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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十三章 東方の国アズマ

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アズマの食事

 クレアは、プレセアとエクリプスの三人で、城下町の食事を楽しんでいた。

 三人が食べていたのは、真っ白でツルツルした『麺』という料理。

 クレアは、箸を器用に使って麺を啜っていた。


「ん~おいしい!! この『うどん』って料理、もっちモチですねえ」

「こっちの『素麵』も美味しいわね。プレセアは?」

「私のは『拉麺』ね。二人に比べると、少し縮れた麺ね……スープが独特の味」


 三人は、様々な麺料理を楽しんでいた。

 支払いをして店を出て、クレアはお腹を押さえる。


「うっぷ。意外とお腹に溜まりますね……もう一軒、と思いましたけど、厳しいですー」

「ふふ、そうね……散歩でもしながら、アズマのお洋服でも観に行かない?」

「いいわね。アズマの文化に触れるのも悪くないわ」


 三人は、アズマのメインストリートを歩いていた。

 周りを見ると、木造の建物が多く並び、アズマの住人で賑わっている。

 観光客もいなくはないが、かなり少ない。異国の住人であるクレアたちが珍しいのか、チラチラと見られているのも間違いない。

 だが、三人は気にせず歩き……プレセアが気付いた。


「見て、あそこ……焼き物の店」

「焼き物。食べ物ですか!!」

「違うわ。あれは陶器ね」

「闘気!! ソードマスターである私ですね!!」

「クレア……あなた、少し黙りなさい」


 エクリプスに肩をポンと叩かれ、クレアはしずしずと下がる。

 プレセア、エクリプスがお店に近づき、展示されている焼き物を眺めた。


「カップ、かしら……取っ手がないわ」


 エクリプスが首を傾げると、プレセアが言う。


「これは湯呑ね。ギルドマスターのガイストが使っていたわ」

「へえ……お茶を飲むの?」

「ええ。こっちの急須に茶葉を入れて、湯呑に注いで飲むの。私も飲んだことはないわ」


 店頭に展示してある焼き物を見て、興味を持つ二人。

 するとクレアが、二人の背を押した。


「店頭で見てないで、中で見ましょうよ!! お茶、魔界で飲めるなら買うのもありですっ!!」


 クレアに背を押され、三人は店に入るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 三人は焼き物をたくさん買った。

 急須に湯呑、花瓶や壺など、冒険とは関係ない物まで買う。

 クレアは、自分のとは別に、もう一つ湯呑を買っていた。

 エクリプスが、木箱入りの湯呑を大事そうに抱えるクレアに聞く。


「クレア、二つも買ったの?」

「はい!! これ、黒い湯呑……師匠にピッタリだと思いまして!!」

「……ハイセに?」

「はい。私、けっこう迷惑かけてるんで、お詫びというか、プレゼントですね」


 クレアは、木箱を大事そうにアイテムボックスに入れた。

 その様子を見て、プレセアが聞く。


「クレア。あなた、本当にハイセが好きなのね」

「はい、大好きです!! えへへ、師匠、喜んでくれるかな~」

「……本当に純粋なのね。ハイセが気を許したくなるのもわかるわ」


 ふと、エクリプスが『茶屋』と書かれたのぼり旗を見つける。


「お腹もこなれてきたし、お茶にしない?」

「します!! お茶、飲みたいです!!」

「そうね。あら?」


 と、前から見覚えのある姿……ハイセとタイクーンが歩いてきた。

 ハイセたちも、エクリプスたちに気付き、立ち止まる。


「師匠!!」

「っと……お前な、いちいち腕に抱きつくな」

「えへへ。あのあの、お茶しませんか? 私たち、これからお茶なんです」

「……」

「……やれやれ。ボクたちもさっき書店を出て、喉を潤そうと考えていたところだ」

「やったあ。あ、そうだ師匠、あとでプレゼントあるので!!」

「は? まあ……このまま往来で騒ぐのは避けたい。茶、飲むか」


 クレアは、ハイセの腕にくっついたまま、茶屋の中へ。

 タイクーンが続き、プレセアとエクリプスが顔を見合わせる。


「プレセア。あなた……あんな風にハイセの腕にしがみつける?」

「無理。あの子だからできるのよ」

「……ちょっとうらやましいわね」

「ええ。私やあなたが同じことしたら、怪しまれるだけだと思うわ」


 二人も茶屋へ。

 六人掛けの席に座り、クレアはハイセの隣、エクリプスとプレセアが並び、タイクーンが一人席に座り、メニューを眺めた。

 タイクーンがメニューを見て言う。


「ボクはこの『ぜんざい』という物にしよう」

「食事か? 茶じゃないのか? というか……なんだ、それ?」

「不明だ。だからこそ面白い……アズマの文化に触れることができる」

「……俺はいいや。そうだな、この『ずんだもち』ってやつと、『ホウジ茶』でいい。というか……クレア、いい加減離れろ」

「え~? 師匠に甘えたい時間なんですよー、うりうり」

「うっとおしい。離れろ」

「あうー」


 クレアの腕締めを外し、メニューを押し付けた。

 

「……私、『ゲンマイ茶』と『あんみつもち』にするわ」

「もち。この名前が付いたメニューが多いわね……私はあえて『だんご』にするわ。お茶は、『くろまめ茶』で」

「じゃあ私は……『いちごだいふく』と、『りょく茶』で!!」

「声がデカい。もう少し静かにしろ」


 店員を呼び、メニューを注文。

 十分ほど経過すると、それぞれの食べ物が運ばれて来た。


「な、なんだこれは……真っ黒だぞ」

「それが『ぜんざい』か? 見たところ、豆……か? 中に白いのがあるな」


 タイクーンの『ぜんざい』を見て、ハイセはやや顔をしかめる。

 甘い匂いがプンプンした。タイクーンはスプーンで黒い豆を食べ、「意外と悪くない」と言いモグモグ食べ始めた。

 ハイセも、自分の『ずんだもち』を、竹のナイフで切って食べ始める。


「……美味いな。この緑のが、ずんだってやつか。茶も美味い……これ、ガイストさんがよく飲んでいたお茶と同じかも」

「師匠、私にも食べさせてくださいー」

「お前は自分のある……おい、もう食ったのか」

「いちごだいふく、すっごく美味しかったです!! 甘酸っぱくて、もちもちで」

「……ったく、ほれ」


 ハイセは、二つあるずんだ餅の一つをクレアへ。

 クレアは遠慮なく食べ始め、顔をほころばせていた。

 その様子を、エクリプスとクレアが見ている。


「……本当にすごいわね」

「ええ。でもエクリプス……感じない? あれは恋というか、兄が妹に接するような感じ」

「……確かに」


 甘える妹、世話を焼く兄。

 そんな風に見ようとすると、ハイセの腕にベタベタ甘えるクレアも見えなくない。

 

「うーん。恋……じゃないのかしら?」

「私は、クレアが自覚した瞬間、一気に落ちると予想しているわ。あの子、まだ子供だからね……それこそ、ヒジリ以上の」

「……そうねえ」


 エクリプスは、ハイセのお茶を飲もうとし、湯呑を遠ざけられるクレアを見て思う。

 もし恋を自覚したら、クレアは一番、ハイセに近くなる存在なのかもしれない……と。


「うっぷ……さ、さすがに、気持ち悪くなるな」

「おいタイクーン、無理すんな。無理ならクレアに食わせる」

「えー? でもでも、男の人の食べかけはちょっと……あ、師匠は別ですけど」

「た、食べるさ。これもアズマの文化……だ」


 クレアにとっても、ハイセは特別。

 エクリプスとプレセアは改めてそれを認識するのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
せっかくの日常回。エクリプス、プレセア、ヒジリもハイセとの絡みがあると良いです。
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