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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十二章 再来のスタンピード

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出発前日③

 ピアソラは、ロビンと二人でスイーツを満喫していた。

 クッキーは大盛、ケーキはホール、他にも見たことのないスイーツがテーブル一つに山のようになっている。本職の菓子屋でもここまでの量はない。

 ロビンは、焼き菓子を食べながら言う。


「ん~おいしい!! ね、ね、こんなに美味しいのはじめてかも」

「確かに……驚きですわ。わたくしたち、ハイベルク王国のスイーツ店をけっこう回ってますわよね? でも、こんなに美味しいのは……」


 ピアソラは「むむむ」とケーキを堪能する。

 すると、エプロン姿のシムーンが追加のケーキを持って来た。


「まだまだありますから、いっぱい食べてくださいね!!」

「うん。ね、ね、シムーン。お菓子余ったらアイテムボックスに入れていい? これ、魔界に持って行って食べるからさ」

「もちろん。あ……でもでも、お出かけ用のスイーツもいっぱい用意したんです。みなさん、魔界に行ったらきっとおいしい食事は食べられないと思うので……」


 ふと、シムーンが魔族だと二人は思い出す。

 顔を見合わせ、話題を変えようとした……が。


「わたしやイーサンは、食事に関しての思い出がないんです。いつも余り物とか、残飯とか食べていたので……それに、住んでいたところが海沿いってことは覚えていますけど、地名とかもわからなくて。ごめんなさい、魔族なのに役に立てなくて」

「そんなことないよ!! シムーン、あたしたち、シムーンのお菓子あれば何でもできるよ!!」

「そうですわ!! これだけ美味しいなら、魔界でも食べて元気いっぱいですわ!!」

「……ふふ、ありがとうございます!! いっぱい食べてくださいね」


 シムーンはお辞儀し、キッチンへ戻った。

 ピアソラとロビンは顔を見合わせ、クッキーを手に取る。


「なんか、やる気出るね」

「ええ。とっても」


 シムーンの焼いたクッキーは甘く、力になるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 タイクーンは一人、壁際で読書しながらパンを食べていた。


「……ふむ、ここはこういう訳し方で」


 読んでいるのは古文書。ハイセのマネをして文章を訳しながら読むのはなかなか楽しい。

 特に誰とも会話せずに本を読んでいると。


「あ、あの……」

「……ん、ああ。すまない、何か用か」

「神は言っています。『メシ食いながらの読書は行儀悪い』と」


 なぜかメイド服を着ているリネット、ラプラスだった。

 指摘され、タイクーンは少し考え、本を閉じる。


「確かに、無礼だった。申し訳ない」

「い、いえ……あの、パン、美味しいですか?」

「パン?」

「リネットが焼いたパンです。感想をもらっているのですよ」


 ラプラスに言われ、タイクーンは考える。


「悪くない。焼きが少し強かったのか、硬めだがね。まあ、ボクはこっちのが好きだ」

「そうですか……もう少し焼きを弱くする、と」


 リネットはメモを取る。

 真面目な性格なのだろうとタイクーンは思った。そして質問する。


「リネットだったか。キミも、マスター系能力者だったかな」

「は、はい」

「ハイセを師にしていると聞いたが、どうだ? 成長しているかい?」

「はい。師匠のおかげで、いろいろ知ることができました。能力も成長して……今、シムーンさんが使っている包丁、わたしが作ったんです」

「ほ、包丁か……ふむ、では剣などは作れるか?」

「はい。師匠の教えで、毎日一本ずつ作ってます」

「毎日、一本?」

「はい。えっと……毎日一本、『自分がイメージできる最強の剣を作れ』って言われて、いろんな剣を作ってるんです」

「……ほう。例えば?」

「えっと、見せますね。たとえば……この『グニャグニャする剣』とか」


 リネットが出したのは、一般的なロングソードだ。だが、振ると刀身がグニャグニャ曲がる。


「折れない剣ってあったらいいなと思って。なので、切れ味はそのまま、グニャグニャの剣を作ってみました」

「……ふむ。どういう素材なのか」


 刀身が面白いくらいにグニャグニャだった。

 考察していると、リネットは別の剣を出す。


「あとは、燃える剣とか、薄い刃の剣とか、氷の剣とか」

「……」


 刀身が燃えている剣、透き通るガラスのような刀身の剣、氷がそのまま刃になった剣などを見せる。

 どれも、普通の鍛冶屋では絶対に作らない剣だ。これも『模剣マスター』だからこそ作れる剣だ。


「失敗もありますけど……いろいろ作れて、毎日楽しいです!!」

「……これは素晴らしい」

「え?」

「……リネットだったか。今ある剣を全て、譲ってくれないか? もちろん、金は払おう」

「はあ、別に構いませんけど……でも、変な剣ばかりですよ?」

「ふふ、いいさ。むしろ……これはボクにも使えるかもしれん」


 タイクーンはニヤリと笑い、リネットから剣を買うのだった。

 リネットは気付いていなかった。自作した剣を見せ、お金を出して買うという行為……売買が成立したということに。

 ラプラスは、それを見ていたが言わなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ガイストは、バルバロスと向かい合って酒を飲んでいた。

 ハイセの出した高級酒、そして美味いおつまみ。バルバロスはご機嫌だった。


「はっはっは!! 酒もツマミも美味い。ボネットも連れてくればよかった!!」

「やれやれ……おい、飲み過ぎるなよ。もう歳なんだ」

「馬鹿モン。まだまだ若いわ……おいガイスト、どうなんだ?」

「何がだ?」

「禁忌六迷宮。最後の一つ……踏破できるのか?」


 そう言われ、ガイストはハイセを見た。

 いつの間にか一人になり、窓際で酒を飲んでいる。


「……できるだろうな」

「ほう」

「スタンピードも止める。禁忌六迷宮も踏破するだろう」

「ははは!! そりゃあすごいな。っと……実はな、ハイセに渡す土地の用意はもうできてるんだ。ワシの遺言に『冒険者ハイセに土地を残すように』と書き記しておいたからな」

「……準備が良すぎるな」

「うむ。踏破したら渡すつもりでいたが……」


 と、ハイセの傍にイーサンとシムーンが向かい、何かを話している。

 ハイセも微笑み、二人に何かを言うと、二人は顔を見合わせ笑った。

 バルバロスは言う。


「あんな顔を見せられたら、土地や豪華な屋敷よりも、ここで生活する方がいいのかもしれん」


 イーサンとシムーンは、宿屋の主人が座るテーブルに向かい、嬉しそうに話をしていた。

 頭を撫でられ、ニコニコしている姿は子供にしか見えない。宿の主人も幸せそうだ。

 すると、ヒジリとエアリアがガイストたちの席に乱入してきた。


「おっさん!! おっさん二人で辛気臭い顔してないで、肉食べなよ肉!!」

「そうだそうだ!! あたいらが肉の食い方教えてやるぞー!!」


 大量の肉を皿に乗せ、デカいジョッキにエールを注いで持って来た。

 バルバロスは大笑いし、骨付き肉を掴む。


「まあいい!! 今は、楽しい時間を過ごそうではないか!!」

「……やれやれ。よし、ワシも久しぶりに食べようかの」

「そうそう!! まだまだ食うわよー!!」

「食うぞー!!」


 ガイストたちの席は、この中で一番騒がしい席となるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセは一人、外の空気を吸うため外に出た。

 昼前から始めた食事会は終わる気配がない。すっかり日も暮れ、空には星が出ている。

 空を見上げながら、ハイセは言う。


「明日、出発なんだが……終わる気配ねぇな」

「全くだ」


 と、サーシャも外に出てきた。

 二人並び、建物の壁に寄りかかり、空を見上げる。

 

「明日、正門前に集合だが……時間を少しずらした方がいいかもしれんな」

「だな。馬車の手配とかは済んでんのか?」

「ああ。頑丈なのを二台手配してある」

「……準備は?」

「完璧だ。お前ほどではないが、物資も装備も準備万端だ」

「そうか」

「……ハイセ」

「ん?」


 サーシャに顔を向けると、サーシャはゆっくりとハイセを見た。


「私は、スタンピードでも、魔界でも……お前と共に戦えることを、嬉しく思う」

「……なんだよいきなり」

「お前は?」

「……さぁな。でも、昔の俺だったら、一人で魔界に行ってたかもな」


 そう言い、ハイセは窓を覗く。

 そこには、これから魔界行きとなるメンバーが、楽しそうに笑い、食事をしている姿が見えた。


「俺も変わったな。誰かを頼るなんて、昔じゃ考えられなかった……一人じゃできないって素直に認めちまってる」

「…………」

「サーシャ、頼りにしてる」

「ああ……一緒に戦おう」


 ハイセとサーシャは互いに頷き、星空を眺めるのだった。


「あー!! 師匠、いたぁ!! もう、いなくなったのかと思って、部屋に押しかけてやろうと思っちゃいましたよー!!」


 クレアがドアを開け、ハイセの腕に飛び込んできた。

 腕にしがみつき、胸をギュッと押し付ける……ハイセは嫌そうに、顔をしかめた。


「おま、酒臭いぞ……どんだけ飲んだんだ」

「えへへ。師匠のお酒、おいしかったですー、サーシャさんも飲みましょうよお」

「い、いや私は……」

「ふふん。わたしのおさけがのめないんですかぁ? うりうり、師匠にくっついちゃう。うりうり」

「おい、くっつきすぎだ。離れろっつの」


 クレアは悪酔いしていた。腕だけじゃなく身体全体でしがみついている。

 サーシャの目元がピクピク動き、ハイセに言う。


「は、ハイセ。クレアを引き剥がした方がいいのでは?」

「わかってる。おいクレア……って、おい」


 なんとクレア、食器のナイフを手に闘気を発現。ハイセでも振りほどけない力で正面から抱き着き、なんと顔を近づけキスしようとしてきた。


「ししょ~……ちゅ~」

「おい馬鹿!! やめろっつのこの馬鹿!!」

「さ、さすがにこれは見過ごせん!!」


 サーシャもナイフを手に闘気を放出、クレアを引き剝がそうとするのだった。

 楽しい時間は深夜まで続き、スタンピード戦の時間が近づいて来る。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] 最初の方で和解するとは思ってたけどここ迄薄っぺらな和解に持って行くとは思って無かったな。結局和解して利があるのはサーシャ(セイクリッド)側だけ。元々ハイセはソロで最強を目指してたのでパーティ…
[一言] 決別して最終的に和解は良いけど、和解までの過程が無理があるかな。やっぱりセイクリッドが駄目かな。クズが2人に和解の役には立たないのが2人。 和解の橋渡しをするようなバランスの取れたパーティー…
[良い点] “「いいさ、辞めてやる。でも……ぼくは諦めない。サーシャみたいに、弱者を切り捨てて高みに登ろうとする冒険者になんか絶対にならない!! ぼくは……絶対に、諦めないからな!!」” ↓ “「…
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