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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十三章 東方の国アズマ

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異文化

 入国審査は、S級冒険者のライセンスを見せるだけで通過できた。

 馬車が二台進むと、御者をしていたロビンがハイセに言う。


「ね、ね、さっきの門兵さん、すっごい髪型だったね!!」

「『マゲ』っていうらしい。頭髪を剃り、残った髪を結んで油で固めるんだ」

「なんでそんなめんどくさいことするの?」

「確か……兜をかぶるためだったかな。鉄製の兜は長く被ると頭が蒸れる。だから髪を剃った……だったかな」

「ハイセ、詳しいね。見ると、いろんな人が「まげ?」やってるね。女の人はさすがにやってないけど」


 馬車は、土を踏み固めた地面をゆっくり進む。

 異国、異文化がこれほど強い土地に入るのは、ハイセも初めてだった。

 周りを見ると、アズマ人が大半を占める。ハイセたちのような冒険者は、全く見かけない。


「……一応、冒険者ギルドはあるはずだ。そこでスタンピード阻止の報告をする」

「うん。ねえねえ、アズマの服って変わってるねー」

「『キモノ』だ。変わっているというか、動きにくそうだ」


 そんな会話をしながら、馬車は進んだ。

 そして、完全木像の『冒険者ぎるど』へ到着。馬車を止め、ハイセは言う。


「報告に行ってくる。ロビン、今日の宿を確保しておいてくれ」

「わかった。でも、一人でいいの?」

「ああ」


 そう言うと、馬車のドアが開き、サーシャが降りて来た。


「私も行こう。一応、このチームのリーダーだからな」

「……まあ、いいか」

「ねえねえハイセ、サーシャ。宿を確保したら自由にしていい?」

「構わないが、目立つ行動は取らないように」

「やった!!」


 ロビンがニカッと微笑むと、馬車は走り出した。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセとサーシャは冒険者ギルド内へ。

 完全木造。しかも冒険者たちもアズマ人ばかり。

 異人であるハイセ、サーシャに視線が集中するが、二人は慣れっこなのか全く無視。

 サーシャは、受付で質問する。


「失礼。当ギルドのギルドマスターに取り次いでくれないか? 近隣のダンジョンで発生しかけていたスタンピードの件で話がある」

「はあ……わかりました」


 やや気だるげな受付嬢。

 すると、ハイセたちの背後に数人のアズマ人が立っていた。


「異人が、この地に何用かな?」

「…………」

「貴殿らには関係のないことだ。すまんが、構わないでくれ」


 サーシャが言うと、男の一人がハイセの肩に触れた。


「そうはいかねぇんだよ。異人が、このアズマに何をしに来た? オレらアズマ人はそれを知る権利があるんだ。さっさと吐け……刻むぞ、ガキ」


 男の手は、腰の剣に触れていた。

 ハイセは、男の顔を見て、止めようともしない受付嬢たちを見て、興味深そうにハイセたちを見ている周りの冒険者を見て……「ハッ」と笑った。


「なあサーシャ、こういうの久しぶりだな」

「……確かに。だが、トラブルを起こすなよ?」

「まあ、この国は素通りみたいなモンだ。こういう勘違いした連中の相手なんざしたくねぇがな」

「おい!! 無視してんじゃねぇぞ!!」

「おい」


 と、ハイセは殺気を込めて男を睨む。

 数々の死線を潜り抜けたS級冒険者序列一位の殺気は、男だけでなく受付嬢、そして周囲でニヤニヤしていた冒険者たちを射抜いた。

 ゾッとするような殺気に、男は一瞬で汗だくになる。


「手、離せ。殺すぞ」

「っ……」


 手が震え、動かない。

 離したいのだが、恐怖で手が動かない。

 すると、冒険者ギルドの階段をゆっくり歩き、一人の老人が降りて来た。


「ほっほっほ。そのへんにしてくれんかの」


 腰の曲がった、杖を突いた老人だった。

 八十を越えているだろう。着物に羽織り、帽子を被った髭の老人は、ハイセたちにぺこっと頭を下げる。


「ウチのモンが申し訳なかったの。ほほほ……そのくらいで、勘弁してやってくれ」

「…………」


 ハイセは、男の手を払いのけ、周囲を威嚇するように言う。


「喧嘩を売るのはいい。だけどな……確実に後悔するとだけ言っておく。ここでは何もしないし、言わない。でもな……外じゃ容赦しない」


 サーシャも、何も言わなかった。

 そして、サーシャは老人に頭を下げる。


「ギルドマスター殿とお見受けする。話の場を設けていただいてもよろしいだろうか」

「構わんよ。さ、ワシの部屋に来なさい」


 ハイセ、サーシャは、老人の案内でギルドマスターの部屋へ。

 二階にある、意外にも狭い部屋だった。

 対面式のソファ、書類棚、机に椅子しかない。

 ハイセとサーシャが並んで座り、老人がその前に座る。


「初めまして。ワシはバショウ……見ての通り、この冒険者ギルドのマスターじゃ」

「ハイセだ」

「サーシャと申します。さっそくですが……クリシュナ遺跡について」


 サーシャは、スタンピードを阻止したこと、もう危険がないこと……そして、ダンジョンが崩壊せず、ただの遺跡になったことを説明した。

 バショウは、ウンウンと聞いている。


「というわけで、ダンジョンの機能は消滅し、十階層ある遺跡だけが残りました。もしかしたら、これから先、何かで使えるかもしれません」

「ふむ。それは面白いの……新人冒険者の育成や、有事の際の避難所としても使えるかもしれん。こちらはアズマ政府と相談することにしよう」

「はい、よろしくお願いします」

「うむ。報酬も支払おう」


 サーシャは、ガイストから預かった依頼書をバショウに渡す。

 依頼書に書かれている金額は、白金貨五枚。バショウは自分の机から白金貨を出し、木製のトレイに置いてサーシャの前へ。

 サーシャはそれを受け取り、依頼が完了した。

 完了すると、ハイセは立ち上がる。


「は、ハイセ?」

「帰る。もうここに用はない」

「はっはっは。若いの、少し話でもせんか?」

「……」


 ハイセはめんどくさそうだったが、仕方なく座った。

 バショウは、ドアを開けて「おーい、お茶を」と受付嬢にお願いし、再びソファへ。


「いやはや、すまんの……異国の冒険者は久しぶりでなあ」

「……アズマは、閉鎖的な国と聞きました。異国の人間も少なからずいましたが……何か理由が?」

「うむ。アズマ人は、他国の文化を嫌うのじゃ。着る物、食べる物、武器や防具、書物など……あるモノの大半がアズマ製のモノばかり。異国から商人が来ないでもないが、町ぐるみで嫌がらせを受けたりして根付かんのじゃよ」

「根暗な国だ」

「おい、ハイセ!!」

「ははは、構わんよ。まあ……異国のきみたちには過ごしにくいとは思うが、どうか楽しんでくれ」


 話は終わり、ハイセたちはギルドの外へ。

 やはり、外に出てもアズマ人ばかり。


「……ハイセ。この国を見ていると……私たちが魔界の町に入った時、どういう風に見られるのか、わかるような気がする」

「同感だ。異物は排除……以前、カーリープーランも言っていたな。ここはまだ魔族の領地じゃないだけマシか」

「…………」

「とにかく、さっさとこんなとこ出るぞ。カーリープーランの奴なら、俺らがこの国に入ったことくらい気付いているはずだ」

「あ、ああ。その……」


 と、サーシャはやや顔を赤くして、言いにくそうだった。

 ハイセは首を軽く傾げて聞く。


「なんだよ、言いたいことでもあるのか?」

「その……ロビンたちには自由時間と言ったし、宿へ行く前に少し散歩でもしないか?」

「…………は?」

「むぅ……その、気分転換がしたいんだ!!」

「お、おう。そんなデカい声出さなくても聞こえてる。わかったよ」

「よし!! じゃあ、散歩しよう!!」


 こうして、ハイセはサーシャと二人、アズマの城下町を散策するのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
行きつ戻りつしながらも、気持ちを出さないとって思うようになってきたのかな(ちゃんと不器用してるけど) スタンピードを未然に止めたにしては、報酬安い気がしますが….手付けなんですかね?
新しい展開になっても、読んで印象に残るのがまだ苛つくセイクリッドがのさばっている事。他の事が印象薄くなるので、そろそろセイクリッド退場しないかな?このまま行くと最後の七大災厄を倒した時の感想欄がセイク…
サーシャは卑劣で嫌なキャラクターですが、なぜ物語のあらゆるシーンにこのようなクズが課せられますか?
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