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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十二章 再来のスタンピード

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再来のスタンピード①/クリシュナ遺跡

 それから数日、馬車はクリシュナ遺跡に向かって進んだ。

 そして、出発から五日目。あと二日ほどの距離になり、野営の時にタイクーンが全員を集めた。

 クリシュナ遺跡攻略、スタンピード阻止の最終打ち合わせである。

 居住馬車の中では狭いので、少し早めに野営をしての打ち合わせだ。

 川べりに馬車を止め、人数分の椅子、そしてボードを出しての説明である。

 タイクーンは、ボードの前に立つ。


「改めて、クリシュナ遺跡について。そしてスタンピード前のダンジョンに入る危険性についての説明……対策について話をしよう。ハイセ、キミも前に出てくれ」

「わかった」


 ハイセはタイクーンの隣へ。ボードを挟むように立つ。

 タイクーンは眼鏡をクイッと上げ、アイテムボックスから教鞭を取り出した。


「まず、クリシュナ遺跡について。東方の国アズマの国境付近にある、A級難易度の遺跡型ダンジョンだ。ここは十階層までのダンジョンだが……一つの階層の広さが並みではない」

「はいはーい!! 偵察とか、地下への入口を探すのは、あたし大得意っ!!」

「私も、精霊を使えばすぐに見つけることができるわ」


 ロビンが挙手、プレセアも合わせて言う。

 タイクーンは頷くが、ハイセは言う。


「普段ならロビンに任せれば問題ない。だが今回はスタンピード直前の遺跡だ。討伐レートのハネ上がった魔獣があり得ないほど徘徊し、探すのも苦労するだろう」

「その通りだ。さてハイセ、どうすべきだと思う?」


 タイクーンが言う。

 ハイセは、この場にいる面子を見ながら迷わず言った。


「今回、スタンピード戦の目的は『引き締め』でもある。チマチマした策を弄することなく、力技でブチ抜いて進む」

「……キミらしくない意見だが、キミらしいとも言える」

「ああ。いいか、このスタンピード……今の俺らなら、策を弄すれば難なく突破できると確信している。だが、ここはあえて『命を賭けて戦う』ぞ。策はなし、ロビンとプレセアが地下への道を探す間、俺たち全員で魔獣を相手に進む。持てる力を出し切り進む……一日で終わらせるぞ」

「い、一日とは……大胆だね」


 タイクーンが眼鏡をクイッと上げる。

 だが、ヒジリが拳を叩き音を出した。


「アタシ向きね。命懸け上等!! 大暴れしていいんでしょ!?」

「大暴れ上等だ。俺も暴れる。全力で、息切れするくらいな……サーシャ、クレア、お前らもだぞ」

「「!!」」

「タイクーン、エクリプスは補助、場合によっては攻撃。ピアソラは全員の回復。ロビンとプレセアは階層の探索。レイノルドは全員の防御。エアリアは全員の援護。俺、クレア、ヒジリ、サーシャは前衛だ。全員、死ぬ気で戦って気を引き締めるぞ」

「ッ最高!! アタシ大賛成!!」

「……全力、命懸けの力か。ふふふ……そういえばいつだったか、本当の意味で全力を出したのは。私もやらせてもらおう」

「わ、私もです!! 師匠の弟子として恥ずかしくない、サーシャさん以上の『ソードマスター』として剣を振るいますよ!!」


 ヒジリは興奮し、サーシャは剣を鞘から抜いて刀身を眺め、クレアは双剣を掲げた。

 レイノルドはニヤリと笑って指を鳴らす。


「オレが全力で守ったらどうなるか、教えてやるよ」

「あら、それじゃあわたくしの出番はないのかしら?」


 ピアソラがクスクス笑う。

 エアリアは、足をバタバタさせた。


「ふふん。空を飛ぶだけがあたいじゃないぞ。室内でもできる戦闘法、編み出したのだ!!」

「あたしだって援護するよ!! プレセア、一緒にやろうね!!」

「そうね。全力……せっかくだし、『大精霊』にお願いしてみようかしら」


 ロビンが胸を張り、プレセアが考え込む。

 エクリプスは、アイテムボックスから金色の本を取り出した。


「『黄金禁忌の書アリステリア・クロウリィ』の禁忌項目(タブーページ)……さて、どうしようかしらね」


 タイクーンは頭を抱えた。


「やれやれ。この戦意、もう策を講じても聞き入れるつもりはなさそうだ」

「だろ。タイクーン、お前も全力出せ。考えてばかりじゃなくて、考えずに『賢者』の魔法を片っ端からぶっ放すのも悪くないぞ? お前にもあるんだろ? 魔法の切り札が」

「……まあね。だが、使うかどうかはボクが決めることだ」


 タイクーンは意味深にほほ笑む。

 ハイセは全員に向かって言った。


「決まりだな。明日中に遺跡の近くまで行って、翌日の早朝から攻略を開始する。スタンピード発生まで時間はあるが、ダンジョン内の平均アベレージはS以上だと思え」

「よっしゃ。じゃあハイセ、今日は決起会やろうぜ!! お前、たんまり食料用意してんだろ? 食いきれないくらい出してくれよ。ああ、酒もな!!」

「レイノルド、お前な……」


 サーシャが止めようとするが、ハイセはサーシャを止めた。


「いい。そうだな……食った分はアズマで補給すればいい。今日は山ほどメシと酒出してやる。ピアソラ、体調不良とか、二日酔いの連中がいたら頼むぞ」

「仕方ありませんわね……ふふ、その代わり、わたくしにも美味しいケーキ出してくれますか?」

「いくらでも出してやるよ」


 ハイセ、ピアソラが仲良くしている姿に全員が驚きながら、今日は決起会となるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 その日は、ハイセも参加しての食事会となった。


「肉!! ん~おいしい食べ放題!! サーシャ、アンタも遠慮しないで食べなさいよー」

「う、うむ……なんというか、ガツガツ食べる姿を見せたくないというか」

「誰によ。ってかこれからデカい戦いあるのに遠慮すんじゃないわよ。ほれ」


 ヒジリは骨付き肉をサーシャへ。サーシャは喉を鳴らし、肉にかぶりついた。


「……うまい」

「でしょ? ほれほれ、もっと食べるわよ!!」

「う、うむ……」

「……ハイセなら見てないわよ。ってか、ハイセだったら、コソコソ肉食べるような女より、美味しそうに肉を食べる女のが好きだと思うけどー」

「む……」

「ふふん。アタシは豪快に食べるからね!!」

「ええい、私も食べる!!」


 ヒジリとサーシャは、競う合うように肉にがっつくのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ロビン、クレア、エアリア、そしてピアソラの四人は、食事を終えてデザートを満喫していた。


「ん~、師匠のアイテムボックスって何でも入ってます。こんなおいしいスイーツがいっぱい!!」

「これ、シムーンが作ったんだよね。おいしい~」

「うまい!! さっすがハイセなのだ!!」

「ふふ、美味しいですわ。シムーン……あの子、うちの専属菓子職人として欲しいですわね」


 すると、ピアソラに視線が集中する。


「……な、なんですの?」

「いやー、人って変わるんだなーって。ピアソラ、ハイセと仲良くなったじゃん」

「別に、仲良しじゃありませんわ。互いに認め合っただけ」

「どーいう意味だ?」

「さあ、でもでも、師匠と仲良しなのは嬉しいです」


 ロビンは、ニヤニヤしながらピアソラに寄った。


「で、どうなの?」

「……何がですの」

「ハイセのこと、好き?」

「はぁぁ? 全く、お子様のあなたには理解できないかもしれませんけど、私とあの男の間にあるのは、そういう感情じゃありませんわ」

「ふ~ん……まあ、それでいいかもね」

「意味不明ですわ。まったくもう」

「んん~ケーキおいしいです」

「おかわりー!!」


 女子トークは、まだまだ続きそうだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 レイノルド、タイクーン、エクリプスの三人は、エクリプスを挟むように酒を飲んでいた。

 

「いやー、こんな美女と飲めるなんて嬉しいぜ。なあタイクーン」

「そんなことより、エクリプス・ゾロアスター……キミの魔法について質問したいのだが」


 レイノルドはやや下心、タイクーンは完全に魔法の研究対象としか見ていない。

 エクリプスは、ワインを飲む。

 

「いいワインね……さすがハイセ」

「いい飲みっぷりだぜ。ささ、もう一杯」

「あら、ありがとう」

「エクリプス・ゾロアスター……キミの魔法だが、どういう原理なんだ? 生物を模した魔法……ボクの『賢者』でも再現できるだろうか」

「おいタイクーン、美味い酒の話題じゃねぇぞ」

「酒よりも魔法だ。エクリプス・ゾロアスター……キミはどっちだ?」

「悪いけど、今はお酒の気分。ふふ、ごめんなさいね、タイクーン」

「む……」

「はっはっは。じゃあエクリプス・ゾロアスター……オレと飲もうぜ」

「いいわよ。ところで、あなたの名前は?」

「……タイクーンは知っててオレは知らねぇのかい」


 落ち込むレイノルド、そしてタイクーンなのであった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセは、プレセアと飲んでいた。


「意外ね。あなたが食事会なんて言い出すの」

「……全員がやる気出すならそれでいい。お前はどうだ?」

「やる気、あるわよ」


 プレセアはハイセにグラスを向けると、ハイセは軽く自分のグラスと合わせた。


「……以前のあなただったら、グラスを合わせないと思うけど」

「俺も変わったんだ……認めるよ」

「ふぅん。じゃあ、ここにいる全員を仲間と認める?」

「…………さーな」


 その質問には答えず、ハイセは酒を飲む。

 スタンピード戦まで、もう間もなく。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] この章で話がかなり悪くなってしまいました。 作家は読者とは違う世界に住んでいます。 物語の中で最高のキャラクターと最悪のキャラクターを混ぜ合わせても、物語は良くなるのではなく、むしろそ…
[一言] 憎悪の対象にまでなったサーシャ(セイクリッド)との関係改善も女性達との進展も何百話と放置してたのに終盤に一気に話を進めてるせいで読者の感情が追い付かない感じがする。 これが序盤から現在に至る…
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