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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十四章 魔界~農業国パシフィス編~

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魔界最初の町

 ハイセ、レイノルド、ヒジリ、ロビン。そしてシンシアの五人。

 グランドッグが引く馬車に乗り、レイノルドが御者を務め走り出す。

 向かうは黒棘の村より先の町。魔界で最初の町である……が。


「ね、レイノルドって好きなモノなに?」

「あー……酒は好きだな」

「お酒!! ワタシも大好きだよ~」

「そ、そうか。あ~……今度飲むか?」

「うん!!」


 シンシアは、非常に懐いていた……レイノルドに。

 ハイセ、ヒジリはそんな二人を馬車の中から見ている。


「一目惚れ。いい感じねー」

「…………」

「ハイセ、せっかくだしさ、アタシとイチャイチャしない?」

「するか。ってかお前、少しは周囲を警戒しろ。ここ、魔界だぞ」

「でもでも、シンシア言ってたじゃん。魔界は中央平原とかじゃないと魔獣なんてほとんど出ないって。動物とかは出るけど、別に気合い入れて戦うようなモンじゃないでしょ」

「…………」


 ヒジリがハイセの隣に座り、腕をギュッと掴んでくる。

 クレアと違うのは、懐くというよりは色仕掛けのような、甘えるというより媚びているような、そんなくっつき方なのだ。

 ハイセは冷たく言う。


「お前……何だか、変わったな」

「は?」

「以前のお前は、もっとギラギラした目で俺を見ていた。今のお前はなんか……女丸出しで気持ち悪い。正直、そんなお前は好きじゃない」

「……は?」

「別に、お前が女になるのはいい。でも、そういう媚びたような姿は、俺の前で見せるな……俺が知るお前の強さが揺らいで見える」

「……なにそれ」


 ヒジリはハイセから離れ、強い目で睨む。


「アタシはアンタが好きって言ったじゃん。だから、アンタに見てほしくてこういうことやってんのよ。それが……弱く見えるって?」

「ああ。もっとはっきり言ってやる。色ボケする暇あったら、俺を超える、倒すために何かしたらどうだ? まあ……俺の知るお前なら、策なんか練らず、全力で向かってくるだろうけど」

「……アンタ、アタシが変わったと思う?」

「ああ。お前は、俺を男として見るようになって、弱くなった」

「……マジで言ってんの」

「そうだな」


 すると、ヒジリが拳を握り、ハイセを殴ろうとパンチを放つ……が、ハイセはその手を受け止めた。


「アタシが変わったのは恋をしたから。わかる? 好きな男ができれば、女は変わるのよ。弱くなったように見える? そうじゃない、恋をして強くなってんのよ!!」

「…………」

「媚びて悪い? アンタにいい女って思われたいから、一緒にいたいって気持ちが強いから、アンタのこと感じたいから、傍にいたくなるのよ。確かに変わった……以前のアタシなら、こんなこと思わなかった」


 ヒジリは、ハイセの手を振りほどく。


「アタシが諦めないうちは、アンタのこと大好きなままだから。いい? アタシは弱くなったんじゃない。女を自覚して、もっともっと強くなってる最中なのよ」

「……そこまで。なんで俺なんかのことが好きなんだよ」

「決まってんでしょ」


 ヒジリはハイセの胸倉を掴み、顔を近づける。

 

「アタシより強くて、真っすぐだから。そんなアンタだから、アタシは好きになったのよ。ハイセ、この気持ちだけはアンタにも否定させないから」

「…………はっ」


 ハイセは、胸倉を掴まれたまま、ヒジリの手を掴んだ。


「悪かった。言い方悪かったな……ああ、俺に見る目がなかっただけか」

「…………」

「女の強さか。俺に理解できなくて当然だな……今までの言葉、撤回する」

「……ええ」

「ったく、お前といい、サーシャといい……なんでこんなに強いんだろうな」


 ヒジリの手が離れると、そのままハイセの隣に座る。

 そして、腕を取り、甘えるようにしがみついた。


「アタシとアンタの戦いはこれから。今はそうじゃなくても、アンタを必ずアタシの虜にしてやるから。覚悟しておきなさいよ」

「……はっ」


 もしかしたら、勝てないかもな……と、ヒジリを見て思うハイセだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 数時間後、馬車の屋根にいたロビンがレイノルドに言う。


「レイノルド、魔族っぽい人が歩いてるよ」

「お、マジか。なあシンシア……どうする?」

「ん~? 別に素通りでいいんじゃない? この辺、農地だし、農民くらい通るよ」


 現在、馬車は細い農道を通っている。

 馬車が二台、通れるかくらいの道だ。道の両側には細い川が流れており、水の張った畑が一面に広がっている。

 話によると、これは『田園』という、『コメ』という作物を育てる農地のようだ。

 前からは、褐色肌にツノの生えた、麦わら帽子をかぶった魔族が歩いて来る。

 レイノルドは緊張しつつ手綱を握り、ロビンは屋根の上で弓に手を伸ばしている。


「おじさん、こんにちわー」


 するとシンシア、おじさん魔族に普通に挨拶をした。

 ギョッとするレイノルド。おじさん魔族はニコッと微笑む。


「こんにちは。お嬢さんと……おお? 肌が白いけど、何の種族だい?」

「あ、オレはその」

「人間だよっ、珍しいでしょ?」


 さらにギョッとするレイノルド。おじさん魔族は驚いていた、が。


「ほぉぉ、人間? ノブナガ様と同じ種族かあ。初めて見たねぇ」

「だよね。ワタシも驚きなの。これから町経由して、魔王様のところに行くんだ~」

「はっはっは。パシフィス王都までかあ。なら、町でゆ~っくりしていくといいさ」

「うん!! じゃ、おじさん、気を付けてね~」


 レイノルドはペコっと頭を下げ、馬車は走り出す。

 冷や汗を流し、レイノルドは大きくため息を吐いた。


「もう、緊張しすぎだって」

「いやお前、いきなり人間とかバラすなよ……!! 本気で寿命縮んだぞ!?」

「そりゃ驚くけど、別に侵略者ってワケじゃないでしょ? 下手にびくびくするより、フツーにしてた方がいいよ? 現に、おじさんだって驚いたけど、それだけだったでしょ?」

「……まあ、確かに」

「ワタシがいるから平気だって。ささ、ロビンも降りて来なよ。町までは一直線だしさ」

「う、うん」


 ロビンは馬車の中へ。

 そこには、銃を手にしたハイセと、拳を握ったヒジリがいた。

 すぐに飛び出せるよう準備をしていたのだろう。


「……シンシアの言う通りかもな」


 ハイセはそう言い、銃をホルスターに納める。

 ヒジリも、拳を広げ軽く振った。


「堂々と、ね。まあそっちのが楽よね」

「だね……あたし、すっごく汗かいちゃった。ね、シンシア、今日は町に行けるの?」

「うん。最初の町は半日も進めばつくよ。でも、次の町まで何日かかかるね」


 こうして、ハイセたちは町へと進んでいく。


 ◇◇◇◇◇◇


 最初の町。名前はヘルーダと言うそうだ。

 驚いたことに、町を覆う壁などはない。魔獣が少ないせいなのか開放的だ。

 建物の数は多く、黒棘の村よりも規模が広い。

 町の入口で、レイノルドは大きく息を吐く。


「ふぅ~……堂々と、と言っても緊張するぜ」

「大丈夫大丈夫。ワタシ、何度かこの町来てるし、門兵とも喋ったことあるから」

「……魔族の案内人ってホントに助かるぜ」

「えへへ、褒められちゃった~♪」


 シンシアはレイノルドの腕にしがみつき、嬉しそうに頬ずりした。

 そして、町の入口に到着。門兵(当然魔族)が、怪訝そうにレイノルドを見る。


「白い肌、ツノが……ない? なんだお前は?」

「あー……オレはその」

「人間だよ。知ってるでしょ? で、ワタシのフィアンセ!!」

「に、人間? 人間って……どういうことだ!?」

「人間は人間。知らないの? 魔界の英雄、ノブナガ様と同じ種族だよっ」

「いや、それは知ってるが……ど、どこから」

「それはどうでもいいでしょ!! あのね、これから魔王様のところに連れて行くんだから、それとワタシのフィアンセに武器とか向けないでよね!!」


 シンシアがレイノルドにギューッと抱き着くと、レイノルドは微妙な顔をする。


「……まあ、魔族のお前が言うなら。いちおう、町長に報告はするぞ」

「うん。ワタシら、町の宿に泊まるから」

「わかった。では、通っていいぞ」


 馬車は通過できた。

 レイノルドは汗をぬぐう。


「と、通れた……あ~緊張した」

「だから、緊張しすぎだって」

「無理言うなよ。あの門兵、ちゃんと正しい反応だぜ?」

「んふふ。フィアンセって言っちゃった~!! ね、ね、うれしい?」

「……まあ、その言葉のおかげで助かったわけだし、ある意味嬉しいわ」

「えへへ、ねえねえ、お部屋一緒でいいよね?」

「それは無理」


 こうして、ハイセたちは最初の町ヘルーダへ、なんとか入ることができたのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒジリのハイセに対する本気度の高さ。ハイセはセイクリッド在籍時代のサーシャやピアソラからのパワハラもあり異性に対する感情がトラウマとなっていた。それゆえ、女性に対して恋愛感情が湧かず忌避感…
なんか雲行き怪しくなってきたな 階級差による意識の違いなのか、それとも国自体は敵対なんてするつもりなくて地下組織とか裏組織が暗躍してただけなのか
ハイセとヒジリの距離も近づいてきた。ヒロインの中で一番魅力が無いのがサーシャという感じ。サーシャやレイノルドもそうだけどセイクリッド全体で盛大に稼いだヘイトがそのままだから、好感が持てないというかはっ…
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