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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十五章 魔界~産業国レムリア編~

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商業国レムリア

 サーシャたちは馬車で数日かけて移動……レムリア王国の手前で馬車から降り、徒歩で向かう。

 ここまで来るともう慣れたのか、魔族の馬車や徒歩の魔族とすれ違っても警戒こそするが敵意は持たない。むしろ、レイノルドなどは軽い挨拶までした。

 シンシアは、レイノルドの隣でパンフレットを読みながら言う。


「ね、ね、レイノルド。レムリア王国にはカジノもあるんだって!! そこでポイントを賭けてゲームもできるみたい」

「ポイントを賭けて、って……負けたらポイント失うんだろ? ランク上げるためにポイント必要なのに、賭けをして失うかも、ってのはなあ」

「でもでも、大きく賭ければ大きなポイントのチャンス!! サーシャはどう思う?」


 アイテムボックスから出したリンゴを齧りながらサーシャは首を振った。


「堅実に稼ぐのがいいと思うぞ。賭けはリスクが大きい……あむ」


 シャリっとリンゴを齧る。

 おしとやかさのない、冒険者らしい食べ方だ。サーシャのような美少女がリンゴを丸かじりする姿は、意外にも似合っている。

 ロビンも同じくリンゴをシャリシャリ齧りながら言う。


「でもさ、ポイント稼ぐためにいろいろできるんだよね。ちょっとぐらいは遊んでもいいんじゃない? ね、ね、サーシャ」

「全く、お前は……まあ、悪くはないが。レイノルド、どう思う?」

「オレぁ賛成だぜ。さっきは微妙に否定的だったけど……カジノとか嫌いじゃねぇし」

「だよね!! ワタシ、カジノとか行ったことないし、レイノルドと行く~!!」

「お、おう」


 腕に思い切りしがみつくシンシア……胸が当たっているのだが、シンシアはむしろ当てていた。

 どうもレイノルドに対し本気のようだ。

 一方、タイクーンはブツブツ言いながら、町で手に入れた何種類ものパンフレットを見てブツブツ言っている……こういう時のタイクーンは無視すべきと、長い付き合いのサーシャたちは知っていた。

 そして歩くこと一時間、街道が綺麗に整備され、街灯が立ち並ぶ通りに入った。


「うお、すげえな……」


 思わずレイノルドが言う。

 なぜなら、レムリア王国が見えると、眩いばかりの光が周囲を照らしていた。

 これまで見てきた国と全く違う。外壁がなく、魔力的な障壁で全て守られており、巨大な『氷』のような球体が上空に浮かんでいる。

 そして、青い透明なリングがいくつも球体の傍を回転していた。


「あれは……何なんだ?」

「たぶん。あれが『楽園』だと思う。そういえば聞いたことある。レムリアの魔王インダストリー様も、『オーバースキル』の保持者だって。たぶんあれ、インダストリー様の力で作られた『楽園』じゃないかな」

「……オーバースキル、か」


 サーシャは知っていた。

 無から有を生み出すシムーンと、魔法とは違う次元のイーサンの雷。

 魔族にとってのマスター系能力。それならば、あの球体も納得ができる。


「まさか、上空に浮かぶ球体の中に、楽園があるとは……」

「サーシャ、あれなに?」


 ロビンが指差した方を見ると、巨大な『リング』がゆっくり回転していた。

 そして、金属の曲がりくねったパイプが国内の至るところに張り巡らされているのに気づいた瞬間だった。


「「「「「きゃあああああーっ!!」」」」」


 叫び声が聞こえ、思わず剣を抜こうとしたサーシャ。

 一瞬の出来事だった。張り巡らされているパイプの上を、鉄の乗り物が滑って通って行った。

 あっけに取られていると、乗り物は球体に向かって行き、そのまま球体の中へ。パイプがいくつも球と繋がっており、球体から鉄の乗り物が出てくるのが見えた。


「な……なんだ、あれは」

「あれは『ジェットコースター』だろう」


 と、ここでタイクーンがパンフレットをしまい、眼鏡をクイッと上げた。


「どうやら、あれは『楽園』内にある『遊園地』という施設だろう。数ある娯楽設備で、パイプの上を高速で滑る乗り物……スリルを味わえるそうだ。それと、あのリングは『観覧車』という乗り物で、高い上空からレムリア王国を一望できるようだ。あの『観覧車』は楽園ではなく、国内に設置されているようだね」


 いきなり説明のタイクーン。どうやら、パンフレットには『楽園』の情報もあるようだ。

 レイノルドが、観覧車を眺めて言う。


「乗り物ねえ……まあ、面白そうではあるな。乗ってみるか?」

「はいはいーい!! レイノルド、ワタシと二人で乗ろっ!!」

「まあいいけどよ……にしても、あのデカい球体の中に、魔王インダストリーがいるのかね」


 よく見ると、球体の周囲を浮かぶリングにも、人が乗るためのスペースである部屋が設置されていた。球体全てが『遊園地』という設備なのかもしれないとサーシャは思う。


「あそこまで行くには、プラチナランクにまで上げないといけないのか」

「そのようだ。あの『ジェットコースター』は国内を一周する乗り物で、プラチナランクの会員しか乗ることのできない遊具として羨望の的になっているそうだ。あれに乗ることがステータスであり、あれを見て会員たちはプラチナを目指す……ふむ、面白い」


 するとロビンが指を差す。


「ね、あれってさ、闘技場っぽいね。でっかい建物だよ」 

 

 指差した先には、丸いドーム状の建物が見えた。

 タイクーンが言う。


「その通りだ。あそこで試合をしてポイントを獲得できる。レイノルドがお望みのカジノは向こう側で、ショッピングモールは向こうだ。さてさて……まずは宿を確保し、ポイント獲得のために町を散策すべきだと思うが、サーシャ、どうする」

「それでいこう。宿を確保し……ポイント集めは明日から始めよう」


 サーシャたちは商業国レムリアに入国するのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 入国はこれまでと違い、百以上ある受付カウンターからの手続きによる入国となった。

 名前、種族、入国の目的、入国金の支払い……それらを終え、レムリア王国のマップをもらい、五人はようやく入国する。

 サーシャはマップをシンシアに見せる。文字が読めないので仕方がない。


「宿はどこにある?」

「えっと……お、この区画『ホテルエリア』だって。飲食街とか、お土産屋とかもあるみたい。星はいくつにする?」

「……星?」

「うん。宿の等級。一つ星から五つ星まであって、五つ星は最上級だよ」

「はいはーい!! サーシャ、五つ星にしようよ!!」


 ロビンが言うと、サーシャは苦笑した。


「しかし、高いんだろう? 金はあるが……」

「いいじゃん。贅沢しようよ~」


 移動までの数日、ハイセたちに確認した。

 中央平原で戦った魔獣の素材などはあったが、ほとんどをヘスティアに買い取ってもらい、魔界での資金となった。

 おかげで、魔界滞在の間は金に困ることはない。今となっては、多少の素材を残しておけばよかったと思ったが、時すでに遅し。

 サーシャはレイノルドたちに相談する。


「ま、いいんじゃねぇか。魔界の金は魔界でしか使えないし、これから先も稼ぐことはできるだろ。パーっと使えば、ポイントにもなるんじゃねえか?」

「同感だ。贅沢をしたいわけじゃないが、ポイントが貯まるなら積極的に使うべきだ」

「……わかった。じゃあ、五つ星にするか」

「りょーかい。じゃあ、ワタシの好みで行っちゃうね」


 シンシアがマップを眺め、「ここにする」と向かった五つ星五ホテル。

 到着したのは、百階建てはありそうな巨大な『塔』だった。

 思い切り見上げないと上が見えない。人間界で見た塔型ダンジョンそっくりだった。


「『ホテル・メナテトレノン』っていう五つ星ホテル!! レムリア王国で一番高い五つ星ホテルなんだってさ」

「……ま、まあいいだろう」


 さっそく受付でチェックイン。

 部屋は三部屋。女子三人、タイクーン、レイノルドと分かれた。男が分かれた理由は、タイクーンは夜遅くまで起きていること、そして部屋中に買った本を並べるため個室がいいと言ったからだ。

 レイノルドは文句もなかったが、シンシアが「レイノルド、個室……ふふふ」とニヤニヤしていたのが気になったらしい。

 支払いは魔導カードで済ませ、まずは一か月分の料金を支払った時だった。


「あれれ、ねえねえ、カードの色変わったよ!!」


 と、シンシアの持つカードが、鉄のような色に変わった。

 アイアンランクへの昇格……五つ星ホテル、三部屋、一か月分の料金は相当な金額だったようだ。

 ホテルの受付で昇格手続きができたので、そのままアイアンランクへとなった。

 レイノルドは、カードを見ながら言う。


「こりゃ、思った以上に簡単かもな」


 レムリアに到着して早々、アイアンランクへの昇格。

 だが、本当に大変なのはこれからだと、サーシャたちはまだ気付いていなかった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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