表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十五章 魔界~産業国レムリア編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

391/422

向かうべきところ


 サーシャたちは一度、宿に戻って話し合いをすることにした。

 宿の一室に全員が集まる。アイテムボックスにいたハイセたちも出て、サーシャたちからシンシアのことを聞く。

 話が終わると、ハイセは言った。


「インダストリー、殺そう」


 ゾッとするほど冷たい声だった。

 同時に、サーシャたちはあの場にハイセがいなくてよかったと思った。もし、ハイセの目の前でシンシアが危険な目にあったら、ハイセは産業国レムリアを徹底的に破壊し、インダストリーに凄惨な拷問をしていた可能性が非常に高い。

 今でこそ、ハイセは仲間たちと馴染み、共に過ごしているうちに柔らかくなっているが……基本的な部分では『タガ』が外れている。

 すると、ルクシャナが言う。


「今はやめた方がいいわ。シンシアだっけ? その子、間違いなく死ぬわよ」

「…………」

「それに、インダストリーは自分の死すらも『面白いこと』の一つにしか考えてない。あいつは性格が破綻してんのよ……それと、強い。アンタもクソ強いし、アタシも勝てる気しないけどね」

「で……インダストリーの言うこと聞いて、メガラニカに行くのか?」

「それしかないんじゃない? あと、メガラニカはマジな閉鎖国だから、普通に入国できないと思う。それに、あそこの魔導武器技術、とんでもないからね。正直、アタシも関わりたくないところ」


 ルクシャナは肩をすくめる。

 ハイセは少し考えて言う。


「……ノブナガの残した、最後の『銃』ってのは?」

「その名の通りよ。大昔、ノブナガ様が使っていた『銃』が一つだけ残ってんのよ。でも、ノブナガ様の銃は触れただけで消えちゃうから、調べることも、内部構造を知ることもできない。今は、魔王ロウェルギアが厳重に管理してるとしかわかんない」

「ね、ハイセ。ハイセは触れられるんじゃない?」


 と、ロビンが言う。

 ルクシャナは「?」と首を傾げ、ハイセはテーブルに手を向け、『自動拳銃』を具現化した。

 ルクシャナは「え、マジ」と驚き、ハイセの隣に移動して自動拳銃に触れる。だが、触れた瞬間に砕け散った。


「基本、『武器マスター』は本人しか使えない。ノブナガの『武器』を俺が触れてもいいか、疑問が残る……」


 検証のしようがない。

 タイクーンが言う。


「だが、シンシアを救うにはやるしかないのだろう。それに、工業国メガラニカにはどのみち行かねばならないのだろう?」

「ああ。まあ……俺がノブナガと同じ能力を持つことは、交渉材料になる。サーシャ、工業国メガラニカは、俺が行く」

「……それしかないな。それに、今の私は『白神闘気』の後遺症で、うまく闘気が練れない。しばらく休ませてもらうしかないな」


 サーシャは悔しそうに言う。

 タイクーンは頷き、続けて言う。


「ボク、レイノルド、ロビンも交代だ。さすがに、頭に血が上った状態では、いつもの動きができん。二人とも、問題ないな?」

「……ああ」

「うん……わかってるよ」


 三人は、シンシアがインダストリーにやられるところを直に見ている。インダストリーに対する怒りはあり、普段より冷静になれていない。

 レイノルドは、自分を好いてくれているシンシアが倒れる瞬間、何もできなかった自分を責めていた。

 ロビンも、ずっと俯いている。


「……よし。じゃあ、これからは俺が」

「はいはーい。アタシも出る!!」

「じゃあ私も!!」

「……斥候が必要ね。私も出るわ」

「前衛ばかりね。ふふ、私も出るわ」

「ちょっと、アタシもいるからね」


 ヒジリ、クレア、プレセア、エクリプス、そしてルクシャナだ。

 六人。さすがに数が多い。

 ハイセは言う。


「……斥候のプレセア、魔法職のエクリプス、それと案内のルクシャナは必要だ。ヒジリ、クレア、お前らのどっちかがメンバーだ」

「むむ、ヒジリさん!! 私、そろそろ師匠と冒険したいです。お願いします!!」

「イヤ。アタシだって暴れたいし。それに、ルクシャナだっけ? こいつとも勝負したい!!」


 二人は顔をくっつけて睨み合う。

 タイクーンは「クレアがヒジリ相手に引かないとはな」と言うと、サーシャも「成長したのだろう」とウンウン頷く。

 二人が引く気配がなかったので、ハイセはエクリプスをチラッと見た。

 エクリプスは頷き、二人に向かって指を軽く振るうと、クレアとヒジリは崩れ落ち、グースカといびきをかき始めた……睡眠の魔法である。


「俺、エクリプス、プレセア、ルクシャナの四人で行く。残りはアイテムボックスで待機だ。出発は明日……目的地は、工業国メガラニカだ」


 そう言い、話し合いは終わった。

 この日、特に盛り上がることもなく、静かに時間が過ぎていくのだった。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 深夜。

 ルクシャナは一人、インダストリーのいる室内プールに来ていた。

 インダストリーは相変わらず、浮き輪に乗ってプカプカ浮かんでいる。


「……アンタ、どういうつもり?」

「なにが?」


 インダストリーは変わらない笑みを浮かべていた。

 ルクシャナは、どこかイラついたように言う。


「メガラニカの魔王ロウェルギア。あいつがノブナガを神格化して崇めてるなんて、魔界に住む魔族ならみんな知ってる。そいつが命と同じくらい大事にしている最後の『銃』を壊せ? そんなことしたら、どうなるかわかってんの?」

「まあ、許さないだろうね。ロウェルギア、間違いなく狂うよ」

「だったら、なんで」

「決まってるじゃないか。『面白い』からだよ」


 プールが一瞬で凍り付き、インダストリーは氷の上に立つ。


「あは、面白いと思わない? 遥々やってきた人間が、同じ人間であるノブナガ様の残した『銃』を壊すなんてさ。それに……ハイセだっけ? 彼、ノブナガ様と同じ『能力』を持ってるそうじゃないか。くくく、ロウェルギアはどんな反応するかなあ?」

「……アンタ、マジで頭おかしいわ。連中が『インダストリーに言われて来た』なんて言ったらどうすんの? まず間違いなく、ロウェルギアはアンタを殺しに来る。わかんないの? ロウェルギアも同じ『オーバースキル』保持者よ」

「ま、それはそれで楽しそうじゃないか。ふふ、ああそうだ、キミたちの同行、ちゃんと見てるから。ふぁぁぁ……眠い。そろそろ寝よ。じゃあルクシャナちゃん、おやすみ~」


 インダストリーは出て行った。

 残されたルクシャナは、大きなため息を吐いて言う。


「インダストリー。アンタ……シンシアを返したら間違いなく殺されるわ」


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 ハイセたちは宿を出た。

 ハイセ、エクリプス、プレセア、ルクシャナ。

 楽園の光景に眉一つ動かさず、工業国メガラニカに向かう門へ向かって歩き、門を出る。

 振り返ることなく進み、馬車をアイテムボックスから出した。


「メガラニカには、ここから一週間くらいの距離ね。何度も言うけど、あそこは超閉鎖国だから、普通に入国できないわ」

「別にいい。行くぞ」


 馬車に乗り込み、グランドッグのウノー、サノーに命じると、馬車は走り出した。

 ハイセは、一度だけ産業国レムリアを……遥か頭上に浮かぶ氷の『楽園』を、そして、そこにいるインダストリーに向かって言う。


「魔王インダストリー……戻って来たら、殺してやる」


 二つ目のゲートキーは手に入らなかった。

 そして、シンシアを……大事な仲間を人質に取られ、ハイセたちは工業国メガラニカに向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
eqwkhbr532l99iqc5noef2fe91vi_s3m_k1_sg_3ve7.jpg

お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
エクリプスは健気で可愛い。サーシャってハイセに対して何も良い事して無いからね。レイノルドもハイセを追い出した事に対してみっともない自己弁護しか言わないからダサい。レイノルドに威厳とかカリスマとかいう言…
5人パーティー制とか言う物語り開始時点で説明されるような設定なのに作品の終盤で後付で追加された必要性皆無で作品の面白さに何の貢献もしていない意味不明な後付設定
>ダスト2さん、笑笑 エアリアは、モッフル君ENDですかね? ハイセの第一声、「インダストリーを殺そう」は、その後にルクシャナに窘められてますし、ハイセはそんなに浅慮だったかと気になりました。「………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ