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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十三章 東方の国アズマ

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魔界への道

 この日は、各々が好きな時間を過ごした。

 そして翌日。物資の補給をするために、それぞれが町へ買い出しへ。

 ハイセは、サーシャと二人で城下町を歩いていた……意外なことに、ハイセが誘ったのだ。

 サーシャは、ドキドキしながら聞く。


「は、ハイセ……わ、私と二人で歩くなんて、どういう了見だ?」

「決まってんだろ。俺とお前が一緒に、何の目的もなく歩けば、間違いなく向こうから接触してくる」

「向こう? あ……」


 と、ハイセとサーシャの前から、煙管を咥えて歩く一人の美女がいた。

 着物を着て、化粧を施し、アズマの『遊女』になりきっている。

 だが、サーシャも気付いた。


「……カーリープーラン」

「ここでは『お松』と呼びな。フフ……久しいねぇ。大活躍しているようじゃないか」

 往来のど真ん中で立ち止まる三人。

 ハイセは言う。


「準備は?」

「相変わらず話もしないガキだねぇ。付いてきな」


 カーリープーランは歩き出した。二人は後を追う。


「……ハイセ。カーリープーランを探していたのか?」

「ああ。やることはやったし、あとは魔界へ行くだけだ。昨日は初日だったから自由行動にしたが……本来の目的は禁忌六迷宮だ。お前、気を抜きすぎだぞ」

「……すまん。さすがに、遊び過ぎた」


 サーシャは顔をパンと叩き、『セイクリッド』のリーダーとしての顔になる。

 その横顔を見て、ハイセは安心したのか、すぐに前を向いて歩き出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 向かったのは、小さな芝居小屋だった。

 芝居を見るのが目的ではないのか、座敷ではなく椅子テーブルで、円卓の上には酒や料理が並び、遊女が酌をしたり、舞台の上で踊る遊女を客が眺めている。

 なぜか、踊る遊女の着物がはだけたり、色っぽいポーズを取るような踊り方をしていた。


「あたしの店さね。フフ、アズマ人は助兵衛が多くて、こういう店をやるだけで儲かるよ」

「盗賊のくせに」


 ハイセが言うと、カーリープーランは「あっはっは」と笑う。

 そのまま二階へ向かうと、妙な声が聞こえてきた。

 男と女の声。女の声がどこか艶があり、サーシャは顔を赤くする。


「お、おい、ここって……」

「もちろん、売り買いもしてるさ。ああ、遊女たちはサキュバスもいるよ。ふふ、アズマのサキュバスも、なかなかのモンだねぇ」

「~~~……は、破廉恥な」


 ハイセは無表情だったが、サーシャは目を閉じ、耳を塞いでいた。

 そして、通路の奥にある個室に入る。

 応接間なのか、ここだけ雰囲気が違う。ソファにテーブル、シャンデリアに高級カーペット。

 カーリープーランはサイドテーブルにあるブランデーの瓶を手にし、グラスに魔法で氷の玉をコトンと落とし、ブランデーを注いだ。


「飲むかい?」


 二人は拒否。カーリープーランはグラスを手に、ソファへ座る。

 ハイセとサーシャも向かい側に座り、カーリープーランはブランデーを一口飲み、グラスを置いた。


「四日待ちな。これから『ゲート』を開ける作業に入る」


 いきなり要件を伝えた。

 ハイセは首をかしげる。


「四日?」

「前にも言ったろ。そう簡単に開け閉めできるようなモンじゃないと」

「……」

「魔界への門を開けるタイミングは一任したけど、お前のゴーサインが出て開けるとなると、四日かかるってわけだ。言っておくけど、下準備はすでに終わってる。あとは魔力を注いで門を開くだけ……この作業に四日かかるってわけだ」

「な、なるほど……」

「まあ、観光でもしてな。四日後の早朝に、この店に全員で来な。ああ、十一人がぞろぞろ並んで来ると目立つから、数人ずつ、別な道で来なよ」

「わかった」


 カーリープーランはグラスを手に、ブランデーを二口飲む。


「ふう、それと……行きはいいとして、帰りはどうするんだい? あたしらの場合は、再び向こうの『ゲート』に魔力を注げば戻ってこれるけど……この『ゲート』は人間の魔力じゃ反応しないし、魔族を脅して魔力を注がせたとしても、コツを掴まないと数ヶ月はかかるよ?」

「それはなんとかする。というか……もう少しで理解できる気がするんだ」

「理解?」

「ああ。ノブナガが使った魔界への移動手段。俺の『兵器』の力でな」

「ふーん……ぜひ、見てみたいもんだね。それと、忘れるんじゃないよ」


 カーリープーランはブランデーを飲み干し、グラスをテーブルに叩き付けるように置いた。


「ハイセ、サーシャ。魔界で、『ネクロファンタジア・マウンテン』で、『魔界にも人間界にもないもの』を持ってくることだ。それがあたしへの報酬であり、リネットとの交換条件だ」

「わ、わかっている」


 現在、リネットはまだハイセの弟子という扱いだ。

 そのリネットを引き取るため、ハイセとサーシャは『ネクロファンタジア・マウンテン』にあるお宝を、カーリープーランへ渡す必要がある。


「それと、こいつを見な」


 カーリープーランは、一枚の地図を取り出した。

 巨大な、円形の島だった。

 ドーナツのような形をしており、中央に小さな穴が開いている。

 ドーナツは、綺麗に三分割された線が引いてあった。


「魔界の地図さ。工業国メガラニカ、農業国パシフィス、産業国レムリアとキレーに三分割されているだろう? そしてこの中央にあるのが、魔界最大の災厄が眠る『ネクロファンタジア・マウンテン』だ。いいかい、ここは魔族の技術の結晶である『災厄封印ゲート・イゾルデシステム』で守られている。入るには、魔王の管理する三つのゲートキーを使い、さらに『大魔王』ヒデヨシの承認がないと開かない」

「……頭の痛くなる話だな」


 ハイセが言うと、カーリープーランは鼻で笑う。

 だが、サーシャは違った。


「カーリープーラン。まさか……調べてくれたのか? 以前はそんなこと言わなかったぞ?」

「……ヒマだっただけさ。それに、お宝のためなら情報提供くらいするさね」

「そうか。ありがとう」

「……とにかく。お前たちは、三人の魔王からキーをもらい、大魔王ヒデヨシを連れて行かないと挑戦すらできないよ。さてさて、何年かかることやら」

「……半年以内にケリをつける。あまり長く留守にすると、家賃滞納で追い出されるからな」

「は、半年。お前、バカじゃないのかい?」

「その気になれば、爆撃でゲートとやらを破壊して挑んでもいんだがな。魔界にも秩序があるなら、それを乱すようなことはしない。俺は侵略者じゃなく、冒険者だからな」


 ソファに深く腰掛け足を組むハイセ。

 ゾッとしたカーリープーラン。その気になればハイセは、魔界を破壊する。

 が……ハイセは笑った。


「冗談だよ。それに、魔界の文化や生活、技術にも興味はあるからな」

「…………」


 やはり、ハイセは敵に回すわけにはいかない……改めて、カーリープーランはそう思うのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 店から出て、二人は歩いていた。


「四日か……時間できたな」

「ふふ。みんな観光したり飲み食いしたりと満喫している。四日なんてすぐだろう」

「……やれやれ」

「ハイセ、お前はどうするんだ?」

「…………」


 いつもなら、宿屋で積み本を読みふけったりするだろう。

 なんとなくサーシャを見て思う。


「……アズマ。今度はいつ来ることになるかわからないな」

「そうだな。かなり距離があるし……」

「……シムーンとイーサン、リネット、ガイストさん、宿屋の主人。世話になってる人たちに土産でも買うか」

「……そ、そうか」

「お前もどうだ?」

「えっ」

「土産。お前も、クランの連中に土産とか渡さないのか?」

「や、やる。お土産、買うぞ」

「……一緒に行くか?」

「い、いいのか?」

「ああ。お前の意見も聞いてみたい……嫌ならいいが」

「い、行く!! ふふっ、じゃあ今日は買い物の日だな」


 サーシャはハイセの手を掴み、嬉しそうに笑う。

 そんなサーシャを見てハイセも、思わず苦笑してしまうのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
ハイセは底辺から頑張って這い上がってきたところに共感が持てるけど、セイクリッドは鼻持ちならないエリートで共感が持てないし、構成員みんな性格が悪いから嫌い。セイクリッドにはいなくなって欲しい。
こうして魔界の事がわかるとハイセとセイクリッドは禁忌六迷宮制覇というオナニーの為に魔界の平穏を脅かす基地外冒険者にしか見えないな・・・ せめてネクロファンタジア・マウンテン攻略が魔界や人間界を救うこと…
アズマは観光だけでスルーかな?
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