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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十二章 再来のスタンピード

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三日前

 ハイセは一人、ハイベルク王国郊外にある平原に立っていた。

 手には硬いクカの木。円柱の形をしており、大きさも片手で持てるほど。

 ハイセは深呼吸し、眼を閉じ……木材を回転させて上空に放り投げた。

 そして、カッと目を開く。


「───ッシ」


 腰のホルスターから自動拳銃を抜いて連射、空中で木材が何度も跳ねる。

 弾切れと同時に自動拳銃をホルスターに戻し、今度は背負っていたリボルバーを抜きファニングショット。円柱が再び何度も跳ね、最終的にハイセの真上に落下……ハイセは木材を掴み、じっくり見る。


「……チッ」

 

 木材には、穴が三つ開いていた。


「二発、外したか……くそ、やっぱ鈍ってるな」


 銃弾は、円柱のど真ん中を貫通していた。

 それとは別に、側面にも二発の穴が空いている。

 ハイセは、全弾、一発目で貫通させた穴に通すつもりだったが、二発外してしまった。

 驚異的な視力、そして精密射撃。

 

「今日は一人だし、久しぶりに射撃訓練をじっくりやるか」


 使える武器は、二百を超えた。

 危険すぎて使えない、そして目立ちすぎる『兵器』もある。

 人間界でできることに限界はあるが、それでもハイセはできる訓練を始めるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 夕方、ハイセは射撃訓練を終え、王都に向かっていた。

 久しぶりにじっくり銃器に触れることができ、ハイセも満足している。

 使える武器は二百を超えたが、その全てを使うことはない。手に馴染む武器、適性、射程、威力などを吟味した武器だけを使っている。

 今、ハイセが戦闘で使う武器は、二十種類もない。今日は久しぶりに使ったことのない武器にも触れ、感触を確かめてみた。


「悪くない……俺と違ってノブナガは、これらすべてを使いこなしていたのかな」


 そんなことを考えつつ歩いていると、王都正門付近に見知った顔たちがいた。


「あれー? ハイセじゃん」


 最初に気付いたのはロビン。

 そして、サーシャが振り返り、レイノルドが「よっ」と片手をあげ、ピアソラが「ふん」とそっぽ向いたがチラチラ視線を送り、タイクーンが眼鏡をクイッと上げる。

 チーム『セイクリッド』が揃い、こうしてハイセと出会うのは久しぶりだった。

 普段なら無視していくが、これから魔界行きとなるメンバーだ。少し迷い、仕方ないと思いつつ、この中では仲のいいタイクーンに聞く。


「依頼か」

「ああ。魔界行きも近いからね、戦術の確認を兼ねた依頼をこなしていた。それと、今日一日、クラン『セイクリッド』を信頼できるチームに任せ、運営もさせている。我々が魔界に行った時、クランがきちんと動くかどうかの確認としてね」


 思った以上に答えが帰ってきた。

 魔界行きまであと三日。まずはスタンピードを止めるため、東へ向かう。


「我々の準備は完了した。今日の戦術確認も手ごたえがあった。ハイセ、キミはどうだい?」

「俺も問題ない」

「くくく、スタンピードはともかく、魔界は楽しみだ。どのような文化、どのような書物があるのか……ふうう、今から興奮する!!」

「お前はブレないな……まあ、書物は俺も楽しみにしている」

「そうか!! くっくっく、やはり、ボクの趣味を理解してくれるのはキミだけだ」

「お、おう」


 顔をズイッと近づけ興奮するタイクーン。すると、タイクーンの襟をグイっとレイノルドが引く。


「なに興奮してんだよ。悪いなハイセ」

「ああ、お前も準備できてるんだな?」

「おう。新装備の確認も終わったし、これまで以上の『守り』を展開できる」

「守り……お前も、能力が進化したのか?」


 能力は、進化する。

 ハイセが『武器』から『兵器』を使用できるように、サーシャの闘気の色が変わって強力になるように、マスター系能力は進化する。

 レイノルドは『シールドマスター』で、守り専門。どのような進化をしたのか不明だが、間違いなく頼りになることだろう。

 すると、レイノルドを押しのけロビンが前に出る。


「ねね、ハイセ!! 見てみて、新装備っ!!」

「うおっ」

「カッコいいでしょ。新しい弓に、ゴーグルも新調したんだ。それと、服もそれに合わせて変えるんだ。チーム『セイクリッド』の新装備に新衣装、ハイセにも見せてあげるね!!」

「あ、ああ」


 新しい弓とゴーグルを見せてくるロビン。おもちゃを買い与えてもらった子供のようにはしゃいでいる……まだ、子供だった。


「装備で言えば、サーシャが一番変わったかなあ。鎧とか、マントとか、すっごくカッコよくなったんだよ」

「へえ……」

「ま、まあ……見る機会はある。その、今度見せてやる」

「いや、そこまで見たいわけじゃないけど」

「む、見たくないのか?」

「あはは、サーシャも見せたいんだねー」

「そ、そういうわけではない!!」


 けらけら笑うロビン。サーシャは顔を赤くしてロビンを背後から捕まえる。

 笑うレイノルド、呆れるタイクーン。

 チーム『セイクリッド』は、これからスタンピード、そして魔界に行くというのに、リラックスしているようだった。

 これなら心配ないなと思い、ハイセは宿に帰ろうとする。


「ハイセ、お待ちなさいな」


 と、意外も意外……ピアソラが話しかけてきた。

 これにはサーシャたちも驚き、ピアソラを見る。


「あなた、予定は?」

「宿に戻ってメシ食うだけだ」

「なら、少し付き合いなさい」

「「「「え……」」」」


 サーシャ、レイノルド、ロビン、タイクーンが同時に驚いた。

 まさか、ピアソラがハイセを誘うなんて、王都に魔族の集団が攻めてくるくらいあり得ない。

 ハイセは、隠すことのない不信感をあらわにする。


「……何が目的だ」

「そういう態度を取るのもわかりますわ。でも、一度あなたと話しておきたいことがありますの。サーシャ……悪いけど、先に帰ってくださいな」

「え、あ、ああ……う、うん」

「面白そうだけど、邪魔しない方がよさそうだ。おい、帰るぞ」


 レイノルドに引っ張られ、サーシャたちはそのまま王都へ。

 クラン本部ではなく、王都の支部に戻るようだ。

 ピアソラは言う。


「すぐに終わります。ついてきなさい」


 ピアソラが歩き出した。

 無視して帰っても問題ないし、少し前のハイセならそうした。

 だが、着いていかねばならない。そんな風に思い、ピアソラの後に続くのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセの入ったことのない、静かなバーだった。

 そこのカウンター席に並んで座り、ピアソラが酒を注文……ハイセの前に。

 乾杯はしない。酒が来るなり、ピアソラは飲み干した。


「これから、スタンピードと魔界……わたくしたち始まって以来の、大きな戦いが始まりますわ」

「…………」

「だからこそ、今のうちに言っておきます」


 ハイセは酒を飲み、チラッとピアソラを見る。

 ピアソラは、グラスを置いてハイセを見た。

 目が合う。だがピアソラはハイセと目を逸らさない。


「あなたは以前言いました。俺を嫌いなままでいろ、と……その気持ちは変わることはありません」

「……で?」

「ですが、わたくしは……あなたを認めますわ。一人の冒険者として、S級冒険者として。かつて『セイクリッド』のお荷物だったあなたを、わたくしが大嫌いなあなたを……認めます」

「…………」

「あなたは、わたくしが嫌いですわね?」

「ああ、そうだな」

「わたくしも。その感情は互いに一致していますし、変わることはありませんわ」

「…………」

「ハイセ。質問します。 わたくしはあなたを認めました。あなたは……わたくしを、認めますの?」


 それは、確認だ。

 これからスタンピード戦、魔界と未知の戦いになる。

 いがみ合い、険悪なままで向かうのは、メリットがない。

 だからこそピアソラは宣言しに来たのだ。ハイセに向かって『ハイセを認める』と言うことで、背中を預け、信用すると。

 かつてピアソラは、破滅のグレイブヤードでハイセに守られた。それだけじゃない、自分の実力で禁忌六迷宮を踏破し続け、その実力を認めていた。

 こうして面と向かって言う必要はない。だが、意を決して伝えに来たのだ。

 ハイセはグラスを置き、ピアソラの目を見て言う。


「十一人。今回のメンバーで回復が使えるのは、お前とエクリプスだけだ。正直……俺が負傷しても、お前が俺を治療しない可能性はあると思っていた」

「…………」

「でも、その不安は消えた。ああ、認めてやる。ピアソラ……お前はチームの要だ」

「……っ」

「以前、回復は必要ない、次に切り捨てられるのはお前と言ったが撤回する」


 その言葉を聞き、ピアソラが軽く目を見張った。


「俺は相変わらずお前のことが嫌いだし、お前も俺のことが嫌い……それでいい。でも、スタンピードと魔界行きでは頼りにしている」


 グラスをピアソラに向けると、ピアソラは少しだけ微笑み……自分のグラスを手に、ハイセのグラスに軽く合わせた。


「フン。相変わらずムカつきますけど……まあ、いいですわ」

「そうかい」

「よし、じゃあもう少し飲みますわよ。三日後には出発ですし、しばらくハイベルク王国には戻りませんからね……晩酌の相手があなたというのは不満ですけど、付き合いなさい!!」

「帰る」


 その後、ピアソラがハイセを無理やり引き留めたり、酔っ払って爆睡して店を追い出されたりするのだが……嫌々ながらもハイセは、ピアソラを送り届けるのだった。

 全ての不安が消えた。

 出発まで、残り三日。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
嫌よ嫌よも好きのうち〜? 正直サーシャとロビンに関しては全力で曇らせに行って欲しかった部分もあるけど、ずっと陰キャ全開の主人公見るのも疲れるしそろそろ光堕ちしてもいい頃合いかな……
[一言] ハイセはここまで無理してセイクリッドと付き合い持たなきゃダメ?ハイセはセイクリッドと縁を切った方が幸せになれそう。このままだとハイセがかわいそう。
[気になる点] 気になる点ってよりは要望に近いけど破滅のグレイブヤードでの二人の会話を活かせてたから↓の独白の続きもあっていいんじゃないかなって思った。 恐らく、ハイセを毛嫌いしているピアソラのが、…
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