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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十四章 魔界~農業国パシフィス編~

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接待

 黒棘の村。

 魔族の住む村に入ったサーシャたちは、村長と守衛たちに囲まれ歩いていた。

 周囲を見ると、農業で生活しているのがよくわかる。畑で作業をし、木造の家があり、至って普通の農具が家の壁に立てかけてあった。

 それらを見て、サーシャは村長に言う。


「農業……で、生活を?」

「他に何があるんだい」

「す、すまないな。魔族の生活についてはわからないことだらけで」

「まあ、そうだろうね。あたしらも、人間なんて存在だけで、どういう生活してるのとかなんて知らないよ。でも……人間が作るメシや酒は美味いって聞いたことがある」

「……料理か。なら、酒だけじゃなく食事も提供しよう。村の人口は?」

「二百人ほどさ。なんだい、宴でも開いてくれるのかい?」

「それもいいな。だが、その前に村中に、私たちに関する情報を話してほしい。敵意はないということを知ってもらうだけでもいい」

「それは、あんたらの目的次第かね……着いたよ」


 到着したのは、立派な木造の家だった。

 家に入ると、村長がサーシャたちを手で制する。


「待った。うちは土足厳禁……ああ、人間は家の中で靴を脱ぐ文化がないんだね? 靴を脱いで入りな」

「あ、ああ。すまない」


 サーシャたちは靴を脱ぎ、家へ入る。守衛たちは玄関で待機するようだ。

 そして、居間に案内された。

 座布団が出され、部屋の中央には穴が開き、砂が敷き詰められている。そして、天井から紐のようなものが伸び、そこにヤカンが吊るされていた。

 どうやら、この砂の上で火を熾すようだ。暖炉とは違う。


「……囲炉裏、だったか」

「ほう、知ってるのかい?」

「ハイセのくれた本に書いてあったな。確か、アズマの古い文化……」

「アズマ。ああ、魔海の近くにある国か。なるほどねえ」


 村長は座り、煙管を出して煙草を入れ、指先に火を灯して煙草に火をつけた。

 サーシャは、アイテムボックスから酒瓶を数本出し、村長の方へ。


「ほう、綺麗な瓶だね……こんな高級品、見たことないよ」

「早速だが、話を聞いてほしい」

「そうだね。お前たちが来た理由、目的を説明しな」


 サーシャは、タイクーンと目配せ。

 プレセアは無言で頷き、エアリアは家をキョロキョロ見ていた。


「まず第一に……何度も言うが、私たちに敵意はない。魔族と争うつもりも、魔界をどうこうするつもりもない。そこはしっかり理解してほしい」

「ああ、わかったよ」

「では、私たちの目的を言う。私たちは、禁忌六迷宮を攻略に来た冒険者だ」


 ピクリと、村長の眉が動いた。


「禁忌、六迷宮……」

「ああ。工業国メガラニカ、農業国パシフィス、産業国レムリアの中心にある『ネクロファンタジア・マウンテン』を攻略するためにボクたちは来た」


 タイクーンが言うと、村長は静かに言う。


「……お前たち、『災厄』に触れるつもりかい?」

「災厄……『七大災厄』のことか。安心して欲しい、ボクたちは人間界に存在した『災厄』を全て葬っている。魔界の災厄も倒してみせよう」

「……なるほどねえ。ああ、お前たちは知らないのかい。大昔に魔海に現れた『災厄』のことを」

「……なんだ、それは?」


 タイクーンは首を傾げると、村長は言う。


「初代大魔王ノブナガ様が倒した災厄の一体のことさ。そいつのせいで、魔界の海は長らく『死海』となった……当時の魔族は海に出ることもできなかったそうだ」

「……そうか。七大災厄。五つは人間界に、二つは魔界にあるんだったな。一つは討伐済と聞いたが、まさかここでノブナガの名が出てくるとは」

「……アンタらは知ってるようだね。七大災厄を」


『狂大蛇』ヤマタノオロチ 

『暗黒粘液』ショゴス・ノワールウーズ

『狡猾軍勢』マスラオ・ショウジョウ

『蹂躙暴牛』コルナディオ・ミノタウルス

『白帝樹』ガオケレナ


「そして……『汚染毒海』クジャ・ラスラパンネ。魔界の海を荒らしに荒らした、巨大なバケモノクラゲさ。そして、ノブナガ様はたった一人で、魔界の中央に存在する『ネクロファンタジア・マウンテン』に、最後の一体を封じた……と、されている」

「……つまり、どういうことだ?」

「最後の一体が何なのか、アタシらにもわからない。でもね、ノブナガ様が封じたモンを掘り起こして、魔界を危険に晒すような真似はするな……ってことさ」

 

 村長は強い目でサーシャを睨む。

 だが、サーシャも引かない。


「最後の一つが何なのか、魔界の連中にもわからないのか」

「そうさ。ノブナガ様はたった一人で山に向かい、七大災厄を封じた……とされている。それが何なのかわかるのは、それこそ魔王様くらいだね」

「なら、魔王に会うしかないな」

「……今までの話、聞いていたのかい?」

「ああ。それが何なのか、確認するまで冒険は終わらない」

「……魔王様が、山に登る許可を出すとでも?」

「話すさ。人間、魔族、こうして面として向かい合って話せるんだ。きっとわかってくれる」

「人間界ならまだしも、魔界が危険になる可能性だってあるんだよ?」

「……魔族に罪はないことは承知している。でも、禁忌六迷宮を踏破するのは、私の……私たちの『道』だから」


 サーシャは言う。

 村長はサーシャをジッと見て、小さくため息を吐いた。


「何を言っても無駄だね」

「すまない」

「……まあいい」


 村長が指を鳴らすと、隣の部屋から中年の魔族が数人出てきた。

 サーシャ、プレセアは驚かなかったが、タイクーンは驚いていた。


「い、いつの間に……」

「最初からいたわ」

「ああ。気配を感じなかった……そういう魔法か? だが、存在はそこにあった」

「フン。お前たち、宴の用意しな。食事と酒はこいつらが出す。それと、村中に『人間に害はない』って伝えてきな。あと……シンシアを呼んできな」

「し、シンシアって……オババ、まさか」

「どのみち、関わっちまったんだ。案内の一人でも付けないと、こいつらを見過ごしたってケチ付けられる。だったら、最初から案内人を付けた方がいい」


 男たちは出て行った。

 サーシャは首を傾げる。


「……シンシア?」

「村一番の器量よし、腕前よし、頭脳よしの狩人さ。今は一人暮らししてる。そいつを案内人に付けてやるよ。連れて行きな」


 すると、ドタドタと足音……扉がバンと開いた。


「オババ!! ワタシ、外に出ていいってマジ!?」


 灰銀のロングヘア、褐色肌、赤眼、そして魔獣の皮で作ったローブを着た少女だった。

 背中には立派な装飾の弓矢を背負い、腰には短剣が二本、交差するようにベルトに差してある。

 フィットするズボンを履いているが、右足側は大胆にカットされており、ローブ下はぴっちりしたシャツを着ており、胸の谷間が見えていた。

 帽子をかぶっており、そこからツノが飛び出している。かなりオシャレそうな少女だった。


「あ!! 村に来た人間!! わぁ、肌まっしろ、ツノないんだ~」

「あ、あの」


 少女……シンシアは、サーシャに接近して顔をジロジロ見る。

 すると、村長が持っていた煙管がシンシアの頭をパコンと叩いた。


「あいだっ!?」

「行儀よくしな!! まったくこの子は……とにかく、この子を案内に付ける。あとは好きにしな」

「え、なになに、どゆこと」

「シンシア。お前、前々から村を出て冒険したいって言ったろ? お前ももうじき十八歳。村を出る許可をやろう。この人間たちに同行して、冒険を見届けな」

「え、いいの? しかも人間と一緒に? やったー!!」


 これまでの魔族と違う、底抜けに明るい少女だった。

 シンシアはくるっと振り返り、サーシャ、タイクーン、プレセア、そしていつの間にかグースカ寝ていたエアリアを見る。


「ワタシ、シンシア!! 黒棘の村の狩人でもうじき十八歳。夢は冒険すること!! ああ、ワタシ種族がどーのこーの言わないから気にしないでね!! ね、ね、人間界にある面白い物なんかある? いろいろ見せてほしいな~」

「えと……さ、サーシャだ」

「タイクーンだ」

「プレセア。ほら、起きなさい」

「んが……んああ、終わった? ふぁぁ……ん? 誰だー?」


 エアリアが起き、目元をごしごし擦る。

 シンシアは嬉しそうに拳を握り、高々と突き上げた。


「よろしくね、みんな!! ワタシ、めちゃくちゃ強いから安心して冒険できるよ!!」

「「「「…………」」」」


 こうして、シンシアが仲間になった。

 その前に……まずは宴会、そしてシンシアについての説明を待機組にしなくてはいけないと、サーシャは思うのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
世間知らずは案内役になるのだろうか? 使命感や保守的な思想を持っていそうにないので、監視役としてもどうなのか…、魔王に示しはつくのだろうか? 村長よりも上位者に、魔王、大魔王と居るので、(武力では敵…
この話の内容は正直サーシャと魔界の住人との会話が嚙み合って無いと言うかそもそもサーシャの独り善がりのお花畑な考えを押し付けてる様にしか読めない。魔界の住人は世界のとって危機だからと言ってるのにサーシャ…
なぜこの女がこの物語に登場するのですか?これは不快です、ヘイズはどこにいますか?彼女がただのクズであるかのように、読者の顔にゴミを投げるつもりですか? この雌犬をアイテムボックスに戻して、物語の主人公…
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