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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十二章 再来のスタンピード

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十一人の野営

 十一人。それも全員が高位冒険者となると、やはりクセがある。

 初日は野営。今日は川べりで野営をすることになり、それぞれ準備を始めた。

 十一人、それぞれの役割で……ではなく、それぞれ自由に、責任を持っての野営準備。

 大まかに、ハイセとクレア、プレセア、ヒジリ、エアリア、エクリプス。そして『セイクリッド』の五人で分かれて準備を始めた。

 まず、ハイセとクレア。


「あれ? 師匠、寝台馬車あるのにテントですか?」

「俺はこっちのが落ち着くんだよ」

「おお、しかもこのテント、最近発売した高級ワンタッチテントじゃないですか。紐を引っ張るだけでテントが開くやつ」

「おい、触るなよ。ったく……お前も野営の準備しろ」

「でもでも、寝台馬車あるし、居住馬車の方にキッチンとかあるし、出す物あんまりないというか」


 と、サーシャとエクリプスが近づいてきた。


「ハイセ。やはりというか、予想通りというか……やはり寝台馬車は使わないのか?」

「ああ。俺はこっちのがいい」

「食事の用意などもあるが……」

「自分でやる。見張りの順番も適当に決めて、あとで教えてくれ」

「むう……ハイセ、これからしばらくは共同生活になるんだ。その、一緒に食事とか」

「……悪いな。こうして一緒に旅をするだけでも、成長したと思ってくれ」


 確かに、ハイセは変わった。昔のハイセだったら『一人でいい』と言い、スタンピード戦すら一人で挑んでいたかもしれない。

 だが、基本的に孤独を好むところは、変わっていない。

 悪い意味ではない。仲間意識はあるが、一人の時間を好むだけ。

 すると、エクリプスが一本のワインボトルをハイセへ。


「はい、これ」

「……ワイン?」

「今日の見張りは私が。というか、見張りは全て私がするから、飲んでちょうだい」

「待てエクリプス。見張りは交代でと決めたはずだが」

「別に問題ないわ」


 すると、エクリプスはアイテムボックスから『黒い本』を取り出し、ページを一枚千切って投げた。


「『闇紛れの蝙蝠(カマソッソ)』」


 ページが燃え上がると、炎から大量のコウモリが飛び出し、半径数キロに渡って飛び散って行く。

 近くの木、藪、上空を旋回、そして木々の影に飛び込むと、完全に気配が消えた。

 エクリプスの手に、一匹の黒い蝙蝠が乗り、甘えるように頭を揺らす。


「この子たちが約七千匹、半径三キロ圏内に潜んでいるわ。何か異常があれば知らせるし、Aレートくらいの魔獣ならこの子たちが食べちゃうから。あからさまな危険地帯じゃない限り、安心していいと思うわ」

「なんと……」

「わあ、かわいいですね~」

「へえ、やるな」


 ハイセが手を差し出すと、近くにいたコウモリが手に乗った。

 

「師匠、なんかコウモリが似合う男、って感じですね……」

「んだよそれ。まあ、感謝するぞ、エクリプス」

「え、ええ……あの、よかったらそのワイン、一緒に飲まない? 私、おつまみも作って来たの」


 するとエクリプス、アイテムボックスからチーズやサラダなどのおつまみセットを出し、テーブルや椅子を出した。

 驚くサーシャ、クレア。だがハイセは意外にも、エクリプスの用意した椅子に座り、自分もアイテムボックスから酒を出し、さらに食事も用意した。


「……俺も出す。飲むなら付き合ってもいい」

「あ、ありがとう!! というわけで……サーシャ、クレア、見張りは任せて、ご自由にどうぞ」

「「…………」」


 サーシャ、クレアは「こ、こいつ……」みたいな表情になる。

 するとロビン、レイノルドが来た。


「おーい、メシの支度できたぜ。って……おいおいハイセ、いいモン飲んでるな。よし!! おいロビン、みんな呼んで来ようぜ。メシ持ってくるぞ」

「うん!! えへへ、初日はみんなでご飯だね!!」

 

 何か言う間もなく、レイノルドとロビンが全員を連れて戻って来た。

 ハイセのテント周りが一気に騒がしくなり、いつの間にか宴会となるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 夜、ハイセは馬車から離れた川べりの岩に座り、一人で眺めていた。


「眠れないのか?」


 すると、寝間着姿にカーディガンを羽織ったサーシャが来た。

 ハイセの隣に座り、空を見上げる。

 空は星が瞬き、川の流れる音、そして星と月の輝きが水を照らしている。


「……いろいろ、考えることがあってな」

「考えること?」

「……スタンピード戦。そして禁忌六迷宮。これらが終われば……俺の冒険者としての人生、一つの到達点ともいえることが終わることになる。そこに辿り着いた時、俺は冒険者を続ける意味があるのかと思ってな」

「……そんなことを考えていたのか」

「まあな。正直、何を目的に戦い続ければいいのか、わからない」

「……まさか、冒険者を辞める、とか」

「わからん。今更俺に、別の道があるなんて思わないしな……かといってお前みたいに、誰かを育てるなんてこともできると思えない」


 そう言い、ハイセは空を見上げた。


「たまに思う。俺は……どうすべきなのかと」

「簡単だ。ハイセ……お前は『導』となるべきだ」

「……え?」


 思わずサーシャを見ると、サーシャも空を見上げていた。


「私やエクリプス、他のS級冒険者とは違う。お前は知っているか? 確かにお前は『闇の化身(ダークストーカー)』と呼ばれ恐れられているが、同時に……同じくらい、冒険者の憧れでもあるんだ」

「……俺が?」

「ああ。お前は、未来を担う冒険者たちの『(しるべ)』となればいい。今のお前は、誰も追いつけないほどの高みにいる。だったら……少し足を止めて、振り返るのもいいんじゃないか? それに……私もお前も、まだ二十年も生きていない。この世界も広い、もしかしたら……まだ見つかっていない禁忌六迷宮以上のダンジョンや、SSSレートを超える魔獣がいるかもしれないぞ」

「……っぷ、ははは。確かにな」


 ハイセは笑った。

 久しぶりに見た、素の笑顔だった。

 その笑顔を見てサーシャの胸が高鳴る。

 二人きり……そのことを意識し、サーシャは顔が赤くなる。


「サーシャ、ありがとな。お前の提案、今後の冒険者活動に活かしてみる」

「あ、ああ……」

「……なんだよお前、顔赤くして。熱でもあんのか?」

「べ、別にそんなんじゃない!! み、見るな!!」


 サーシャは立ち上がり、逃げるように去った。


「……なんだあいつ」


 サーシャの背を見送りながら、ハイセは息を吐く。


「……少しは軽くなった、かな」


 空を見上げると、綺麗な流れ星が見えた瞬間だった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
なんかざまぁ系の出来損ないにスマホ太郎の要素足したみたいな作品やな もうちょっとセイクリッドとの和解に深く書いてればこんなオタクの願望詰め込みましたみたいな作品にはなってなかったはずなのに
[一言] 物語の冒頭で、サーシャはレイノルズのためにヘイズを捨て、ヘイズをほとんど破壊しました。 しかしその後、彼女は彼に何か埋め合わせをしただろうか? いいえ、彼女がしていたのはレイノルズといちゃつ…
[一言] はい、サーシャがレイノルズに同じことをしたのを覚えています。 第12章で彼女が水着で彼を誘惑しようとしたとき。 彼女は顔を赤らめてテコンの背中に隠れた。すべての男を誘惑するふしだらな女に特…
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