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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十五章 魔界~産業国レムリア編~

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レムリアの魔王インダストリー⑤/ルクシャナの提案

 控室に向かう通路にて、サーシャは崩れ落ちそうになるのを堪え、壁伝いに進んでいた。

 とんでもない倦怠感だった。

 『白神闘気(びゃくしんとうき)』……サーシャの到達した極み。究極の闘気の代償が、サーシャを苦しめている。

 サーシャは、全身の筋肉が千切れかけていた。

 酷い内出血もしている。ただ闘気を纏うのではなく、血管、筋肉、神経、細胞と人体の全てを強化し、時間すら超越したのだ。

 その代償は、計り知れない。


「……ぅ」


 声も出せなくなった。

 崩れ落ちず、気を失わないのは『気合い』を入れているから。

 敵意は感じないとはいえ、ここは魔族の領地。人間であるサーシャが一人倒れれば、何をされるかわかったものではない。

 サーシャは、なぜか笑った。


(……個人では使えない。ピアソラ……回復役が必須の、強化だな)


 まさに、チーム行動を前提とした強化。

 そんな時だった。


「こんなところで倒れると迷惑」


 サーシャの背後から、誰かが現れた。

 そして、サーシャの腕を掴み、肩を貸す。


「…………」

「さっきの技、メチャクチャな負担がかかるみたいね。まあ納得……フン、アタシを久々に焼き尽くせるような面白さのアンタが、こんなところで倒れるなんて許せないから」


 ルクシャナだった。

 サーシャは、口を開けようとするが、ルクシャナは言う。


「喋んなくていい。あと、アンタの仲間に声かけたから。そろそろ第二試合始まるからさっさと離れるわよ」


 本選選手は十六名。

 まずは予選。四つの会場で二日かけて試合をし、十六名の選手を選ぶ。

 サーシャは初日の勝者となった。本選出場が確定したのである。


「さ、行くわよ」

「……ん、しゃ、する」

「え?」


 感謝する。

 サーシャはそう呟き、気を失うのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 眼が覚めると、ベッドで寝ていた。

 そして、ピアソラが今まさにキスをしようと顔を近づけていたので、顔を手で掴む。


「むにゃ、サーシャぁ、何を」

「いきなり何をするつもりだ。まったく……」


 身体を起こすと、傷は癒えていた。

 ピアソラが回復してくれたのだろう。

 周りを見渡すと、見慣れた部屋……ホテルにあるサーシャの部屋だ。

 テーブルの上には鎧や剣などが置いてあり、ピアソラがやったのか寝間着だった。

 ベッドから降り、首をコキコキ鳴らす。


「ピアソラが治したんだな。ありがとう」

「ええ。でも……こんなひどい状態のサーシャは、久しぶりに見ましたわ。全身ボロボロで、内臓もかなり傷ついて……」

「……新技は、お前が傍にいないと使えないな」

「え!! それって……ずっとそばにいろ、ってことですの!? サーシャぁぁぁぁぁ!!」

「うわっ!?」


 ピアソラが飛びつき、ベッドに押し倒された。

 すると、ロビンとレイノルド、シンシア……そしてルクシャナが入って来る。

 シンシアは言う。


「ありゃ、お邪魔だったかな?」

「違う違う。いつも通りのことだって。ね、レイノルド」

「ああ。おいピアソラ、治療終わったならタイクーンと交換だ」

「え~? もうちょっとサーシャと一緒にいたいですわ」


 そう言いつつも、ピアソラはしぶしぶとアイテムボックスへ。そしてタイクーンが出てきた。

 サーシャは、この場にいるルクシャナを見る。

 最初に口を開いたのはレイノルドだった。


「こいつ、お前の新技が身体に相当な負担かけてるって見抜いて、オレらに声かけてくれたんだよ。で、気ぃ失ったお前をここまで運ぶ手伝いしてくれたんだ」

「そうだったのか……すまん、記憶が曖昧で、誰かに担いでもらった記憶はあるんだが」

「ま、気にしないでいいわ」


 ルクシャナは、一人がけのソファに座る。

 シンシアは、ルクシャナをジロジロ見ながら言う。


「それにしても、まさか闘技場のチャンピオンが、サーシャを助けるなんて~」

「あんな面白いの見たらね。当然、アタシと戦うことになったら使うでしょ? んふふ、メチャクチャ楽しみかも!!」


 レイノルドは、「おいタイクーン、なんかコイツ、ヒジリに似てないか?」と言う。タイクーンは「激しく同意する」とボソボソ言った。

 サーシャは言う。


「ルクシャナ。改めて、感謝する」

「ええ。そう思うんだったら、本選で優勝すること。ま~……アタシの見た感じ、優勝はアンタで決定みたいな感じね。最近の強いヤツ、みんなアタシが倒しちゃったし。この国でアタシとマジでやりあえるのなんで、もうインダストリーくらいしかいないと思ってたけど」

「インダストリー……魔王、インダストリーか」

「うん。そういや、なんでアンタらプラチナランクになりたいの? それと……魔族じゃない? そっちのアンタは魔族だけど、肌も白いし、ツノもないわね」


 サーシャは、ルクシャナに対して嘘をつきたくなかった。

 タイクーンを見ると、首を振る……だが、サーシャはさらに首を振った。


「私たちの目的は、その魔王インダストリーだ」

「え、戦うの?」

「違う。三大魔王の持つ『ゲートキー』こそ、私たちが求めるものだ」

「ゲートキー……って、アンタらまさか。『災厄』の封印を?」


 ルクシャナは知っていた。魔界に眠る最後の『災厄』のことを。そして、禁忌六迷宮のことを。


「そうだ。すでに、一つ目のゲートキーは手に入れた。残りは二つ」

「あーなるほどね。それでインダストリーに……でも大丈夫? インダストリーって、魔王だけどメチャクチャなクズ野郎よ? 『オーバースキル』保持者を手中に入れるためだけに、その子の両親殺すような外道クズ。ゲートキーくれなんて言って、素直に渡す奴じゃないわ」

「……ならば」

「戦う? それもありだけど……正直、アタシでもあいつに勝てるビジョンが浮かばないのよねえ。強いのは間違いないけど、得体が知れないって言うか……」


 ルクシャナは、ソファに深く腰掛ける。

 タイクーンは言う。


「ヘスティアが『残る二人の魔王はクズ』なんて言っていたが……」

「その、『オーバースキル』保持者が欲しいだけに、その保持者の両親を殺したってマジなのか?」


 レイノルドが言う。

 ルクシャナは「そうよ。その子、今は楽園で働いてる」と言う。

 ロビンは、嫌悪感丸出しで言う。


「うえ、あたしそいつ嫌いかも。っていうか……ハイセがいなくてよかったね。ハイセ、そういうの本気で嫌うし、プラチナランクとか無視して、楽園に乗り込んで魔王殺しに行っちゃうかも」

「「「「…………」」」」


 サーシャ、レイノルド、タイクーン、シンシアは黙りこむ……本気で、そんな気がしたからだ。

 サーシャは言う。


「とにかく、戦いは最終手段だ。まずはプラチナランクになり、魔王インダストリーのいる『楽園』を目指す。ルクシャナ、私はお前に勝つぞ」

「…………」

「……ルクシャナ?」


 ルクシャナはしばし考え、「うん」と頷いた。


「決めた。サーシャ、勝敗の有無に関わらず、魔王インダストリーに会わせてあげる」

「「「「「…………は?」」」」」

「ゲートキー、手に入れるんでしょ? 協力してあげるわ。その代わり……アタシも、アンタらに同行するわ」

「「「「「…………え」」」」」

「『災厄』との戦うなんて、最高に面白そうじゃない!! しかもアンタら、もうゲートキーひとつ持ってるんでしょ? インダストリーのを手に入れたら最後の一個じゃん。ふふん、面白そう!!」

「「「「「…………」」」」」

「というわけで、本選までしっかり身体を休めなさいね。あ、インダストリーには会わせるけど、アタシとの戦いで手ぇ抜くのはダメよ。いいわね。じゃ、そういうことで」


 ルクシャナは帰って行った。

 残されたサーシャたちは、しばし唖然として、ルクシャナの去ったドアを見つめるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 白神闘気の代償が神経や内臓にまで著しい損傷を与えている。強敵での戦闘の都度白神闘気を炸裂させる状態が続けば、ピアソラの回復魔法をもってしても効果が薄くなりそう。血管や神経、内臓に影響す…
サーシャサイドの話はご都合主義の極みみたいなもので苦労無しのいいとこ取りだから話が薄っぺらい。
ポイントどころかトーナメントの勝敗もどうでも良くなった。 たぶん作者さんは早いとこサーシャと魔王を絡ませて 「俺の女になる栄誉をくれてやる、鍵はやらない」 「俺の女に何しやがる」 「ハイセ素敵(〃▽…
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