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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十二章 再来のスタンピード

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クリシュナ遺跡核魔獣ジャランダーラ②

「核魔獣。スタンピード直前のダンジョンでは、こういう変化があるのか……」


 ハイセは素直に関心していた。

 スタンピード。それは、ダンジョンから魔獣が噴き出し、周辺地域を蹂躙する『災害』というのが世間一般での常識。

 それを止めるには、冒険者総出で魔獣を止めるしかない。

 ダンジョンに入り、核となる魔獣を倒すという方法も考案されたが、ダンジョンに踏み込んだ冒険者は誰も戻ってこなかった。なので、今まさに目の前で、スタンピード直前の『核』を見るのは、ハイセたちが初めてだろう。

 素直に、いいデータになるとハイセは思った。


「ああもう、うっざぁぁ!!」

 

 ヒジリが叫ぶ。

 現在ハイセたちは、『核』から生み出される異形の魔獣と戦っていた。

 核魔獣は、まるで巨大な樹木、そして繭のように膨らんでおり、そこから血管のように枝分かれした肉の枝から、小さな繭が膨らむ。

 それが弾け、異形の魔獣が襲って来る。

 その数、数えるのも馬鹿らしい。

 魔獣は、タコのような何か。地面をズルズル這い、触手を伸ばして襲って来る。意外にもその動きはすばしっこい。

 ハイセは言う。


「だいたい、三秒に二十匹くらいのペースで生み出されてやがる。とにかく蹴散らして、最奥にある『核』を潰せ!!」

「だったら、あたいの出番!!」


 と、ここでエアリアが飛び出した。

 背中には光る翼。両足には鉤爪のようなレガースブーツがあり、急降下しての斬撃が主な武器。

 だが、エアリアは背中に何枚もの翼を生やす。


「あたいの必殺技!! こいつでブチ抜いてやるっ!!」

 

 翼が、エアリアの身体に巻き付く。

 何枚も、何枚も巻き付き、まるで光る弾丸のような形状へ。

 そして、高速回転しながら光るエアリアが特攻する。


「必殺!! 『バード・ストライク』ぅぅぅぅぅ!!」


 まるで、急降下するハヤブサのような速度で、エアリアが『核』に突っ込んでいく。

 すると、核の枝がさらに伸び、枝そのものが触手のようになりエアリアに向かっていく。


「だぁぁァァァァァッ!!」


 だが、エアリアは触手を回転で弾き飛ばし、核の大樹……ちょうど、幹の部分に突っ込んだ。

 ズドン!! と、衝撃音が響く。


「───……チッ」


 ハイセは舌打ちした。

 ロビンが気付く。


「ダメ、貫いてない!! やばい、枝がエアリアに伸びてるっ!!」


 ロビンには見えていた。

 血管のような枝が無数に伸び、複雑に編み込まれ弱点である繭の部分を保護していたのだ。 

 たかが繭……だが、エアリアの攻撃を危機と感じ、一瞬で対策を練り、実行した。

 枝を編み込んでジャケットのようにし、エアリアの突進を受け止める。


「う、ぐぅ」


 翼が解除され、エアリアの姿が見え……枝が、エアリアの手足に絡みついた。


「うぁぁ!? 食われるぅぅぅぅぅ!!」

「エアリア!!」


 ロビンが叫ぶと同時に、闘気を全開にしたサーシャが飛び出し、マシンガンを具現化したハイセがサーシャの背後で連射……道を作る。

 同時に、ハイセの背からヒジリが飛び出し、サーシャに続いた。


「エアリア!! 今行く!!」

「サーシャ、雑魚は任せて!!」


 無数のタコが群がってくるが、跳躍した状態で両腕を突き上げる。

 そして、着地と同時に、両腕を地面に叩き付けた。


「金剛拳、爆式!! 『掛矢爆(かけやばく)』!!」


 ズドン!! と、ダンジョンの床が揺れた。

 ヒジリは顔を歪める……ダンジョンの床である鉱石に干渉し、その構造自体を揺さぶったのだ。

 自分で生み出した鉱石なら自在に操れるが、そうでない物質に干渉するのは、まだヒジリでも難しい……半ば、自滅のような技。

 そのせいで、ヒジリの両腕から血が噴き出す。


「う、っぐ」

「ヒジリ!! 今治しますわ!! 『ヒーリング』!!」


 ピアソラの遠隔治療。

 ヒジリの両腕が光に包まれ、折れた腕、破れた皮膚が一瞬で回復。

 ヒジリはピアソラに向かって親指を立てる。


「白帝剣、『白帝神話連剣フラガラッハ・ブライト』!!」


 斬撃を無数に飛ばし、エアリアに絡みついた枝を切断。

 だが、切断と同時に枝が伸びてくる。地面に落ちたエアリアを回収しようとするが、自分とエアリアに伸びてくる枝を斬り飛ばすので精一杯。

 すると、いつの間にか接近していたロビンが、エアリアに向かって矢を放つ。

 その矢は、エアリアの身体に巻き付くと、矢じり部分が変形し、矢羽根部分に付いていた鎖と合体した。


「ハイセ、お願い!!」

「おう!!」


 ハイセはロビンから鎖を受け取ると、全力で引っ張る。

 エアリアは思い切り引っ張られ、その場から離脱。サーシャもその場から離脱し、繭から離れた。

 ハイセはエアリアを受け取り、ピアソラの元へ。


「うぐぅ……」

「怪我は……大したことありませんわね。枝が数か所、腕や足を貫通してますわ……でも」


 ピアソラが手をかざすと、エアリアの怪我が治療された。

 ハイセはピアソラに託し、右手を敵に向けた。


「サーシャ、ヒジリ、俺が道を切り開く……核をぶっ潰せ」

「だが、敵の数が多すぎる」

「やっばいわ。五百以上いるんじゃない?」


 今は、ヒジリが生み出した《壁》で敵が近づけない状態にあるが、いつまでのこのままというわけにはいかない。

 すると、ハイセの前に地上用三脚に架装された重機関銃が現れた。

 コッキングレバーを引き、砲身を真正面に向ける。


「真っすぐ突っ込め。フラフラ動くと当てちまう……いいな」

「「…………」」


 目の前にある『これ』が、どれだけの破壊を生み出すのかわからない。

 だが、間違いなく……ハイセの『武器』の中でも、上位に位置する威力だろう。

 ヒジリはサーシャを見て頷き、サーシャも頷き返す。

 そして、壁が解除されると同時に、ハイセは押金を押す。


「爆ぜろ」


 ボボボボボボボボ!! と、2連装ヘビー・マシンガンが火を噴いた。

 タコの数は五百を超える。だが、大量に吐き出される弾丸がタコを蹴散らし、肉塊としていく。

 ヒジリ、サーシャは真っすぐ走る。余所見をしたり、左右に動いたりすれば、自分も挽肉になる可能性を感じていた。


(私の鎧、闘気じゃ……)

(アタシの金属じゃ……)


 防げない。

 攻撃力では、ハイセに敵わないと二人は改めて実感。

 だが、今は頼もしい。

 五百以上のタコが肉片となり、さらに無数の枝もハイセの銃弾で砕け散る。

 無防備となった核に向かって、サーシャは剣を振り上げ、ヒジリは拳を握った。


「白帝剣、『白帝神話聖剣エクスカリヴァー・ブライト』!!」

「金剛拳、『合掌菩薩(がっしょうぼさつ)』!!」


 純白の斬撃、金剛石の両拳による打撃が、クリシュナ遺跡の核を破壊した。


 ◇◇◇◇◇◇


 核が破壊され、繭、肉の樹木がボロボロと崩れていく。

 ハイセは重機関銃から手を放す。


「……すっごい威力だね、これ。なんで使わなかったの?」


 ロビンが近づき、手で触れた……その瞬間、砕け散る。

 ハイセ以外が触れると銃器はガラスのように砕け、消滅する。

 だが、ハイセは興味なさそうに言った。


「見ての通り、台座が固定されてるから、動けないんだよ。俺も動けないから的になるし、背後から狙われたらアウトだ。聞いての通り、発砲音もやかましいから、背後から誰か近づいてきて、ブスッと刺されたら終わりだしな」

「へえ~……でもでも、みんないるから使ったんだよね」

「……まあな」

「師匠ー!!」


 と、クレアの声。

 後ろを見ると、入口を守っていたクレアたちが来た。


「師匠、終わりました!! なんか急に魔獣が来なくなって……あ、こっちも終わってる!!」

「ふむ。核魔獣の消滅と同時に、魔獣も消えたということか? ハイセ、核魔獣はどのような姿だった? 興味が尽きん」

「おいおいタイクーン、後にしろって。おいハイセ、怪我ねぇか?」


 レイノルド、タイクーン、プレセアにエクリプスも来た。

 エアリアも起き上がり、サーシャとヒジリも戻って来た。

 サーシャは言う。


「全員、無事なようだ。エアリア、怪我は?」

「平気だぞ。う~……あたいの必殺技、ぜんぜん通じなかった」


 やや気落ちするエアリア。

 核魔獣のいた場所には何も残っていない。


「……これで終わり、か。プレセア、何か感じるか?」

「…………いいえ。何も。騒がしかったダンジョンが、今はとても静か……ダンジョンというか、ただの遺跡みたい。核が消滅したからかしら」

「ふむ。本来、核が破壊されたダンジョンは崩壊するものだが……特に何も起きないな」


 タイクーンが周囲を観察する。

 ハイセも周りを見たが、隠し部屋があるわけでも、財宝があるわけでもない。

 すると、ヒジリが言う。


「え、じゃあ……ここ、ただの遺跡になっちゃったの?」

「恐らく。ふむ、魔法的な仕掛けも全て消滅したようだ……残念ながら、帰りは徒歩だな」

「えええ~……めんどくさあ」

「ハイセ、これは面白いぞ。核を破壊されたダンジョンは崩壊、消滅するが、スタンピード直前のダンジョンで核魔獣を破壊すれば、ダンジョンは消滅しない。魔法的な仕掛けも全て消滅し、ダンジョンという構造体だけが残る仕組みのようだ」

「ああ。魔獣も生まれない、ただの十階層の遺跡……もしかしたら、何か再利用できるかもな。ギルドに報告して、今後何か役立てるよう進言するか」

「うむ!! くくく、面白い……実に面白い」


 タイクーンが眼鏡をクイッと上げ、ニヤニヤする。

 サーシャが咳払いをした。


「こほん。とにかく、皆……よくやった。これでスタンピードを阻止できた。時間的に、まだ午前中だろう。ダンジョンを出るだけなら数時間かからんだろう。このままダンジョンを出て野営し、明日、アズマに向けて出発だ」


 こうして、クリシュナ遺跡のスタンピードが阻止された。

 次、向かうのはアズマ。そして、そこから魔界。

 戦いが終わっても、新たな戦いが始まるのだった。


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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] "タコの数は五百を超える。だが、大量に吐き出される弾丸がタコを蹴散らし、肉塊としていく。  ヒジリ、サーシャは真っすぐ走る。余所見をしたり、左右に動いたりすれば、自分も挽肉になる可能性…
[一言] 重機関銃は日米共通で設計も半世紀以上変化がない。 もちろん、それを支える三脚架も変わらず。 射撃音も凄まじいので、耳栓なしでの射撃は避けておきたい。 そうでなくても、これまでの闘いでミサイル…
とりあえず魔界で何人か死なねえかな
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