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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十二章 再来のスタンピード

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再来のスタンピード②/スタンピード直前


 遺跡手前に到着した一行。

 まず、生物専用のアイテムボックスに、グランドッグのウノー、サノーを収納。二台の荷車もアイテムボックスに入れる予定だ。

 そして、偵察に出ていたロビンが戻り、ハイセに言う。


「遺跡前まで行ってきたけど……ヤバイいね。魔獣こそ溢れ出してなかったけど、殺気というか、なんかこう……嫌な感じびりびりしてる。スタンピード直前……たぶんだけど、溢れたらヤバイ」

「わかった。おつかれ」


 現在、ハイセはタイクーンと最終的な確認をしていた。

 今日は野営し、明日挑む。

 ロビンは「じゃ、あたしあっちでお菓子食べてくるね」と行ってしまった。

 タイクーン、ハイセはクリシュナ遺跡のマップを見る。


「タイクーン……スタンピードは予定通り始まるか?」

「ああ。一週間後には決壊し、魔獣が一気に放出されるだろうね。ボクたちが挑むにはいいタイミングだ……命懸けという意味ではね」


 魔獣は基本的に、ダンジョンの外には出ない。

 ダンジョンの魔獣はダンジョンで生まれ、その生涯を終える。

 稀に外へ出る魔獣もいるが……それは『稀』なのであり、普通はない。

 スタンピードとは、ダンジョンの核である魔獣が、新たな核となる魔獣を生み出す時に生じる『搾りかす』が、一気に溢れ出す現象……というのが、ダンジョン研究者による結論だ。

 タイクーンが言う。


「ダンジョンは、核が魔獣そのものであったり、ダンジョン内に封印されていたりと種類が違う。基本的に、スタンピードが発生するダンジョンは、魔獣が核である場合の話だ。『核魔獣』の命も永遠ではない……後継者を生み出す際に生じる『搾りかす』が魔獣となる」

「問題は、その搾りかすの量が尋常じゃない、ってことか」

「ああ。後継者を生み出す……まあ、『転生』に近い。これまで生きてきた年月が『老廃物』として一気に放出される。それこそダンジョンを圧迫しかねないほどに。行き場のない魔獣は、一気に放出され……」

「スタンピードとなる、か」


 かつて、ハイベルク王国を襲ったスタンピード。その魔獣の数は数万。

 高難易度のダンジョンであればあるほど、スタンピードの規模は計り知れない。

 クリシュナ遺跡も高難易度のダンジョン。ハイセはニヤリと笑う。


「やりがいしかないな」

「やれやれ……キミは理性的で頭脳明晰、ボクも話していて楽しいが……たまに、ヒジリのように好戦的な顔を見せる」

「悪いな。根本的な部分では、俺もヒジリと同類だ。あいつはそれを隠そうとしないところか」

「フ……でも、今回に関してはその『顔』を見せるのだろう?」

「ああ。命懸けになる……タイクーン、お前は覚悟できてんのか?」

「覚悟は冒険者になった時からできているさ。それに、スタンピード直前のダンジョン内部にも興味がある……知っていると思うが、スタンピードはこれまで、発生するのを止めるためにはダンジョン内部に入り、核魔獣を倒すことだけだった。だが、長い歴史を見ても、発生前にスタンピードを止めた事例は、ボクの知る限りない……ククク、新生直前の核魔獣とはどのような状態なのか、興味が尽きない」

「お前らしいな。まあ、俺も興味はあるけど」


 時間は夕方、ダンジョンから一キロほど離れた林にいるハイセたち。

 明日はダンジョンに挑戦……死闘となる。

 

「エクリプスが魔法で見張るから、今日はしっかり休んでおけよ」

「フン、ボクではなく他の連中に言うといい」

「……確かにな」


 ダンジョン挑戦前日の夜は、更けていく。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 全員が装備を整え、林の前に集まった。

 十一人を率いるのはハイセ……ではなく、サーシャ。

 このチームのリーダーとなったサーシャは、全員に確認をする。


「これより、我らはクリシュナ遺跡に踏み込み、最奥にいる『核魔獣』の討伐する。道中の戦いは死闘となる……全員、気を引き締めていくぞ」


 全員が頷いた。

 サーシャを先頭に、一キロ先にあるクリシュナ遺跡に向かって歩き出す。

 ハイセは、サーシャの隣に並んで言う。


「おい、あまり気負いすぎるなよ」

「わかっている。だがハイセ……本当にいいのか? 私がその、リーダーで」

「ああ。俺はそういうのに向いていない。やるならお前しかいないだろ」

「だが……」

「お前の言葉のが安心できるんだよ。俺は、思ったことや分析したことを言うだけで、命令するのは苦手だしな。ずっとチームを、クランを率いてきたお前がリーダーに相応しい」

「ハイセ……わかった。そこまで買ってくれているなら、期待に応えねばな」

「ああ。それと……ひとついいか?」

「む、なんだ?」


 ハイセがチラッと見たのは、クレア。

 白に近い青銀の鎧一式を身に纏っていた。ハイセも初めて見る装備だ。


「あの鎧、お前が?」

「ああ。いつまでも皮鎧というわけにもいかないし、うちの専属ドワーフに作らせたんだ。知っていると思ったが……」

「今日、初めて見た」

「そ、そうなのか? うちに身体の測定に来たり、新装備のことで私とも何度か話したが……てっきり知っているのかと」


 すると、クレアがハイセの腕にしがみついた。


「師匠~!! えへへ、どうですどうです? 驚きました? 新装備っ!!」

「…………」

「えへへ。あたしも皮鎧は卒業かなーと。もうS級冒険者ですし!! ふふん、師匠を驚かせる作戦、大成功ですっ!! あ、でも剣は師匠のプレゼントのままですけどね」

「…………はあ」


 どこまでもお気楽な弟子だった。

 サーシャは言う。


「こほん。クレア……これから命懸けの戦いになる。その、ハイセに甘えるのではなく、気を引き締めてだな」

「命懸けだからこそ、あたしは普段のままのあたしで行きます!! ふふん、サーシャさんもしかして~……羨ましいとか? えいえい、うりうり」


 クレアはサーシャに見せつけるように、ハイセの腕に甘えた。

 鎧のおかげで胸が当たることはないが、しがみつくような甘えっぷりにハイセはゾワゾワする。


「おい、離れろ」

「え~? これから戦いだし、甘えさせてくださいよお」

「S級冒険者は、戦い前に甘えるようなことしないっつの」

「あう」


 腕を離し、ハイセはサーシャから離れた。

 そして、たまたま傍にいたピアソラの隣へ。


「ふふ、愛されてますわね」

「うるせ。ところで、お前はどうなんだよ……覚悟、できてんのか?」

「もちろん。ふふ、私も日々成長してましてね。一日に一人、三分以内の死亡なら蘇生することができるようになりましたわ。部位欠損も治せますし、重篤な病も治療できます。まあ……私自身を治せないという弱点はありますけど」

「十分だ。お前が危険に晒されることはないからな。俺たち前衛、それとレイノルドが守る」

「頼もしいわね」


 こうやって、ピアソラと雑談できるなんて、考えたことはなかったハイセ。

 不思議と、以前のような嫌悪感はなかった。

 互いに認め合うことを確認しただけで、こうも話しやすくなるとは。


「──っきゃ!?」

「っと」


 すると、ピアソラが石で躓き、ハイセは受け止めた。

 互いの距離が近くなり、ピアソラがハイセの胸の中へ。


「おい、足元気を付けろ」

「ご……ごめんなさい」


 ハイセから離れ、ピアソラは「で、ではまた」と早足で歩き出した。

 ピアソラは、妙に胸が高鳴るのを誤魔化すように、サーシャの腕に甘えるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 クリシュナ遺跡に到着した。

 倒壊し、風化した遺跡という表現がぴったりだった。

 入口の石門は崩れ、周囲には崩れ落ちた石の建造物が多くある。

 地図によると、中央付近に地下へ通じる道があり、地下は広い迷路となっており、魔獣が大量に生息しているはず。

 魔獣の討伐レートもハネ上がっており、最深部には『核魔獣』が転生のための準備をしている。

 サーシャは言う。


「……ロビンの言う通り、強烈な殺気を感じるな」

「でしょでしょ!! うう、ちょっと怖いかも」

「……アタシ、生まれてきてよかったわ。本気で、命懸けで、マジで暴れていい日が来るなんて!!」


 ヒジリは興奮して、笑顔が止まらない。

 ハイセに向かって笑いかける。


「ハイセ、どっちが多く狩るか勝負しない?」

「アホかお前……って、普段なら言うけど、今日は乗ってもいい気分だ」


 ハイセは自動拳銃を抜き、クルクル回転させて両手に持つ。

 こちらも好戦的な顔になっていた。

 サーシャは「やれやれ」と言いつつ、剣を抜く。


「ではこれより、クリシュナ遺跡攻略……スタンピードを阻止する!! 目標はダンジョン最奥にいる『核魔獣』の討伐。道中の魔獣は……蹴散らす!! 全員、行くぞ!!」


 サーシャが剣を掲げた。

 こうして、十一人の冒険者たちによる、前代未聞の『スタンピード阻止』が始まるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
出口でずっとガトリングを撃ちまくったらいけそうな気もするな
ピアソラまでウハウハハーレム要員入りですかー もうちょっと一般的な感情の感じ方とか学んだほうがいいんでない?
お?ピアソラが雌落ち寸前か??? こういう、ガチで嫌ってたキャラが1番甘くなるんよな…… 役割的にも後衛回復職でママみあるし、ハーレムになればハイセとかサーシャが仕事に出てる間子供たちを護ってたりして…
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