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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十三章 東方の国アズマ

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城下町クウカイと魔刀『国崩』

 東方アズマ、城下町クウカイ。

 ハイセ、サーシャの二人は並んで歩き、今更ながら気付いた。


「しまったな……ロビンのヤツ、どこに宿を取ったんだ?」


 宿を取れ、としか言わなかった。

 連絡手段のないハイセ、サーシャ。サーシャはハイセに言う。


「まあ、問題ないだろう。恐らく、エクリプスかプレセア辺りが、私たちに連絡するはずだ」

「……確かにな。じゃあ、腹も減ったしメシでも食うか。どうせあいつらも自由行動してるだろ」

「う、うむ……あの、ハイセ」

「ん」


 周囲を確認しつつ、ハイセは返事をする。

 サーシャは、どこか照れているのか、微妙にハイセと距離を詰めてきた。


「その、少しだけ……行きたいところがあるんだ」

「行きたいところ?」

「ああ。アズマ名物の『クサナギ城』だ。その……そんな暇はないし、アズマはあくまで中継地点として立ち寄るだけとはわかっている。でも、異国の城というのを、一度見てみたくて」

「…………まあ、いいけど」


 現状、カーリープーランと連絡する方法はないし、相手からのコンタクトを待つしかない。

 それまでは、アズマで待機する予定なので、少しは時間がある。

 それに、カーリープーランなら、ハイセたちがアズマに入ったことも気付いている可能性がある。入ってそうそうに、魔界へ行くとは思っていない。

 城を見るくらいならと、ハイセとサーシャは向かうのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 クサナギ城。

 東方の国アズマの名物の一つ。木造で、ハイセやサーシャが見たことのない形状の城だった。

 石垣、木造、天守閣……断片的な知識ならハイセにもあるが、それがどこを差し、何を示すのかまではわからない。

 巨大な正門を抜け、玉砂利の道を進んでいくと、近くに見えた。


「おお……これが、クサナギ城」


 サーシャは感動していた。

 ハイセには、『屋根がやたら多い建物』としかわからない。天守閣という言葉が何なのか、アズマに関しての知識は人より多いつもりだが、それでも首を傾げていた。


「ハイセ、すごいな!!」

「ああ。確かに……アズマについて多少は学んで来たが、文章を読むのと見るのじゃ大違いだ」

「ん? 見ろ、あれ」


 城前広場には、多くの着物を着た剣士たちがいた。

 二人が近づくと、剣士たちが剣を抜き、演武を始める。

 観客たちも、演武を見て手を鳴らしたり、歓声を上げていた。どうやらこの広場で定期的に開催されている出し物のようだ。


「細い剣だな……アズマの剣か?」

「カタナってやつだ。強度は大したことないが、何よりも『斬る』ことに特化した武器だ。アズマでしか作れない、アズマ最強の武器だ」

「ほう……面白いな、一振り買っていきたい。魔界でも役に立つかもしれん」

「町に武器屋くらいあるだろ。見かけたら入ってみるか」

「うむ。ふふふ、楽しみができた」


 子供のような笑みを浮かべるサーシャに、ハイセも少しだけ微笑んでしまう。

 

「あ……ハイセ、今」

「……こっち見んな」

「……ふふっ」


 ぐいっと顔を近づけて来るサーシャから顔を逸らすハイセ。

 そんな時だった。


「見よ!! これこそ、ヤマトに伝わる伝説の刀にして、呪われし刀、その名も『国崩』!!」


 演武が終わり、出し物が始まった。

 マゲを結った武士が二人、台座に安置された『刀』を、二人がかりで運んできた。

 少しだけ、ハイセの背にチリッとした『殺気』が感じられた。

 それはサーシャも同じ。観客たちはどよめき、何人か恐ろしさからその場を離れた。


「この『国崩(くにくずし)』は、刀に魅入られし鍛冶師が生み出した、伝説にして呪われた一振り!! あらゆる力を弾き、その切れ味は国を崩す!!」


 なんとも胡散臭い口上だった。

 だが、ハイセとサーシャは顔を見合わせる。


「……妙に殺気を感じる剣だ」

「同感だ。だが、面白いな」


 胡散臭い口上は続く。


「この『国崩』を作り出した刀鍛冶は、かつて最高の刀鍛冶と言われ、様々な刀を生み出したとされる。しかし、その鍛冶師は決して、自分が刀を打つところを誰にも見せなかったそうな……そんなある日、刀鍛冶は気付いた。これ以上ない刀を作るには命を賭けるしかないと、そこで生み出されたのがこの国崩!! 鍛冶師は最後、この刀を握り、満足そうに微笑んでいたそうな」


 ハイセは考え、思ったことを言う。


「……刀を打つ音がしない、誰にも刀を打つところを見せなかった。でも、様々な刀を生み出した、か……」

「何か気になるのか?」

「……推測だが、恐らくその鍛冶師はリネットと同じ、『摸剣マスター』だった可能性が高いな。あの『国崩』も、能力で生み出した物なら納得できる。模剣マスターは、あらゆる属性、能力を付与した剣を作り出せるからな」

「なるほど。面白い考えだ」


 口上はまだ続いた。


「この剣に認められぬ者は、使うだけで命を削られ、最後には死に至るという……この剣に認められる方法はただ一つ!!」


 すると、巨大な槌を手にした筋骨隆々の男が、刃を剥き出しにした『国崩』に向かって槌を振り下ろした。だが、刀は刃こぼれすらせず、逆に槌が真っ二つになってしまう。


「見ての通り。この刀は破壊できない!! この刀に認められるためには……この刀を破壊すること!! それが、この国崩を振るうたった一つの条件!! さあさあ、お客さんの中にいないか!? 勇気ある武士、戦士たち!! 挑戦権は金貨一枚!! もし国崩を折ることができれば、この刀が手に入るぞ!!」

「……それが目的か。金稼ぎの道具にされているとはな」


 呆れるハイセ。くだらなそうに刀を眺めて鼻を鳴らし、サーシャに言う。


「おい、もう行くぞ。そろそろメシ……」

「…………」

「……おい、サーシャ、まさか」


 するとサーシャは、金貨を一枚手に、人をかき分けて金貨を掲げた。


「私が挑戦しよう!!」


 どよめく周囲。

 いきなり現れた銀髪の美少女が、自信満々に金貨を掲げたのだ。

 武士は言う。


「これはこれは、挑戦者は異国の少女、銀髪の異人の挑戦だぁ!!」


 サーシャは金貨を支払い前に。

 観客たちに軽く手を振り、武士に聞いた。


「破壊の方法は?」

「なーんでもありだ。斬ってよし、叩いてよし、殴ってよし……とにかく、こいつを破壊だ。チャンスは何度でもあり、壊せればなんでもよし」

「シンプルでいい」


 サーシャは、自身の愛剣を手にする。

 そして、闘気を放つ。


「──っ!? なな、なんと、『異能持ち』、異能持ちの挑戦だあ!! これまで数々の異能持ちが挑戦したが、結果は全て惨敗……さあ、彼女はどうなる!?」

「……ったく、目立ちすぎだぞ」


 呆れるハイセ。だが、少しワクワクしている自分がいた。

 サーシャは剣を抜き、切っ先を軽く国崩に触れさせる。


「……聞こえるぞ、お前の声。お前は……飢えている。戦いを求めている」


 サーシャにはわかった。

 国崩……この刀は、観賞用でも、恐れ敬う刀ではない。

 斬る。そのために生み出された、刀鍛冶士の最高傑作。


「私が、お前を連れて行こう。魔界……まだ見ぬ地、戦いの果てへ!!」


 サーシャの闘気が膨れ上がり、剣を頭上に掲げる。

 そして、サーシャは一気に振り下ろした。


「───っ!!」

『……』


 サーシャは、見たような気がした。

 国崩……呪われた刀の意思、そしてかつての所有者の影を。

 そして、サーシャの剣が国崩の刀身を真っ二つに切断すると同時に、国崩がふわりと浮き上がり……サーシャの目の前で、折れた刀身がピタッとくっついた。

 サーシャは、国崩を手に軽く振る。

 風を切り、光を帯びて眩く輝く刀身……この場にいる誰もが、国崩がサーシャを認めたと理解した。

 サーシャは鞘を拾い、刀を納め、武士に微笑んだ。


「───もらっていく」


 武士はウンウンウンと頷いた。

 サーシャが歩くと観客たちが道を譲り、ハイセの元へ。


「目立ちすぎだ、バカ」

「だが、いい武器が手に入った。国崩……魔界でその力、存分に振るわせてもらおう」


 いまだに一言も発せない観客、武士たちは、歩き去るサーシャとハイセの背を静かに見送るのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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