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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十四章 魔界~農業国パシフィス編~

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パシフィスの魔王ヘスティア⑨/恋するヒジリ

 森の中を走り続け、現れる魔獣をひたすら屠る。

 丸一日……ハイセたちは休憩を取らず、戦い続けて進んだ。

 道中、エクリプスが回復魔法で身体を癒した。だが、疲労は取れても睡魔だけはどうしようもない。

 戦い続けて深夜。クレアが倒れた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「しっかりしなさい、クレア」


 エクリプスがクレアを支えるが、顔色が悪く、立つことができないようだ。

 ハイセは銃を連射しながらチラッと様子を見て、ヒジリ、シンシアを見る。


「金剛拳・柔式!! 『流転掌』!!」


 ヒジリは、金剛石の誇大な『手』を操り、向かって来る魔獣をひたすら受け流す。

 シンシアは、何度かアイテムボックスで休憩しているおかげか、顔色も悪くない。

 だが、ハイセたちは戦い続けていた。基本的に、サバイバルをするハイセたちはメンバー交代も、アイテムボックス内で休憩することも許されていない。

 驚異的な体力を持つヒジリ、ハイセはまだ体力に余裕があるが、クレア、そしてエクリプスは疲労が濃い。エクリプスも体力的にではなく、魔力的に疲労していた。


「ヒジリ!! しばらく身を隠す。エクリプス、煙幕を!! シンシアはクレアを頼む!!」


 ハイセの指示に、ヒジリはクレアを見て、エクリプスを見た。

 

「わかったわ。地下でいい?」

「任せる。エクリプス、煙幕!!」

「ええ、任せて」

「え、え、何すんの?」


 クレアを支えるシンシアがキョロキョロするが、ハイセが急接近。シンシア、クレアを担いでヒジリの傍へ。

 エクリプスが魔法を発動。周囲が一気に白い煙で包まれる。


「緊急避難!! 『地下シェルター』!!」


 ヒジリがそう叫んで両手を地面に叩きつけると、ハイセたちの足元が陥没……そのまま落下した。


 ◇◇◇◇◇◇


 ヒジリの技の一つ、『地下シェルター』は、大地に干渉して土を鉱石化して空洞を作り、地下に空間を作る避難用の技だ。

 猪突猛進なヒジリには合わない技だが、もしもの時のためにとガイストが発案……しぶしぶ習得したのだが、役に立った。

 現在、地下深くにある金属の空間に、ハイセたちはいた。

 ちなみに、空間には無数の換気口があり、地上に繋がっているので窒息することはない。


「とりあえず、ここで今夜は過ごすか」

「ううう……」


 疲労の濃いクレア。

 ハイセはアイテムボックスからベッドを出し、シンシアに頼んでクレアの鎧を外してもらい、そのまま寝かせた。

 すると、すぐに寝息を立て始めるクレア。

 クレアから少し離れ、ハイセはエクリプスに言う。


「お前も休め。ベッドを出してやる」

「ええ、そうさせてもらうわ……怪我や疲労は治療できるけど、睡魔や魔力は寝ることでしか回復できないから……」

「ゆっくり休め。お前が倒れでもしたら困るからな。起きたらメシにするぞ」

「ええ、ありがとう」


 ハイセはクレアの隣にベッドを出すと、エクリプスはそのままベッドに入り寝てしまった。

 そしてシンシア。


「ワタシ、アイテムボックスに入るね。そっちで寝るから……ふぁぁ」

 

 そう言ってアイテムボックスへ。

 残ったのはヒジリ、そしてハイセ。


「ヒジリ、お前も寝るか?」

「アタシ、まだ元気よ。むしろお腹減ったわ……お肉ある?」

「ああ。食えるなら食っておけ」


 椅子とテーブルを出し、アイテムボックスから焼きたての肉串を大量に出すと、ヒジリは喜んで食べ始めた。

 ハイセも椅子に座って食べ始める。


「俺たちがいるのは、深度1……一番安全な地帯でコレかよ。ネクロファンタジア・マウンテンに挑むのはかなり大変だな」

「アタシ、魔界に来て本当によかったわ。こんなにも血沸き肉躍る戦いができるなんてね!!」

「……お前らしいよ」


 肉を食べ終え、熱いスープを飲んで口直し。そして食後のお茶を終える。

 このまま寝るべきなのだが、ヒジリが言う。


「ね、ハイセ。お風呂入りたい」

「はあ?」

「以前やった樽風呂ある? アタシさ、けっこう汗掻いたし、あのエロ猿に胸触られて気持ち悪いのよ。ねえ、いいでしょ?」

「……まあ、いいけどよ」


 ハイセは部屋の隅に樽風呂を出すと、ヒジリが服を脱ぎ始めた。


「お、おい。まだ目隠ししてないぞ」

「別にアタシは気にしないし。アンタにはどうせ全部見せるつもりだからいいわよ」

「何がだよ。ったく……」


 ハイセは椅子テーブルに戻り、中央平原の地図を出す。

 自分たちの現在位置をチェックし、これまで会った魔界の固有種である魔獣の特徴をメモしたり、記憶した姿をスケッチする。


「ふぁぁ~気持ちいい~……ねえハイセ、アンタも入りなさいよー」

「…………」


 ハイセは無視。

 思い出すだけで、深度1だけで数十種類の魔獣を見た。

 ゴブリン系、オーガ系、トロル系と、人間界で見たことのある魔獣も出た。だが、肌の色や大きさなど、細かい部分が違う。

 魔界の環境で進化し、討伐レートも上がった……と、ハイセは推理。

 

「人間界じゃ見ないサイズの魔獣も多かった。環境による進化か……過酷な環境のせいか」

「なーに難しい顔してんのよ」


 と、ヒジリがハイセの隣にいた。

 視線を向けると……なんとヒジリは上半身裸で、タオルを首から掛けているだけ。

 長いポニーテールも降ろし、下はパンツだけ。

 手には果実水の瓶を持ち、ぐびぐびと一気飲みする。


「おま……服くらい着ろ」

「だから、見ていいわよ。ね……アンタさ、アタシのこと、少しでも意識する?」


 と、ヒジリは頬を染め、ハイセの腕を取る。

 柔らかな胸がハイセの腕に当たる……さすがに、これは意識せざるを得ない。

 ハイセは腕を外そうとしたが、ヒジリは『柔』を使い、ハイセの腕を掴んで外さない。


「ね、ハイセ。前に言ったわよね。アタシは恋をして、弱くなったって……でもそうじゃなくて、恋をして強くなったって。あのさ……今日のアンタから見て、アタシはどうだった?」

「…………」


 上目遣いでハイセを見るヒジリ。

 傍若無人、粗暴で大食らい、戦いしか頭にないS級冒険者序列三位。

 以前のハイセだったらそう思った。だが、今のヒジリは、一人の恋をする少女だった。

 ハイセはため息を吐き、ヒジリの目を見て言う。


「強くなったよ、お前は」

「ほんと?」

「ああ。昔のお前と今のお前。今のお前のが断然強い」

「じゃあ……アタシのこと、どう思う?」

「……いいと思う。お前は、今のままでもっと強くなれる」

「……女としては、どう?」


 頬を染め、ハイセの目をまっすぐ見るヒジリ。

 それは、女だった。

 ハイセの心臓がドクンと跳ねたような気がした……そして、ヒジリがほぼ裸であることを思いだし、その大きな素肌の胸が視界に入ると、思わず顔を逸らす。


「……意識、してくれてるんだ」

「…………いい加減、離せ。ここは敵地だぞ」

「えへへっ、まあ今日はこれくらいにしておく。ね、ベッド出して。アタシも寝るから」


 ヒジリがハイセから離れた。

 ハイセは無言でベッドを出すと、ヒジリはダイブ……そのまま寝てしまった。

 話し相手がいなくなり、ハイセは椅子に座る。

 そして、ついさっきまでヒジリが抱き着いていた腕に触れた。


「……クソ。なんで意識してんだよ、俺は」


 ハイセは自分の頬を軽く張り、地図を見た。


「……明日は深度2、灼熱地帯まで行くか」


 サバイバルはあと二日。ハイセは椅子にもたれかかり、そのまま目を閉じた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
彼女はエクリプス、クレア、プリシラと同じくらい素晴らしいです。 みんな信頼できる素敵な女の子たちです。 彼が1人だけではなく全員と結婚してくれることを願う
ハイセと結ばれて欲しい相手はエクリプスだけど、ヒジリも良いキャラになったなー 恋愛にもド直球で気持ちがいいしハイセに逃げるのを許さず女として意識させたのは見事だった 作中でメインヒロイン扱いのサーシャ…
ハイセがヒジリも意識するようになって良い傾向です。このままサーシャやセイクリッドという呪縛から解き放たれて欲しいです。
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