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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十二章 再来のスタンピード

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クリシュナ遺跡核魔獣ジャランダーラ①


 八階層、最後の安全地帯にて。

 十一人がそれぞれ、戦闘準備を整えていた。

 ハイセは、両ホルスターにある自動拳銃を確認。マガジンの残弾数を確認しスライドを引いて装填。

 他に、ショットガンにショットシェルを込めて肩に担ぎ、アサルトライフルのマガジンを確認。

 本来なら能力で具現化するだけでベストな状態で現れるのだが、手動での確認、銃弾の装填がクセになっていた……というか、ハイセは銃弾を込める瞬間が、好きだった。


「……よし」

「師匠!! 戦闘準備完了です!!」

「声がデカい」


 クレアは、鎧を装備し双剣を腰に下げ、なぜか胸を張ってハイセの前にいた。

 

「ふふん。今日はこのダンジョンを踏破する日です。S級冒険者になって初めての大仕事、頑張りますよ!!」

「気合入れるのはいいが、ヘバったら置いて行くからな」

「あう、師匠ってばつれないですねー」

「うるせ。ってかくっつくか」


 腕を取り甘えてきたクレアを引き剥がす。

 そんな二人を、サーシャがジッと見ていた。


「兄妹みたい。ふふ、私にはそう見えるけど……あなたは?」

「きょ、兄妹か。うん、私もそう見える」


 エクリプスが、サーシャをからかうように傍へ来た。

 魔法を込めた装備と聞いた、帽子やローブを身に纏い、手には白い本を持っている。

 サーシャも、新調した鎧にマント、腰には剣を下げていた。


「あの二人、宿屋でもあんな感じなのよね。ハイセも不思議と嫌がっていないし……もし、クレアが恋に目覚めたら、ふふ……もしかしたら、誰より早くハイセを射止めちゃうかもしれないわね」

「い、いとめる……」

「まあ、私は正妻であれば、愛人は何人いてもいいけど」


 そう言い、エクリプスは行ってしまった。

 サーシャは、嫌そうにしながらもクレアを遠ざけないハイセを見て、思う。


「……恋、か」

「なーにぼんやりしてんのよ」

「サーシャ、大丈夫?」


 と、ヒジリとプレセアだ。

 ヒジリは変わらない格闘スタイル、プレセアは弓、矢筒を装備していた。

 あとは一本道で最下層まで進むだけなので、案内役としてではなく援護役としての装備だ。


「……いや、問題はない。よし、全員聞いてくれ」


 サーシャは切り替える。

 すると、サーシャの周りに装備を整えた十人が揃った。


「今日、このクリシュナ遺跡のスタンピードを集結させる。道中までは一本道、魔獣を蹴散らしつつ最下層へ進み、核魔獣を討伐……このダンジョンを終わらせるぞ!!」


 全員が頷き、サーシャを先頭に安全地帯から飛び出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 八階層から九階層へ続く道は、事前に調査してある。


「ヒジリ、行け!!」

「応!!」


 ハイセが叫ぶと、ヒジリが全力で特攻。

 通路に溢れかえるようにいる魔獣たちに向かっていく。


「金剛拳、『激震(げきしん)』!!」


 地面全域を這うように金属が精製され、その金属が振動し魔獣たちの態勢が崩れた。

 そして、サーシャとクレアが飛び出す。


「合わせる!!」

「はい!! 合体技ですね!!」


 青銀、純白銀の闘気が膨れ上がり、二人の『ソードマスター』が剣を振った。


「白帝剣、『白帝神話弩矢フェイルノート・ブライト』!!」

「青銀剣、『青の機関銃(ブルー・マシンガン)』!!」


 純白銀の一撃、青銀の散弾が道を埋め尽くしていた魔獣を吹き飛ばした。


「走れ!! 最下層まで突っ切る!!」


 ハイセが飛び出し、善人が続く。

 殿はサーシャ。八階層から九階層を一気に駆け降りる。

 そして、九階層へ。


「……一本道。プレセアの情報通りだな」

「気を付けて。あり得ないくらい魔獣がいる。最下層で大量に生み出されているわ」


 横幅は二十メートル以上、高さも二十メートル以上ある通路だった。

 大量の魔獣が徘徊していた。

 ハイセは、人差し指と中指を合わせ、通路へ向ける……すると、ハイセの背後に十発以上の『ミサイル』が顕現。


「消えろ」


 発射。

 一瞬で消え、通路の奥で爆音。

 それが連続で放たれ、通路が振動する。

 レイノルドが盾を構え、エクリプスが魔法で防御。漆黒の黒煙が通路奥から見えるころ、魔獣たちの気配が一時的に消えた。


「行くぞ」


 ハイセは走り出す。

 だが、ミサイルの威力を目の当たりにした一同は、数秒間唖然としていた。


「全員、走れ!!」


 サーシャが一喝すると、全員が走り出す。


「……とんでもない威力だな」

「ああ。だが、頼もしい」


 レイノルド、タイクーンが話す。


「あのミサイル、だっけ? なんつう威力だよ」

「威力も恐ろしいが、本当に恐ろしいのは……あれだけの武器を、魔法でもなく、どういう理屈かも不明で、ノーリスクで連発できるということだ。魔法なら魔力を消費し技を使うが……ハイセにはそれがない。ただ能力を発現させるだけで、魔法を超える奇跡を自在に使用できる」

「おっそろしいな……『武器(ウェポン)マスター』ってのはマジで何なんだ?」

「わからん。だが、これだけは言える……魔界でどのような脅威に遭遇しても、ハイセがいれば遅れを取ることはない」


 そして、一行は最深部へ続く階段の前に到着した。

 プレセアが言う。


「……最下層。かなり広いわ。小さな村だったらすっぽり収まるくらい。ハイセの攻撃で魔獣がほとんど消えたけど、少しずつ増えている気配がする」

「そこに、核魔獣がいるんだな?」


 サーシャが言うと、プレセアが頷く。

 そして、背後を見た。


「同時に、上層階にいる魔獣も、こっちに集まっているわ……恐らく、核魔獣に危機があると本能で理解したのかしら」

「その可能性は高いな。スタンピードはまだ不明な部分が多い……核魔獣の危機に対し、核魔獣から産まれた魔獣が守ろうとしているのか」


 タイクーンがブツブツ言う。

 サーシャは少し考え、ハイセを見る。


「ハイセ、どうする」

「そう聞くってことは、お前も同じこと考えてるんだろ」

「……ああ。地下へ進んで核魔獣を倒すチームと、ここで魔獣の侵攻を食い止めるチームに分かれるべきだ。このまま全員で地下に突入しても、背後から挟み撃ちにされる」

「それしかないな。時間がない、サーシャ、お前がチーム分けしろ」

「……よし」


 サーシャは全員を見て、数秒考え……頷いた。


「私、ハイセ、ヒジリ、ピアソラ、ロビン、エアリアはこのまま地下へ進む!! 残りは全員この場で、地下へ魔獣が来ないよう食い止めてくれ!!」

「えーっ!? わ、私も師匠と一緒に」

「ダメだ。詳しく説明している暇はない。レイノルド、この場の指揮はお前に任せる」

「ああ。その分け方でなんとなくわかったぜ、任せておけ」


 サーシャは頷き、ハイセたちを連れ下へ向かった。

 残されたレイノルドは叫ぶ。


「よぉっし!! オレらはここの守護、地下へは誰も行かせねぇぞ!!」

「……師匠」

「クレア、前衛はお前しかいねぇ。頼むぞ」

「え?」


 レイノルドは、この場の全員に聞こえるように言う。


「この人選は守り、殲滅の人選だ。まずオレがお前たちを守り、エクリプスとタイクーンが高火力魔法で向かって来る敵を殲滅、プレセアが補佐、そして地下へ向かった連中との連絡、そしてクレア……お前はオレらの中で唯一の前衛だ」

「わ、私だけ?」

「そうだ。サーシャは、お前なら一人でも前で戦えるって思って、こっちに残したんだ。いいか? 魔法だって万能じゃねぇし、詠唱が必要なモンもある。その間、お前がオレらを守るんだ」

「…………」

「さあ……来たぜ!!」


 すると、通路の奥から魔獣たちが群れで向かって来る。

 エクリプスは、白い本を手に言う。


「詠唱、必要ない魔法が多いけど……野暮なことは言わないわ」

「キミはそうだが、ボクは違う。前衛がいてくれるとありがたいね」


 タイクーンが杖を構えると、プレセアがボソボソと精霊に指示を出し、弓を構える。


「私は援護。久しぶりに、全力で戦えそうね」

「守りは任せな。全員の装備を強化しておくぜ」


 レイノルドが大盾を構える。

 そしてクレアは双剣を抜き、闘気を全開にして構えを取った。


「よーし!! こうなったら、師匠が驚くくらい、本気の私でやってやる!!」


 クレアはそう叫びながら、魔獣たちに向かって突っ込んでいく。


 ◇◇◇◇◇◇


 最下層へ進んだハイセたちは、驚きしかなかった。


「おいおい、なんだこれ……」

「これが、スタンピードの、原因……核魔獣」


 何もない空間だった。

 元は迷宮だったのだろう。だが、スタンピードの影響でダンジョンの地形が変わり、空間の中央に何かが生えていた。

 エアリアが「うげえ」と気持ち悪そうに言う。


「な、なんか肉っぽいの生えてるぞ……」

「うげ、アタシもああいうのはちょっと……」


 ヒジリも顔を歪めた。

 部屋の中央に、肉の柱が立っていた。

 ぼこぼこと脈動し、まるで血管のような枝が無数に伸びている。

 そして、柱の中心があり得ないくらい膨らんでいた。


「まるで、繭……」

「あの中央にいるのが、スタンピードの元凶。生まれ変わる直前のダンジョンの核か」


 ハイセは自動拳銃を抜く。

 

「スタンピードに関しては不明なことが多いが……なかなか面白いな」

「ハイセ、あの繭が割れる時が、真のスタンピードということだな」

「ああ。かつてハイベルク王国を襲った規模の魔獣の群れが、一気に噴き出すんだろう。だったらその前に、あの繭を破壊すればいい」


 と……ハイセたちが敵意を向けた時だった。

 繭が脈動し、ボコボコと形を変える。

 血管のような枝に大きな肉の塊が実り、ボトっと落ちてきた。

 そして、実が割れ、中から何か……得体の知れない、大量の触手を持つ《タコのような何か》が現れたのだ。


「わお、なにあれ」

「……防衛本能か? 俺らの敵意に反応……チッ、喋ってる場合じゃないな。来るぞ!!」


 すると、血管のような枝からいくつもの《実》が生り始めた。

 サーシャは叫ぶ。


「全員、目標は繭の破壊だ!! 蹴散らすぞ!!」


 クリシュナ遺跡、最後の戦いが始まった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] セイクリッドは強スキル持ちで、パーティー構成も安定していて無難なゲーム攻略を見ているみたいで戦闘場面に面白さが無い。かと言って心の強さとか美しさとか思いやりとかがある訳でも無い。追放したハイ…
[一言] クレアは妹系のヒロイン?サーシャって嫌われ要素を引いたとしてもヒロインとして微妙で、主人公としても特に盛り上がる場面とか無くてイマイチの存在。
[良い点] 道案内も精霊にとられてしまったエアリアが、ようやく活躍できそう。 …みんな天井くらい攻撃できるか [気になる点] 取り敢えずミサイル垂れ流しておけば敵が消えて無くなるハイセの弱点は、フレ…
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