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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十三章 東方の国アズマ

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すぐに行くなんてとんでもない

 歩いていると、ハイセとサーシャの耳に、プレセアの声が響いてきた。

 町の中心地から少し外れた観光地にある一番大きな宿。そこに部屋を取ったと。

 二人が向かうと、大きな広場にある巨大な『城』のような建物があり、その前にエクリプスがいた。

 ハイセたちを見つけると、エクリプスは手を振って出迎える。


「おかえりなさい、報告は済んだのかしら?」

「ああ。終わった……連中は?」

「みんな部屋にいるわ。自由時間という話だったけれど、レイノルドが『ハイセたちを待つ』って言うからね。皆、従ったわ」

「……レイノルドが? ハイセ、どういうことだ?」

「俺に言われてもな。とりあえず行くか」


 城……ではなく、城下町で一番大きい宿屋に入り、エクリプスに案内され大部屋へ。

 そこに入ると、全員が揃っていた。

 だが、ヒジリやエアリアが不機嫌で、他のメンバーも待ちくたびれているようだ。


「あー!! やっと帰って来た……くんくん、アンタら何か食べて来たでしょ!!」

「近づくな匂いを嗅ぐなくっつくな。なんだよお前……メシ食ってないのか?」

「レイノルドが話あるって言うからみんな待機してたのよ」


 ムスッとするヒジリを突き放し、レイノルドに確認する。


「おいレイノルド。どうしたんだよ」

「悪いな。まあ座れ」


 大部屋……宴会場でもあるのだろうか、タタミ敷きでみんなが靴を脱いで座っている。

 エアリア、ヒジリなどはうつ伏せになって足をパタパタさせ、ロビンは仰向けで天井を眺めていた。意外にもクレアは上品に座り、エクリプスとサーシャは並んで座る。

 他の面子も、やや不満そうだがきちんと座っていた。

 それよりも、ハイセは少し驚いていた。


(……驚いたな。全員、レイノルドの言うこと聞いて待ってたのか)


 ヒジリやエアリアなら飛び出していただろう。だが、こうして座っている。

 カリスマ、リーダー性という言葉がハイセに浮かぶ。レイノルドの言葉はなぜか、聞かなければならないような、威厳にあふれていた。

 戦闘力じゃない真似のできない素養。サーシャ以上に、レイノルドは『リーダー』としての素質に溢れていると、ハイセは再認識した。

 と、考え事をやめて座るとサーシャが言う。


「レイノルド。私とハイセを待つほど重要な話があるのだろう。説明してくれ」

「おう」


 レイノルドは足を崩し、腕組みをして言う。


「まず、自由時間だってのに、メシも食いに行かせずこうして集まってもらって感謝してる。ここで自由行動にしちまうと、今後のこと含めて、ちゃんと話せるとは思えないからな」


 不満そうな面子の顔が、少し和らいだ。

 レイノルドは目を閉じ、厳しい顔で言う。

 

「……オレらはスタンダード発生という重要な依頼をクリアし、こうしてアズマに到着した」


 重苦しい言葉だった。

 全員がいつの間にか、レイノルドの言葉を真剣に聞く。


「東方アズマ。城下町クウカイ……異国情緒あふれる街だ。見るモンすべてが知らん物ばかり。どこに視線を移しても興味深いモンばかり。だが、オレはこの国から、海の向こうにある魔界へ行く」

「……ああ。ここは中継地点だ。ギルドの報告も終わったし、物資を追加補給して、最終チェックをする。恐らく、カーリープーランからの接触もあるはずだ」


 ハイセは言うと、レイノルドは深く頷く。


「なあ、もったいなくねぇか?」

「…………は?」

「今言っただろ? 異国情緒あふれる街、見るモンすべてが珍しい……そんな異国を、ただの中継地点として通り過ぎるのは、あまりにももったいない!!」

「…………は?」


 ハイセは滅多にしない「ポカン」とした表情になる。

 すると、クレア、ヒジリ、エアリア、ロビンが何かを察したのか、寝そべっていた状態からガバッと立ち上がり、なぜか目を輝かせる。

 レイノルドはそれを見てニヤリとした。


「ご褒美だ」

「…………は?」

「スタンピード阻止。これってよ、歴史を紐解いてもそうはないんじゃねぇか? スタンピード発生直前のダンジョンに踏み込んで核を破壊するなんて所業、そうはないだろ? なあタイクーン」

「確かに。ボクの知る限り事例は存在しない」

「おう。つまり……オレら十一人は、歴史で初めて、スタンピード発生を阻止した英雄ってことだ。で、さらにこれから禁忌六迷宮最後の一つに挑戦しようとしている……」

「…………で?」

「これから魔界に行く。でも、魔界はどういうところかわかんねぇ……生きるか死ぬかもわからない状況では、悔いを残したくねえ!! ってわけで、スタンピード阻止の祝い、そして自分へのご褒美として、アズマで休暇を取ることを提案する!!」

「…………」


 要は、見知らぬ異国の地であるアズマを観光し、休暇を取りたいということだ。

 それっぽい理屈を並べ、いかにもな理由付けとして。

 レイノルドのカリスマ性は止まらない。


「決を採る!! アズマ観光をし、悔いを残さず魔界に行きたい人は挙手!!」

「「「「「はい!!」」」」」


 クレア、ヒジリ、エアリア、ロビン、ピアソラ。そしてレイノルドが挙手した。

 六人……この時点で決まってしまった。


「よし決定!! ハイセ、魔界前にアズマで休暇を取るぜ!!」

「…………頭痛くなってきた」

「やれやれ。ハイセ、いいのか?」

「おいタイクーン。休暇があれば、アズマの書店とかで珍しい本とか買えるかもしれねぇぜ」

「…………ぐっ」


 タイクーンは心揺れる。

 レイノルドはプレセア、エクリプスを見る。


「私はハイセがいるだけで幸せだから、どうでもいいわ」

「……私も別に。まあ、アズマの薬局とか、薬草とか見てみたい気持ちはあるけど」


 レイノルドは最後、サーシャを見た。


「サーシャはどうだ?」

「……先ほど、ハイセとアズマの城を間近で見て、ふとしたきっかけでこの剣を手に入れた」


 サーシャはアイテムボックスから『国崩』を出し、畳に置く。


「アズマの武具……魔界でも役立つかもしれん。装備を整えるという意味で滞在するのはいいと思う。レイノルドの言う通り、一度魔界に行けば、こちらに戻ってくるのは容易ではないからな」

「お、おう」


 実はアズマの酒を飲んでみたいから……という理由が根底にあるレイノルド。こうも真面目に返答され、少しだけ罪悪感。

 そして最後、全員の視線がハイセに集中する。

 ハイセは、大きなため息を吐いた。


「……どのみち、カーリープーランに接触しないと、魔界に行く道は開けない。物資の補給もあるし、サーシャの言う通り魔界で役立つ装備もあるかもしれん」

「いいんだな? よし!! じゃあ魔界に行く前、最後の休みだ!! 話は終わり、みんなメシ食いに行こうぜ!!」

「「「「「おーっ!!」」」」」


 レイノルドを筆頭に、空腹メンバーが部屋を飛び出していった。

 そして、残ったのはタイクーン、サーシャ、エクリプス、プレセア。


「……ったく、あいつらは変わらないな」

「ふふ、まあいいじゃないか。魔界では何が待っているのかわからない……アズマで戦いの疲れを癒すことも大事だろう」


 サーシャがほほ笑むと、ハイセは再びため息を吐く。

 すると、エクリプスがハイセの隣に。


「ね、ハイセ。食事は済ませたのよね? その……私、まだなのだけれど」

「じゃあ食いに行けよ」

「……食事の後、お散歩もしたいわ。付き合ってくれない?」

「それいいわね。私も付き合うわ」


 と、プレセアが割り込んできた。

 エクリプスがジロっとプレセアを睨むが、プレセアはどこ吹く風。

 サーシャが咳払いし、さらに割り込む。


「ゴホン。食事なら私も付き合おうか。その、まだ食べ足りないからな」

「あなた、太るわよ」

「ええ。せっかく新調した鎧、胸がギュウギュウになるんじゃない?」

「む、胸は変わらん!! ええい、バカにするな!!」


 ギャーギャー騒ぐ三人を無視し、ハイセは言う。


「タイクーン、通りに本屋あった。付き合え」

「構わない。むしろ喜んでいこう」

「メシは?」

「アイテムボックスにサンドイッチがある。食べながら行くさ」

「じゃあ行くか」


 ハイセは、三人を無視してタイクーンと本屋へ向かうのだった。

 こうして、魔界行き前、最後の休暇が始まった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
この作品を読んだ読者の中で一体どれくらいレイノルドにカリスマ性や威厳を感じた人がいるのかアンケート取ってほしいw 大半の読者が思ったことない設定を作品終盤に持ってこられて困惑してるし作中のハイセ達は洗…
レイノルドの初期設定がどう考えても、人としての器の小さな間男だから、カリスマとか威厳とか似合わない。 リーダー性にしても作品を読む限りレイノルドのリーダーシップは学校のクラス2、3人はいる仕切り屋く…
この章ではセイクリッドのキャラを各自持ち上げて順繰りに「スゴーい」するんですかね? レイノルズにカリスマとか威厳とかのエピソードなんて一度も無かったから無理がありすぎ。 小物としての最初のイメージ…
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