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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十四章 魔界~農業国パシフィス編~

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パシフィスの魔王ヘスティア④/剣神とソードマスター

 サーシャ、そしてプロクネーが向かい合う。

 ハイセたちは客席に移動。ハイセはクレアに言う。


「よく見ておけよ」

「はい……ううう、私、全然弱いの、あの二人を見るだけで感じちゃいます……」


 クレアは、ハイセの腕にしがみつつ肩を落とす。

 ヘスティアは「ははは」と笑った。


「ガシュトンが最高の『守り』なら、プロクネーは最強の『攻撃』だ。さてさて……あのサーシャという小娘、どこまでやりあえるか楽しみだ」


 ちなみに、ヘスティアの隣には着替えたガシュトンが立っている。

 エクリプスは静かに見守り、シンシアはヘスティアをチラチラ見ながら緊張しまくっていた。

 そして、サーシャとプロクネーが剣を抜く。


「黒い剣。サーシャは……ん? いつもの剣じゃなくて、『国崩』の方を使うのか」


 アズマで手に入れた名刀、『国崩』だ。

 斬ることに特化した『刀』という剣。虹色奇跡石で打った名剣はもちろんだが、国崩も同じくらいサーシャにとってなじみ、使いやすい剣だった。

 クレアは、サーシャとプロクネーを交互に見ながら言う。


「プロクネーさん、黒いサーシャさんって感じしますね」

 

 黒髪、黒い鎧、黒い剣のプロクネー。

 銀髪、白銀鎧、白い拵えの刀を持つサーシャ。

 互いに白黒のマントも羽織っており、クレアの言うことも間違っていない。ただ、プロクネーの側頭部にはツノが生えていた。

 互いに剣を構えると、純白銀、漆黒の闘気が全身を包み込む。


「黒い闘気……」


 エクリプスが言うと、ヘスティアが補足。


「正確には『オーラ』だ。プロクネーのオーバースキル『剣神(カムド)』は、漆黒のオーラを全身に纏い、強化や攻撃をすることができる」

「それ、私やサーシャさんの『ソードマスター』と同じですねー」

「魔族版の『ソードマスター』か……サーシャにとっては最高の相手かもな」

「ううう、私もちょっとうらやましい……」

「……始まるわよ」


 エクリプスが言うと、サーシャとエクリプスが同時に動き出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 向かい合い、構えた瞬間にはもう激突していた。

 超至近距離での鍔迫り合い。漆黒、純白銀の闘気がチリチリと音を立てて反発しあう。

 サーシャは不敵な笑みを浮かべ、プロクネーと剣戟を繰り広げた。


(パワーは、向こうが上……!!)


 そう思い、力ではなく速さで連撃を繰り広げる。

 プロクネーは軽く舌打ちし思う。


(速度は向こうが上か)


 サーシャはプロクネーの剣を受けず、全て躱す。

 鍔迫り合いでは負ける。だがプロクネーはサーシャに近づく。


「『黒刃(ブレイド)』!!」

「!!」


 地を這う、漆黒のオーラによる刃だ。

 しかも一撃ではない。サーシャを狙い、何本もの黒い刃が飛んで来る。

 サーシャは国崩を真横に一閃。


「『支閃刀(しせんとう)』!!」


 地を這う刃を、白い闘気の刃が真横に一閃……刃が砕け散った。

 だが、プロクネーは自身の刃に触れ、柄下から切っ先まで指でなぞる。


「『黒付加(ザイン)』」


 洗練されたオーラを剣に付与し、攻撃力を上昇させる技だ。

 それだけではない。噴出していたオーラを留め、身体全体、頭頂部からつま先、指先、神経、血管の隅々にまで行きわたらせ、洗練された全身強化をした。

 これにより、パワーだけではない、速度もサーシャをやや上回る。


「っ!!」

「お前にできるか?」


 剣戟が再び繰り広げられる。

 だが、サーシャを僅かに上回るプロクネーの剣は、徐々に、徐々にサーシャを追い詰める。

 マントが切れ、鎧を掠り、剥き出しの皮膚部分に小さな傷が入っていく。

 だが……サーシャの顔色は変わらない。怪我をしても、血を流しても、サーシャはまっすぐプロクネーを見て……笑った。


(強い)


 これほどの剣士は、クロスファルド以来だった。

 クロスファルドは頂点。そこまで目指すのに、切磋琢磨する相手がいなかった。

 正直、物足りなさも感じていた。

 ハイセ、ヒジリ、エクリプスとはまた違った強さ。同じ《剣士》の位置にいる強さが目の前にあり、サーシャを追い詰める。

 それが、サーシャにはたまらなく嬉しく、楽しかった。

 そして、サーシャの純白銀の闘気が、さらに輝きを増す。


「──っ!!」


 バチン!! と、とんでもない音がした。

 なんと、サーシャが国崩の柄を咥え、振り下ろされたプロクネーの剣を両手で受けとめたのだ。

 真剣白刃取り。考えてもいない手段に、プロクネーはギョッとする。


「避けられなければ、止めるだけだ!!」

「貴様、そんな手」

「魔界にはないようだな。これも立派な《剣士》の技だ!!」


 力ではない、技術。

 サーシャは手で挟んだまま刀身を横へ。そこに力は必要なかった。

 そして、プロクネーの腹に蹴りを入れて距離を取る。


「クレアほどうまくないが……」


 サーシャは、アイテムボックスから愛剣『虹聖剣ナナツサヤ』を取り装備。


「あー!! サーシャさん、それダメですううう!!」


 クレアが叫ぶが、聞こえているのかいないのか。

 プロクネーは呟く。


「二刀流……!!」

「プロクネー、貴殿の闘気による全身強化は見事……美しさすら感じた。今の私ではそこまでの強化はできない……だったら!!」


 双剣を交差させ、サーシャは呼吸を整える。

 そして。


「『闘気全開(オーバードライブ)』!!」


 実に、プロクネーの十五倍。

 恐るべき量の闘気が噴出。その輝きは訓練場を埋め尽くし、サーシャを中心に光の柱のように、闘気が上空へ登って行く。


「な……!? なんて、オーラの量……!? バカな!!」


 自分では出せない量。

 ハイセたちも唖然とした。すると、アイテムボックスからヒジリが飛び出し、身を乗り出す。


「……くくくっ、なにこれ、マジ?」

「おい、勝手に出てくんな」

「無理。指輪の中からも感じた……サーシャの全力。滾るわ!!」


 サーシャは双剣を構え、爆発的速度でプロクネーに迫る。

 プロクネーは、顔を歪めて笑った。ここまで楽しい好敵手は初めてだった。


「面白い!!」


 光以上の速度で振られる剣は、プロクネーの速度を容易く上回った。

 凝縮されたオーラの剣が、サーシャの連撃を受けて砕け散る。

 そして、サーシャは全力で剣を振る。


「奥義──『白神剣(はくじんけん)』!!」


 サーシャの渾身の奥義が、プロクネーを両断するのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 戦いが終わり、プロクネーが目を覚ました。


「お前の負けだ、プロクネー」

「……我が主」


 身体を起こすと、上半身裸だった。

 鎧が砕け、上半身と下半身が両断されたのだ。ヘスティアの治療で身体をくっつけ、命を呼び戻したのだ。

 プロクネーは起き、ガシュトンから毛布を受け取ると身体にかけ、ヘスティアに一礼。

 そして、なぜかハイセがおぶっているサーシャに言う。


「私の負けだ。ふ……強かったぞ、サーシャ」

「ああ……だが、お前は全力ではなかっただろう。私はもう見ての通り、指一本指動かせない」


 限界まで闘気を絞り出したのだ。サーシャはしばらくまともに動けないだろう。

 すると、ヒジリがサーシャの尻をべしっと叩く。


「きゃっ!?」

「ピアソラに言っておいたから、アンタはボックスの中でしばらくお休みね。指一本動かせないから世話よろしくって言ったら興奮してたわよ」

「そ、それは嫌だ……うわっ」


 ヒジリは、サーシャのアイテムボックスを奪うとサーシャに押し付け収納。指輪をハイセに押し付ける。


「アンタ、マジで強いわね。次はアタシが挑戦するから!!」

「ふふ、いいだろう。というか、誰だ?」

「ヒジリさん、パーティー制度のルール破ってますけど……エクリプスさん、いいんですか?」

「いいんじゃない? 四人行動は変わっていないからね」

「……とにかく。これで俺たちの二勝だ。ヘスティア、次の試練を」

「まあマテ。楽しい余興は終わった。今日はここまでにしよう。今夜は宴を開くから、客人たち、ゆっくりしていくといいぞ」

「宴!! ね、肉出る?」

「当然じゃ」

「やったあ!! というか……私とエクリプスさん、何もしてませんねー」

「活躍の機会はあるわ。ね、ハイセ」

「……知らん」

「そ、それを言うんだったらワタシもだけど。うう、まだ緊張してるう……」


 こうして、ハイセたちは第一の試練をクリアしたのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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ワンピースからコピペしましたが、これは悪いバージョンです
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