセアが命じると、ルクシャナの周囲に黒い光がいくつも集まり、クルクルと旋回する。

 ルクシャナは「あはは」と笑い、光に触れようと手を伸ばしていた。


「平和なもんだ……」


 ハイセは、木彫りの小鳥を彫り終えた。

 器用なこともあり、そのクオリティは高い。

 そして、それをエクリプスに。


「え、く、くれるの?」

「いらないなら捨てていい」

「い、いるわ。ありがとう……大事にする」


 ハイセは頷き、別の作品を彫り始めた。

 すると、プレセアがハイセの隣に座る。


「私、猫の木彫りが欲しいわ」

「なにリクエストしてんだよ……ったく」


 結局、ハイセはネコの木彫りを作り、プレセアに渡すのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 その日の夜、ハイセたちは焚火を囲い、これからの話をすることにした。

 食事はハイセの出した肉串、シム-ンの作った栄養たっぷりの野菜スープだ。

 ルクシャナは「うまい、おかわり!!」と三杯もおかわり。シム-ンがいれば喜んだろうとハイセは思いつつ、おかわりをよそう。

 そして、食後……ハイセはルクシャナに言う。


「メガラニカの魔王ロウェルギアって、どんな奴だ?」

「狂人よ。初代大魔王ノブナガの崇拝者でね……子孫ってこともあり、その崇拝っぷりは常軌を逸してる。そもそも、メガラニカの始まりは『銃』の研究から始まって、兵器開発になったって聞くわ」


 ルクシャナが「つまんない国」と肩をすくめる。

 そしてプレセア。


「魔導武器だったかしら……それ、強いの?」

「ええ。アタシは趣味じゃないけど、魔族の魔力を吸収して奇跡を放つ武器。パシフィスやレムリアでは、一般人が持つことは禁止されてる。持つ条件が『ノブナガ教』に入信することなんてアホじゃん?」

「……なんだ、それ」

「初代大魔王ノブナガを崇める宗教よ。現在の大魔王ヒデヨシは無関係……ロウェルギアのやつ、ヒデヨシ様を大魔王と認めていないのよね」

「……歪んでいるわね」


 エクリプスが紅茶を飲みながら言う。

 ルクシャナも「ほんとよね」とウンウン頷いた。


「メガラニカでは、観光とか期待しない方がいいわよ。あそこ、魔導武器開発の施設ばかりだし、住んでる人の全員が施設で働いてる。あるのは……デカい教会、工場、研究所、わずかな商店ばかりね」

「……退屈そうなところだ」


 ハイセがつまらなそうに言う。

 そして、プレセアも言う。


「で、そのロウェルギアが管理している『銃』を破壊しないと、シンシアの命がないのよね」

「そーみたいね。でも、ノブナガの残した最後の『銃』は、厳重に管理されてて、ロウェルギアとその側近しか見ることできないって聞いたわ。お披露目が数十年に一度あるとかないとか……」

「とにかく、魔王ロウェルギアに謁見するしかないだろ。そのための材料はある」


 ハイセは自動拳銃を召喚しクルクル回す。

 ロウェルギアに会うための材料としては最高だった。


「……」

「プレセア。どうしたの?」


 プレセアは、現在いる森の奥を見ていた。


「……見られているわ。と言っても、人じゃない……精霊?」

「何? お前以外の『精霊使役』使いがいるのか?」

「厳密には違う。どうやら、魔族のスキルによって使役されているみたいね」

「それ、インダストリーの監視よ。ロウェルギアの『銃』を壊す瞬間を、あいつが逃すはずないもんね。どっかで見てること間違いないわ」

「……最悪な野郎だな」


 ハイセは舌打ちする。


「とにかく、工業国メガラニカに向かうしかない。そのあとは、俺の銃で『交渉』する」

「……どういう交渉? あなたが言うと不穏しかないわ」


 プレセアがジト目でハイセを見るが、ハイセは何も言わなかった。

 エクリプスが言う。


「さて、水浴びでもしましょうか。プレセア、ルクシャナ、あなたたちもどう?」

「お願いするわ」

「そーね。おねがい」


 エクリプスが土魔法で四方に壁を作り、魔法でお湯を出し、三人でシャワーを浴び始める。


「すっご!! エクリプス、アンタって器用なのねー」

「ふふ。私がいる限り、衣食住で困ることはないからね」

「……」

「あれ、プレセアなんで黙ってんの?」

「……別に」


 プレセアの視線が、エクリプスとルクシャナの胸に向いていた。

 エクリプスは知っていたが、ルクシャナも大きい……なんとなく居づらいプレセア。

 一方、ハイセは少し離れたところで、焚火に当たりながらランプの明かりで本を読んでいた。


「メガラニカまで一週間……いろいろ、考えておかないとな」


 魔王ロウェルギア。恐らく、一筋縄ではいかない。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
ハイセが理由もなく自分から女性にプレゼントするのって作中では初めてじゃないですか? しかもそれがエクリプス! エクリプス登場回って短い出番の中で強烈なインパクトを残すエピソードがあるから好きです!
エクリプスは、それ自体が強いキャラクターであり、強い主人公を持っています。正直、彼女は完璧なヒロインです。私がこの小説をまだ読み続けている理由の一つは彼女です。 ヘイズが自分のチームを作ることを期待し…
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