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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十五章 魔界~産業国レムリア編~

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レムリアの魔王インダストリー③/格上

 午後、サーシャたちは集まり、闘技場へ向かった。

 以前は遠くから眺めただけだが、近づいてみるとその規模が桁違いなことに気付く。

 サーシャは、闘技場を見上げながら言う。


「お、大きいな……」

「正式名称は『レムリア大闘技場』だ。収容人数七万人、一つの町がすっぽり入るほどの大きさだ。闘技場内の移動に、ジェットコースターを応用した乗り物で移動するらしい」


 ピアソラと交代したタイクーンが言う。

 レイノルドは、腕にしがみついているシンシアに聞いてみた。


「なあ、見学ってできるんだよな?」

「うん。闘技場では、毎日いろんな試合をしてるからね。あっちに受付あるし、みんなで行ってみよっか」

「あ、お土産屋さんある!!」

「こら、ロビン。それは後回しだ」

「う~、は~い」


 サーシャに言われ、ロビンはサーシャの腕にしがみついて歩き出した。どうやらレイノルドの真似をしているらしい。

 五人は、闘技場受付へ。


「ようこそ、レムリア大闘技場へ!!」

「受付のお姉さん、今、闘技場内ではなにやってるの?」

「はい。第一闘技場ではコンサートが、第二~第四闘技場ではバトルグランプリが開催されています」

「バトルグランプリ……」


 サーシャが言うと、受付嬢は笑顔で言う。


「バトルグランプリは、誰でも参加できるトーナメント方式の戦いです。参加費は一人10000ポイントとなります。トーナメント優勝者はなんと、無敗のチャンピオン、『炎神』ルクシャナ様へ挑戦することができますよ!!」

「おー、すげぇな。おいサーシャ、これしかねぇだろ」

「ああ……そうだな」


 サーシャは頷くが、どこか覇気がない。

 レイノルドは首を傾げた。


「それと、『炎神』ルクシャナ様に勝利されますと、ポイント、ランクの有無にかかわらず『プラチナランク』へと昇格になります!!」

「おおー!! ね、ね、これしかないよね、タイクーン!!」

「ろ、ロビン、引っ張らないでくれ。その意見には同意する」


 ロビンは、タイクーンをガクガク揺らす。

 そして、受付嬢へ質問をする。


「お姉さん、そのグランプリだっけ。個人戦しかないの?」

「はい。王者ルクシャナ様への挑戦は個人戦だけになります。チーム戦も開催されますが、そちらは年に四度しかないので……ちなみに、次回の開催は七十日後です」

「七十日……うー、待てないよねえ」


 ロビンがむくれる。タイクーンはロビンを押しのけ、受付嬢へ聞く。


「参加は10000ポイントと言ったが、今ここでポイントの支払いをして、すぐに参加できるものなのか?」

「いえ。グランプリの開催は四日かけて行われます。今日、グランプリ予選が始まったばかりですので、ここで登録をされても、参加できるのは四日後になりますね」

「そうか。よし、サーシャ、登録をしておこう」

「…………」

「……む、どうした、サーシャ」


 タイクーンが顔を覗き込むが、サーシャは無反応だった。

 レイノルドも、ロビンも不思議に思ったが……長い付き合いなので、すぐにわかった。


「おいサーシャ、迷ってんのか?」

「え、ああ……実は、ついさっきチャンピオンのルクシャナに会った」

「え、うそ!!」

「偶然だがな。だが、対峙して理解した。現時点で、ルクシャナの強さは私より上だ。プロクネーよりも強い」

「……ふむ、そうなのか」


 タイクーンは考え込み、レイノルドは腕組み、ロビンは「むー」と唸る。

 シンシアは、まだそこまでサーシャを理解していないので、首を傾げるだけだった。

 タイクーンは受付嬢へ聞く。


「質問だ。団体戦で優勝した場合、ポイントはいくつもらえる?」

「団体戦ですと、優勝の場合1000000ポイント入りますね」

「ひゃ、ひゃくまん……」

「それでも、プラチナランクには足りないな。さて、どうするサーシャ」

「…………」


 サーシャは考える。

 必要なのは、確実な勝利だ。

 プラチナランクへの昇格をしないと、魔王インダストリーには会えない。

 ゲートキーを手に入れるためには、裂けては通れない道だ。

 すると、レイノルドがサーシャの肩をポンと叩く。


「大丈夫だ、サーシャ」

「……レイノルド?」

「今までのこと考えてみろよ。俺ら『セイクリッド』より強い魔獣と戦ったことなんて、何度もあるじゃねぇか。それでも、オレらは勝ってきた。お前ひとりが孤立して、Sレートの魔獣とソロで戦った時も、お前は勝って生き延びた……格上と戦うことなんて、オレら冒険者は日常だった」

「…………」

「S級冒険者。七大冒険者って言われて、自分より強い相手と戦う機会がめっきり減って、どんな相手だろうと勝てるって錯覚しちまってんだ。でも、実際は違う……冒険での戦いってのは、生きるか死ぬかだ。オレの知ってるサーシャは、格上だろうと剣を掲げて、闘気を漲らせて突っ込むような奴だぜ」


 そんなサーシャだから、オレは惚れたんだ……と、レイノルドは言いかけた。言わないのはレイノルドなりのプライドである。

 

「やろうぜ、サーシャ。それに四日あるなら、その間に強くなればいい。お前ならきっと、今よりもっともっと強くなれる」

「……レイノルド」

「そうそう!! サーシャならできるよ!! ね、タイクーン!!」

「ああ。サーシャの成長速度は凄まじいことをボクらは知っている。戦えば戦うほど強くなることもね。勝機がゼロ出ない限り、十分可能性はある」

「……みんな」


 レイノルド、ロビン、タイクーンはサーシャを見て頷く。

 仲間の信頼……『セイクリッド』の絆が、サーシャの心を奮い立たせる。

 サーシャは頷き、受付嬢へ言った。


「四日後のバトルグランプリに参加したい」


 カードを出すと、受付嬢は笑顔で頷いた。


「かしこまりました。では、こちら登録となりますので、ポイントをいただきますね」


 カードを魔道具にスキャン。10000ポイントが引かれる。

 そして、出された魔道具に手を触れると、サーシャの名前が登録された。


「登録完了です。では、四日後にまたここで、参加登録をお願いします。では、ご武運を」

「ああ、わかった」


 こうして、サーシャはバトルグランプリに参加することになった。


 ◇◇◇◇◇◇


 サーシャは、ホテルに戻るなり部屋に籠る。

 誰にも入らないように言い、服を全て脱いで裸になり、ナイフ一本を手に『座禅』を組む。

 ガイストに教わった、精神集中するための座り方……サーシャは、集中する時にこの座り方をする。

 座ったまま、闘気を静かに流す。


「…………」


 頭のてっぺんから顔を通り、首、鎖骨で分かれ、両腕を通り指先へ……ゆっくり、確実に、全身にくまなく闘気を巡らせる。

 プロクネーからのアドバイスで、サーシャは闘気の纏い方が下手らしい。プロクネーのように、全身くまなく闘気を巡らせ、丁寧に循環させることができれば、身体強化は今の数倍に跳ね上がるという。

 

『初心者は、全裸になってオーラを巡らせろ』

『ぜ、全裸で?』

『ああ。衣類による肌の擦れなどをなくし、肌でオーラを感じ取るんだ……いいか、大事なのはイメージだ。血管、神経などを通るイメージだ」

『えっと……』

『ああ。人間界にはないのか。これを見ろ』


 プロクネーが見せてくれた本には、人体の詳細な図面が書かれていた。

 人体の血管、神経の通り道、内臓の位置などが描かれている。


『この血管、神経の通り道を覚えておけ。お前の身体にもこの通り道はある。全てのオーラがこの道に通っているとイメージするんだ』

『……なるほど』


 サーシャは、闘気による強化を極限まで高める修行をすることにした。

 最初は、全裸で座禅を組んだまま、ただ地味に闘気を絞り出すことに恥ずかしさを感じた。部屋にピアソラが乱入してきて「私も!!」と言って裸で抱きついてきたりもした。

 今回は、厳重に仲間たちに言い聞かせているので、邪魔は入らない。


「…………強化の、極地」


 敵は『炎神』ルクシャナ。

 サーシャは、今のところ勝ち目がゼロの戦いに身を投じるが……不思議と心が躍っていた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
すまない。漫画の続きが気になり読みに来たものだが、スタンピードの主人公の別人のごとく甘い対応が本当に砂糖吐くレベルなので最新話まで飛んで来た。正直主人公ヒロインともっと塩対応するの期待してた
サーシャにばかり都合の良い展開が多過ぎて辟易するから、こいつらが負けて壊滅してハイセとエクリプス達が仇をとる話とかにならないかな?
おそらく、漫画が成功したことで作家は興奮し、「ああ、大丈夫だろう」と思ったのでしょう。いいえ、大丈夫ではありません。漫画の成功と小説の成功は関係ありません。
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