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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十四章 魔界~農業国パシフィス編~

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ミディアの町

 道中、驚くくらい魔獣と遭遇することはなかった。

 動物の群れにはよく出会った。

 野生のウサギ……魔界のウサギは黒一色しかいないと知り、意外にも人懐っこいことを知った。

 野生の猿……は、かなりスケベなようだ。水浴びをしている女性陣の前に群れで現れ、ニヤニヤしながらジーっと裸を眺められた。クレアが怒ったがシンシアは「気にしなくていいよ、見ることしかできないし」と堂々と肌を晒しているのにも驚いた。サーシャが闘気と殺気を漲らせるとあっという間にいなくなった。

 野生の猫、犬にも遭遇した。

 こちらも人懐っこかった。現在、野営中のサーシャたちのところには、野生の猫と犬が数匹集まり、暖を取るように纏わりついている。

 そんな猫を撫でながらサーシャは言う。


「魔界には動物が多く、人懐っこいな……ふふ」

『ニャア』


 猫はサーシャに甘えを見せる。

 ちなみにエクリプスだが、意外にも野生の動物が苦手なのか、テントに引っ込んで寝てしまった。

 シンシアも、隣でお座りしている犬に乾燥肉を食べさせながら言う。


「魔獣みたいな天敵はほとんどいないからね。それに、甘えればエサくれるってことみんな知ってるのよ。人間界は知らないけど、魔界は動物にとって過ごしやすい環境だと思うよ」

「にゃあ、かわいいかわいい~」

『フニャア』


 クレアが猫を抱きしめていた。

 ピアソラも、太ももに猫を座らせ撫でている。


「あのおサルは許せませんけどね。動物かあ……動物なんて、人間界じゃあまり見ませんわね。生息しているのは知ってますけど」

「人間界の動物は、魔界の動物とは違った意味で頭がいい。多くは魔獣のエサとなる動物ばかりだから、魔獣や人間から隠れるために気配を殺すのが上手だ。正直、私も動物の隠形を察知するのは難しい時がある」

「そうなんだー、ワタシ、動物はけっこう好きだし、狩りもするけど……人間界って大変そう」


 パチパチと焚火が燃える。

 現在のメンバーとなり四日目。明日にはミディアの町へ到着する。

 サーシャは、水を飲んで言う。


「ふう……シンシア、ミディアの町はどういうところだ?」

「ヘルーダとあまり変わらないよ。ハイセにも言ったけど、そんなに警戒しなくていいと思うよ? それより、パシフィス王都が近いからワクワクするね!!」

「……王都か。魔王、ヘスティアだったか?」

「うん。いいお方だよ。ワタシは詳しいことわかんないけど、かつて『死の大地』って呼ばれていたパシフィスを、ノブナガ様と共に開拓して大農地にしたご先祖様の子孫なんだって」

「……ノブナガ、か。最近よく聞く名だ。魔界では人間界より有名なのだな」

「うん。歴史に必ず出るし、子供でも知ってるね」


 たびたび、ハイセの『武器マスター』と同じ能力を持つ者とは聞いていた。

 だが、魔界を魔界という大地に変えた人間……この世界の人間ではないとハイセは言っていた。

 最初は半信半疑だったが、今ではもう存在を疑わない。


「魔王との謁見では、私とハイセが出る。ノブナガのことに関してはハイセが一番知っているからな」

「うんうん。ワタシも楽しみ~」


 こうして、夜は猫や犬たちと一緒に過ごすサーシャたちだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日、夜が明けると犬猫はすでにいなかった。

 朝食を食べて出発し、魔獣も出ないのでハイキング気分で歩いていると、ミディアの町が見えた。


「見えた。あれがミディアの町だね」

「おおー!! なんか、蜘蛛の巣みたいですね……」


 クレアが驚くと、シンシアが言う。


「蜘蛛の巣……っていうか、あれ田園ね。コメを作ってるんだよ」

「コメ……魔族の主食ね」


 エクリプスが言うと、シンシアが「そうそう」と頷く。


「パシフィスは、魔族が食べるおコメの五割を作ってる大地なんだ。だから農業国パシフィスって言われてるの。もちろん、コメ以外の作物も豊富に作ってるよ。ミディアの町はけっこうな美食の町でもあるから、楽しみにしててね!!」

「おおー!! 楽しみです……けど」


 クレアが喜ぶが、すぐにしょんぼりしてしまう。


「なんか物足りないです。魔界に来る前はこう……血沸き肉躍るバトルの連続!! っていうのを想像していたんですけれど……動物さんとふれあって、いい天気の下でハイキングしながら来たら、あっという間に魔界第二の町、って感じです」


 確かにその通りだった。

 正直、サーシャも微妙に物足りなさを感じていた。

 道中、クレアに稽古を付けたりもしたが、やはり物足りない。

 エクリプスがクスっと微笑む。


「ふふ、危険がないに越したことはないわ。ね、サーシャ」

「あ、ああ……」

「……あなたもしかして、物足りないの?」

「い、いや」


 嘘は付けず、ついそっぽ向くサーシャ。

 すると、ピアソラがシンシアに言う。


「シンシアさん。何かあったらその……お願いしますわね」

「あっはっは。ピアソラってば、心配しすぎだって」


 こうして一行はミディアの町へ向かうのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 正門にて。


「お前たちが、人間界からやって来た人間だな。魔王ヘスティア様より登城命令が出ている」

「「「「「…………」」」」」


 正門に来るなり、いきなりだった。

 ポカンとしていると、シンシアがハッとなり言う。


「とと、登城命令って、ここミディアの町だよ? なな、なんで魔王様知ってんの?」

「ヘルーダの町に滞在していただろう。そこの兵士が人間が来たと報告しただけだ。数日あればパシフィスに知らせが行くのは当然だろう」

「あ、確かに」


 手をポンと叩き納得するシンシアだった。

 エクリプスが首を傾げる。


「登城はいいけれど……何の用事かしら。やっぱり、魔族の世界に土足で踏み込んだことで怒っているのかしら?」

「ふむ……敵対するつもりなら、この場でこのように『登城しろ』など言わないのではないか?」

「うー、バトル、バトルの予感がしますね!!」

「……あなた最近、ヒジリに影響されすぎではなくて?」


 正門前で相談しはじめるサーシャたち。

 すると、門兵が言う。


「とにかく、登城命令が出ている。いいか、暴れるなよ……魔王様は、お前たちと話がしてみたいとのことだ」

「こ、殺されたりしないよね? わ、ワタシは案内人で」

「知らん。とにかく、今日はミディアの町で休め。明日、護送用の馬車で送ろう」


 部屋を用意してあると、兵士たちに案内され町の宿屋へ。

 まるで囚人……と思ったが、部屋に案内されるなり「明日まで自由にしていい」とのことだった。

 さっそく一行はサーシャの部屋へ。


「なんか、檻に閉じ込められる気がしていましたけど、普通ですね」

「……そうでもないわ。ピアソラ、感じる?」

「はい。魔力が蜘蛛の巣みたいに張り巡らされていますわね。これ、町のどこにいてもわたくしたちの位置を感じ取れると思いますわ」


 魔法系のエクリプス、ピアソラはすぐに気付いていた。

 サーシャも、ピリピリした感じはしていたが、魔法だとは気付いていない。


「とにかく……チャンスだな。魔王に謁見できるなら流れに身を任せるのもいい」

「罠、という考えは?」

「ある。だが……それは会ってから考えよう」

「ふふ、あなたらしいわね」


 クスクス笑うエクリプス。この瞬間も油断をしていない。


「では確認しておく。目的地は農業国パシフィスの王都、イートハーブ。目的は魔王ヘスティアとの謁見、そしてゲートキーを手に入れることだ。いいか……戦闘は最終手段だ」

「ではサーシャ、わたくしはハイセと交代しますわ。この状況をアイテムボックスの中にいる人たちと共有しますので」

「ああ、頼む」

「師匠が出てくるんですね!! やったあ、一緒に晩ごはん!!」

「……お気楽な子ね。ヒジリに似てきたんじゃない?」

「そうかもしれんな。ふふ」


 一行は、いよいよ魔王と接近することになる。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
何故下のコメントはサーシャのみに触れているのでしょうか?一番最初に猿を警戒したのはクレアです。そして少なくとも自己の快楽の為に人を陥れていたエクリプスよりも優しくて純朴な女の子です。 また、エクリプス…
物語の中で最も愚かなキャラクターであるサーシャが常に交渉に含まれており、物語の中で最も賢いキャラクターであるエクリプスが関与していないのは本当に謎です。 なぜサーシャが猿を気にするのかわかりません。サ…
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