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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十五章 魔界~産業国レムリア編~

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レムリアの魔王インダストリー⑦/楽しいこと

 サーシャが目を覚ますと、控室ではなく宿屋だった。

 そして、ベッドの傍ではピアソラがスヤスヤと寝息を立てており、身体を起こすと裸だった……どうやら、脱がして治療をしたらしい。

 サーシャはベッドから起き、アイテムボックスから着替えを出して着る。

 準備を終えると同時に、ピアソラが目を覚ました。


「ん……あ、サーシャ!! 大丈夫ですの!?」

「ああ。お前が治療したんだ、大丈夫に決まっている……っと」


 サーシャは、ふらりと揺れた。

 身体の傷は完璧に完治している。だが、『白神闘気』を使うと時間が遅くなったような感覚があり、怪我ではない微妙な『ずれ』が残っている感覚があった。

 時間が立てば治るだろうが、今は無理ができないだろう。

 サイドテーブルを見ると、修復された鎧、剣が置いてあった。

 そして、国崩。


「……砕けたはずなのだがな」

「その剣、確かに砕けましたけど、サーシャが気絶している間に、全ての破片がくっついて元通りになったそうですわ」

「なるほど。恐らく、この剣を作った能力者が付与した力か……さしずめ、自己修復機能といったところだな」

「鎧の方は、町の鍛冶屋に直させましたわ」

「……待て。私は、どのくらい寝ていた?」


 鎧の修復……そんなすぐにできるのだろうか?

 ピアソラは言う。


「三日間、サーシャは寝ていましたわ。本当に、心配しましたわ」

「み、三日……」

「あ、プラチナランクの更新も終わりましたわ。わたくしたち、ちゃーんとプラチナランクですわ!! ほらほら、カードも綺麗になりました」


 プラチナランクのカードは、キラキラと透き通っていた。

 すると、ドアがノックされ、レイノルドたちが入って来た。

 レイノルド、タイクーン、ロビン、そしてシンシアに……なんと、ルクシャナも。

 

「る、ルクシャナ」

「目、覚めたみたいね。というわけで、アタシに勝ったのはアンタ。約束は守るから。それと、新チャンピオンおめでとう」

「あ、ありがとう……だが、王者の資格はすぐ辞退する」

「ま、そういうと思って、手続きしておいた。王座は空白、今度デカい大会開いて、新王者決定戦やるってさ。ま、アタシはもう興味ないけど」

「そうか……というか、なぜお前はここに?」


 そう言うと、ロビンが言う。


「ルクシャナ、あたしたちに同行するの。もうみんなとも挨拶済ませたよ」

「いやー……案の定、ヒジリと険悪というか、喧嘩になりそうだったぜ。なあタイクーン」

「ああ。似た者同士だな。ハイセは思った通り、嫌そうな顔をしていたが」

 

 ルクシャナは、部屋のソファにドカッと座り、サーシャたちに言う。


「インダストリーと話するならいつでも行けるわ。どうする?」


 と、言った瞬間……サーシャのお腹がキュウウウウウっと鳴った。

 サーシャは真っ赤になりお腹を押さえる。

 レイノルドは苦笑して言う。


「その前に、メシが先だな。ちょうど昼時だし、サーシャの優勝祝いも兼ねて豪勢に行こうぜ」

「あ!! それなら、あたしとシンシアでいろいろ店を探したんだ~」

「そうそう。ワタシ、このお店に行ってみたいかも」

「ボクはどうでもいい。祝いはするがね」

「ねえねえ、アタシも参加していい?」

「わたくし、スイーツも食べたいですわ!!」


 結局、この日はサーシャの優勝祝いということで、店を借り切ってのパーティーとなった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 サーシャ、レイノルド、タイクーン、ロビン、シンシア、ルクシャナの六人は、ルクシャナの案内でプラチナランクしか入れない、『楽園』に直結する昇降機の前にいた。

 頭上には巨大な氷の塊。そこに楽園はある。


「インダストリーのヤツ、気分で『楽園』の外殻変えるのよ。前は星型だったっけ」


 ルクシャナは、自分のプラチナランクカードを見せ、ゲートを通る。

 サーシャたちもカードを見せ、六人はゲートを通って昇降機に入る。

 昇降機がすごい速度で上昇。まるで射出のようだった。

 そして、あっという間に『楽園』へ……昇降機から出ると、そこはもう入口だった。


「『楽園』へようこそ……って言いたいけど、マジでインダストリーには気を付けてね。アイツ、頭おかしいから」


 ルクシャナが言うと、サーシャたちは頷く。

 そして、ルクシャナの案内で楽園を進む。


「わあ~……」


 ロビンは、様々な遊具を見て目を輝かせていた。

 どう表現すればいいのかわからないものばかり。

 馬のような乗り物がグルグル回ったり、ジェットコースターが楽園内を走っていたり、巨大な船が揺れていたりと、もうわけがわからない。

 シンシアは、レイノルドの腕に掴まったまま言う。


「ワタシ……ここに来れるなんて、思わなかった」

「そうかい。でも、来てるじゃねぇか」

「うん……えへへ、冒険に出てよかった」


 シンシアはにっこり笑い、レイノルドの腕に強くしがみついた。

 目的が目的なので、寄り道をせずに『楽園』の奥へ。

 すると、巨大なドーム状の施設へ到着した。


「ここ、インダストリーの専用プール。普段、あいつはここで仕事したり、プールでのんびりしてるの。アンタらが来ることも伝えてあるから、すぐ会えるわよ」

「……よし、会おう。全員、気を引き締めてくれ」


 レイノルドたちは頷く。

 そして、ルクシャナがドアを開けて中へ。通路を進み、大きな扉を開くと……そこにあったのは、巨大なプールだった。

 円形の大きなプールに、ビーチボールや動物の風船などが浮かんでいる。

 サイドにはテーブル、ソファがあり、室内には様々な植物があった。

 そして……浮き輪に乗ってプールを漂う、一人の男。

 鍛え抜かれた細身の身体、サラサラの白髪、右腕には氷の結晶のようなタトゥーが入っており、頭には枝分かれしたツノが生えていた。


「お、いらっしゃ~い」


 魔王インダストリー。

 浮き輪でプカプカ浮きながら、軽く手を振り、読書を楽しんでいた。

 軽い男……そう思ったサーシャたち。

 インダストリーは、バタ足をしながらプールサイドへ。


「よっと」


 ハーフパンツ、素肌にアロハシャツを着た、どこにでもいそうな青年だった。

 サーシャは緊張しつつ、丁寧に一礼。


「魔王インダストリー殿とお見受けする。私はサーシャ」

「ああ、新チャンピオンね。いや~、キミ、すっごく強いね。ルクシャナちゃんより強いの初めて見た」

「きょ、恐縮です」


 インダストリーは、ニコニコしながら手を叩く。

 サーシャは、機嫌がいい状態と判断……さっそく本題へ。


「インダストリー殿。実はお願いがあります」

「ん、なになに?」

「あなたが持つ、『厄災封印ゲート・イゾルデシステム』第二の鍵をお借りしたい。私たちは、禁忌六迷宮……ネクロファンタジア・マウンテンの攻略をするために来ました」

「いいよ」


 …………静寂が訪れた。

 いいよ。間違いなく、インダストリーはそう言った。

 サーシャは、声を絞り出す。


「よ……よろしい、の、ですか?」

「ああ、いいよ」


 あまりにも、軽かった。

 が、インダストリーは言う。


「その代わり。ボクのお願い、聞いてくれたらね」


 やはり、そう簡単に事は進まないようだった。

 サーシャは舐められているのかと判断したが、すぐに言い方を変える。


「お願い、とは」

「ああ、別に資格を見せろとか、そう難しいモンじゃない。ボクってさ、楽しいことが大好きなんだ。だからさ、楽しませてくれよ」

「……えっと」

「キミたちの必死さを見たいな。というわけで……」


 と、インダストリーはシンシアを見てニカっと微笑む。

 そして、一瞬でシンシアに近づき、人差し指で胸の中心に降れた。

 シンシアの身体がビクンと跳ね、崩れ落ちた。


「はい、仕込み完了」

「な……何を!?」

「し、シンシア!!」


 レイノルドが支える。シンシアは目を見開いたまま、胸を上下させていた。

 タイクーン、ロビンも声が出せないくらい驚いている。

 サーシャは叫ぶ。


「インダストリー殿、シンシアに何をした!!」

「そう怒らないでよ。ちょっと、心臓に細工しただけ。ボクの意思で、いつでも心臓が凍り付くようにしただけさ」

「な……」


 すると、レイノルドがインダストリーのアロハを掴み、サーシャも見たことがないくらい顔に青筋を浮かべ、ドスの利いた声で言う。


「てめえ……殺すぞ」

「おー怖い。まあまあ、話は最後まで聞いてよ」


 タイクーンが、レイノルドの手を掴む。

 レイノルドはタイクーンを見て、舌打ちして手を離した。


「キミたちにお願いしたいのは、メガラニカの魔王ロウェルギアが命と同じくらい大事にしている、ノブナガの残した『銃』を壊してほしいんだ」

「じゅ、銃……!? なぜそれを。というか、破壊?」


 サーシャが確認すると、インダストリーは「そだよー」と軽く言う。


「別に、何かあるわけじゃないよ? でもさ、面白いじゃん。ロウェルギアが大事にしているものを、人間であるキミたちがぶっ壊すなんて、最高じゃないか?」

「……貴様」

「ああ、別に難しくないよ。触れるだけで壊れるらしいからね。よくわかんないけど、ノブナガ様が残した、最後の『銃』らしい。おかしいよね、触れれば砕け散って粒子化しちゃうから、研究もできないし、内部構造もわからないから同じのを作ることもできない。眺めることしかできないけど、ノブナガ様を感じれるとか……変態かよってな。で、そんな大事な物が消えたら、どんな顔するかなあ……ふふふ、面白そう!!」


 狂っていた。

 インダストリーは、子供のように笑っていた。


「シンシアだっけ? その間、その子は人質ね。ロウェルギアの銃を壊して、ついでにゲートキーをもらってきたら、最後のゲートキーを渡すよ。はい、話はおしまい。ああ、この子は預かるよ。じゃ、頑張ってね~」


 インダストリーは手を振り、部屋の奥へ消えて行った。

 そして、奥から魔族が数名来て、気を失ったシンシアを連れて行ってしまう。

 ルクシャナは、ペッと唾を吐き捨てた。


「ゲスでしょ? ああいうクズなのよ」

「…………ハイセがいなくて、本当によかった」


 サーシャは言う。レイノルド、タイクーン、ロビンも同じ怒りに染まっていた。


「……工業国メガラニカ。サーシャ、行くんだろ」

「ああ。だが……今の私たちでは、冷静に行動できないかもしれん」

「同感だ。メンバー交代の時期でもある……ハイセたちに任せるか」

「……うう、シンシア」


 こうして、シンシアが人質に取られた。

 新たな目的地、工業国メガラニカ、そして魔王ロウェルギア。

 サーシャたちは、シンシアを救うべく、次の国に向かうことになるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
Bruhhhh Haise should be there lol and Reynold should just shut up he's a fraud that's for sure
国崩はお役御免にしておいた方が良かったかと思います。双剣(二刀流)がクレアと被ってしまっています。あと、サーシャが闘気の精密な操作が出来るようになって、闘気の剛と柔の差別化もなくなりましたね。 ルク…
厄介な事になりそう。その分ハイセと仲間達の活躍が期待できる。
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