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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十五章 魔界~産業国レムリア編~

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レムリアの魔王インダストリー④/バトルグランプリ予選

 四日後。

 サーシャたちは闘技場へ向かっていた。

 本日より、バトルグランプリが開催される。予選、本選を突破して優勝し、チャンピオンである『炎神』ルクシャナを倒し、プラチナランクとなる。

 そして、魔王インダストリーへ会い、ゲートキーをもらう。

 道は見えた、あとは進むだけ……だが。


「……」


 サーシャは、静かだった。

 この四日間、ずっと部屋に籠り、食事にも出てこない。

 レイノルドたちも会うのは四日ぶりだが、その静かさとは裏腹に、サーシャから感じる妙な『圧』に、やや気圧されていた。

 レイノルドは、タイクーンに耳打ちする。


「おい、サーシャ……なんか変わったよな」

「うむ。なんと表現すればいいのか……厚みが増したというか、うーむ」


 すると、ロビンが近づいてきた。


「サーシャは、強くなっただけ。いつもと同じじゃん」

「ロビン?」

「大丈夫。バトルグランプリなんて圧勝だよ!! ね、サーシャ!!」

「っと……はは、そうだな」


 ロビンはサーシャの腕に抱き着き、甘える。

 そんな様子を見て、レイノルドとタイクーンは顔を見合わせた。


「まあ、確かにそうだな」

「うむ。ボクらはサーシャを信用している。なら、問題ないということだ」


 どんなに強くなっても、変わらないことがある。

 チーム『セイクリッド』はサーシャを信用する。それだけで二人は気にするのをやめるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 一行は、バトルグランプリ受付へ。

 カードを見せ、登録者であるサーシャを確認した。

 受付嬢は笑顔で言う。


「確認しました。サーシャ様、バトルグランプリへようこそ!! 本日は予選会となります。サーシャ様は第二ブロックでの予選となります」

「……第二ブロック?」

「はい。闘技場は全部で五つのステージがあります。まず、小ステージである第一~第四ステージ。そして本選が行われるメインステージです」


 受付嬢は、サーシャにステージの全体図を見せながら説明する。

 一つの大きなドームの周りに、半分ほどの大きさのドームが四つほど、囲うようにあった。

 遠目からでは全体図は見えなかったが、相当大きなステージのようだ。


「予選は一つのブロックから四名、合計で十六名が本選出場となります。本日は予選会となりますので、頑張ってくださいね!!」

「ああ、ありがとう」

「では、これをどうぞ。こちらの参加証を第二ブロック受付に見せると、選手は控室に案内されますので」

「わかった」


 参加証をもらい、サーシャたちは第二ブロックへ。

 第二ブロック前の受付で参加証をしてもらう。


「はい。参加選手と確認しました。装備などの確認はよろしいでしょうか?」


 アイテムボックスに装備の予備はあるが、試合では登録した武器以外は使えない。

 サーシャは、虹神剣ナナツサヤと魔刀『国崩』だけを腰に差し、アイテムボックスはロビンに預けた。

 装備の確認を終えると。


「おいサーシャ、負けんなよ」

「まあ、ボクは心配していないがね」

「サーシャ!! 応援してるね!!」

「ワタシ、ドキドキする~!! サーシャ、がんばれ!!」


 仲間たちの声援を受け、サーシャは頷いた。

 そして、第二ブロック控室に案内される。

 控室は大部屋だった。すでに二十人以上の選手が待機している。

 視線で値踏みされているのがわかった。


(…………)


 サーシャは、油断、慢心なく思った。


(……敵ではないな)


 冒険者等級で言えば、A~Sの下位と言ったところ。

 サーシャを脅かすような圧は感じない。少なくとも、第二ブロックには。

 サーシャは、近くの壁に寄りかかり、静かに目を閉じて集中する……すると。


「よお、白い肌の種族なんて見たことねえな。お前、魔族か?」

「…………」

「無視かよ。まあいいぜ、肌の色以外は悪くねえし、予選ではオレが遊んでやるよ」

「…………フン」


 サーシャはつまらなそうに鼻を鳴らす。

 男はイラっとしたのか、サーシャに手を伸ばそうとした……が、サーシャが睨むと手を止めた。


「焦らなくても、試合で好きなだけ触れて構わない。まあ……できたら、の話だが」

「……ほーう、いいね。生意気なヤツは嫌いじゃねぇぜ。けけけ、知ってるか? 予選ってのは、ここにいる全員が戦う生き残りバトルだ」

「……なに?」

「教えてやる。『炎神』の首を狙うヤツは多くてなあ。バトルグランプリだけで腕自慢が毎日大量にやってくる。だから、予選会ってのはそういう連中を一つの舞台に乗せて、四回に分けて一気に戦わせるのさ。一対一だと何日かかるかわからねえからな」

「ほう」


 よく見ると、控室には続々と人が入って来る。

 サーシャが入った時は二十名ほどだったが、今はもう七十名を超えている。

 男曰く、第二ブロックの控室は四つあり、その控室にいる連中が同時にステージに上がって戦うようだ。


「ずっと見てるぜ。へへへ、楽しみにしておけ」


 男はぺろりと舌なめずりをすると、サーシャから離れて行った。

 サーシャは男など見ずに言う。


「この中の一人が、本選か……面白い」


 サーシャはニヤリと笑い、顔にかかる髪を梳くのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 一時間ほど経過し、控室はいっぱいになった。

 百名以上。サーシャは部屋の隅にいた。

 控室は広いが、こうも人であふれると息苦しい。そんな風に思っていると、入口ドアが開いた。


「えー、これより予選会を始めます!! 第二ブロック、第一控室の皆さま、ステージにご移動ください!! 移動中の攻撃、魔法、薬物などによる攻撃は反則となりますのでご注意ください!! ちゃーんとチェックしてますからねー!!」


 受付嬢が叫んだ。

 ドアが開き、選手たちがゾロゾロと移動する。

 サーシャは最後の方で一人、ゆっくりと移動する。

 そして、長い通路を通り、最後にステージに上がる。


『さあ、これより第二ブロック、第一控室による予選会を始めます!! 第一控室総勢百四十二名によるバトルロワイアル、この中で最後に残った一人が本選出場となります!!』


 周りでは、武器を構えたり、構えを取る魔族が多くいる。

 サーシャは目を閉じ、呼吸を整える。


(この四日で理解した……闘気の、更なる使い方)


 サーシャは、医学書を読んだことがない。

 人間の内臓がどういう機能をするのか、どこにどのような臓器があるのか、血管や神経という言葉は知っているが、どこをどのように流れているのか。

 プロクネーは言った。闘気はただ纏うのではない、身体中を駆け巡るイメージで使う。魔界ではオーラと言うらしいが、原理は同じだった。

 この四日。サーシャはやってみた。


(イメージ……全身の血管、神経、筋肉の筋一つ一つを、『ソードマスター』の闘気が駆け巡るイメージ……)


 サーシャは腰を落とし、『国崩』の柄に触れる。

 居合……アズマでの剣術。サーシャは見たことしかないが、『斬る』ことだけを考えた場合、最も構えやすい型は、この居合の型だった。


「……」

『さあ、第一控室によるバトルロワイアル、開始です!!』


 試合開始。

 同時に、サーシャの闘気が全身を包み込む。

 いつものように噴き上がるのではなく、純白銀が静かに、薄皮一枚を包み込むように。

 サーシャはイメージする。

 心臓を通り、血管を伝い、神経に伝達し、内臓を、脳を、筋肉を……純白銀が全てを包み込む。

 すると、妙なことが起きた。


(……ああ、やっぱりだ)


 世界が、スローになった。

 全てがスロー……始まりと同時に誰かがナイフを投げた、魔法が発動した、矢が飛んで来た。先ほどの男が背後から奇襲してきた。

 だが、サーシャは見えていた。


「全てを強化すると、世界の時間が遅くなる……だが、長くは持たないな」


 現在の体感時間で、約十秒。

 現実世界では、半秒以下。

 だが、サーシャほどの使い手が、無防備な集団を相手に十秒あれば、たとえ百人いようと壊滅できる。

 居合状態のまま、サーシャは言う。


「この強化は、時間を超えた神の領域に踏む混むことができる。まさに、強化の『極』だ……名付けて」


 『白神闘気(びゃくしんとうき)』。

 この瞬間、サーシャは神すら斬り伏せることができる。


「白神剣、『居合』」


 眼を見開き、ステージ上にいる全ての魔族を標的にする。

 そして、空気のように軽い手足を振るい、一気に駆け抜けた。


「『是空刃(ぜくうじん)白鬼五月雨(びゃっきさみだれ)』!!」


 闘気、解除。

 国崩を鞘にカチンと納めた瞬間……ステージ上にいた百四十二名が血を噴き出し、一斉に倒れた。

 

『……へ?』


 実況が唖然とする。

 観客席も静寂に包まれた。

 サーシャは、髪とマントをなびかせ、静かにたたずむ。

 ステージ上の誰も立ち上がらず、サーシャしかいない。

 実況は、ぽつぽつと言った。


『しょ……しょうしゃ、サーシャ……?』


 その呟きを聞いたサーシャは、満足そうに頷き、ステージから降りるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 この勝負を見ていたルクシャナは、目を見開いていた。


「……化けた」


 今の斬撃が見えたのは、何人いただろうか。

 少なくとも、観客は誰も見えていない。

 

「あたしでさえ、半分くらいしか見えなかった……」


 冷たい汗が流れ、同時に胸の奥から好奇心が沸いてきた。


「久しぶりに、燃えて来たわ……!!」


 闘技場のチャンピオン『炎神』ルクシャナは、ステージを去るサーシャを見て拳を握るのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
ゼロから立ち上げたクランを世界トップ5まで成長させる業務をメインで行う片手間の冒険者活動でこんなどんどん強くなる訳無いだろうにサーシャに対する依怙贔屓が酷すぎる。武闘大会で活躍させるなら実直に強さを求…
インスタントラーメン並みにお手軽なパワーアップ。こういう事を何度も繰り返すから有り難みが薄れるを通り越してサーシャやセイクリッドが嫌われる数多の原因の一つになってしまう。 ハイセやエクリプスの出番が…
よくある居合切りの勘違いなんですが(ラノベで言うのも野暮なのは百も承知ですが)「納刀状態で間合いを読ませず、半身で片手切りによる両手切りより長いリーチ」を利した「敵の間合いの外からの攻撃」が本質です。…
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